それでも俺は進み続ける。   作:甘味の皇帝

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the final season Part1

「おーい……ここはあぶねぇぞ……」

 

叫びを上げる少年のいる場所から、新たな物語は幕を開ける────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視線の先に映るのは、空を自由に飛び回る鳥と大量の弾丸。

 

 

「飛んで行け…どこか…遠くに行け…せっかく羽根ついてんだから…」

 

 

周りに広がるのは血と死体の山。着弾で舞い上がる砂埃に、少年の左腕についてる"腕章"は薄汚れていた。

 

すると────、

 

「ファルコ!!」

 

ファルコと呼ばれる少年に向かって走ってきたのは、ヘルメットを被り、少年や周りに散らばる死体と同じ黄色い腕章をつけた男。

 

「生きてるのか!?オイ!?怪我は!?」

 

ファルコ「あれ?兄さん…どうしたの?その格好…」

 

「よし…掴まれ。口をきけりゃ上出来だ」

 

男はファルコにヘルメットを被せ、持ち上げる。

そして、

 

「クソッ…!」

 

ーガガガガガガガッ‼︎

 

降り注ぐ銃弾を背に走り出した。

 

 

近くを走る兵士たちは次々と撃ち殺されるが、間一髪というところで塹壕に到着。ファルコと共に飛び込んだ。

 

「ファルコ!」

 

「怪我を見せて!」

 

近くから駆け寄ってきたのは、ファルコと同年代くらいの子供たちで、全員が黄色の腕章をつけている。

 

「コルト状況は!?」

 

ファルコの兄コルトにそう聞いたのは"腕章"をつけていない男。

 

コルト「榴弾の直撃で前方のエルディア人部隊は吹っ飛びました…!!」

 

「塹壕は?」

 

コルト「これ以上掘り進めるのは無理です!!」

 

「無理?それは命令か?エルディア人が私に命令するのか?」

 

「オイお前!マガト隊長に何言ってんだ!!」

 

マガトと呼ばれる男の後ろにいた兵士が怒鳴る。

 

コルト「ですがこのままでは…」

 

〜〜〜

 

ゾフィア「酔っ払ったのファルコ?」

 

ファルコ「俺たちは…今何を…?」

 

ガビ「頭を打ったんだね」

 

ウド「俺たちが4年も戦争してることは覚えているか?」

 

三人は傷だらけのファルコの手当てを始めた。

 

ファルコ「あ?…あぁ…そう?だったな…」

 

ガビ「こりゃ一から作戦を説明し直さなきゃだね。耳だけ貸してなファルコ。4年続いた戦争だけど、今ようやく大詰めって場面なんだから」

 

真ん中にいる気の強そうな女の子、ガビが話し始める。

 

「このスラバ要塞さえ陥せば」

 

まあ、正確には要塞のすぐ下にある軍港の中東連合艦隊を沈めさえすれば、この戦争は私達マーレの勝ちってことなんだけどね。

 

ガビ「でもそのためには軍港の高台を守るこのスラバ要塞を押さえなきゃ軍港に攻め入るのは無理なわけ」

 

ゾフィア「マーレ海軍が海からやっつけてくれないのかな?」

 

ファルコ「うっ…」

 

ゾフィアがファルコの傷を消毒するが、その時に言った一言にウドが反応した。

 

ウド「ゾフィア!?お前あの海軍に何の期待ができるってんだよ!?」ギュッ

 

ファルコ「いてぇ!」

 

ウドがファルコの頭に巻いた包帯を締め付け始める。

 

ウド「制海権を奪うのに4年も掛けやがった無能の肥溜めだぞ!?それもあれだけあった戦艦を半分以上沈めてやっとの快挙だ!!そのくせ俺ら『陸』には一丁前に要塞ぐらい陥としててもらわないと困りますだとクソ野郎おまえぁぁぁああああああ!!?!」

 

ファルコ「いたあああ!!」

 

ガビ「ウド!!ファルコの頭を千切ろうとするのはやめな!!」

 

ウド「ああ…!!ごめん…ごめ…」

 

ファルコ「それで…俺たち『戦士候補生』が何でこんな前線に駆り出されてるんだ?」

 

ガビ「そりゃ見極めるためさ。私達の中から…次の戦士を。時期が迫ってる…マガト隊長は最終試験を最前線(ここ)に決めたんだよ。

次なる大局を見据えて……」

 

