それでも俺は進み続ける。   作:甘味の皇帝

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the final season Part3

ファルコ「このままじゃダメだ…ガビが…『鎧』を継ぐ…俺がこのままじゃ…」

 

下を向いて歩いていたファルコだったが、ふと横を見ると、そこには病院があった。

 

ファルコ「…」

 

「オーイ」

 

ファルコ「!」

 

声がした方に顔を向けると、そこには先日ファルコが腕章を直した負傷兵がベンチに座っていた。

 

「この間は世話になったな」

 

ファルコ「あぁ…えっと…」

 

ファルコは男の元まで行って、隣に腰掛けた。

 

ファルコ「経過は順調みたいですね…会話できるくらい回復して…」

 

「まぁな。ここに心的外傷の治療に来てるが、俺のは嘘だ」

 

ファルコ「……え?」

 

「記憶障害で家まで帰れないってことにしてるが、本当は家に帰りたくないだけだ。今は家族と顔を合わせづらくてな」

 

ファルコ「…」

 

「病院の人に言うか?」

 

ファルコ「いえ…そんなことしませんよ」

 

「怪我しているな。マーレの戦士になるための訓練か…」

 

ファルコ「えぇ。でも俺は戦士になれません」

 

「どうして?」

 

ファルコ「同じ候補生に優秀な奴がいて…俺は出番は無さそうです」

 

「そうか…それはよかった」

 

ファルコ「……え?」

 

「君はいい奴だ。長生きしてくれるなら嬉しいよ」

 

ファルコ「…でも、俺は…そいつを戦士にさせたくなくて…」

 

「…それは…どうして?」

 

ファルコ「…」

 

「……その優秀な候補生は…女の子か?」

 

ファルコ「…このレベリオじゃ有名な奴ですよ。既に戦争で活躍したぐらいで、誰だって次の『鎧』はあいつがいいって言うはず…」

 

「…」

 

ファルコ「でも俺は力が無いから、俺は…何もできないまま終わるんだ」

 

「…俺は…この施設に来て毎日思う…何でこんなことになったんだろうって…」

 

心も体も蝕まれ、徹底的に自由を奪われ、自分自身をも失う。

 

こんなことになるなんて知っていれば誰も戦場になんか行かないだろう。

 

「でも…皆『何か』に背中を押されて地獄に足を突っ込むんだ」

 

ファルコ「…」

 

「大抵その『何か』は自分の意志じゃ無い。他人や環境に強制されて仕方なくだ」

 

ただし、自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別だ。

 

その地獄の先にある何かを見ている。

 

それは希望かもしれないし、更なる地獄かもしれない。

 

エレン「それはわからない……

進み続けた者にしか…わからない」

 

 

〜〜〜

 

ライナー「ファルコ…こんな時間にどこへ行く?」

 

ファルコ「ハァ…ハァ…忘れ物をしたんで、これから本部に戻るところです」

 

ファルコは先程までと打って変わった表情になっていた。明るく、何かのモヤが取れたような表情だ。

 

ファルコ「失礼します」

 

そう言うとファルコは本部に向かって走り出した。

 

 

エレン『ファルコ。頼みたいことがあるんだが…』

 

ファルコ『何ですか?クルーガーさん』

 

エレン『手紙を送りたいんだが…この収容区からじゃ中身を確認されるだろ?』

 

ファルコ『そうですね…』

 

エレン『それだと俺が仮病だってバレちゃうから収容区の外のポストに投函して欲しいんだ』

 

ファルコ『わかりました。家族宛ですか?』

 

エレン『あぁ…俺がここに無事にいるって家族に伝えたいだけなんだ』

 

ファルコはエレンに言われた通り、手紙を受け取ると、それを収容区外のポストに投函した。

 

それの中身が何かも知らずに────。

 

〜〜〜

 

ハチマン「はぁ…」ドサッ

 

俺が自室のベットにダイブすると、溜まった疲労感が一気に襲ってきた。

 

ピーク「何もしてないのになんでそんなに疲れてるのよ」

 

ハチマン「一日中自分の行動が監視されてれば何もしてなくたって疲れるだろ…」

 

ピーク「一日中あなたの行動を監視しなきゃいけない私も疲れるわよ」ドサッ

 

正確には自室というのはおかしいか?だって隣のベットにピークがいるわけだし。寝てる時だけは目を離されるが、その時には俺も寝てる。

要するに自由な時間はゼロと言っていいな。

 

ハチマン「そういえば祭りっていつなんだ?俺それまで暇なんだけど…」

 

ピーク「二日後。候補生と一緒に訓練でもしてみる?」

 

ハチマン「あのなぁ……俺のこと馬鹿にしてるだろ?」

 

ピーク「…私達が九つの巨人を受け継ぐためにどれだけの訓練をしてきたか知らないでしょ?戦士になるっていうのがどういうことか教えてあげる」

 

そう言ってピークは立つと、部屋を出ていった。

 

ハチマン「…」

 

俺もベットから起き上がるとその後ろを追い、戦士候補生の訓練場所に向かった。

 

