切り裂き魔の商品が出品される裏オークション会場に入る条件のうち、身分を明かさないというものがありました。シーラさんはやけに目立つドレスを着込んでいました。
何故か自信ありげな彼女に「お前もどうだ?」と聞かれましたが遠慮しておきました。今の私はいつもの三角帽子とローブを脱いでシャツとスカートだけの格好に、目のあたりを隠す仮面被っただけの状態です。
払いたくもない入場料を払って裏オークション会場に入って赤いシートの座席に座ります。費用はシーラさん持ちです。
どうやらここは昔はオペラ座として利用されてたらしいです。今は人形を手に入れるために気合が入っているのか鼻息の荒い人たちでいっぱいなのでお洒落な雰囲気が台無しになっています。
「…………」
「どうしたきょろきょろして……ああ、幼馴染を探してるんだろ。大切だもんな?」
私が辺りを見渡していると隣に座っていたシーラさんが揶揄ってきました。
「静かにしてください怪しまれますよ。私は切り裂き魔がいないか探してただけです」
「ぷっ。切り裂き魔を探す?顔も知らないのにか?しかも見つからなくて寂しそうな顔をしている奴が何を言ってるんだ。ふふ、もっとマシな嘘があるだろうに。あーやべえ、面白すぎて笑いが抑えられ――あっははは!」
「……勝手にしてください」
カイの位置なんて指輪に魔力を込めれば分かることなのでそんなことするわけないじゃないですか勝手に想像しないでくださいこちらの顔を見てにやにやしないでください。
「あたしが悪かったって。だからそっぽ向くなよ。ほら、そろそろ始まるぞ」
シーラさんがそう言うとステージ上に一人の男性が現れてオークションの注意事項やルールについて説明し始めました。商品を購入するのが目的ではないので軽く聞き流しておきました。
今の私は切り裂き魔をぶっ潰すことしか頭にありません。ついでに夜闇の魔女もやれないでしょうか?
説明が終わった後は等身大サイズの人形がいくつか競られ、大金で落札されていくのを見て、それだけあればしばらくはパン食べ放題だなーなんて考えていると徐々に周囲が騒がしく(元々騒がしかったですが)なってきました。
「さあ皆さんお待ちかね!これが!今回の!目玉商品です!」
男性の声に合わせて登場した人形は先ほどまでと違って一般的な大きさの小さい人形でした。その人形は私が泊まった部屋に置いてあったものと同じドレスを着ていました。というか同じ人形です。昨日見た時と唯一違うのは髪です。金髪から艶のある美しい灰色の髪に変わっていました。
人形を見て客たちはさらに湧きあがり、その騒がしさで鬱憤が溜まっていきます。
「シーラさん。ここにいる人たち全員始末してもいいですか?いいですよね?」
「まあ落ち着けよ。イライラしたっていいことないぜ。あとここにいる人たちの中にあたしも入れてないよな?」
切り裂き魔からの出品であることを紹介された後に競が始まりました。我慢の限界が来た私は杖を取り出したところでようやく彼が現れました。
「そのオークション、ちょっと待った!」
突如聞こえた大声に客たちは一度ざわつきましたが後方から足音が聞こえて皆一様に振り返りました。
「なかなかどうして、こんなオークションに大勢集まるのか分からないな、吾輩には」
「ええ……」
歩いてきたのは執事服の上にマントを着て黒い手袋やシルクハットを身に着け、顔には以前見たサングラスではなく顔全体を覆う真っ白い仮面を被った黒髪の青年でした。あの時の衝撃は凄まじかったのでその姿を憶えてます。考えるまでもなくあれはカイです。
彼はそのままステージ上まで上がり、人形の前まで来たところで男性が彼と人形の間に入りました。
「何をしている!一体誰だお前は!」
「吾輩か?吾輩は怪盗ネコキャット!本日はこのくだらない人形を頂戴しに来た!」
「そんなことさせるもの――」
「うるさい」
「おわああっ!」
彼に掴みかかろうとした男性はステージの外に投げ出されました。尻もちをついていましたが怪我はなさそうです。
「……あれお前の幼馴染じゃね?」
「……まあ……はい」
「何やってんの?」
「もしかしてですけど身分を隠してるんじゃないんですかね」
「このオークションに入る条件の一つのか。あいつってあほなのか?それともクソ真面目過ぎて壊れたか?」
「きっと何か考えがあってあんなことしてるんですよ」
恐らく、大方、多分。
「おい、目を逸らすな。現実をしっかり見ろ」
「ま、まあ彼が何をするか見ていましょう」
「今度は話を逸らそうとするな。はあ……なんだか保護者の気分だぜ」
