普通にゲームしてたら、なんか空閑遊真のブラックトリガー拾いました。 作:詠海だよ
急に展開進みます。すみません。
「……ふぅ。上手くいったな」
メダルを回収しながら溜息をつく。
今回は初見殺しが上手くハマったからすんなり勝てたが、次回はこうも行かないだろう。
新しい策を考えなきゃな。
『これからどうする?もうメダルは十分なほど集まったが…』
「そうだな。金メダル4枚も取ったら十分だろ」
むしろ4枚も持って歩き回ったら危険だ。何かの拍子にポックリ逝ったら悲しすぎる。
「レプリカ、海とか川とか近くにないか?」
『川は少し遠いが、海は近いな。南にまっすぐ15分ほど歩けば海だ』
「よし、行くぞ」
『…?海に行って何をする気だ?』
そんなの決まってるじゃないか。
「遊ぶんだよ」
結局暇になったなぁ。
「ぷー…なかなか釣れないな…」
『待つのも釣りの醍醐味らしい。気長に待とう』
というわけで、海で釣りだ。
せっかくだし自分で釣った食材で料理でもしようかと思ったのだが、釣れない。
始めてからもう30分たったが、成果は小ぶりの魚が五匹だけだ。
場所が悪いのか?
「はぁ…結局暇なことに変わりはないか……うおっ!?」
暇を嘆いていると、突然ものすごい力で竿が引かれる。
「ぐおお………!これは大物だぞ…!レプリカ、頼む!」
『了解だ。
印によって強化されたSTRで竿を思いっきり引く。
「うおりゃあぁぁぁっ!」
……
魚がデカかったから?ノン。そもそも魚ですらなかった。
ではバカデカいゴミを釣ったから?ノン。ていうか 、VR空間の海にゴミって捨ててあるのか?
オホン。ともあれ、だ。僕が驚いた理由は───
釣り上げたやつが人間だったからである。
それも、見てくれが完全に某アニマルフォレストの村人だったからだ。
「な…!?」
べちゃりと地面に叩きつけられた村人は、すぐに起き上がると。
「いやー、助かった。キミが助けてくれなかったら絶対溺死してたわ。どうもあざっす。…って、前回イベント1位のユキちんじゃん!」
「…ユキちん!?」
思わず絶句する。お、おいおい…このネーミングセンス、まさかコイツ…
…僕のリア友に、僕のことを『せっちん』と呼んでくるやつがいる。
声もヤツに似ている。こ、これは…
「ワイはソンチョー、よろしく!」
「あっ、あぁ…僕はユキだ。よろしく」
握手の為に手を差し出すと、すぐさま手を取りブンブン振りまわしてきた。なぜか一人称が《ワイ》だが、このノリはヤツだ!
「ん?んー…」
「…どうした?」
「なんかキミの声、聞いた事あるんだよ」
「…前回イベントの中継で聞いたんじゃないか?」
「…ワイ、前回イベント見てないんだけど」
「なんでさ」
さてはお前、途中の映像全部すっとばして結果だけ見たな?
「むーん………」
顎に手を当ててじっくりとこちらを観察してくる。
見てくれが村人だからちっとも知的には見えないが。
「……まぁいっか」
いいのかよ。適当だな。
それからは何故かコイツも一緒に、たまにくるプレイヤーを瞬殺しながら釣りをしていた。
もう4日たった。暇だ。
「あ゛ー…なぁユキちん…」
「なんだよ」
僕とソンチョーはすっかり打ち解けた。
まぁ、釣りしたり料理したりしかしてないけど。
「ひま………」
「それね。なんか面白いこと起こんないかなぁ…」
そうなんとなくぼやく。
正直さっさとイベント終わって欲しい。
「あ、そーいやさ」
「およ?」
ソンチョーに聞きたいことがあったんだった。
「お前メダル集めなくて良いの?」
「…………………………………あっ」
はい、お疲れ様でーす。忘れてましたねコイツ。
アホが、と口に出してソンチョーをイジっていると…………
「おー…今度は海かぁ…本当このフィールドは広いなぁ」
「色々あって面白いね!」
「……!ユキちん!なんかメイプルっぽい声が!」
…………………………は???????