 

パラディ島制圧作戦の主力となる「鎧の巨人」の継承者をね────。

 

 

ガビ「一体誰が選ばれるだろうね」

 

ファルコ「なんだ?ガビ。まるで自分以外の比較対象が他にいねぇって口振りだな」

 

ガビ「だって他にいないでしょ?」

 

ゾフィア「まぁ私達とガビじゃね」

 

ウド「…今の所の成績じゃな」

 

ガビ「いいや成績じゃないよウド。いつも言ってるだろ?私があんた達と違うのは覚悟だよ」

 

"エルディア人の運命を背負い、私たちを苦しめるあの島の悪魔共を皆殺しにする覚悟だ"

 

"そしてこの世界に残るのは善良なエルディア人だけだと、この戦いに勝って証明する"

 

ガビ「私は負けない。私が収容区からみんなを解放する」

 

ファルコ「で、お前さっきから何してんだ?」

 

ファルコは、ガビが先ほどから弄っている物を見て言った。

 

ガビ「これ?いいでしょ」ニヤッ

 

〜〜〜

 

コルト「なぜですかマガト隊長…?」

 

我々歩兵の力ではあの機関銃の奥にある線路を破壊することなど到底できません。敵の塹壕は抜け目なく付け入る隙はどこにも…。

 

コルト「その状況に加え要塞からの支援砲撃もあります。このままここに留まっていてもいずれ榴弾が降り注ぐだけです」

 

マガト「何か考えがありそうだなコルト」

 

コルト「ここで"顎"と"車力"を放ちましょう。ガリアードとピークの二人ならやってくれます。一瞬でトーチカと塹壕の敵を殲滅できる筈です」

 

マガト「ダメだ」

 

コルト「…!?」

 

マガト「カードの切り方を間違えれば負けだ」

 

「マガト隊長。"奴"が現れました」

 

コルト「"奴"…とは?」

 

マガト「"奴"だ」

 

マガトは双眼鏡でスラバ要塞を見ながら言う。

 

マガト「装甲列車…の先頭と最後尾に計四門乗っかってる連合の新兵器『対巨人砲』だ」

 

あの150mmの口径から放たれる徹甲弾なら巨人を一撃で仕留められる。"九つの巨人"といえどな。

 

コルト「しかし…我らの巨人は二体共素早いです。とてもうなじを撃ち抜くなど…」

 

マガト「撃ち抜いたら?」

 

コルト「……我々は…巨人の力と戦士を失い、再び巨人の力を取り戻せる保証はありません」

 

マガト「そうだ。9年前から始まった『始祖奪還計画』が返り討ちに終わり、超大型と女型を失ったようにな」

 

マーレの軍事力は低下したと見做され、今日まで続く戦争の引き金となり、パラディ島計画は後回しとなったのだ。

 

マガト「我が祖国マーレを超大国たらしめるものは何だ?」

 

コルト「…巨人の力です」

 

マガト「そうだ…これ以上失えばこの国は維持できない。巨人の力は絶対であるあ。そうでなくてはならんのだ…エルディア部隊、突撃準備を急げ!」

 

「ハッ!」

 

コルト「ッ!マガト隊長…!!それは!!」

 

マガト「何だ?エルディア人?お前達はマーレに忠誠を誓った戦士だろ?我が祖国から栄誉を得るチャンスだぞ?ここにいる800人のエルディア人がだ」

 

お前達戦士候補生はここで待機。エルディア部隊800の突撃を持って何としてでも線路を破壊しなくてはならん。

 

マガト「あの装甲列車に要塞の周りをうろつかれている内は鎧も獣もここに呼ぶわけにはいかんからだ」

 

コルト「しかし…」

 

マガト「コルト。お前も獣を受け継ぐ身ならいい加減上に立つ者としての覚悟を持て」

 

コルト「ッ……」

 

「マガト隊長!!列車がこちらに向かってきます!!」

 

マガト「何?痺れを切らしてここを叩きに来たか……いいぞ。列車ごと破壊するチャンスだ」

 

ガビ「それ、私にやらせてください」

 

マガト「あ?」

 

ガビ「ジャーン!」

 

ガビは嬉々として束ねた手榴弾をマガトに見せた。

 

ガビ「私なら一人で装甲列車を無力化できます」

 

ファルコ「オイ…ガビ…」

 

