---アノス---
まさか賢者マリンに参謀格がいたとは…隣国で情報を彼女の参謀格と整理した結果、様々な疑惑が浮かんだそうだ。
「討伐の1年前に召喚されてから、愚王と聖王の二人に孕ませられたんだろ?それなのに凱旋パレード時に赤子を連れて居るのもおかしいが、逃げる体力も無いはずだ。子供産むって母体に多大な負担が掛かるんだよ」
お前は産んだこと無いだろうと、言えない。言えば、魔法が飛んで来る可能性が大である。
「そうだな。おかしい。そもそも、ゼノビアの記憶がおかしいんだ」
「可能性で考えると、現聖女様は、前代の王と聖女様の間に生まれた双子か、三つ子の一人ですね」
それは聖王の子供はいないことになるが…
「まさか、腹ぼての状態の聖女に…」
「あり得る。愚王と聖王ともに、出産のことに詳しくなさそうだ。より強い精子の子供が生まれてくれるとか思っていたり」
「はぁ~、記録が無さ過ぎる」
我が国もだが、聖王国にもだ。
「生き証人は残っていないのか?」
「あとはマインだけだな」
アイツはどんな秘密を得て、消されたのだろうか?
---マイン----
ユーナの鍛錬46日目。錬成術から派生して鍛冶スキルが生えたようだ。刃物研ぎなんかが影響しているのか?もしかすると、かまどの火の管理かな?スキルの理は奥深いなぁ
野菜の収穫がスピードアップ中である。ユーナがウィンドーカッターをコントロールして茎から実を切り落としつつ、俺が『強奪』で斬り落とされた物だけを回収しているのだ。
「あのコントロールは天性のものかな?」
魔法の天才児も唸っている。これって、遠隔で頸動脈を切れるじゃん。って、ますますユーナが暗殺者になっていく…
「ユーナさんは、学校に行かないんですか?」
と、アイリスに訊かれた。もう直ぐ、アイリスは学校に入学するそうだ。そうか、入学前のかてきよなんだな、と納得したり。義兄の娘のように、一人では何も出来ず、下僕達を顎で使う貴族の子女達が多い世界である。
「ユーナが学校行ってもなぁ。習う科目が無いもの」
ジョブが村娘では、アイリスと同じ学校へは通えない。いくら高レベルであっても、村娘は村娘の扱いである。以前、熾天使に天職システムを止めようと提案したのだが、社会的混乱が絶大だから却下された記憶がある。この世界は天職により、人生のレールが引かれるのだ。理不尽すぎる。たぶん、今のユーナなら隣国の愚王を完全犯罪手的な暗殺が出来ると言うのに。
「ユーナさんのジョブって、転職出来ないんですか?」
「出来ないことは無いが…LV100にならないとねぇ。村人、村娘は特殊ジョブなんだよ」
努力次第でどんなジョブにもなれるが、カンストしないと転職出来ないのだ。その代わり、デバフの付くスキルは無い。お嬢様のように家事全般にデバフがつくことも無いし、スキルの伸びが良いのだった。
「なんで、学校では差別を?」
「それは、貴族優先の社会だからだ。一般の民に貴族より優秀な者がいると、まず消される。だから、神様はそうならない様に天職システムを導入したんだよ」
今はもう神様がいないので、熾天使様と置きかえて考えてねと言え無い。
「不平等な神様なんですか?」
「あぁ、だから、アイリスがえらくなって、平等な世界をつくってくれないかな~」
と、公爵令嬢に期待を寄せてみる。
---アイリス・ノヴァ---
セントラル王国の王立勇者学園に体験入学をした。人類最後の砦と言われる勇者について学ぶことは貴族の務めである。この学校では、勇者に付いて学び、いずれ、勇者のようになり国を護れる人材をつくる学校であるが…
実際に入学してみると、ふざけているとしか言えない。周囲に下僕達を侍らせている貴族達。自分は何も出来ないのだろう。私は本入学すれば召喚勇者達と同じクラスになるそうだ。ちょっと待って。召喚勇者って禁忌項目ではなかったか?それは異世界からの拉致である犯罪だとお父様に習ったのだが。
「物事には例外があるんだ。王族、皇族などの権力の頂点にいる一族は、罪に問われない。それは国の戦力を維持する為の行動であるから。但し、君のよう公爵家が行うと一族郎党全員死罪になるから」
と教師がのたまった。ふざけたルールである。権力者は罪が問われないって。きっと、このセントラル王国がそうなんだろう。
家に帰り、お父様にその事を訊いてみた。
「あぁ、セントラル王国はついこの前も勇者召喚したそうだ。罪?問われる訳無いだろ、王がルールブックだからな。王の命令であれば、無罪だよ」
そうだ、ユーナさんのことを訊いてみよう
「村娘は村娘だよ。いくら優秀でも。貴族になるには、貴族の妻、愛人になることだ。子孫に優秀さを残すのが、優秀な村娘の義務だ。どこにいるんだ?その村娘は?」
「師匠の娘さんです」
「彼女は見なし貴族だ。アイリスの師匠は公爵家の養子だからね、その娘も貴族令嬢になる。そうか、あの公爵家は良い村娘を持っているのか。交渉して、譲って貰うか」
お父様が悪い顔になった。