巧みな話術によってシーラさんの気を彼の方に逸らした私は安堵の息を漏らしながら再びステージの方を向きます。
「くだらないってなんだ!」「そう言って人形を独り占めするつもりだろう!」「この素晴らしさが分からないの!」「帰れ!」
人形を侮辱されたことで怒った客たちは彼に向かって様々な言葉を浴びせます。
「言いたいことはそれだけか!」
彼はそんな言葉に物怖じすることなく客たちを見やりました。
「怪盗を名乗ってるのに予告状は出してないのか!」「怪盗ネ……えっと何だっけ?」「センスのない田舎者!」「都会は初めてかー?」
「…………む?」
おや、風向きが。
「クソださ仮面!」「安直なキャラ付け!」「色が少ない!」「お前の人生の色と同じかー!」
「…………」
ステージの端の方に座り込んでしまいました。えええ……。
「メンタル弱いなー、あいつ」
「普段は悪口とか滅多に言われませんからね。慣れてないのでしょう。保護欲が掻き立てられますね」
「いや別に」
そんなことを話していると立ち直ったのか彼は立ち上がってまた前に来ました。
「貴様らが何と言おうとこの人形はくだらん!無論、製作者もな!さあ出てこい切り裂き魔!どこかで見ているのだろう?」
切り裂き魔に正体を現すよう促しますが当然のこのこと出てくるはずがありません。
「貴様がその気ならそれはそれでいい。こちらの用事を済ませるだけだ」
彼は懐から布を取り出して人形の隣に置き、杖を出して人形に魔法を掛けました。人形に植えられた私の髪は人形の頭から離れて布の上にふわりと着地しました。時間逆転の魔法を使ったようでした。
彼は大事そうに私の髪を布で包んで出した時と同じように懐に仕舞いました。そして髪のなくなった人形を持って客たちに見せつけます。
「吾輩は思う!何故人間の髪を使う?人形は人間を象って作られた物である。一般的にその材料は磁器であったりガラスであったりと人間の一部を使用することはない」
客からの罵詈雑言が飛んできますが今度はへこたれる様子はありません。
「それも当然だ。そんなものを使わなくても素敵な人形は作ることはできる!髪だってそうだ!職人が苦労しながら作った人形用の髪の毛を使った人形はこの人形の数十倍も素晴らしかった!」
彼も物を作る人なので言いたいことがあるのか言葉に熱が入っていますね。
「人形の髪は人形に合わせて作られるものだ!人間の髪を使うなどただの妥協でしかない!確かに植えられていた髪は美しいものだったがこの人形には不釣り合いだ!貴様ら客とこれを作った切り裂き魔には分からないだろうがな!」
客たちの彼を罵る声は次第に小さくなっていきました。そして最後に言い放ちます。
「切り裂き魔!貴様は人形師としては三流以下だ!」
さっきまであんなに騒がしかったオークション会場は静まり返り、私やシーラさんも含めて誰一人として動こうとしません。
もしかしたら切り裂き魔はここにいないのではないかと考え始めた時のことでした。未だにステージの上で客席を見回している彼の背後からハサミを持った人形が襲い掛かりました。
「甘いッ!」
彼は振り向きざまに短剣を投降して人形を破壊しました。背後からの奇襲など彼には効くはずありません。
「酷いことするなあ。ボクが頑張って作った人形なのに」
後ろの方から女性の声が聞こえてきました。振り返ると私たちが昨日訪れた人形店の店主さんが柱の陰から現れました。
「ほう。貴様が切り裂き魔だな?」
「そうだよ怪盗さん。それにしても三流以下だなんて言われたのは初めてだよ。ボクとしてはそこいらの人形師に負けない腕前だと自負しているんだけどねえ。人形も一つ一つ愛情を込めて作っているよ」
「だが貴様は他人から髪を奪ってそれを売っていた。その時点で人形師失格だ」
「だけどここにいる人たちは皆ボクの人形を求めて来ている」
「そうだな。全員まとめて人形を愛する資格なんてないな」
「……やれやれ。どうしても君はボクを認めたがらないんだね。これ以上この話を続ける意味はなさそうだ」
おお。カイと店主さんこと切り裂き魔は睨み合っています。バチバチに睨み合ってます。カイの方は仮面のせいで目が見えませんが多分睨んでます。
「君が懐に仕舞った髪を返してくれないかな?あんなにも美しい髪に出会うことなんて滅多にないからね。ちゃんと人形の材料として使ってその人形が誰かの手に渡るところを見たいんだ。だから大人しく返してくれるなら命までは取らないでおいてあげるよ」
「何を偉そうに言っている。この髪は貴様のような犯罪者のものではないだろう。盗人猛々しいとはこのことか」
そうだそうだ。その髪は私のですよ。……私は犯罪者じゃないですよね?