マガト「お前らを鍛えるのに国がいくら費用を掛けたと思ってる?却下だ」

 

ガビ「確かに私はファルコ達なんかと違って逸材ですし、今後私のような優秀な戦士は二度と現れないでしょう。しかもすごくかわいいし。

ですが、私が成功すれば800人のエルディア部隊を失わずにすみます」

 

マガト「失敗すれば?」

 

ガビ「1人の有望な戦士候補生と7本の手榴弾を失います」

 

マガト「…」

 

ガビ「やはり…私に800人の兵士以上の価値があるとなれば仕方ありませんが隊長殿がもし…私を愛するあまり800の兵を捧げるということでしたら────」

 

マガト「わかった。行け」

 

ファルコ「ダメだ…ガビ…」

 

ガビ「必ずや私が鎧を継ぐに相応しい戦士であることを証明して参ります」

 

すると、ガビは突然服を脱ぎ出した。

 

ファルコ「ッ…///」

 

マガト「何をしている?」

 

ガビ「作戦成功のため、今だけ腕章を外すことをお許し下さい」

 

マガト「いいだろう」

 

そして、ガビは塹壕を飛び出して行った。

 

 

マガト「…コルト」

 

コルト「はい…?」

 

マガト「"あいつ"を呼んでこい」

 

コルト「ッ…!そ、そんな…確信も持てないままあんな奴を使うんですか…!?」

 

マガト「それを確かめる。(ガリアード)を準備させておけばいいだろう」

 

コルト「ッ…」

 

〜〜〜

 

ガビは機関銃を構える敵の塹壕に向けて歩いて行く。その存在に敵は気づいたが、ガビの姿を見て引き金を引くのを止める。

 

「オイ…誰か来るぞ。一人で…」

 

「女……?それも子供…投降しに来るようだ」

 

「いや待て。エルディア人かもしれんだろ!」

 

「しかし…様子がおかしい。足枷を引き摺っているぞ」

 

ガビが右足に巻き付けているのは手榴弾。敵に気づかれないために足枷風にしているらしい。

 

〜〜〜

 

コルト「…便衣兵は国際法違反ですが……」

 

マガト「目撃した敵兵が生きていればな」

 

ファルコ「あいつ…何でそこまでして…」

 

〜〜〜

 

「…近いぞ。きっとエルディア人だ。巨人化する前に撃て」

 

「バカ言え…やるならお前のライフルだろ」

 

機関銃を構える兵士は、隣にいるライフルを構えた男に言った。

 

「ハァ…クソッ…」カチャッ

 

男はライフルの照準をガビに合わせようとするが、すぐに異変に気づく。

 

「ん!?」

 

ガビはわざと途中で転け、バレないように手榴弾に手を伸ばす。

 

 

ガビ「まだ…まだ……」

 

ガビは足から手榴弾を外すと、装甲列車が目の前を通るのを待ち始めた。そして────

 

ガビ「ま…ここ…ここ──ッだぁ!!」ピシッ

 

ーブンッ!!

 

「「なっ!?」」

 

ガビは手榴弾の信管を外しながら、装甲列車の通る目の前に投げ入れた。

 

 

ードオオォンッ!!

 

装甲列車は線路から外れ、機関銃を向けていた男たちの元に落下した。

 

 

ガビ「ぎゃあぁはははははっ!!」

 

〜〜〜

 

「やりやがった!!」

 

マガト「今だ!!」

 

〜〜〜

 

「クソ…マーレの卑怯者共…だからお前らを…思い通りにさせてはならんのだ!!」

 

装甲列車が降ってきたが、間一髪で生き残った男は機関銃をガビに向けて撃ち始める。

 

ーガガガガガガガッ‼︎

 

〜〜〜

 

ファルコ「ガビ!!」

 

ファルコは塹壕から勝手に抜け出し、ガビに向かって走り出す。

 

コルト「よせ!!ファルコ!!」

 

ガビが地面の凹みに飛び込もうとした瞬間、そしてファルコがそれに覆いかぶさろうとしたその時、

 

ードオオォンッ!!

 

巨大な腕が二人を機関銃の弾丸から守った。

 

ガビ「こ、これは…何の巨人…?」

 

ガビとファルコを覆いかぶさるように守っているのは、5m級の巨人。

 

ファルコ「まさか…これが…」

 

ガビ「ん?」

 

ガビは、なぜか目の前にいるファルコに疑問符を浮かべるが、それと同時に二人を守った巨人は塹壕に向かって飛び出して行く。

 

「うわぁあ────ッ!!」

 

ーガガガガ ドオンッ!!

