ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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つまり狐娘が出る。後は言わなくても分かるな?


Pandemonium
修学旅行は京都か……


「修学旅行は京都か……」

 何故高校生にもなって京都なのか。普通は九州近くまで行くだろ。

「京都といえば寺社仏閣の集まる土地だ。半分以下が悪魔であり、各勢力のブラックリスト入りしている俺にとってはある意味鬼門なんだが……」

 京都に行ったら袋叩きされてもおかしくない。

(最低限の礼儀として九尾の御大将には手土産持ってご挨拶に行かねば。さすがに京妖怪全体と敵対するのは厳しい)

「修学旅行かー……積立金払っていなければ行ったりしないのに」

 

 

 

 数時間かけて新幹線で京都に到着した。泊まるホテルの名前は『京都サーゼクスホテル』。……グレードの割に格安な訳だ。

「それにしても、俺の部屋は一体どこなんでしょうね?」

 クラスの人数が奇数なので、二人部屋しかないこのホテルでは、俺みたいな奴が一人余るのだ。

「お、ここか……何故に引き戸」

 他の部屋とやけに様式が違うのだが。和式と洋式ぐらい。

 扉を開けると、そこに広がるのは昭和の香漂う八畳間の空間。

「何故わざわざここだけ違う部屋にした」

 この方が値段が高く付くだろ。

「まあいいや。和室万歳」

 他の部屋は豪華過ぎて居心地悪いからな。

 

 お茶を淹れて和んでいると、部屋の扉が引かれた。

「あ、イッセーじゃん。何、お前もここの部屋なの?」

「ああ、そうだけどこの部屋は……」

「いい部屋だと思うけど? まあ、これで他の奴らと同じ値段ってのはちょーっと納得いかないかな?」

 帰ったら職員会議に乗り込もう。

「まあ、お茶でも飲んでゆっくりするといい」

 備え付けのポットからお湯を持参の茶葉に入れた急須(きゅうす)に注ぎ、そこから持参の湯呑に注ぐ。

「どうぞ」

「あ、ああ……」

(既に自室のような寛ぎっぷりだ……!)

 イッセーが何故か驚いていると、そこにロスヴァイセさんがやって来た。

 ロスヴァイセさんはイッセーに何かを耳打ちしてからため息を吐いた。

「早くアザゼル教諭を見つけないと……」

「ああ。それでしたらこれをどうぞ」

 懐からモニターが付いた黒い携帯端末を取り出す。

「アザゼル先生に先ほど発信機を付けておきましたので、これで捜索できます」

 よく居なくなる人には鈴と首輪を付けておきましょう。

 

「そうだイッセー、伏見稲荷に行かないか?」

「お、いいな。アーシアたちも誘って行こうぜ。朧も行くか?」

 ふむ。伏見稲荷大社の主祭神は宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)だったな……。つまり稲荷神だ。

「付き合おう。少々狐には用事があるからな」

 

 

 

 さて、伏見稲荷大社に来たのはいいが、目の前には狐に似た魔除けの像があった。

(……無理矢理押し通るか)

 少しオーラを増大させると、魔除けの像の力と中和される。

(この状態を続けるのは良くないので、早々に要件を済ませて立ち去ろう)

 イッセーたちに一言断りを入れて一足先に稲荷山の頂上にある古ぼけた社にたどり着いた。

「さて、お顔を見せて頂戴、子狐ちゃん?」

 社に五百円硬貨を投げ入れてそう言うと、目の前に巫女装束を来た金髪に金眼の少女が現れた。その少女は狐耳と狐の尾が生えている。

「確か……九尾の御大将、八坂の娘、九重(くのう)だったかな? これ、つまらない物ですがお土産です」

 異空間に仕舞い込んでいた東京土産を九重ちゃんに手渡す。

「あ、これはどうもご丁寧になのじゃ――ではない! 貴様、余所者であろう。母上をどこへやった!」

 母上というのは九尾の御大将のことだろうな。

「残念ながら私は存じませんよ? 私は単身で九尾の御大将を(かどわ)かすのは不可能ですよ。趣味じゃないですし」

「趣味の問題なのか!?」

 当たり前だ。

「あなたでしたら、七難八苦があろうと(さら)えるのですが」

 膝を曲げて九重ちゃんの頬に手を当てた。

 その時である。周りの林から烏天狗と狐面の神主が大量に現れて俺を袋叩きにし始めた。

「痛っ、痛い! まだ何もしてな……ああっ、すいません! しません、誘拐はしません、しっかり返しますから! え、駄目? 可愛いんだから少しぐらい俺にも愛でさせろ!」

 ん、本音が出たか? まあいい。

「というかいつまで俺は殴り続けられるんだよ!」

 いい加減頭蓋骨がミシミシ鳴り始めたので結構危険だ。群がる烏と狐共を力尽くで振り払う。

(この場合の打つ手は……!)

