無職転生ss   作:理不尽なねこのて

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ルーデウス、シルフィが結婚してはや十年。
ルーデウスは何やら画策しているようです。

※本編終了後の話なのでご注意ください。


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結婚記念日~シルフィ編~

シルフィと結婚したのは俺が十六歳の時だ。

彼女は魔法大学で‟フィッツ”として俺と再会し、一年間も正体に気づかなかった鈍感な俺に愛想を尽かすことなく、添い遂げてくれた。

 

思えば、彼女と初めて出会ってから俺の人生は随分華やいだ。

ルーデウスとして生を得てから初めてできた友人、だが、それ以上に大切な存在として彼女と接してきた。

友達以上恋人未満とはまさにこのことをいうのだと当時はもどかしい気持ちになったものだ。

 

俺に世界の広さを教えてくれたのがロキシーなら、生きる目的を与えてくれたのは間違いなくシルフィだといえる。

魔法大学の学費を捻出するために両親に仕事を斡旋してもらい、五年間という長い間頑張ろうと思えたのも、彼女の存在があったからだ。

初めて、自分のためではなく人のために──彼女のために努力しようと思うことができた。

前世の俺では考えられない出来事だ。

 

結婚してから聞いた話では、彼女はアリエルの護衛を務める傍ら、俺のことも随分心配してくれていたようだし。

男としては頼りないこんな俺を、生涯のパートナーとして選んでくれたのだ。彼女には、感謝しなければ。

 

 

────

 

この世界には、どうやら結婚記念日という考え方はないようだ。

パウロとゼニスの時も、そうした催しがあった覚えはない。

となれば、結婚して十年経ったこのタイミングで行ってみるのも悪くないのかもしれない。

この世界に結婚記念日という概念が広まって不幸になる人もそうそういまい。

なにより、こういった概念を持ち合わせないシルフィには大きなサプライズになる。

...嬉し泣きさせてやろう。

 

 

早速、シルフィをエリナリーゼと食事に行くように仕向け、その隙に家族と相談してみることにした。

 

 

「──というわけで、今年は俺とシルフィが結婚して十年目だ。これを記念して盛大にサプライズパーティを催したい」

「結婚して十年目を祝うというのは斬新な発想だと思います。私としては、ルーデウス様とシルフィエット様が仲睦まじくしておられること以上に幸せなことはないと思いますので賛成です」

 

奥様も同様の考えでしょう、とリーリャは続ける。

一番の古株である彼女らの意見を尊重してか、それとも単純にめでたいという認識があるからなのか、反対意見は出ない。

そりゃそうか。

 

「たしかに、結婚して十年間一緒にいられるというのは、ルディの仕事を考えても非常に恵まれているといえるでしょう。日常の幸せを噛みしめる良い機会になるんじゃないでしょうか」

「そうね!二人が幸せなら、それに越したことはないもの!」

 

二人の妻からも同意を賜り、これで開催は決定だ。

料理の方はリーリャたちに任せるとして、俺はプレゼントの準備だな。

ありがたいことに、ロキシーとエリスもプレゼントを用意してくれるとのことだ。

子供たちにプレゼントを用意しろというのは酷なので、一人ずつ祝辞を述べてもらうことで合意が取れた。

気持ちがこもっていれば、一言でも十分だ。シルフィも理解してくれるだろう。

 

決行は二週間後だ。

 

 

────二週間後

 

最近、みんなの様子がおかしい。

ボクがおばあちゃんと食事をした次の日から、みんな急によそよそしくなった気がする。

その時は、ああ、酷い酔い方しちゃったのかな、なんて思ったりもしたけど、さすがに二週間も続くとなると疑ってしまう。

 

まずエリス。彼女は普段から我が道を行くスタイルだった。

グレイラット家の妻三人で定期的に行っている女子会では、ルディへの愛ならだれにも負けないと熱烈に語っていたし、

普段の生活でも白昼堂々ルディとイチャイチャしたりと、正直うらやましい場面も多かった。

だけどここ最近、そういった行動は目に見えて減っていた。特にボクが近くにいるときは顕著だった。

積極的にボクとルディが二人きりになるように譲ってくれたり、女子会でも極端に自分の話を控えるようになった。

これが本来のエリスなんだろうか、それとも、何かボクに気を遣うことでもあるんだろうか...

 

ロキシーは...普段から控えめなきらいがあったけど、近頃は一層ボクを立ててくれることが多くなった気がする。

シルフィはルディに愛されていますよ~とか、ルディはシルフィとするときは一層気合が入ってますよ~とか、ルディがいかにボクを愛してるか必死に説いてきてるようで、

それ自体は嬉しかったけど、正直恥ずかしかったな...

そんなこと言われなくても、ボクはルディのこと愛してるし、きっとルディだって同じだ。

 

ルディは、いつも通り、、かな?

