村娘の師匠   作:もっち~!

5 / 27
村人マインは何をしたのか

---side アノス---

 

父である王、宰相、魔導宰相が一気に消え、私が王に即位したのはいいが、先代の王のやった裏の仕事の記録がまるで無い。召喚の儀で何名の異世界人を呼び出したのかが分からない。呼び出したジョブの内訳は男勇者1と女勇者1しか記されていない。城に残っている者達に訊くと、数名が脱走しているそうで、今回は異世界からは40名くらい来たらしい。

 

「先生が神隠しに遭って消えたんです」

 

そう訴えるのは白崎千尋という僧侶LV5の少女である。先生とは結城菜那という教師だそうで、ジョブは指導者だったという。神隠しかぁ~。先代の王がお手つきでもしたのだろうか?自分の父親を悪く言うのはあれなんだが、手癖が悪い男であった。異母兄弟が数え切れない程いるが、城に入った女性の子供だけ認知していた。残りは人知れず処分したそうだ。

 

「で、残っているのは?」

 

「私とおんな勇者の遥だけです」

 

後の女性は喰われたのかもしれない。男性陣の勇者パーティーは殲滅され、残りの男性は城下で悪さをして、牢にいるか斬り捨てられたそうだ。

 

「二人で魔王は倒せますか?」

 

「前回の討伐メンバーだった勇者と賢者を呼び出している。4人で魔王討伐の旅に出て欲しい」

 

勇者が2名いれば大丈夫か?マイン並の戦力が欲しいが…アイツはどこに消えただんだ?

 

 

マインの行方のヒントは、先代の王の改正した法律にあった。

 

『国家反逆罪を犯した村人マインは、今後如何なる恩赦を受けることなく見つけ次第、断頭することとする』

 

施行された日は、私達のパーティーが凱旋した日であった。おかしいだろう?その日まで6年間、私達は一緒に行動していた。いつそんな大罪を犯す時間があったと言うのだ?これって、えん罪だろう。

 

勇者パーティーの記録を精査すると、村人マインの代わりに、パーティーには居なかった聖女の名前が記されていた。聖女アーシア、後の第四王妃と。これはどういうことだ?俺の記憶が改ざんされているのか?いや、待て…俺達が魔王討伐の旅に出た翌年に、第三王女を出産し、その翌年に第四王子を出産している。そんな状態で、旅が出来るのか?妊婦がいた記憶は無いんだが。

 

疑問を抱いた私は、先代の第四王妃に会いに行く。だけど、奥の宮に彼女の部屋はなかった。先代の王が亡くなった後、先代の王妃達は奥の宮で一年間喪に服す決まりである。なのに、第四王妃はいなかった。彼女の実家を調べるも、彼女に関する記述は、勇者パーティーの記録しか無かった。これは一体…先代の王は何をやらかしたんだ?第三王女と第四王子は実存しているのに、その母親の記録が残っていない。いや、第三王女の記録も消えていた。そして、彼女もまたお城から姿が消えていたのだった。

 

 

 

---side 勇者リュート---

 

賢者マリンと二人、新王アノスの元にはせ参じた。

 

「よぉっ!王様!来たよ~」

 

「ご苦労…」

 

アノスの表情が冴え無い。疲れ切っているみたいだ。

 

「どうしたよ?権力疲れか?」

 

アノスが勇者パーティーの記録を手渡して来た。これがどうしたんだ?懐かしいなぁ…って。どういうことだ?

 

「何で、マインの名前が無くて、第四王妃の名前があるんだ?パーティーに妊婦はいなかったぞ」

 

「そうなんだ。この謎が分からない。公式な記録がそうなんだよ。マインの消えた理由はこっちだ」

 

アノスは法改正の書類を手渡して来た。マインが大罪を犯した?それもあの旅の途中で?

 

「あり得ないだろ?」

 

「あり得ない。6年間、一緒にいたんだ。国に反逆する時間はなかったはずだ。なのに…」

 

「大罪の詳細は?」

 

「国家反逆罪としか書かれていない。内容がまるで分からない。マインはもう居ないのかもな」

 

断頭されたって言うのか?魔王討伐の立役者が…マインは私にとって、弟分だぞ。なのに、なんだよこれ…

 

「問題はその法改正の契約書だ。智天使様と契約をしている。対価は大罪人マインの魂とある。智天使様との契約は破棄が出来ない」

 

アノスが言う通り、人間と上級天使の間に交わした契約は、人間都合で破棄が出来ない。これはマズいぞ。天使にマインが見つかった瞬間命を狩られるってことだ。流石のマインも智天使様には勝て無いだろう。

 

「なんで、こんな契約を結んだんだ?」

 

「確実にマインには死んで貰う必要があったのだろう」

 

先代の王は狂っているのか?えん罪を被せて、確実に殺すって…おかしいだろう?

 

 

 

---side 賢者マリン---

 

第四王妃…記憶に無い。こいつは何者なんだ?第三王女は誰との子供だったのか?城に残る記録から何も読み取れない。この二人がマイン失踪と関係しているのか?

 

待てよ…聖女かぁ…それって聖王国の関係者では無いのか?この国では聖女の認定はしていない。聖なる女性であれは、クレリックになる。

 

この国のジョブ系統図では

 

プリーストーハイプリーストーアークプリーストークレリック

             Lクルセイダーーパラディン

             Lビショップ

 

だったはずだ。聖女に至るジョブの系統は無い。あるとすれば、勇者召喚の折に、聖女として召喚されるかだが…もし、聖女を召喚し、先代の愚王が孕ましたとしたら…その後に、聖王国に何らかの交換条件で引き渡されたとしたら…

 

私の考えをリュートとアノスに伝えた。

 

「あり得るな。交換条件はマインの大罪人扱いだとしたら…聖女と子供の真実をマインが知ってしまったとしたら…」

 

アノスが私の推測を発展させていく。口を封じられたのだろう。

 

「辻褄は合うなぁ」

 

リュートが頷いている。国家的に隠したい秘密を知ってしまったマイン。だから両国共にマインを大罪人にした。

 

「そうなると、聖王国の情報がいるな」

 

「私とリュートで探ってみよう」

 

流石に元勇者パーティーのメンバーを邪険には出来ないだろう。

 

 

聖王国に入国して、伝手を使い、聖女関係の情報を仕入れて行く。すると、推測通り、第三王女と同い年の第一王女が存在した。母親は王妃であるが大罪人マインに殺害されたことになっていた。

 

「アイツ、聖王国に入国したことは無かったよな」

 

リュートに訊かれた。

 

「勇者パーティーとして訪れたことは無い。そうなると実際は、王妃を誰が殺したのかだな」

 

王妃が殺されたのは王宮内とされていた。もし、本当にマインだとしたら、動機がまるで無いのだが。9歳で勇者パーティー入りして、15歳で追放されるまで、聖王国の王妃と出会うことは無かったのだ。

 

「動機が無いだろうに…」

 

当時の記録を調べて行くと

 

「動機は魔王に唆されたとある」

 

その時点で魔王は俺達が倒していた。あり得ないことだ。聖王国の記録が正しいとすれば、俺達の倒した魔王は魔王で無かったことになる。何が真実なんだ?賢者としての鑑定で、アイツは確かに魔王だったのだが…

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。