月の鏡   作:P.M.FF

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7話

 

現在、最もアラガミの活動が盛んな極東

歴戦の猛者と呼べる精鋭の集うここ、アナグラで

出迎えてくれたのは朧げな記憶にあった女性だった

 

ツバキ「加賀美 リョウだな?

私は雨宮 ツバキ、階級は三佐だ

まだGOD EATERでは無いお前とは直接関係ないが

この支部のGOD EATERを纏めている

お前の将来に備え、訓練を施すように

お前の姉からも頼まれている

中々、時間が取れないかもしれないが

引き受けた以上は厳しく躾てやる

つまらないことで死にたくなければ

私の命令には全てYesで答えろ、いいな?」

 

ハキハキとした口調で告げられ

まずは部屋に案内するから着いてこいと踵を返す

凛々しい雰囲気の彼女を慌てて追いかけ

エレベーターに乗り込んだ

 

ツバキ「…大きくなったな」

 

小さく呟く声

大きく響く稼働音の中では聞き取り辛かったが

ボクは、過去のお礼を述べた

 

リョウ「あの時は、ありがとうございました

これから頑張るのでご指導の程よろしくお願いします!」

 

言い終えて決意と共に下げた頭に

優しく添えられた手

 

ツバキ「…私は特に何もしていないが

せっかく拾えた命だ、大事にしろ」

 

先程の厳格な雰囲気から

静かな優しい言葉

 

微かな懐かしさを覚えながら

到着した階層に足を踏み出すと

既にツバキさんはキビキビとした雰囲気に変わっていた

 

-------------

 

ツバキ「ここがお前の部屋だ

隣がお前の姉の部屋、向かいは私の部屋で

反対隣が橘の部屋だが…橘は覚えているか?」

 

ルナからボクの記憶について聞いているのか

少しだけ探るように尋ねられた

 

辛うじて思い出せたので頷く

橘 サクヤさん、確かあの頃はオペレーターをしていた方だ

 

ツバキ「そうか…皆忙しいが

ルナが居ない間、何か困ったことがあれば

私か橘に声をかけろ」

 

表情は厳格なままだが言葉は優しい

だが、すぐにハキハキとした口調に戻り

 

ツバキ「ひとまず、手荷物を置いて

筆記用具の類だけ持って来い

今後、お前の教育を手伝ってくれる方の所に連れて行く」

 

はい!っと元気に答えて急いで支度をする

手荷物から必要な物だけを取り分けて部屋を出ると

ツバキさんは廊下の奥を睨みつけていた

 

ツバキ「リンドウ…何をしている?」

 

ツバキさんのやや恐ろしい雰囲気に圧されかけていると

彼女の視線の先から男性の方がやってきた

 

アレ?この人…

 

リンドウ「いやいや、姉上

報告書を纏める前にちょっと飲み物を…と思いまして」

 

ツバキ「ほう…では今日は早くに提出出来るのだな?」

 

威圧的な笑顔のツバキさんと苦笑い混じりに頭をポリポリ掻く男

 

リョウ「リンドウさん…!」

 

ハッキリと記憶に浮かぶ人物に思わず声を掛けると

彼は少しだけ安心したような笑みを浮かべ

 

リンドウ「おう、久しぶりだな

あの時の()()もちゃんと覚えてるか?」

 

そう言って昔のように頭をやや強く撫でられる

 

思い出すのは、助けられた後

ルナと共に極東を立つ時にかけられた言葉

 

リョウ「死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そして隠れろ」

 

忘れる訳が無い約束をしっかりと口に出す

リンドウさんとツバキさんは優しい笑みを浮かべ頷く

 

リンドウ「今はまだそれだけを覚えておけ

お前さんが晴れてGOD EATERになった時は

約束じゃなくて命令として守ってくれ

4つめは、その時まで取っておく」

 

リョウ「はい!!」

 

-------------

 

リンドウさんと別れツバキさんに伴われて来たのは

ラボラトリと呼ばれる区画の1番奥の部屋

 

榊「やぁやぁ、待っていたよ!