いつもよりボクといる時間が多くなったこともあってスキンシップは増えたけど、それ以外はあんまり変化ないかな。

以前よりエッチになってる気はするけど...

あ、もしかしてロキシーの言葉はルディの性欲に気を付けてねってことだったのかな?でも求めて来てくれることは嬉しいんだけど...って何を言ってるんだボクは。

 

子供たちは紙に何か書いてはうーんうーんと首をひねっているし。

勉強で詰まったらロキシーに相談したらいいよって言っても、自分でやるって言って聞かないし...

こういう、一度決めたことは曲げないところはルディに似てくれてよかったと思うけど、少し心配だなぁ。

 

やっぱり、ボクが過剰に意識してるだけなのかな...

 

まあ、今日みんながいるときに聞けば解決するかな。

みんな最近様子が変だけど何かあったの~?って。そうだ、そうしよう。

とりあえず、今日はアイシャちゃんとリーリャさんに頼まれた買い出しがあるし、それが終わったら切り出してみよう。

 

え〜と、今日の買い出しは、、チーズとヨコ豆と〜…

 

────

 

「ただいま~」

 

 瞬間────

 

「「「「「「「「「おめでと~う!!」」」」」」」」」

 

「うわぁ!?」

 

ビクリとシルフィの肩が跳ねる。

 

「え、え?今日ってボクの誕生日...じゃないし、みんなどうしたの?」

 

シルフィは今も鳴り続ける盛大な拍手と喝采に戸惑いが隠せない様子だ。

よしよし、いい調子だ。

 

「まぁまぁ、今日の主役たちはこっちに座りなさい!」

「ちょ、エリス~!」

 

エリスに連れられ、シルフィは俺の横に着席させられる。

テーブルには、リーリャたちが腕によりをかけて作った料理が所狭しと並べられている。

シルフィも、今日が何か特別な日だということに気づいたようだ。

 

よし、ここからは、俺の出番だ。

 

「シルフィ」

「は、はい」

「今日は、俺とシルフィにとって特別な日だ。シルフィが、今日という日を特別なものにしてくれたんだ」

「ふぇ?え、ル、ルディ?」

「...俺たちが結婚して、今日でちょうど十年になる。この記念すべき節目に、シルフィに感謝の気持ちを伝えたいと思ったんだ」

「あ!そ、そっか。もう結婚して十年になる、のかぁ。ふふっ、ルディと一緒に過ごすのが幸せすぎて、一瞬だったよ」

 

目頭が熱くなるのを感じる。

いつもそばにいるはずの彼女が、こんなにも尊い存在だったことを、今更ながらに実感する。

...俺には過ぎたお嫁さんだ。

 

「シルフィ。いつもありがとう。これからもよろしく頼む」

「うん...!ボクも、ルディにはずっと、ずっと感謝してる。これからもよろしくね」

 

シルフィはそう言うと目に一杯の涙をためて破顔する。

ああ、懐かしいなこの表情も。彼女が勇気を振り絞って正体を明かしてくれた、あの時と同じ顔だ。

 

そっとシルフィを抱き寄せ、きれいな白髪の上から小さな頭をやさしくなでる。

今の俺にできるのは、彼女を受け止めてあげることだ。

 

「シルフィ、実は、みんなからシルフィに贈り物があるんだ」

「え...贈り物?」

「ああ、まずは、リーリャさんと子供たちからだな」

 

俺の合図でみんなは思い思いにシルフィに言葉を述べる。

 

お二人の幸せな姿を旦那様も喜んでおられますとか、ママみたいに素敵なお嫁さんになる!とか、パパには白ママがいないとダメだとか、白ママは自慢のママだとか言った具合だ。

子供たちの純粋無垢な言葉の数々に、さすがのシルフィも涙をポロポロこぼしている。

 

中でも、ララの放った言葉は俺とシルフィを号泣させるのに十分だった。

 

「おばあちゃんも喜んでる」

 

────!!ゼニスの言葉だ。ララが代弁してくれたのだ。

 

「ルディは小さいころからシルフィちゃんにゾッコンだったものね。シルフィちゃんも、ルディがロアの街に家庭教師に行ってから毎日、ルディを想ってウチに通っていたものね。

それから家族が離れ離れになって、まだ小さいノルンやアイシャを置いてパウロが亡くなったときはさすがに悲しかったけれど、

でもそれ以上に、自慢の息子が幼馴染と結婚して、かわいい孫まで見せてくれて、ママは嬉しいわ。

ルディ、シルフィちゃんを大切にしなきゃダメよ。もちろん、ロキシーちゃんやエリスちゃんもね。

シルフィちゃんも、ルディはパウロの血を引いているから、油断しちゃダメよ。

せっかく掴んだ幸せなんだから、離さないようにね。二人とも、応援しているわ」

 

