ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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さっき? そんな昔の事は忘れた!

「く・た・ば・れ、死神(グリム・リーパー)~~~ァァァ!」

 一誠がドラゴンブラスターで二つの結界装置を吹き飛ばし、イリナとゼノヴィアがルフェイと共に助けを呼びに行くために転移し、さあ開戦だというところで、朧がアザゼルの開けた大穴から天高く飛び出し、落下の加速力をつけて駐車場の舗装された地面を粉砕する勢いで、数多(あまた)の死神を叩き潰した。

 

「お前、さっき戦わないってたじゃねえかよ!」

 自身も飛び出したアザゼルが黒い十二枚の翼を広げながら叫ぶと、朧は自身が作り出したクレーターの中央で仁王立ちして、こう言った。

「黒いからキャラが被る!」

 ドン!という効果音が背景に見えそうな宣言に、アザゼルが絶句した。それだけで上空数十メートルからダイブしたのかよと。それだと世界の相当数を敵に回さないかと。

 そんな朧を見て、死神たちが怯え始めた。漏れ聞こえてくるのは三年前とか黒いだけで滅ぼされたという言葉。それだけ聞いたらもう十分だった。

「三年ぶりの死神狩りだ………懐かしいな」

 朧が三年前に冥府を襲撃していた事は、紛れもない事実だという事を、その場の全員が理解した。

 皆が朧をもう嫌だこいつと思いながら見る中、朧は足元に転がる死神の大鎌を片手で一つずつ拾う。

「相変わらず趣味の悪い。俺が持てば大抵のことは覆い隠されるからいいけど」

 朧の持つ大鎌に黒オーラが伝わり、その姿を包んで一回り大きな、漆黒の大鎌へ変化した。

「さて、レッツダンシング」

 朧は大鎌を持った両腕を広げ、くるくる回りながら死神を(ほふ)り始めた。その姿はまるで漆黒の独楽(こま)。触れれば立ち所に切り裂かれる斬殺玩具。

 死神たちもこれには堪らず、その刃が届く前に我先と空へと舞い上がる。

 空を飛ぶ術を持たない朧には手の出し様がないかと思えたが、朧は慌てず、回転の勢いを乗せた大鎌を二本とも投擲(とうてき)した。

 朧の円運動を代わりに行うかのように激しく回転する二本の大鎌は、元々の持ち主の同輩たちを両断していき、どこかへと飛び去った。ブーメランではないので戻ってくる事はないだろう。

 それを投げた朧といえば、回転しすぎたせいか、フラフラして倒れた。

 それを隙だと思った死神たちが鎌を振りかざして上空から襲い掛かる。現在の朧の状態だと、死神の鎌が掠っただけでも命の危険がある。

 リアス、朱乃、木場が援護するも、死神の数が多いため、結果として数体の死神が朧をその鎌の間合いに捉えた。――それは逆に言えば、朧の間合いに自ら近寄った事になる。

 前のめりに倒れていた朧の頭部に幾本もの鎌の刃が振り下ろされたとき、倒れて身動きひとつしなかった朧が急に起き上がる。

 朧が起き上がったことで鎌の刃はアスファルトを貫き、それを保持する死神たちの動きを制限する結果となった。

「死・ん・だ・振・り♪」

 死神の絶句する気配を感じ取った朧は、そう言うと同時に死神たちを回し蹴りで胴体を真っ二つにした。

 周りの死神が粗方一掃された事を確認した朧は、オーフィスを閉じ込める結界装置と、それを守護するゲオルグを見据え、突撃する。

「させないよ!」

 音を超える速度での突進は、横合いから振るわれた剣によって中断させられる。

 普通の刃なら高めたオーラと突進の勢いで逆に破壊する事まで可能なのだが、今の剣は並大抵の剣ではなかった。

「魔帝剣グラム……ジークフリートか」

「悪いけど、あの装置を壊させてあげるわけにはいかないんだ」

 そう言って禁手化(バランス・ブレイク)し、五本の魔剣と一本の光の剣を構える。

「悪いと思うならさっさとくたばれ。世界のために」

 相変わらず自分の事を棚に上げた発言をしながら、朧は影から霞桜を引き抜く。

「君に言われたくはないな!」

「自分で言うのもなんだが同感だ!」

 二人の刃が交錯する直前、朧の近くに大威力の攻撃が着弾し、朧を結構な勢いで吹き飛ばした。

 

「痛、っ~! 一体誰の仕業だ! 事と次第によっちゃただじゃ済まさないぞ!」

 派手に吹き飛ばされ、地面に頭を打って数秒気絶した朧が叫びながら立ち上がる。その身に纏うオーラは荒々しくうねっており、相手はただでは済まないだろう事が簡単に予想できた。

「我」

「なら良し!」

 まあそれも、オーフィス以外に限った話であるが。

「いいのかよ! 上から見てたら十メートル以上は吹き飛ばされてたけどそれでいいのかよ!」

 死神を光の槍で薙ぎ払いながらアザゼルが叫ぶと、朧はそれにドヤ顔を返す。

「オーフィスになら何をされても構わない」

 これも愛の為せる(わざ)だろうか? 一歩間違えると被虐趣味者(マゾヒスト)だが、朧にその()はない。

「でも体中が痛いから少し休憩入ります」

 オーフィスの攻撃を至近で受ければ無理もない。ちなみに、その直前まで対峙していたジークフリートはゲオルグによって庇われ、今は木場と剣士同士熱い戦いを繰り広げている。

 

 朧は乱戦をくぐり抜け、敵陣の奥深くからホテル近くまで戻って来ると(道中で滅びの魔力や雷光が流れてきた)、アーシアからの回復のオーラが飛んできて体の傷を癒される。

(さて、どうしたものかな……)

 肉体的には回復したものの、体力までは回復していない朧は、激しく鼓動する心臓が落ち着くまでの間、現状の分析を始める。

(あちらは最上級死神プルートを始めとして、死神の団体さん200名ほどがご到着か。雑兵はいくら居ようが関係ないが、プルートは厄介だな)

 肉体とか精神とか寿命とかがレッドゾーンな今の朧では、最上級死神相手に無傷で勝つことは不可能であり、今の朧にとっては軽傷ですら致命傷である。

(現在はアザゼルと戦ってもらってるけど、負けたら抑えが効かなくなるかな。団体の方も万全に倒すには後五分ほど回復したい所だが……)

 戦闘中にそんな余裕は無い。

(いざとなったら、自滅覚悟でこの空間ぶち破るか……?)

 朧が最後の手段を検討していると、耳を疑うような言葉が聞こえてきた。

「先生! 歴代の先輩たちがリアスの乳を次の段階に進めようって言ってるんだ!」

 朧の脳裏に、かつてあった、今ではほとんど精神外傷(トラウマ)になっている出来事が思い浮かべる。

「……俺、帰ったらオーフィスに白羽と雪花を心行くまで抱き締めるんだ」

 朧は今ある光景から目を逸らすべく、(うずくま)って耳を塞いだ。

 

 なお、この台詞(セリフ)は俗に、死亡フラグと称されていた。

 


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