ユーナの鍛錬11日目。エリーゼの歓迎会の為、鍛錬はお休みである。エリーゼは座天使により生かされていた。天使の力で、必要最低限の栄養しか与えられて無かった為、内臓が弱り切り、暫くはおかゆ生活で胃の活性化を促すしかないか。
「う~ん、長女なのに…」
長女なのに小学生のような体形である。まぁ、ルシアは幼児体形に近いし、ルナは育ち過ぎているだけだ。
「気にするな。いつかはルナのようになれるかもしれない」
天使の器になるため、種族が変更されていた。エリーゼの今の種族はハイエルフである。エルフ種は戦闘種族な為、聖女になり得ないのだが、総て座天使のせいだな。
「ねぇ、お父さん…あの村は?」
「何も無い。地図にすら無い…村の中心に墓標を立てて来たけど」
「お父さん…アレを飲みたい」
あぁ、アレなら胃が機能しなくても栄養取れるかな。
「『製造 母乳』」
エリーゼの前に置かれたコップに、人工母乳を絞り出した。
「懐かしい風味だな…」
「私も飲む!」
他の娘三人にもごちそうしてあげた。旨いのか?俺には無味無臭だったのだけど…
---アノス---
聖王国の聖王から密書が届いた。
『末代までの秘密を暴露とはどういうことだ!』
先王が死んだことを知らないようだ。国葬をしようにも死体が無かったからな。先王が死んだことを知らせる密書を返送した。末代までの秘密とは…私達の推測通りなのだろう。
密書を送って数日後、勇者リュートと賢者マリンが戻って来た。
「聖王は終わったな。神殿長達に、聖王の愚策が明るみになったし」
聖女である王妃と次期聖女である王女を人柱にして神殿の主柱に埋め込んだ事実…主柱の内部は即身成仏の儀を行う儀式の場になっていた事実…そして、その空間は密閉されていた事実…聖都は聖女とその娘の魂により結界を張られ、守護されていた事実など…様々な非人道的な事実が明らかになったのだった。
「今後、神殿長が聖王になるらしい。今後は人柱にされた親子の冥福を祈願していくらしいよ」
それはそれで良いが…
「歴史的な記録は調べて来てくれたか?」
「事実は隠蔽若しくはねじ曲げているようだ」
聖女はセントラル王国の第四王妃で、次期聖女は聖王国の王女と記されているだけだったらしい。王妃については村人マインにより殺害としか記されていなかったそうだ。
「聖王の愚かさが明るみになり、聖王国の国民は誰もその記録を信じてはいない。そもそも、どこで生まれかが記されていないんだからな」
後世に書き残せないだろう。聖女は召喚した少女で、次期聖女は無理ヤラれた結果で出来た娘とは…
「マインなんだが、どこにも殺された記録が無かった。生きている可能性が大だぞ」
まだ逃亡しているのか。
「冒険者ギルドで探して貰おうと思っている」
冒険者ギルドはグランデ公国に本部を置く、あらゆる国の命令系統に属さない世界的な独立機関である。
「調べた結果、Bランク以上の冒険者でマインという名前の冒険者はいないらしい」
Bランク以上の冒険者は冒険者目録という年1回発行される冒険者の身元を確認出来るリストで誰でも調べられるのだ。これは各支部の資料室に置いて有る。
「Cランク以下だと調べる当ては無いか」
マインのことだ。身分を偽っている可能性がある。しかしCランク以下の冒険者はリストがない。人数が多すぎる上、身分を偽っている者も多いからだ。
「噂レベルなんだが…ギルド本部所属のパーティーで、とんでもないヤツラがいるらしい。本部に確認を取ったのだが、個人情報保護の為とかで教えて貰えなかった」
大国の王からの依頼でも、断れるのが冒険者ギルド本部である。支部であれば、懇意になっているギルマスから情報を流して貰えるのだが…これは正式なルールではルール違反である行為である。
「だから本部所属なんだろう。支部所属であれば、個人情報がダダ漏れるしな」
賢者マインが頷いている。
「どんな噂なんだ?」
勇者リュートの興味を引いたらしい。
「ランクはFらしいが、Sランククラスの魔物を楽々倒せる火力があるそうだ。先日、オークションに出品されたキングボアの牙は、そのパーティーが出品したそうだ」
「FランクでSランクをか?俺達でも手こずるだろう。本当にFランクなのか?」
「あぁ、冒険者登録した後、一度もランク昇格を申請したことが無いそうだ」
ランク昇格時に、ステイタスを記録することになる。それを避けているのだろう。Fランクになるには、冒険者登録申請書を提出するだけで、ステイタスをさらけ出すことは無い。
「パーティー名はなんと言うんだ?」
「『村人からの成り上がり』だそうだ。村人マインらしいと思わないか?」