私はペイラー・榊、博士と呼んでくれたまえ

フェンリル極東支部アラガミ技術開発統括責任者と

GOD EATER達の座学教官も務めている

キミの座学もこれから担当するからよろしく頼むね」

 

狐のように細い目を更に笑顔で細めながら

親しげに握手を求める博士

 

到着初日から、しかも上役の方から講義を聞けるなんて

緊張半分・張り切り半分なボクに

しっかり励めよ、と言葉を残し去るツバキさん

 

榊「少し待っていてくれ

今日、一緒に講義を受ける人達が来るから

適当にくつろいでいてくれたまえ」

 

にこやかな博士に促され

ソファの端っこに腰掛けること数分

 

?「「「失礼します」」」

 

声を揃えて入室して来たのは

ボクよりは少し年上に見えるが

明らかに若い少年少女の3人組

 

?「アレ?博士ー、この子誰っすか?」

 

榊「やぁ来たね、第1部隊のみんな!」

 

先と変わらぬやや大袈裟な振る舞いで

彼らを出迎えた博士はそのままチラリとボクを見た

 

多分、自己紹介しろってことだよね?

糸目って分かりにくいなとか思いながら姿勢を正し

 

リョウ「今日から榊博士にご指導賜ることになりました

加賀美 リョウと言います」

 

先の博士の言葉にあった、第1部隊

まだGOD EATERでないボクでも知ってる

極東支部の第1部隊と言えば恩人であるリンドウさんを筆頭に

数あるフェンリル支部の部隊の中でもエース格

精鋭部隊と言えるエリートの集まりだ

 

リョウ「未熟者ですが

先輩方のご迷惑にならないように頑張りますので

よろしくお願いします!」

 

まさか、こんなに若い人達だったなんてと驚き半分

緊張の余り普段以上に丁寧な言葉を使いながら

ややぎこちなく頭を下げる

 

コウタ「へぇー見たとこオレらよりも年下っぽいけど

しっかりしてんじゃん?

オレ、藤木 コウタ!よろしく!」

 

と活発そうな声音の黄色いニット帽を被った少年が

真っ先に手を差し出してくれたので握り返す

 

ユウ「はじめまして、神薙 ユウです

一緒に頑張ろうね」

 

続けて穏やかな声色でにっこり微笑みながら

両手を差し出して来たのは

フェンリル指定の制服を着こなしたロングヘアの少女

親しみやすそうな人で良かったと思ったのも束の間

 

アリサ「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです」

 

簡潔に言い終えてスタスタと反対側のソファに向かう

赤いチェックの帽子とスカートが特徴的な

白い髪色をした彼女はやや気難しい人なんだと思った

 

榊「さて、自己紹介も済んだ所で

早速今日の講義を始めようか」

 

タイミングよく切り出す博士の言葉に

それぞれソファに座る

 

端から、コウタさん・ユウさん・ボクが同じテーブルに着き

1つ離れたテーブルではアリサさんが既に博士を見つめていた

 

榊「今日の講義は初めましてのリョウくんに因んで

近々、新たに配属されることになった

()()()()についての話だ」

 

ボクに因んで?と首を傾げながら

新型神機と言えば()()()()()だろうと考えていると

博士はやや苦笑気味にこちらを見据えつつ

 

榊「新型と言うとユウくんやアリサくんにとって紛らわしいね

正式な名称はまだ決まっていないので

ここでは仮に新形状神機としよう」

 

その言葉に本部を立つ少し前に

家庭教師から教わった授業を思い出しつつ納得した

 

現在、一般的に使用されている神機は

刀剣から派生した3種類の近接型と

銃器をベースに発展した3種類の遠距離型の

大きく分けて2種類だ

 

この2種を組み合わせ遠近両用に対応した新型が開発され

数少ない適合者が極東に配属されたと言う話はボクも知っていた

 

チラリとアリサさん、続けてユウさんに目をやる

 

榊「先に配備された新型に続き

今回も新たに新形状神機を伴った部隊が

本部から派遣されることになっているんだが…

何を隠そうその1人がここに居るリョウくんの姉君だ」

 

なるほど、そういうことだったのか

極東に移転する前の約半年強

任務自体は時折あったし、何かと忙しそうだった割りに

本部から離れる仕事が極端に減っていた(ルナ)

次いで、極東に立つ前の最後の授業で

近い内にビックリするだろう

と笑っていた家庭教師(ダミアン)の姿を思い出し

ようやく合点がいった

 

榊「その様子だと事前に知識は持っているようだね?

では、リョウくんに少し説明してもらおうかな」

 

少しばかりイタズラっぽい口調で促され

ボクは慌てて家庭教師の最後の授業を辿り

口に出す作業を始めた

 

 




話数のタイトル変更しましたが
内容は変わってません

3/2追記
次話と同時間帯の内容を書き足しました
1度書いてみて余りにも長くなったので…

サラッと読めるように文字数は意識したいですね

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