言葉が出ない。ただただ、大粒の涙だけが俺の気持ちを含んで流れていく。

シルフィも、ロキシーも、ゼニスの隣にいたリーリャも、在りし日のゼニスを思い出して泣いていた。

 

「ありがとう、母さん。俺、みんな幸せにするよ」

 

必死に紡いだ言葉にゼニスは満足げに微笑んだ。

 

 

────

 

みんな十分すぎるほど泣いたのち、湿っぽい空気を打破するように、エリスが動いた。

こういう時、やはりエリスは頼もしいな。

 

「次は私ね!シルフィ、結婚して十年、おめでとう。これからも私たちで、ルーデウスを、家族を守りましょう!」

 

そういって差し出したのはブーツだ。

いささかエリスらしからぬチョイスだが、シルフィの好みに合った、華美過ぎず、機能性を重視したスタイルの物だ。

以前のように転移魔方陣であちこち回るようなときにはこのようなデザインがあっているのだろう。

そう考えると、エリスらしいチョイスと言えるな。

 

「ありがとうエリス!こんなに上等なブーツ、すごく嬉しいよ!」

 

シルフィの言葉にエリスは満足そうに頷いた。

なんというか、この二人には言葉にできない信頼関係があるように感じるな。

お互いの伝えたいことを今の一瞬で伝えきったのだろう。

 

「シルフィ、私からはこちらを」

「かわいい...!!でも、いいの?こういうのってすごく高いんじゃなかったっけ?」

 

ロキシーが渡したのは腕時計だ。

それもラノアでも有数の名工が立ち上げた有名ブランドの物だ。

おそらく、ラノア金貨にして三十枚は下らないだろう。

 

「はい、シルフィは私たち三人の中では対等です。もちろん私もそれは嬉しいことです。が、世間では貴方が第一婦人という立場になることは間違いないでしょう。

そういったとき、こういった物を付けていた方が面目も保たれるというものです。それに、デザインもシルフィによく似合っていますし。」

 

なるほど。たしかに、シルフィはアリエルとも深い関係にある。

俺の付き合いで社交界に出ることもあるだろうし、こういうものは一本あって困るものではない。

それにしても、、

 

「ああ、値段については気にしないでください。私の学生時代の友人が、昔のよしみで作ってくれたものなので。

それに、その友人は鉱神のもとで修行していたこともあるんです。品質は保証しますよ」

 

ロキシーはふふんと満足げに腕時計入手のあらましを説明した。

そういえば、友人に魔道具の製作者になった者もいると言ってたし、そんな友人がいても不思議じゃないか。

 

「...!ありがとう、ロキシー。大切にするよ」

「はい。そうしてもらえると嬉しいです」

 

そういってシルフィは腕時計をぎゅっと握りしめた。

 

 

...最後は俺だ。

 

この世界には、結婚をするときに指輪を送るという文化がないようだ。...少なくともミリス教徒には。

ならば、我が家の文化としよう。結婚して十年目には、夫婦の証として指輪を送ると。

 

「シルフィ、俺からはこれを」

 

俺はシルフィの前に膝をつき、純白のリングケースを開く。

そして、おもむろに彼女の左手薬指に指輪を着ける。

指輪は、シルフィの色である白の魔石を埋め込んだシンプルなものだ。デザインはオーバルストレートライン。

普段からつけるのだから、このくらいシンプルなものでいいのだ。

 

「ルディ、これは...?」

「結婚指輪、って表現した方がいいのかな。夫婦の証だよ。もちろん、着けても着けなくても、俺たちが夫婦であることに変わりはない。

普段着けても困らないようにできるだけシンプルなデザインにしたんだ。左手の薬指に着けるのは、古来からその指には夫婦の心を司る神が宿るとされているからだ。」

「夫婦の証、、そっか。ルディとおそろいの指輪かぁ、えへへ、すっごく嬉しいよ!ボク、ずっと着けてるから!ルディも、外しちゃ...ダメだよ?」

「ああ、約束するよ」

 

あ、でもお皿洗ったり、お風呂入るときは危ないから外そうね。

 

 

ロキシーとエリスも「おそろいの指輪」に反応したのか、うらやましそうにやり取りを見つめていた。

彼女たちの結婚記念品も、もちろん指輪にするつもりだ。

いつか、こっちの世界でも相手に指輪を渡すことが婚姻の証になったりするんだろうか。

 

 

「さあ、プレゼントも渡し終わったことだし、今日はみんなで楽しもう!」

 

料理はすっかり冷めてしまったが、一生に一度の最高の思い出を築けたのだ。

それだけでも、今日、この機会を設けて良かったと感じる。

 

 

この世界では、後悔の無いよう、全力でやっていくと決めたからな。

 

 

 

 

「でも、ボクばっかり貰っちゃったね、なんだか悪いなぁ」

 

えへへとシルフィが笑う。

 

「大丈夫さ、俺はこの後、シルフィをもらうから」

「///...もう!ルディ!」

 

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