---マイン---
ユーナの鍛錬37日目。裁縫スキルから派生した影縫いをマスターした。これは影に本体を縫い付けて、移動を出来なくするスキルである。更に影縫いと暗殺スキルの合成派生で影移動もマスターしたようだ。こっちは、総ての影へ移動出来る。高速移動スキルで、影縫いした相手の影に移動すれば、暗殺し放題である。って、ユーナは暗殺者になるのか?
勇者から貰った聖剣はペティナイフとレイピアに錬成した。レイピアで一撃刺殺すると、殺菌済みになるらしい。寄生虫もイチコロになるとか。良い物を錬成したな。
アイリスはメイド修行を終え、騎士マナー、貴族マナーを学んでいる。神殿マナーもオマケで教えているらしいが、アイリスを出家でもさせる気なのか、エリーゼは…
そうだ!10日くらいに一度のペースで、アイリスを帰省させる約束だったなぁ。アイリスとルナと俺で、ユートハイム王国のノヴァ公爵邸へ転移した。
「アイリス…見違えたぞ。見た目が精悍になったなぁ…」
食生活を改善し、よく食べ、よく動いた結果、ふくよかな体型が、ややガチスリムになった気がする。
「えぇ、先生達家族に鍛えられていますから」
いい笑顔で言い切るアイリス。ノヴァ公爵家の騎士相手の手合わせで楽勝気味の連勝を重ねていくアイリス。現在の彼女の獲物は二刀流ナイフ使いである。
「中々、強くなったなぁ」
孫娘の成長を喜ぶノヴァ公爵。
が…
問題はその日の晩餐会で起きた。
「先生の家に帰りたい」
涙をボロボロと流しているアイリス。我が家の食生活に慣れ、ここの食事が合わなくなっていた。
「どうしたのだ?お前の好きなスープだぞ」
内容は豪華なのだが、コクも旨みも感じないスープは、肥えた舌には拷問であった。
「先生の調理した食事が食べたいです」
「俺の?男の手料理だぞ。ここまで豪華な見た目は無いけど…それにだ、こういう味でも食べられないと遠征には行けないぞ」
普通の遠征食って、硬いパンに干し肉も戻したスープである。
「それなら、遠征に行けなくてもいいです。先生の家に住みたいです」
と、俺に訴えるアイリス。
「貴様…孫の胃袋を掴んだのか!」
って、言われてもなぁ。どうして良いか分からないので、俺とルナだけで帰宅した。
----ノヴァ公爵---
帰宅して以来、アイリスが食事を口にしてくれない。みるみる衰弱していく孫娘。色々な国のごちそうを出すが、どれも一口二口で食べるのを止めてしまうのだった。
「美味しくない…お爺様は、本当に美味しい食事を食したことが無いのですね」
と、罵られる日々…グランデ公爵に相談をすると、私とアイリスだけで、来る様に言われた。
「食材の量が余り無いので、大人数には対応出来ないと言われたよ」
と、グランデ公爵。あの者に料理を依頼してくれたようだ。
◇
そして、食事会が始まった。一皿目はスープである。
「あぁ、これですよ。美味しい…コーンの甘みにクリーミーさが胃にしみます」
見た事の無い濃厚なスープである。甘いスープとは…だが、アイリスがいち早く完食をした。それも優雅な飲みっぷりでだ。
二皿目はサラダ。白いソースのような物が掛かっているが…なんだ、これ…濃厚なソースである。コクがありパンチもある。こんなサラダソースは見た事も食したことが無い。
「ディップソースもあるんですね。すみません!野菜スティックもお願いします」
野菜を手づかみであるが優雅に食べるアイリス。野菜に味は無いだろうに…いや、味がある。この野菜には…
三皿目は肉料理である。肉の切り身が更に載っているだけである。
「ライスあったら下さいませんか?」
一口食べて、そのようなリクエストを出したアイリス。私も一口食べた。口の中で溶けていく肉。柔らかい。食べたことの無い味、パンに合う。いや、なんだ、このパンの柔らかさは。それに白い…パンにも味があるのだが、肉の味をジャマしない。こんな物を毎日食べたら…
「料理方法を売って貰えないだろうか?」
「ノヴァ公爵、聞いていないのですか?食材が売るほど無いのですよ」
と笑顔のグランデ公爵。これは飯テロか?
「食材を我が国で生産出来ませんか?農業大国の我が国ならば可能だと思う」
「無理です。海産物がメインですからね」
海産物がメイン?
「入っていないでしょ?」
「見える形では無いです。お爺様、料理はそんな単純では無いのですよ」
と、怒った顔のアイリス。何?どうしたのだ?