「………嘘だろ」
嘘だと言ってくれ。
面白いこと起こんないかなとか言ったけどこれは全く面白くない。ナメてんのか、潰すぞ。
たしかに暇ではなくなるけどコイツらが来るくらいなら暇の方が5000万倍いい。
そして悲しきかな、ここは隠れる場所がない。
「!!………ユキさん!」
メイプルがこちらを見つけて臨戦態勢に入る。オイやめろ、入るな。
「あれがユキさん…か。って、何かもう一人いるけど…」
お前もだよ。嬉々として武器構えやがって。
「ユキちん、どうする」
……落ち着け。
落ち着け、落ち着け。
まずは現況を整理。
相手はメイプルとサリー。
メイプルに関してはスキルが追加されていなければ毒耐性があるから最悪ゴリ押せる。
しかしそんなことは問題じゃない。
メイプルの最警戒ポイント。余計な場面で無駄に勘がいい。
僕が気にしているのは、自分が
別にバレても何もないじゃないかって?バカを言うな。
何も思われてないなら良い。
だが僕はメイプルに…恨まれて?いや、違うな。……『倒したい』と思われている。
それが現実世界で響いて接し方が変わるのは面倒極まる。
次にサリー。
いや、戦いたくない。
やだよ。だって明らかに手練れって感じだし。あと洞察力もあるし。
でもな……見た限り装備は短剣。ステは恐らくAGI特化。そうなるとソンチョーよりは僕の方が相性いいだろうし…
「ソンチョー」
「なんだ」
互いにいつでも動けるような体勢をとりながら、小声で会話する。
「毒耐性の数値は」
「大」
「OK。僕が分断する。メイプルの相手は任せた」
「りょ」
短い会話だが、十分。
「あとは…レプリカ、子機を」
『了解だ』
レプリカの体からかなりミニサイズのレプリカが現れる。
ご存知、ミニレプリカだ。
通信、援護などなど。色々できる。
「危なくなったら呼べよ」
「そっちこそ」
半笑いで軽口を叩く。
そして。
大きく息を吸い、吐く。
「来るよ、メイプル」
「うん!」
「
僕が地面を蹴った、その瞬間。戦いが始まった。
「メイプル!こっち!」
「わかった!【カバームーブ】!」
即座に横移動したサリーの指示で【カバームーブ】を使用し、サリーの下へと瞬間移動するメイプル。
だがユキにとって、それは読めていた。
「レプリカ!」
「
レプリカが設置した
「くっ…!【カバー】!」
「う…おおッ!」
しかし咄嗟に大盾を突き出したメイプルによって防がれる蹴り。
しかし、ユキにとっては防がれても防がれなくても、どちらでもよかった。
ユキはすぐに後方へ離脱。【
「ナイスメイプル!」
「こっちの番だよ…!【毒…」
「────動くな」
そうユキが言い放つと、複数の鎖がメイプルに巻き付き、動きを止めた。
「なっ…なにこれ!?」
魔力で出来た鎖で相手の動きを制限する、遊真のブラックトリガーに搭載されている機能の1つ。
(蹴りはこれが狙いだったか!)
サリーは遅まきながらユキの狙いに気づいた。
「
ユキはメイプルが繋がっている鎖を思い切り引っ張り、手に持った鎖ごとメイプルを放り投げた!
「行け!」
「任せろ!」
メイプルがすっ飛んでいった方向に向けてソンチョーが猛ダッシュ。
メイプルはソンチョーに任せて、ユキは。
「…さて」
「あなたと戦ってみたいと思ってましたよ。あなたの戦いを見た時から、ずっと」
「そいつはどうも」
僕は戦いたくなかったよ、と心の中で毒づきながらもも構えるユキ。
「
飛び蹴りを放つ。当たったと思ったユキだったが、サリーだったものは空気に溶けて消えてしまった。
「…!いいね、コレ」
「最初はみーんな同じ反応するんですよ」
「はっ、抜かせ」
「なっ…!」
着地した瞬間に、振り向かず右腕で鋭い肘打ち。
こんな対応をしてきた人物をサリーは初めて見た。
なんとか短剣をクロスさせ防御し、後ろに飛び退くサリー。
しかし。ユキが放ったのはただの肘打ちではない。
「うっ…重っ!」
サリーが左手に持っている方の短剣に、大きい重しがついていた。
左手の剣をストレージにしまいながら、サリーは心の中で分析を始める。
(たった一合で手数を減らされたし、初見で【蜃気楼】に対応してきた…やっぱり相当強い…!)