「いいのかい?ボク実は魔女なんだよ。多少は腕に覚えがあるようだけど君が挑んで勝てるような相手じゃないよ!」
切り裂き魔は魔女でしたか。なら同じく魔女である私が寝込みを襲われても仕方のないことですねそうですね。
カイが一緒の部屋にいてくれたらこんなことにはならなかったんですかね。今度からは同じ部屋に泊まるようにする……?いやでも……むむむ。
「そうか。ところで何故人形を闇オークションに出品する?お金はいらないんじゃなかったのか?」
「ん?お金は本当にいらないよー。闇オークションの儲けだって――」
パァン、と銃声が響き渡りました。音の発生源を見てみるとカイの片手には銃が握られていました。切り裂き魔が喋っている最中に撃ったようです。容赦がないですね……。
撃たれた切り裂き魔はというと、流石は魔女というべきか一瞬で杖を取り出して防いでいました。
「ふふん。そんな攻撃じゃボクには届かないよ。とは言えいきなり撃たれたのはびっくりしたなあ。もしかして怒ってるの?ああ、怒りで歪んだ君の顔が見たい!その仮面を取ってボクに見せてよ!」
「断る」
「なら無理やり見ることにするよ!」
今度は切り裂き魔の番のようです。彼女が杖を一振りするとこのオークション会場にある人形全てが彼女の周囲に集まり、ふわりと浮いてカイを見つめていました。
そして彼の方へ杖を向けると人形たちが次々に飛び掛かります。
「――ッ!」
危険だと思ったのか隣に座っていたシーラさんが立ち上がろうとしていたのを私は手で制しました。
「おい。自分が今何してるか分かってるのか」
「当り前じゃないですか」
このままだとたくさんの人形に動きを封じられて何もできないまま嬲られてしまうのは想像に難くありません。もしかしたら殺されてしまうかも。
けれどそれは彼が弱かった場合の話です。彼は強いです。それは私が保証しましょう。以前物だらけの国で彼が私のことを信じてくれたように、私も彼のことを信じます。
「はあ……。そんな顔されたら何も言えねえよ。……しばらくは見守るがこれ以上は命に係わるとあたしが思ったら今度こそ止める。それが大人としての責務ってやつだ」
「はい。それでお願いします」
カイは両手に銃を一丁ずつ持って襲い掛かってくる人形を一体一体正確に素早く撃ち抜いていました。銃は彼が作った魔道具なのか弾切れする様子は見られません。そのおかげで彼のもとまでたどり着く人形は一体もいません。
「……保護者ってのも楽じゃないな。何しでかすか分かったもんじゃねえ。まああたしも人のこと言えた義理じゃないか」
シーラさんって怖そうな雰囲気がありますがなんだかんだ面倒見がいいですよね。後輩に慕われるタイプですねきっと。煙管をやめるとか目つきや口調を柔らかくすればもう少し人気が出るんじゃないでしょうか。それが彼女の魅力なのかもしれませんが。
いつの間にか切り裂き魔の周囲にいた人形は全てステージの上に転がっていました。
「ボクの人形を全部捌き切ってみせるなんて!君強いね!」
「もう終わりか?」
「まさか!」
切り裂き魔が杖を振るうと人形たちが起き上がりました。カイに撃ち抜かれた部分が元に戻っていくのが見えます。これも時間逆転の魔法ですね。
彼女はもう一度杖を振るって再び人形をカイへ突撃させました。今度は次々と発射する感じではなく一斉に飛び掛かりました。その様子は壁が迫っているかのようです。
「…………」
それに対してカイは銃を一発撃つのみでした。当然銃弾はたくさんの人形の内の一体にしか当たりません。
「おやあ。弾切れかな?それじゃあお終いに――」
