魔法少女まどか☆マギカ 《円環の理》――この世界に幸あれ   作:ぞ!

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 たくさんのうれしいことがあって

 たくさんのつらいことがあって

 たくさんのかなしいことがあって

 

 やがてすべては終わりをむかえた

 

 なにもかもが変わってしまった世界で 

 彼女は生きている

 

 かつてあったことのすべてを覚えている

 忘れていたはずのことさえも、最後の最後には彼女と一緒に思い出した

 

 だから、もう二度と同じ時間を繰り返すことなどなく、

 たくさんの思い出を胸に、彼女はこの世界を生きている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ごうごうと、風がうなりをあげている

 ごうごうと、地の果てから聞こえてくるような声が響いてくる

 

 そんな荒れ果てた野を、彼女はゆく

 向かう先には数えきれぬほどの白き魔獣

 魔女の代わりに現れた、新たな呪いの姿

 

 けれど彼女がそれに怯えることはない

 ただまっすぐに前を向いて、力強い足取りで歩んでゆく

 

 なぜならば、彼女の向かう先には、きっと『彼女』が待っているのだから

 そう約束したのだから

 

 髪を結ぶリボンにそっと手を触れて、

 唇を小さく噛みしめた

 

 やがて彼女の背から力の奔流が噴き出す

 暗黒色のその翼は、まるで堕天使の翼のごとく

 それが広がり、じわじわと世界を侵食していく

 

 ふと、足元に影が差して、彼女は上を見上げた

 

 そこには、彼女とは別の堕天使が優雅に空を舞っていた

 まるでこちらを挑発するかのような飛び方

 

 彼女の眉が顰められる

 面白くなさそうな顔で、けれど、口許にはわずかな笑み

 なにかを口にしようとして――

 

 

 

 

 

「――――――」

 

 

 

 

 

 彼女たちは、その背に、『彼女』の存在を感じ取った

 

 

 

 ――――ああ

 ――――ええ

         

 ――――だからきっと、私はどこまでも戦える 

 ――――だからきっと、私はどこまでも戦える

 

 

 今度こそ、永久に、永遠に

 『彼女』にもう一度会うことができる日がくるまで

 

 彼女たちは、戦い続けるのだ

 この世界は彼女の望んだ、自分達が守るべき世界なのだから

 

 ふわりと彼女の身体が浮いて、

 空へと飛翔する

 

 ふたつの影が荒野に影をつくる

 そうして彼女は、彼女たちは呟くのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界に――――――」

 

            「――――――幸あれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――これは彼女たちのはなし。

 自分のことが大嫌いだった、彼女たちのはなし。

 

 

 

 

 

 

 

 

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