魔女の遺影 作:魔女ξ紳士
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あたまおかしくなる
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猫モドキがくる
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食事いっぱいする
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猫「あと一人で願い叶えるよ」
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「兄…さん?」
幻影か、それとも死へと誘う天使か。
彼女を閉じ込めていた屋敷の庭を模した空間。そこで彼女は今日も新たな『お客』を歓迎するため椅子に座ってじっと待っていた。
白銀の髪が風によってやわらかく揺れている。その姿は見る者を魅了することだろう。
悪魔との契約により多くの魂を捧げてきた少女だがそれはひとえに『愛』を求めたが故だ。
その行為を恨むことはできど誰も彼女を貶すことはできない。
なぜなら、それはあまりにも不幸にまみれた少女の唯一といってよい小さな『願い』だからである。
願いは報われる。
魔法とは魔女の家の力であり、屋敷の主たる彼女の一部である。
森へと迷い込んだ人間を察知した彼女はすぐさまその存在を魔法によって見通す。するとなぜだか懐かしい雰囲気に身を包まれた。
初めに訪れたのは困惑。だが、その存在の確信と共に小さな感情などは吹き飛んだ。
あれは兄だ。確かに兄だ。
急いで立ち上がりそのもとへと向かい走る。
足を一歩二歩と動かすごとに遠くに見える人のシルエットがどんどんと大きくなり、それに呼応するように胸が高鳴っていく。
やっと、やっと、やっと…!
――!
やはり兄だった。ゆっくりと近づき目の前に立つ。わずかに震える腕を抑えながらも相手の腰へと伸ばし抱きついた。
暖かい。拍動する心臓を感じながら本当にこれが夢でもなく現実だということを認識する。
『…』
兄は何も言わず佇んでいる。
「わたし、愛を貰うために…」
零れる断片的な想いを紡いでゆく。
「でも、兄さんがいるなら、もう…」
冷たい視線。哀しい同情。呪詛の声。
でも、ようやく、ようやく私はこれで―――『サラ』
「…?」
『大丈夫だ。大丈夫だよ』
落ち着かせるような優しい抑揚の声で私にささやく。
「兄さん…あのね、私、私頑張ったんだよ…?」
『あぁ…サラは偉いな』
そう、私は…頑張った。だから、もう…
「それでね、それでこの家にみんなを―――」
『知ってるよ…知ってるんだよサラ』
家での『思い出』を兄に伝える。だが、それを拒むように兄は言葉を遮った。
「でも…どうしてそんな」
――哀しい顔をしているの?――
『それはね…多分大きすぎたんだよ』
何が大きすぎたというのだろうか。首をかしげ、思考するが答えは見つからない。
「…どういう意味?」
『サラ』
私の問いかけに返答は無く、帰ってきたものは私の名前のみ。
「…?」
『ごめんね』
何がそこまで兄を苦しめ顔を哀しく歪ませているのだろうか?
どうして、何を私に謝っているのだろうか?
ねぇ、どうして…?
「別に謝らなくても―――」
視界が歪み、最後に入ったのは最愛の人が大きく振り上げる片手剣だった。
ΨΨΨ
「それで、その魔女の最後はどうなったの?」
それはきっと…最愛の人を想いながら幸せに死ねたのだろうか。それとも裏切られたと哀しく恨み死んでいったのだろうか。
「もちろん。殺したよ」
「………? それは魔女が死んだっていうこと?」
「違う違う。彼女はね、そんなことで倒れるような人間ではなかったよ」
倒れるような人間ではない? 黒猫はまるで魔女が生きていたかのように話している。ではさっきの話とはどういうことだったか。
「一体何を言っているの?」
「あれ? 言ってなかったっけ。彼女の願い」
『愛が欲しい』それが先の魔女の…いや魔女全体の願いではないのだろうか。
「愛を得ることでしょ? 幸せに包まれて死んだのではなかったの?」
「彼女はね…最後に愛を受け取ったし、僕はしっかり渡したよ? でも断られたよ」
「どういうこと?」
「そもそも受け取る気なんて無かったのか、それとも願いが変わったのか…」
「……」
黒猫は私に反応することなく語り続ける。適当に聞き流そう。そう考えたとき、黒猫はようやく一呼吸置き、
「彼女は最後の一人として、愛する兄を殺したよ」
とつぶやいた。
一瞬その言葉の意味が理解ができなかった。
愛している人を? 自分の手で? 何のため?
「どうして、魔女は兄が来たから止めたんじゃなかったの?」
「違かったよ。むしろ最愛の人ですら生贄として信じて待っていたのかもね… 彼女は代価を支払い終えてどうしたと思う?」
「…わからないわ」
「ほらほら! 身近にあって君が僕の次にお世話になっているやつだよ!」
何がお世話だ、迷惑でしかない猫の皮を被った正真正銘の悪魔のくせに。
こればかりは昔の魔女もきっと同意してくれるだろう。
でも、そう考えるとするとやっぱり…
「魔法…? 」
「そう、大正解! 彼女はね…魔法になることを選んだんだ」
代価をすべて払い終えた魔女は黒猫に頼んで自らが魔法になることを選んだようだ。
でも
「どうして魔法なの? …それじゃ愛は貰えないじゃない」
「彼女にとっては受け取るだけが全てじゃなかったみたいだね」
私の初めての『食事』を祝福した家のあの包み込むような感覚、もしかして彼女は…いやきっと、愛を与える側になりたかったのかもしれない。
「そう、だから彼女は―――
『魔法』になったのね」
「そ」
END
彼女は哀を与える側へとなりました。
私の中の『魔女の家』という世界を完結でき大満足です
少しでもお楽しみ頂けたならば幸いです