ユーナの鍛錬7日目。解体スキルから派生した短剣術と暗殺術を覚えた。まだ初級であるが、確実に解体のスキルは上がっている。一角兎なら5分程度で解体できるようになった。どこかにドラゴンがいないかな。ドラゴンの解体を教えてみたくなったのだ。
「ルシア、ルナ、ドラゴンを狩りに行くぞ」
「どこにいるの?」
「聖王国の龍騎士から奪う」
「え?あれはドラゴンじゃなくて、空飛ぶトカゲだよ」
とルナ。
「そうなのか?」
「今の時代、本当のドラゴンに騎乗出来る騎士なんかいないって」
「お父さん、ドラゴンの情報を得たけど…」
ギルドに情報収集をしに行ったルシアが戻って来た。
「どこだ?」
「パピみたい…」
パピは俺の騎龍であるキングドラゴンだ。現在エンペラードラゴンに進化する為に、修行の旅をしているのだった。
「ダメじゃん」
パピは狩りの対象外だ。
「あっ!お父さん、『強奪』すれば?」
とルナが提案してきた。チート能力に頼るのか?まぁ、それも手ではあるな。割と小柄なドラゴンを『強奪』し、活き締めしてユーナの解体用教材にしてみた。
---side アノス---
騎士団長ルナの行方がまるで分からない。せめて彼女がいれば魔王城へ行く為にの戦力になるのだが。今回の勇者召喚で残っているは女勇者と女僧侶だけである。残りの者は思考がクズすぎて、使い物にならない為、牢に入れてある。しかし、残っている二人はレベルが低く、とても魔王だけで無く、その配下の悪魔や魔物に勝て無いだろう。リュートとマリンは聖王国へ調査に出ているし。マインが居れば…
そう言えば、ルナの育て親もえん罪を掛けられていたなぁ。先代の愚王は何をしているんだ。まったく…国にいた優秀な人材を次々に消し去るって、何をしたかったんだ?
前回の勇者召喚の資料に目を通す。残っている者はいない。その前はどうだ?資料に目を通すと、破られた痕を見つけた。この召喚で何かあったのか?行われたのは、私達の魔王討伐の前年とある。討伐に向かっていて、私達は知らなかったのだな。当時の話を訊こうと思ったのだが、その当時の重鎮で残っているのは、王都の冒険者ギルドのギルドマスターだけのようだ。他の者達は消されたのだろうか?
◇
「ゼノビア殿、お元気そうですね」
「これは陛下…何用ですかな?」
ゼノビアは若くして騎士団長を辞め、冒険者になった男である。
「古い話だが、魔王討伐の旅の頃行われた勇者召喚のことを訊きたい」
「あぁ、あれですか…あれは酷かった。酷かった故、俺は騎士団長を辞めたんですよ」
眉間に皺を寄せ、項垂れるゼノビア。そして、ため息を吐いた。
「愚王が召喚された聖女様に手を出した。その行いを止めようとした召喚したばかりの勇者達を、我々騎士団に命じて惨殺し、無理矢理手籠めにしたんです。その時に身籠もったのが第四王子です。翌年、召喚の儀を見物していた聖王に、出産したばかりの聖女様を貸し出し、身籠もったのが聖王国の第一王女ですよ」
なんてことをしてんだ?愚王ペアは…あれ?待てよ。第四王子が先に生まれたのか?第三王女は聖王の娘ってことにならないか?
「聞いた話では、赤子の王女と聖女様は、訪れていたこの国の勇者凱旋パレードの最中に逃亡し…聖女様は捕獲出来たが、赤子の行方は分からなかった。だけどな、冒険者ギルドを国の諜報機関のように使い、赤子が育てられていた村を探し出し、少女になった王女を拉致して、その村の村人を皆殺しにして、村のあった痕跡すら消し去ったそうだ」
まさか…あの日、凱旋パレードに参加出来なかったマインが、聖女と王女の逃亡を手助けし、彼女らのカラクリを知ってしまったとしたら…
それにしても第三王女の出生時期がおかしい。記録では王女、王子の順に生まれたはずだが…まさか、双子だったのか?
「ゼノビア殿は、その村へ引き取りに行ったのか?」
「酷い光景だった。無抵抗の村人達が次々に、殺される意味を知らずに首をはねられて行き、最後は、村で蹂躙した騎士達ごと、魔法で消し去られていた。俺は、本陣にいたので、生きながらえたけど…」
ゼノビアの記憶の時系列がおかしい。記憶を弄られた感じがする。
「なんで殺されたんだ?」
「王女のジョブも聖女だったからだ。それは召喚された聖女様の子供である証拠で、王国の第四王妃と聖王国の王妃が同一人物って証拠になり得る。なんせ、聖王国で認定された聖女はいなかったんだからな」
認定聖女以外の聖女は召喚されるしか無い。それが愚かな王達の隠したかった事実なのか。現在の聖王国の王妃は、認定聖女ってことになっている。
「で、その聖女様は?」
「聖王国の神殿に親子共に幽閉されているそうだ」
「聖女…いや王妃は殺されたんじゃないのか?」
「あぁ、村人マインの件か?あれは平民が勇者パーティーにいる事実を無かったことにしたい聖王のせいだ。選民主義者で平民の栄誉ある行動を認めない心の狭い愚王のわがままだ。お前の父親は聖女を犯した罪人だ。その罪を無かったことにする代わりの条件が、村人マインの存在の抹消と、聖女を神殿にいれる事だ。幸い、子供は二人いたので、聖女だった娘を聖王国で引き取る取り決めをしたのさ」
なんてことを…
「俺は天国へ行けるかな?」
ふと顔をあげると、ゼノビアは泣いていた。
「あの時の血の匂いが消えないんだよ。あの時の村人たちの叫び声が消えないんだよ」
屈強な精神の持ち主であった騎士団長ゼノビアの精神は病んでいるようだ。この世の地獄を見たのだろうか。そうなると、ゼノビアは本陣にいたのでは無く、先陣を切って村人達を…