翌日…ユーナの鍛錬21日目。引き続きエリーゼにユーナとの組手を
お願いし、ルナと共に、公爵家別邸、グランドマスターの家へと向
かった。
応接間…グランドマスターと共に件の令嬢が待っていた。
「私に剣術を教えて下さるの?」
「いや、騎士としての礼儀作法が先だな」
「私に教えられるだけの技量があるのですか?」
挑戦的に笑みを浮かべる令嬢。
「おい、あまり煽るな」
グランドマスターがオロオロしている。目の前にいる人類最高火力
が、キレるのでは無いかと心配しているようだ。
「私と勝負して勝ったら、考えてあげてもいいわよ」
弱者の遠吠えか?その程度ではルナを煽れないぞ。
「グランドマスター、どこでお嬢様と…」
心穏やかな表情で、相手を殺す気満々なオーラを纏うルナ。まぁ、
平常運転だな。
「う~ん…無駄にオーバーキルしないでくれるか?」
「ルナは手加減が出来ないけど…」
一撃一殺娘に、そんな器用な願いは届かないのだが。
「裏庭で頼む。家は壊さないでくれると助かるが…」
裏庭に場所を移した。お嬢様とルナの手には木剣が握られている。
二人の手合わせが始まった直後、俺は『エアバレット(空気弾)』
をお嬢様の頸動脈へ撃ち込んだ。空気の弾は頸動脈を一瞬で制圧
し、お嬢様の意識を狩った。ルナの手加減だと、最低でも骨折は
避けられないだろうから。いや、一撃で頭を落とすか?う~ん…
「ジョナサンに感謝だな」
グランドマスターにお礼を言われた。素人と剣聖を戦わせる訳には
いかないよな。
「この後、どうするかな」
それが問題である。納得しないだろうな。怪我をしない道具を考え
無いとダメか。
「そうだ!娘をジョナサンの家のメイドとして教育してくれない
か」
上下関係を叩き込んで、戦闘メイドにするのか?そもそも、習う気
があるのか?そこが問題である。
---クリスティーヌ・グランデ----
目が醒めると、粗末な部屋の粗末なベッドに寝ていた。ここは、ど
こだ?ベッドから出ると粗末な寝間着を着ている。まるでメイド達
の着るような寝間着である。なんで、私が…サイドテーブルにはお
父様からの手紙が置いてあった。
『暫くの間、私の義弟の屋敷で礼儀を学べ。いいか?お前はそこで
は一番弱いことを認識するんだぞ。尚、扱いはメイド見習いにして
貰った。健闘を祈る。生きて帰って来いよ』
…なんか、恐ろしそうな場所に預けられたようだ。お父様が冗談で
こんなことを伝えるはずが無い。お父様の義弟って…お爺様が養子
にしたと言う男か…屋敷内の噂でしか聞いた事が無い。コレまでに
会ったことは無い。
そうだ、まず湯浴みをしないと…部屋にはお風呂場が無かった。ど
うして?私は公爵家令嬢なのよ!寝間着のまま、部屋を出て、お風
呂場を探すが…迷子になった。どんだけ広い屋敷なのよっ!
階段を見つけ昇っていくと、人の気配のするフロアに出られた。
バシッ!
何かで頭を叩かれた。
「メイドのくせに寝間着で出歩くとは、どういことだ?」
あっ!コイツ…今日、我が家に来た女だぁ!
「痛いわね。私を誰だと思っているの?」
「単なるメイド見習いだ。それ以上でもそれ以下かもしれないが
な。目障りだ、振り出しに戻れ!」
次の瞬間、あの目覚めた部屋にいた。これって、転移術なのか。賢
者にしか使えないと言われている…あの女、賢者なのか…私は公国
一の騎士になり、騎士団長になるの。賢者ごときに負けられない。
あの女を捜しに、部屋を飛び出した。