 

叫びを上げた男は、装甲列車ごと押し潰され、銃声が消え去った。

 

そして、巨人は塹壕とトーチカにいる敵兵を次々と潰して周る。

 

〜〜〜

 

「マガト隊長!エルディア部隊を突撃させなくてよろしいのですか?!」

 

マガト「…奴の力を確かめる良い機会だ。見せてもらおうではないか───『行使の巨人』」

 

 

〜〜〜

 

ここはスラバ要塞の上空を飛ぶ"飛行船"の中。

 

「装甲列車の沈黙を確認」

 

されど固定の対巨人野戦砲は要塞内にごまんと待ち構えているもよと心得よ。

 

「これより降下作戦を開始する。くれぐれも作戦通り────(ジーク)が矛となり(ライナー)が盾となるのだ」

 

飛行船の中には、獣の巨人の本体であるジークと鎧の巨人の本体であるライナー、そして体を縛られたエルディア人が大量に吊るされている。

 

 

ガビ「始まった…」

 

 

それらは次々と投下されていき、最後に残った二人は席を立った。

 

ジーク「おほんっ…スゥ…ウオォオオオッ!!」

 

 

ーカッ

 

 

ジークの叫びと共に、投下されていたエルディア人全員が巨人化。地上に向けて大量の無垢の巨人が降り注いだ。

 

 

ードオオォォンッ!!

 

 

地面についた巨人は、傷を負いながらも近くにいた敵兵を食い始める。だが────

 

ーダンッ!!

 

対巨人野戦砲がうなじを撃ち抜いていき、無垢の巨人を殺し始めた。

 

 

ライナー「質量爆弾の威力は十分……だが高度が高すぎた分、半分は落下の衝撃で死んじまった…対巨人野戦砲もまだ多く機能している」

 

28…29……

 

ライナー「位置と数は把握した。…しかし、また壁かよ。…壁はもう…うんざりだ」シャキッ

 

ーカッ

 

ライナーはナイフで手のひらを切って巨人化。

スラバ要塞の壁の一部を破壊しながら着地する。

 

「鎧だ!!殺せぇ────ッ!!」

 

ーガガガガガガガッ‼︎

 

ライナーは壁の上で構える対巨人野戦砲を次々と破壊していく。しかし、反対側に構えていた巨人砲が発射された。

 

鎧「ッ!!」

 

咄嗟に腕でガードしたが────

 

鎧「(…!!対巨人徹甲弾…俺の鎧も貫くか…)」

 

「装填完了!!()────」

 

ードオンッ!

 

鎧「(あれが行使の巨人か…!?)」

 

行使の巨人はライナーに向けられた巨人砲を破壊し、飛び上がる。そして────

 

ーカッ

 

包み込んだ光と共に先程まで5m級だった体は大きさを変え、今度は15m級の巨人に変化する。

 

鎧「(あれが行使の巨人の特性…)」

 

「売女の末裔共があぁあああ────!!」

 

そう叫んだ敵兵は行使の巨人の足に踏み潰され、スラバ要塞は制圧された。

 

〜〜〜

 

ジーク「もう制圧したのか…俺たちの敗北が招いた戦争だ、ライナー」シャキッ

 

ーカッ ドオンッ!

 

獣「戦争ってよくないよな」

 

ジークはそう言いながら、近くにあった対巨人徹甲弾を大量に握りしめ、要塞の下にいる中東連合艦隊を見た。

 

 

ウド「あぁ…これでようやく…戦争が終わる」

 

 

ーブンッ!!

 

ードドドドッ!!

 

ジークが弾を投げると共に、連合艦隊の一斉射撃が放たれた。

 

獣「……ええぇ!?」

 

だが、その攻撃は獣には届かず、代わりに二体の巨人が地に伏せられることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連合艦隊の壊滅を受け、中東連合はマーレとの講和条約を締結。

 

4年に及んだ戦争はマーレの勝利で終結した。

 

だが世界に巨人の力が全てを支配する時代は終わりつつあることを知られ、マーレは一刻も早く"始祖の巨人"を手に入れる必要に迫られた。

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