 いつの間にか遠ざかっていた九重の近くにするりと近寄り抱き抱えた。

「近寄るなー。近寄ると…………どうしようか?」

 こんな可愛い子に傷つけるとか有り得ない。あったら俺が月に変わってお仕置きする。

「それじゃー……初めて(ファースト)でもいただきましょうか」

 後ろからだと抱き締め難いので、向かい合う姿勢に変えて顎をちょいと持ち上げる。

(俺もまだだし、丁度いいかもなー……)

 相手の年齢は余り気にしない。

(まあ冗談だが――二割ほど)

 そして俺と九重の顔の距離が十センチを切り、さて止めようかと思った瞬間、二本の木刀が額に突き立った。

(ゼノヴィアとイリナか……キリスト教では幼児愛禁止だったっけか……?)

「あくまでもB以上はする気は無い!」

 あ、叫んだら意識が――。

 

 

 

 気がつくと縄でグルグル巻きにされて宙釣りにされていた。

 周りを見るといつもの面々と九重を始めとする妖怪の皆さんがいた。

「じゃ、こいつ引き渡すから和平な」

「ちょっと待てや堕天使総督。何人様を売ろうとしてんだ」

「チッ、後少しだったのによ」

 それで成立するのか和平。

「仕方ない。和平のためならこの身を喜んで捧げよう!」

『お前が言っていいセリフじゃねえよ!!』

 総ツッコミが来た。

「ただし扱いは相応の物を求める! 具体的には九重のか――ゴホンゴホン」

「……あいつ、貰ってくれね?」

「お断りします」

 和平は失敗したようだ。

 

 

 

「ふむふむ。九尾の御大将を拐える者の心当たりですか。それなら『禍の団(カオス・ブリゲード)』英雄派でしょうね。他に適役も敵役もいないので」

 身の安全を確保するために情報を売る。まあ悪くない。いや、悪いか。

「奴らなら九尾の御大将に利用価値を見出だしたかもしれませんし、この京都に隠し、捕らえ続けて置けるのも奴ら以外にいません」

 (ひとえ)にとある神滅具(ロンギヌス)のおかげなのだが、まあそれは言うまでもないだろう。

「で、九尾の御大将の居場所は?」

「知りませんよ。ただでさえ仲悪いんですから」

 知ってたら今すぐ襲撃かけるわ。

「心当たりはありますけど」

「何だと?」

「ヒント、異空間」

「ヒントになってねえよ」

 ある意味では答えである。

「他に何か知ってる事は?」

「無い」

 そう言ったら舌打ちされた。

「もう用は無いから火炙りにしようぜ」

 アザゼルがそう言うと、狐耳の生えたお姉さんたちが縄で縛られて宙吊りにされている俺に狐火を近づけて来る。

「熱い熱い。炙られるなら九重希望――!」

「奴には絶対近づけるな。汚染されるぞ」

「人を何だと思ってるんだ!」

「危険人物」

「否定できない……!」

 悲観に暮れていると狐火で火炙りにされる。

「熱い熱い、焦げる焦げる」

「さっきから緊張感に欠けてるよな。もっと、こう……」

 下に可燃物が敷かれ、そこに狐火が点火され、アザゼルが光の槍で縄をチクチク突いてくる。

「マジで危ないな。――(すい)、消化」

 下に魔方陣を展開してそこから水を出し、狐火を消す。

「やっていい事とダメな事があると思います」

「だから、お前が言うな」

 そのセリフは聞き飽きた。

 

 

 

 

 その後縄での拘束を脱し、裏京都と呼ばれる異空間から逃げ出す。

「ふぅ……流石にどこぞの誰かの俺の知らん所でやった事でやられてたまるか」

 自分でした事の責任を取るのかと言えばそうではないが。

「やれやれ、修学旅行に来たのにそんな気分では無くなってしまった」

 元からエンジョイする気でもないが。

「ホテルに帰るのも面倒だし……そこらでゴロ寝でもしよう」

 風邪? ほら、よく言うじゃない。何とかは風邪ひかない。誰が煙だ! あれ、何か混ざった。

「ま、いいや」

 さて適当な寝床でも探そうと思った時、近くに小型の通信魔方陣が現れる。

『朧さん、今大丈夫ですか?』

「んー、大丈夫だよルフェイ。どうかした?」

『それが、英雄派の方々が監視を送ってきて……』

「……ああ」

 ヴァーリが怒ったな。

「で、仕返しするの?」

『はい。今幹部の方々は日本の京都に出向いているそうです』

「あー……今の俺も京都だな」

 よし、嫌がらせする言い分ができた。

『それで、もう少し後で私もそちらに行きます』

「それじゃあ、宿はこっちで取っておくから。ああ、ところであいつらの食事はどうするの?」

 あいつらの中で料理ができるのはルフェイだけである。

『二三日程度なら作り置きで大丈夫だと思います』

「それをどこに置いておく気だ?」

 お前ら根無し草だろうが。

『朧さんの家の冷蔵庫をお借りします。レイナーレさんには許可を取ってます』

「うん、もう諦めた」

(……早めに改築しよう)

 そう固く心に誓った。

 


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