無職転生ss   作:理不尽なねこのて

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生活の中で、ちょっとした伝染が嬉しかったりする。
それは家族の証明だから。


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嬉しい伝染

結婚して、早いものでもう一カ月も経った。

夢にまで見たルディとの新婚生活。

 

正直、毎日幸せ過ぎる。

 

 

ボクがアリエル様の警護で学校と家を往復することをルディは申し訳なく思っているみたいだけど、そんなの、全然大した問題じゃない。

アリエル様の厚意で放課後は毎日家に寄ることができるから、ルディと一緒に食事をとれるし。

むしろ、帰る家が在るって実感できて嬉しいくらい。

 

アリエル様はそんなボクを見て、

 

「ふふ、通い妻のようですね」

 

なんて冗談を言ってくるけど、今のボクはそんな軽口も余裕で聞き流せるくらい毎日が充実している。

 

 

────

 

 

「ねぇシルフィ」

 

警護が非番の日、いつものように二人で食事をとっていると、ルディがおもむろに口を開いた。

もしかして、美味しくなかったのかな...?

確かに今日は味付けを少し変えてみたんだけど...

 

「ど、どうしたの?」

「最近何か困ってることとか、やってほしいことってある?」

 

でた、この質問。

以前から、ちょくちょく言われたことはあったけど、結婚してからは頻度が増えた気がする。

こういうときのルディは大抵、ボクが仕事と私生活の間で苦労している、なんて思ってる、はず。

いっつも「大丈夫だよ、特に困ったりしてないよ」って言ってるのに...

まぁ、心配してくれるのは嬉しいけどさ、、、

 

「特にないよ、どうして?」

「そっか、いやほら、シルフィいつも仕事で張りつめてるからさ...」

 

ほら、やっぱり。

 

「...ルディ、ボク、そんなに疲れてるように見える?

 ボクは今の生活、好きだよ。すごく満ち足りてるって感じる。

 ルディが心配してくれるのは嬉しいけど、もう少し、ボクのこと信じてほしいな」

「そ、そうだよね...うん、ごめん。」

「それにボク、本当に辛いことがあったら真っ先に相談するのはルディだから」

「...そうだね!頼りにして!」

「うん。頼りにしてる」

 

でもきっと、ルディも手持無沙汰なんだろうなぁ。

だからこういう質問をしてくるんだと思う。

仕事から帰ってくるのを待つだけじゃ、辛いよね。

待たされる辛さは、ボクもよく知ってるから。

 

それにきっとルディは、ボクが過ごしやすい環境のために、あれこれ尋ねてくれてるんだろうし。

だったらいっそ、前々から思ってたことを言ってあげて、ルディにできることを増やしてあげる良い機会なのかもしれない。

 

「でもそうだなぁ、困ってること、ってほどでもないけど...」

 

うん、ここは愛しい夫のため、心を鬼にして言ってあげるのもボクの役目!

 

「前々から思ってたけど、ルディって────」

 

 

 

────数日後

 

 

「よし、掃除はこんなもんか」

 

玄関、寝室、キッチン、リビング、風呂、トイレ。

 

いつもよりも入念に、いつだれが来ても恥ずかしくないほど綺麗にしておいた。

しかし、こうしてみるといかに以前の俺が掃除できてなかったかがよく分かる。

 

 

[ルディって掃除、雑だよね]

 

 

最愛の妻からの一言は俺の意識を変えるのに十分すぎる威力を持っていた。

せめて普段使う部屋くらいは綺麗にしておこうと、シルフィが仕事で不在のときにせかせか大掃除をするくらいには。

しかし如何せん、二人で住むには屋敷が広すぎるな...

近いうちにこの問題も解決せねば。

 

っと、あとは洗濯物か。

 

基本的に、シルフィ不在時の洗濯は俺が担当する。

下着類も例外ではない、が、さすがに妻のいないところで嗅いだり被ったりなどといったことはしない。

そういうことは本人の前でする。それが紳士のマナーというものだ。

 

そんなことを考えながら洗濯物をたたんでいると、ふと気づいた。

 

そういえば、俺とシルフィ、服のたたみ方が違う...気がする。

すぐさま寝室に向かい、置いてあるシルフィのパジャマを確認する。

...やはり違う。

 

たしかに、冒険者生活が長かった俺と、王宮で暮らしていたシルフィとでこういった違いが出るのは自然なことなのかもしれない。

 

どうせならこの際、王宮仕込みのシルフィ式に揃えてみるか。

見栄えも良いし。

なにより、今まで俺がたたんでいた服をシルフィが文句の一つも言わずたたみ直していたと思うと、申し訳が立たないしな...

 

 

────

 

 

「「ただいま~」」

 

荷物を片手に二人で家のドアを開ける。

 

「おかえり~」

 

たったいま一緒に帰ってきたはずのルディが横でそうつぶやくのを見て思わず笑ってしまう。

 

「ふふっ、なんか良いね、それ」

「家族っぽいでしょ?」

「そうだね、家族っぽい」

 

帰りを待ってくれてる人がいるって、幸せだなぁ。

 

「じゃあ、ボク部屋に戻って荷物の整理だけしてくるから、食材はキッチンにお願いね」

「うん、わかった。あ、洗濯物は部屋に置いてあるから」

「ありがと~、助かるよ」

 

そう言って自室に戻り、明日の仕事のための荷造りを済ませようと、置いてある着替えに手を伸ばす。

 

あっ、たたみ直さなきゃ。

ルディのたたみ方はいかにも元冒険者らしいというか、できるだけコンパクトになるように意識されている。

それ自体を否定するわけじゃない。

でも、それだと服が伸びちゃうし、シワにもなりやすい。

 

ボクは王族の身辺警護をする立場にあるから、身なりにも気を付けなくちゃいけない。

だから、せっかくルディが用意してくれた服だけどいつもこっそりたたみ直している。

ごめんね、ルディ、、、って、あれ?

 

たたみ方が、、いつもと違う...?

ルディにボクのたたみ方が、

 

「伝染《うつ》ってる!?」

 

この前に言ったこと、気にしてたのかな...?

だとしたら嬉しい。

なんだか、ちょっぴり感動したよルディ...!

 

 

 

 

────その晩、食事中

 

 

「ねぇシルフィ、なにか良いことでもあった?」

 

あ、鋭い。

顔に出ちゃってたかな?

 

「うん!服に『うつってた』」

「えっ!色移り!?全然良くないよ、買い替える??」

「ふふ、いいの。色移りでもないから安心して」

 

 

この感動はボクだけで噛みしめておこう...

 

 

 

翌日、自覚のないニマニマ顔をアリエルに見せて全てを勘付かれるシルフィエットであった。

 

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