その瞬間。人形の壁にできた穴から音もなく一本の矢が飛んできて切り裂き魔の杖を折りました。
杖がなくなったことで人形に掛けられた魔法が解け、重力に従って落下しました。障害物がなくなったのでカイは切り裂き魔に接近して彼女の首元に剣を突き付けました。勝負ありです。
「吾輩の武器は銃だけだと油断した貴様の負けだ。最後まで相手から目を離すな。まあ吾輩の弓を引く速さに貴様が反応できたか怪しいがな」
「ふふふ。油断してるのは君の方だよ。まだ終わって――」
「いや、終わりだよ」
切り裂き魔が何かしようとしたところで彼女の手に手枷が嵌められました。杖が握れないように指に鎖を通したやつです。いつの間にかシーラさんがステージに上がっており、手枷を嵌めたのも彼女のようでした。
「む。別に手助けはいらなかったのだがな」
「はいはい。お前の強さは分かったよ。正直あたしが想像していた倍は強かったぜ。あとはこっちでやっておくからお前は幼馴染のところに行ってやりな」
シーラさんはしっしっと手を振り、カイが切り裂き魔から離れたのを確認してから彼女を大きな籠で捕らえていました。
「ああ待って!その仮面を取ってボクに顔を見せて!お願いだから!」
「うるせえ静かにしてろ!」
騒いでいる二人を置いてカイがこちらに向かって歩いてきました。
「これを君に」
そう言って彼は懐から布で包まれた私の髪を差し出してきました。
「ありがとうございます。お礼にいいものを見せてあげましょう」
「?」
私は魔法で髪を元通りにし、ローブを着ました。
「では見ててください」
そしてローブの下から髪を掻き上げるようにふぁさーっとなびかせました。カイは以前に話した私の癖の一つであるこの仕草を見たいと言っていたので今回の報酬として見せてあげることにしました。
いくらお金を積まれても他の誰かにこの仕草を態々見せる気はありません。贅沢な報酬です。
「どうでしたか?」
いつの間にかカメラを持っていた彼に感想を聞きます。
彼は仮面を取って笑顔で一言。
「凄く綺麗だった」
それなら、よかったです。
●
俺が怪盗ネコキャットとして切り裂き魔を倒してイレイナに髪を返した後のこと。シーラさんは切り裂き魔を魔法統括協会の支部に送るためこの国を出発するというので俺たちは見送りに来ていた。
「ほら。こいつをやるよ。協力してくれたお礼だ」
そう言ってシーラさんは小さな袋を投げ渡してきた。そう言えばサヤちゃんの時もお礼を貰った記憶がある。
袋の中身を見てみると金貨が五枚ほど入っていた。
「あ、ずるい。シーラさん私にはないんですか」
「あるわけないだろ。お前はあたしの横で座っていただけだったじゃねえか」
「私は被害者ですよ。賠償金というものがありますよね」
俺の隣で金貨を見たイレイナが片手を出しながらシーラさんに自分のことを主張し始めた。自分だけ何も貰えないのは納得いかないのかそれともごねるだけごねるつもりなのかは分からないけど。
「いやそれは加害者が払うやつ。あたしが払うやつじゃねえよ」
「ならシーラさんに胸を馬鹿にされて傷付きました。慰謝料を払ってください」
「ならってなんだよ。しつこいやつだな……。まあその点に限ってはあたしが悪かったよ。これでいいか?」
シーラさんは片手で何かを弾き、綺麗な弧を描いてイレイナの手の上に着地した。どうやら金貨のようだった。
「一枚だけですか。本当はもっと欲しいところですがいいことにしましょう」
「それじゃああたしは行くぜ」
「あ、その前に写真を一枚いいですか?」
ほうきに乗って出発しようとしていたシーラさんを呼び止める。
