月の鏡   作:P.M.FF

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6話

 

先に出立したルナを追いかけるように機上の人となった

道中は特に問題なく、予定通り極東に到着し

今日はフォーゲルバイデ家の別宅に泊まる事になった

 

エルンストさんが娘を紹介したいと言ったことと

支部入りは明日なのでボクはお言葉に甘えることにした

 

エリナ「初めまして、

エリナ・デア・フォーゲルバイデです」

 

幼いながらも財閥令嬢として礼儀作法はバッチリらしい

 

リョウ「加賀美 リョウです」

 

エリナ「えぇ、知っているわ!

ルナの妹なんでしょう?」

 

先程の丁寧な口振りから一転、明るい声音

11歳という年齢相応の爛漫さが垣間見える彼女は

ニコニコと花の咲くような笑顔で話してくれた

 

エリナ「本部に行ってからは中々会えてないけど

よくエリックを通してお手紙をくれるの!」

 

なるほど、と頷きながら

出立前にルナから預かっていた便箋を取り出すと

一際嬉しそうな笑顔を見せ

早速、封を切るエリナを眺めながら

 

エル「相変わらずルナ嬢はマメだね」

 

と、にこやかなエルンストさんと共に

メイドさんが用意してくれた紅茶を啜る

 

会う前に聞いた話によると

病気がちな彼女は療養の為に

欧州よりは空気の良い極東で暮らしているそうだが

 

今日は元気そうで何よりだなと思っていると

 

エリナ「リョウの事も書いてあるわ!

それとこっちはお父様宛てみたい」

 

と、もう読み終えたらしく

いそいそとボクの隣にやってくるエリナちゃん

 

エル「おや、私にも?」

 

首を傾げるエルンストさんに

同封されていたもう1通を差し出したエリナは

先程から大切そうに両手で広げた便箋を掲げた

 

どうやら読み聞かせてくれるらしい

 

『拝啓、私の可愛いエリナちゃん

最近はいかがお過ごしでしょうか?

こうして筆を取る度に、4年前

寂しそうながら笑顔で見送ってくれた姿を思い出します

そちらに居るであろうお父様か

エリナちゃんと同じくらい可愛い私の妹、リョウから

もう聞いたかも知れませんが

近いうちに極東に赴くことになり

必ず迎えに行くという約束を

ようやく果たすことが出来そうで

お姉さんはとても嬉しいです

あの頃から成長したであろうエリナちゃんを

この目と身体で感じることが出来ると思うと

道中に蔓延るアラガミなんてへっちゃらなくらいです

一刻も早く、最愛の2人と睦まじく暮らす為に

お姉さんは頑張りますから

エリナちゃんとリョウは一足先に

仲良くしていてくれるといいな

待っていて下さい、今、逢い()に行きます

2人の妹をこよなく愛する姉、ルナより』

 

いや、ラブレターか?

以前ロリコンが云々言っていたが

お前のがよっぽど恐ろしいわ!

内心、全力で突っ込むボクの様子も気付かず

 

エリナ「ルナってお茶目よね!

大袈裟だけど気に掛けてくれてるのが分かるし良いお姉さんよね

リョウとも仲良く出来そうで嬉しいわ」

 

と、楽しそうなエリナちゃんはどうかそのままで居て欲しい

 

思わずつきたくなるため息を堪えて居ると

目の前でエルンストさんが先程受け取っていた別紙を

幾重にも丁寧に破り後ろにばらまいていた

 

エリナ「お父様、エリックと同じことしてる…」

 

さながら桜吹雪のような光景を眺めているボク達に

 

エル「読み終わったらそうしてくれと書いてあるからね」

 

と、満面の笑顔で告げるエルンストさん

その声に篭もる妙な凄みに身体が硬くなる

 

エル「ところでリョウさんに頼みたいことが出来たんだが

ウチの娘は絶対にやらない、と

ルナ嬢に一言一句違わず伝えて貰えるかな?」

 