〜〜〜

 

ガビ「はぁッ!」

 

ファルコ「ぁッ…!」

 

ガビはファルコの胸ぐらと右腕を掴むと、そのまま投げた。背負い投げというやつである。

 

ファルコ「ハァ…ハァ…クソッ…」

 

ハチマン「ファルコがボコボコにされてるっぽいな」

 

ガビに比べて、ファルコの顔には傷が多く、服も土だらけ。ガビに負け続けてるのは一目でわかる。

 

ピーク「ガビは優秀だからね。でも、ファルコはこの前ガビにかけっこで勝ってる。今までガビが負けたことなんてなかったんだけど…」

 

ハチマン「初めて会った時とは違うな」

 

ピーク「え?」

 

ハチマン「ファルコの目だよ。今は…なんていうか…真っ直ぐ物を見てるっていうか…とにかく迷いみたいなもんを感じないな」

 

ピーク「……少ししか会ってないのによくわかるね」

 

ハチマン「人間観察が趣味だからな」

 

ピーク「……あの子達は毎日のようにこうして訓練してる」

 

ハチマン「…そうらしいな」

 

ピーク「…あなたは巨人の力を持ってるから戦士隊に入れたの」

 

ハチマン「…」

 

ピーク「誰もあなたが"戦士"だとは認めてないから。それだけはわかっておいて」

 

ハチマン「…まあ、お前の言ってることは尤もだが……俺は戦士隊にいる誰と戦っても負けないと思うぞ?」

 

ピーク「…私の話、ちゃんと聞いてたの?」

 

ハチマン「あぁ。その上で言ってる」

 

ピーク「…わかった。じゃあ、ライナーを連れてくるからちょっと待ってて」

 

ライナーってあのデカいやつか?確か戦士隊の副長だったっけか…。

 

 

 

しばらくすると、ピークに連れられてライナーとポルコがやってきた。え?ライナーだけじゃないの?

 

ピーク「自信があるんでしょ?」

 

ハチマン「…最初はポルコの方でいいか?」

 

ポルコ「…何しに連れてこられたんだ?」

 

説明してなかったのかよ…普通するよね?むしろよくついてきたな…暇かよ。

 

ピーク「実はかくかくしかじかで────」

 

ポルコ「…わかった。俺からやる」

 

え?伝わったの?

てかなんか怒ってませんポッコさん?

 

俺たちが(ポッコが)ただならぬ雰囲気を出してることに気づいたのか、ファルコたち戦士候補生とそれを見ていた教官が、動きを止めて観戦を始めた。

 

なんか注目集まってるんですが……。

 

すると、ポルコは俺の方に歩き出し、手の届くところまで近づくと拳を降り上げた。

 

ーバチンッ‼︎

 

ポルコ「ッ…!」

 

俺はそれを片手で受け止めると、今さっきガビがやった通りに背負い投げをした。

 

ポルコ「(強い…!)」

 

ポルコは受け身を取りつつ、すぐに立ち上がった。だが────

 

ポルコ「(い…いない!?)」

 

俺はポルコの背後を取り、そのまま羽交い締めで動きを封じた。

 

ポルコ「ッ…!」

 

ハチマン「降参しろ。じゃなきゃ、このまま肩をへし折るぞ」

 

別にやってもいい。どうせ治るんだし。でも…わざわざ関係を悪くする必要もないだろう。要は実力の差というのがわかればいいんだ。

 

ポルコ「…わかった…降参だ…」

 

そう言われて俺は腕を解いた。

 

ハチマン「ライナー。今度はお前の番だぞ」

 

ライナー「…」

 

ピーク「ライナー?」

 

ライナー「」ドクンッ ドクンッ

 

なぜかライナーは下を向いたまま、黙り込んでいた。微かに見えるその顔は…恐怖だろうか?それとも絶望か────。

 

ライナー「(何か大切なことを忘れてる…なんだ?何を忘れてる…?それに…この…首元にナイフを突きつけられるような感覚は…)」

 

ハチマン「どうしたんだ?」

 

ライナー「(前にも感じた……確か…この感覚は……あの島で…)」

 

ピーク「ライナー?…ライナー!」

 

ライナー「ハッ…す、すまない…」

 

ピーク「具合でも悪いの?顔色がすごい悪いけど…」

 

ライナー「大丈夫だ。このままやれる」

 

本当は大丈夫じゃないだろう。でも、ライナーがやると言ったからには…俺も全力で相手をする。

 

ハチマン「来いよ、ライナー」

 

ライナー「…ッ!」

 

ライナーは走り出すと、俺にタックルを仕掛けてきた。

 

ピーク「(流石にこれは避け────)」

 

ハチマン「…」バッ

 

俺はライナーの首を掴み、そのまま上に振り上げた。

 

ライナー「がッ…!?」

 

ライナーのタックルは俺には当たらず、代わりに首を掴まれ宙に浮いた。

 

ハチマン「(こいつ重いな…)」

 

ピーク「そんな…」

 

ライナー「ぁ…ッ…」

 

こいつら相手じゃ格闘術も使う必要がないな。

 

俺はそう思いながら手を離すと、ライナーは地面に膝をついた。

 

ライナー「ハァ…ハァ……」

 

ハチマン「立てるか?」

 

ライナーに手を差し出したが、一向に顔を上げず、ずっと下を向いていた。

 

ライナー「(体が動かない…なんだ…?こいつの近くにいてはいけない…そう感じる…根拠も何もない…だけど…これだけはわかる…)」

 

"コイツは危険だ…!"