「
息つく暇もなく、サリーに向けて緑色の弾丸が放たれる。
「ッ!」
それをなんとか回避するサリー。
だが、紙一重の回避の中で一瞬。隙ができた。
たかが一瞬。されど一瞬。その一瞬の隙を、ユキは見逃さない。
「
サリーの体の中心、胸の部分に拳を突き出すユキ。
サリーの装備は防御に特化していない。
ユキの拳が直撃すれば確実にサリーは死ぬだろう。
だが、サリーには。
もはや人間技ではないレベルの回避がある。
「!?」
「まだですよ…!」
なんとサリーはユキの拳を後ろに倒れて躱した。
崩れた体勢からの回避。尋常じゃない技量だ。
「ちっ…」
確実に倒したと考えていたユキは右腕に反撃を食らった。
右腕をプラプラ振ってみると、まだちゃんと動いた。
「女の子の胸を触ろうとするなんて、いけないんですよ?」
「ほざくな。お前の胸なんぞミリ単位も興味ないね」
(ハァ…さて、どうしたもんか)
サリーの異次元の回避力。流石にあそこまでやるとはユキも考えていなかった。
『ユキ』
「どうした、レプリカ」
『ソンチョーがピンチだ。攻撃が通らない』
「了解、っと…
レプリカから経由してソンチョーを強化するユキ。
(まぁ、素の状態でメイプルにダメージ入るわけないよな)
「よそ見してないでください、よ!」
「おっと」
サリーの斬撃を躱し、後ろに大きく飛んで間合いを取る。
しばしの膠着。その間にユキは思案する。
「さて、どうしよう」
『相手から近づいてきてはくれるが、回避力が凄まじいな。…もう一度作戦を練ろう。この相手は、意識の外から攻めなくては勝てない』
「そうだな。でも都合のいい障害物なんてないし…」
『いっそソンチョーに加勢するか?』
「それもありだな。でもな…」
なおも思案する。
なにが最善か、見極めるために。ユキは考える。
(メイプル一人なら時間はかかるが倒せる。でもサリーがいたら【カバームーブ】を使ってくるよな。
つまり、このままの状態でソンチョーに加勢はダメだ。となると…)
「……レプリカ、子機を残してソンチョーの所に行け。メイプルを片付けろ」
『心得た』
小さい声でユキが指示をすると、レプリカは子機を出してから、ユキの下を離れていった。
「あれ、ミニになった。レプリカは?」
「察しろ」
サリーの問いかけに面倒くさそうに答えるユキ。
サリーはユキのその態度に辟易したかのように顔を顰める。
「あなたっておしゃべり嫌いですか?」
「相手による」
「そうですか、それは良かったです。あと、なんかあなたの声スゴい聞いたことがあるような気がするんですけど…」
「全くもって心当たりがない。勘違いじゃないか?」
分かっていると思うが嘘である。
正直に言ってユキの中には心当たりしかない。
「まぁいいですけど。現実世界がどーのとかは今関係ありませんし…ね!【超加速】!」
サリーが仕掛ける。
加速し接近するサリーに対し、ユキは
下がりながら防御。攻撃は無理には仕掛けない。
「あっれ、レプリカ本体がいなくなった途端に消極的ですね!」
「これも戦略。悪いけど付き合ってもらうよ、アイツがメイプルを倒すまで。この泥試合に!」
「アハハッ、申し訳ないですけどね。長引かせる気はないですよ!」
「やってみろよ。口ではどうとでも言える」
互いの表情は一見対照的だったが、
サリーは、燃えるような熱に浮かされた笑顔を顔に浮かべた。
ユキは、冷静さの奥に静かに燃えるような炎を持った表情を浮かべた。
「じゃあ遠慮なく───【ダブルスラッシュ】!」
「【超加速】」
ユキは冷静に、サリーの二刀から放たれる斬撃を加速して躱す。
すると、ミニレプリカが彼に話しかける。
『分かっていると思うが、正面からでは分が悪いぞ』
「分かってる。…仕込みは…まぁ万全とは行かないけど。勝つぞ」
ユキの言う───泥試合が、始まった。
伏線(笑)は張った。お粗末すぎて見てらんねぇ。
次はソンチョー視点かな?