---ノヴァ公爵---
「おい!アルベルトを呼べ」
息子が恩を仇で返す行為をした。お世話になっているグランデ公爵に彼の孫娘の買取を提示したそうだ。
「どうしました?お父様」
「これはどういうことだ?」
グランデ公爵から送られて来た書状を見せた。
「あれ?金貨5枚じゃ少ないのか?もう少し上げるか」
「お前は何故、大公家の孫を買い取る気でいるんだ?」
「優秀な村娘だそうですよ。皇太子にはなしたら、乗る気満々で、情報料は手つけでもう貰ってますよ。明日にでも国王の名で買取に行くかな、あの皇太子は」
「お前は恩人を金で売るのか?」
「恩人?そうか!彼女はアイリスを助けた冒険者なんですね。それは付加価値が付きますね。ふふふ」
なんで、コイツはこんなにゲスなのか!!
---マイン---
ユーナの鍛錬50日目。昨晩、ちょっと無理をさせたので、格闘スキルに暗殺術が生えた。
事態が大きく動いた。昨晩、ユートハイム王国がグランデ公国に宣戦布告をしてきた。意味がわからん。娘達とユートハイム王国の王族とお話をしてきて、ユートハイム王国は崩壊し、以後グランデ公国のノヴァ公爵領として統治されることになった。風の噂では、あの王族の一族郎党は一夜のうちに、国から消えたらしい。逃げ足が早いなぁ。
天使と魔王がいると、こうも簡単に国落としが出来るとは。あと、影移動から影縫いをして、頸動脈を一撃で斬り裂くって、避けようがないなぁ。恐ろしや…この村娘は。
---マリン---
アノスと相談した結果、私と勇者リュートに遥、千尋を加えたパーティーがゼノビアの護衛に付き、あの村をめざすことにした。だいたいの位置はジョナサンに調べてもらったのでわかっているはずだ。
王都から馬車で3日。漸く村があった場所に着いた。そこには
『我が友たち、ここに眠る』
という石碑が建っていた。鎮魂の碑のようだ。が、何を思ったのか、その石碑をゼノビアが破壊をした。
「眠る?眠らせる訳に行かない。あの娘はそこに行ったのだ?」
ゼノビアがなにやら呪文を唱え始めた。
「ダメです。あれは止めて下さい」
と、僧侶の千尋が叫んだ。勇者リュートが動き、ゼノビアに一太刀入れるが、ゼノビアは止まらない。
『魔王、降臨せよ』
地面に魔方陣が広がり、何かが召喚されていく。しかし、天空から光が撃ち込まれ、召喚は中止されたようで、魔方陣のあった辺りがクレーターとなり爆ぜていた。
「誰だ?!ジャマをしたのは?貴様かぁ?」
ゼノビアの剣が私に迫って来た。
ガチン!
ゼノビアの剣が止められた。私の参謀の剣によって…
「よぉ、マリン。あれあれ、鎮魂の石碑を壊したのか?無駄なのに…」
「ジョナサン…」
「ジョナサンだと?」
ゼノビアがジョナサンと対峙した。
「賢者マリン様の知人のジョナサン・グランデだ。グランデ大公の次男で怪しい者では無い」
いや、怪しい服装である。村人の着る質素な服に、仕込み杖って…
「貴様も賢者か?」
「まぁ、そんな感じだよ」
へっ?ジョナサンって賢者だったのか?
「無駄とはどういうことだ?」
「魔王は降臨しない。お前が祈りを捧げた神もいない。だから、お前の願いは無駄なんだよ」
「何を言っているんだ、貴様…」
ゼノビアの目が血走っている。コイツ、人間なのか?
「そもそも、俺を見て何も感じ無いお前は終わって居るんだよ、聖王ゼノビア」
「「えっ!」」
私とリュートが驚きの声を上げて、ゼノビアを見た。
「私の正体をしっている、お前は何者だ?まさか…あの時、我らの姫を浚った村人マインか?」
「「はぁ?」」
更に驚きの声を上げた私とリュートはジョナサンを見た。どう見ても歳上のジョナサン。歳下のマインには見えない。
「姫?誰の事だ?聖女アーシアとその子供は、貴様が殺しただろ?生き埋めという方法で…」
「月影の王女の子供だ。貴様が浚っていった」
「あぁ、あの子か…残念だが、もう姫では無い。成長しきって、神に至ったからな。お前の思い通りには育てられないよ。そろそろ闇の世界に帰れよ。闇の住民がお待ちだ。『ダーク ホール』」
ジョナサンが呪文を唱えると、ゼノビアが足下に発生した闇に飲み込まれていった。
「静かになったなぁ『クリエート 鎮魂の石碑』」
壊された石碑が元に戻っていく。
「これで、義理は返したぞ、マリン。じゃ、帰る『ゴー ホーム』」
目の前からジョナサンが消えた。