 

ピーク「(ハチマンに会ってからライナーの様子がおかしい…)」

 

ハチマン「おい…ライナー?」

 

ライナー「ぁ…あぁ…」

 

ライナーはやっとのことで俺の顔を見ると、差し出した手を取ろうとする。

 

だが、その顔は恐怖で歪んだようにしか見えない。

 

ライナー「ありが────」

 

ービリッ

 

ライナーが俺の手を握った瞬間…二人の体に電流が流れるような感覚が走った。

 

ハチマン「」

 

ライナー「」

 

ただでさえ恐怖に怯えていたライナーの顔は、もう表現のしようがないくらいに歪み、その形相でこう言った────

 

ライナー「ピーク逃げろ!!」

 

ライナーは俺の手を握ったまま、もう片方の手の指の付け根を噛み切った。

 

ハチマン「ッ!」

 

俺もライナーと同じように指の付け根を噛み切り、巨大化。

 

鎧「オォォオオッ!!!」

 

行使「」

 

鎧は俺に向けて拳を振るが、それに合わせて脚を硬質化。カウンターとして放った後ろ蹴りは鎧の顔面を吹き飛ばし、宙を舞わせた。

 

ピーク「ッ!」

 

ーカッ

 

ピークも俺を抑え込もうと巨人化するが、俺はそれを待たずライナーに関節技をきめる。

 

鎧「オォオッ!!」

 

更に、そのまま全身を硬質化させてライナーを抑え込んだ。

 

車力「(本体が出てきた時点でハチマンを食べる…それしか方法はない…なら────)」

 

車力の巨人は俺のうなじの目の前にやってきて口を開いた。

 

ーパリンッ

 

車力「(今!!)」

 

俺が巨人から出てくるのを確認した車力は俺を食おうと食らいつく。だが、俺は車力の口に入る前にもう一度巨大化。15m級の巨人になり車力の顔面を地面に叩きつけた。

 

ーダァンッ!!

 

行使「(しばらくは動けない……逃げるか)」

 

俺は車力が動かないのを確認すると、体を縮小させて4m級の巨人になる。

そして、そのまま走り出した。

 

ガビ「ライナー!!ピークさん!!」

 

ファルコ「そんな…!?二人があんな簡単にやられるなんて…」

 

ガビとファルコは動かない二人の元に走り出した。

 

ーシュゥゥ…

 

車力の巨人のうなじからは、蒸気を発しながらピークが自力で出てくる。

 

ピーク「…」

 

だが、その隣で固定されてる鎧の巨人からライナーが出てくる気配はない。

 

ピーク「ライナー!」

 

ファルコ「(ブラウン副長が出てこない…でもうなじに攻撃はされてないから…本体は殆どダメージを負ってない筈…なのになんで…)」

 

ライナー「(…なんでハチマンがここに…いやそこじゃない…なんであいつが巨人になれるんだ…!?あり得ない…そんなこと…)」

 

ピーク「ライナー!何か知ってるんでしょ?今すぐ出てきて説明して!」

 

ライナー「ハッ……そうだ…こんなとこで考え込んでも仕方ねぇか…」

 

ーシュゥゥ…

 

ライナーはうなじの硬質化を解いて、巨人の体から出てくる。

 

ライナー「悪かったなピーク…あいつを取り逃した…」

 

ピーク「戦う直前…何を見たの?」

 

ライナー「…思い出した……あいつは…ハチマンは…あの島で…ジーク戦士長を殺す直前まで追い込んだ……化け物だ」

 

ピーク「え…?でも、それはリヴァイ・アッカーマンがって戦士長は…」

 

ライナー「なんでかわからないが…記憶違いが起きてるらしい……だが、重要なのはそこじゃない。あいつがマーレにいるのが問題なんだ。ハチマンほど危険なやつは他にいない」

 

ピーク「(おかしい…なら私も知ってる筈…私の記憶にもハチマンの姿はどこにもない…でももしも…リヴァイ・アッカーマンがいたところにハチマンを当てはめるなら…)」

 

ピーク「今すぐマガト隊長とジーク戦士長に報告するから、ライナーも一緒に行くよ」

 

ライナー「あぁ…わかってる」

 

ガビ「ライナー…大丈夫なの…?」

 

ライナー「…心配するな。お前たちはいつも通り訓練を続けてろ」

 

ライナーはガビの頭を撫でると、巨人の体から降りてマガトの元に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

ハチマン「(祭りまであと二日…か…)」

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