穏やかな表情だが明らかにお怒りの様子に

思わず冷や汗を浮かべながら頷き

 

リョウ「必ずお伝えします…

ところで、さっきの…」

 

少し声を潜めて尋ねると、エルンストさんも同じく

エリナちゃんに聞こえないように

 

エル「…養子縁組の書類だったよ…」

 

それを聞いたボクは

今度、あの姉(レズ)の顔面をグーパンチすると心に誓った

 

 

-------------

 

ルナ「ハクチュッ…!!」

 

西欧の一地方

かつてはそれなりに栄えた街も今は廃墟と瓦礫の山

その中心に近いやや拓けた場で

先程、討伐し終えた蠍のような大型(ボルグ・カムラン)を眺めていたら

大きなくしゃみが出てしまった

 

埃っぽいからかなぁ…と思いつつ

 

ルナ「或いはリョウかしら…?」

 

なんて巫山戯ても単独任務だから応えてくれるものは無い

 

しかし大型とは言えこの程度で救援…?

なんて呆れそうになるのは

ワタシが激戦区(極東)出身だからか

各支部のレベルが落ちてきているのか

 

それとも裏に後ろめたい一物を抱えた()()()の差し金か

 

本部で予定の変更指示を受けた時

愚鈍な本部にしては早いなと皮肉を思い浮かべ

いざ、相対した任務の呆気なさと

そして最後に経由するのがロシアという事が

嫌に思考を働かさせてくれる

 

なまじ要らない事を抱えさせられてきたワタシには

引っかかる点が多過ぎて

出立前から色々と憂鬱な気持ちだったので

リョウに甘えたり、エルンストさんにイタズラを仕込んだり

気晴らしてから出発して来た

さっきのくしゃみはそのお陰かも知れない

 

なんてくだらない事を考えながら

手に持つまだ()()()()神器を無造作に後ろに向けて振るう

 

背後から飛びかかってきた小型の雑魚(オウガテイル)

大きく口を開いたままの()()()が前方に落ち

背後ではドサッと何やら()()()音がした

 

ルナ「調子は悪くない…」

 

確認するように呟く

 

この半年程、色々と調整して来た成果か

それとも適合率の高さゆえか

 

この、()()()()()()()()()()感覚に

恐らく後者だろうなとやや感心する

 

以前の形状から大きく()()()()得物を

しげしげと眺めるワタシを囲むように

次々と姿を現すオウガテイルの群れ

 

ルナ「食い意地がはってるのねぇ…」

 

目の前の死骸(ボルグ・カムラン)に寄せられて来たのだろう

コイツらは単純で()()()()()好感が持てる

だが、容赦はしない

 

先程のように飛びかかってきた1体を潜るように一閃

 

脚と胴体を両断されたそいつには目もくれず

身体を軸に先程の勢いを活かして振り回す

 

狙い通り側頭部に刃を突き立てながら

コマのようにグルリと回転し捕食形態に変形させる

 

回転の勢いで刃から飛ばした1体とぶつかり体勢を崩した1体

2体纏めて神器を喰らいつかせた瞬間に感じる高揚感(バースト)

思わず漏れる吐息が口元を歪に緩ませてくれる

 

ルナ「まるで死神ね…」

 

今の姿は、リョウ達には見せたくないな

無垢で綺麗なあの娘達には出来ればそのままでいて欲しい

その為に、ワタシが汚れるのは構わない

 

目の前のアラガミも、上で色々五月蝿い()()

まとめて薙ぎ払いたい衝動のままワタシは身体を躍らせる

 

さながら、マリオネット(操り人形)のダンスのように

ワタシは戦い続けた

 

 




何気に初の戦闘シーンでしたがいかがでしょう

コメディとシリアスの釣り合いが難しい…

色々と匂わせてますが
御付き合い頂ければ幸いです
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