魔法少女まどか☆マギカ 《円環の理》――この世界に幸あれ 作:ぞ!
いつかでもなく、どこかでもない、時と空間から外れたそこで
それらは戦い続けていた
永遠に永劫に永久に
終わりのない戦いを続けていた
だがついにはそれにも終わりが訪れる
戦い続けるそれらの一方が、力を失い、たおれたのだ
「ちょっと……つかれたわね……」
それの胸元にある宝玉はすでに黒く染まりきっていた
どうしようもないほどに、濁りきっていたのだ
だから、それに抗うことはできない
どれほどの位階にのぼりつめようと、結局のところ
それ――彼女は、魔法少女なのだから
だからそのルールには逆らえない
「私、頑張ったわよね……すごく、すごく、がんばったんだ」
それまで戦っていたものに、彼女は語りかける
相手は何も答えない
だが、たおれた彼女へ決して追撃しようとせず無言で佇む姿は、自分の奮闘を労っているように、彼女には思えた
ならばよし。
彼女は遠くなる意識の中、おもう
もう名前も顔も声も忘れてしまった『彼女』に褒めて貰えるのなら、がんばった甲斐があったのだと
だからそのまま意識を手放そうとして――
「うん、がんばったね……ほんと、がんばったんだね、タレカちゃん」
永劫の彼方に消えてしまったはずの、声だった
幻聴なのだろう
だが、たとえ幻でも最後に『彼女』の声を思い出せたことに感謝する
忘れたはずの多幸感に身を包まれ――
ちがう。
それはたしかに誰かの温もりだった
いつかどこかで感じたことのある、あの人の温かさだった
最後の力を振り絞って、彼女は閉じかけていた瞼を、むりやりこじ開けた
「迎えにきたよ、タレカちゃん」
――ああ
忘れるはずがない
この人の顔を、忘れるはずがないじゃないか
この人の声を、忘れるはずがないじゃないか
この人の名前を、忘れるはずがないじゃないか
「だてんし、さま……?」
まるで女神様のような白いドレスに身を包んだ、桃色の髪の『彼女』は、彼女を抱きしめて、やさしく、やさしく、ほんとうにやさしく微笑んでいた
「もう、いいんだよ。もう、やすんでも、いいんだよ。あの『わたし』はわたしが連れていくから、あなたもわたしが連れていくから、だから、もう、いいんだ」
何度も何度も、彼女を労るように背中をさすり、『彼女』は言う
「そっか……やすんでも、いいのかぁ。そっかぁ……」
大きな、とても大きな溜め息を吐いて、彼女は、ゆっくりと瞼を閉じる
眠い
とてもねむいのだ
もう、どのぐらいねむっていないのだろう
だって、ねむれなかったのだ
あのひとを、ひとりぼっちにしちゃだめだから、ねむったらだめだったのだ
でも、もういいんだ
もういいんだよね
「うんっ……うんっ、ありがとうっ、ずっと、『わたし』と一緒にいてくれて、ありがとう」
あはは
あなたにほめられるなんて、
なんてじぶんはしあわせなのだろう
ああ、ほんとうに
きょうはいいゆめがみれそうだ
おやすみなさい、だてんしさま
「おやすみっ……タレカちゃん、おやすみっ……」
そうして、最も新しき伝説は、本当に伝説となったのだ
たとえそれを知るものが誰もいなくとも、『彼女』がその伝説を覚えている
たった今より最も新しき伝説となった、最も新しき世界の法則――《円環の理》が、世界へと語り継いでいく
ずっと、
ずっと……