「先を急いでるんだがな。まあいいぜ。あたしにも一枚くれよ」
「ありがとうございます」
俺とイレイナの間にシーラさんが入り、三人の全身が写るようにカメラの位置を魔法で固定してシャッターを切った。その場で写真を取り出して見てみると皆いい顔をしていた。……後ろの方で籠に囚われている切り裂き魔含めて。何とも言えない表情をした俺は同じような顔をしていたシーラさんに写真を渡した。
「……じゃあな。縁があればまた会おう」
「「はい!」」
魔法で籠を持ち上げ、ほうきに乗ったシーラさんは一度俺たちの方へ視線を向けた後、風のような速さで飛び立った。先の言葉通り急いでいたのか彼女の姿は米粒くらいの大きさになっていた。
「これにて一件落着かな」
「そうですね。けれど一つだけ分からないことがあります。何故あなたはあんな恰好をしていたのですか?変装をするだけなら私のように仮面を被るだけでも良かったでしょうに」
なるほど。イレイナは俺が正気なのに怪盗ネコキャットを名乗っていたのか知りたいようだ。隠す理由もないし教えてあげるとしよう。
「それはね、その方が楽しそうだったからだよ」
「…………はい?」
以前までは怪盗ネコキャットとして行動していた自分を恥ずかしいと思っていた俺であったが、最近は良い思い出だったなと思い始めたのだ。
いつもと違う自分というのもなんだかんだで楽しく、機会があればまたやっても良いなと考えていた矢先に今回の事件が起こり、変装する必要があると言われたので絶好の機会だと思った。
だからほとんどノリで怪盗ネコキャットになっていたので、髪を切られて怒っていたイレイナには少し悪いことをしたのかもしれない。もし気を悪くしたのなら謝らないといけないだろう。
「何と言うかその……。あまりストレスを貯め込みすぎないようにしてくださいね?いつでも相談に乗りますから」
……何か勘違いされているのだろうか。俺の答えを聞いたイレイナの顔は優し気だった。
勘違いを解こうとしても、「まあそう言うことにしておきましょう」と聞く耳を持ってくれなかった。悲しい。
「俺たちも行こうか」
「はい」
●
いつものように俺は地面を蹴って、イレイナはほうきで空を飛んで次の国へと向かっていた。
隣を見る。灰色の長い髪が風で揺れている。綺麗な髪だ。取り戻せてよかったと心から思う。
切り裂き魔は人形作りに情熱を注いでいたから油断していたところも含めて魔女としては強くなかったのかもしれないが、それでも魔女だった。一歩間違えていれば無事では済まなかったかもしれない。俺を鍛えてくれた師匠に感謝だ。
俺が怪盗ネコキャットとして魔女に勝ったのは今回で二回目。一回目の時は俺も相手もおかしくなっていた時のことだったのでどう判定すればいいか分からないが、今回は俺自身の意思と力で魔女に勝てた。そのことを誇ってもいいのではないかと思う。師匠には鼻で笑われるかもしれないけど……。
これからも魔女や魔女並みに強い相手と戦闘になることがあるかもしれない。相手は俺より強いかもしれないが、俺は負けるつもりなどない。そのための修行は今もしているし、今回で自信もついた気がする。
それと怪盗ネコキャットになって活動するのも楽しかった。またやりたいと思ったのをイレイナに話したところ、「やっぱり……」と呟いていた。勘違いを加速させてしまった気がする。
それにしても変な勘違いをするものだ。俺はイレイナと一緒にいるだけでストレスなんて綺麗さっぱりなくなるというのにさ。
カイは普段とは違う自分を演じることに楽しさを覚えてしまいました。もしかしたら今後も出番が……?