それでも俺は進み続ける。   作:甘味の皇帝

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the final season Part5

ハチマン「…」

 

エレンが巨人化した瞬間、俺はステージ近くの建物の屋根の上に座っていた。

 

突然現れた巨人の姿に、誰もが固まったのは言うまでもない。理解が追いつかなかったのだろう。

 

だが、ヴィリー・タイバーがエレンに食われることで…やっと観客らは表情を変えた。

 

絶望と恐怖に満ちたそれが現れたのは表情だけではない。こう言う時に人の本性が現れる。

 

ハチマン「痛そうだな…」

 

ここから見える。ゾフィアが岩に上半身を潰され、ウドがそれを助けようとするも逃げ惑う人々に身体中を踏み潰されるのが────。

 

ハチマン「まぁ…痛いじゃ済まねえけど…」

 

先程までみんなで力を合わせようという演説を聞いて、涙を流して歓喜していたのが…今じゃ我れ先に逃げようと必死だ。

 

でも…それは仕方のないことなんだと思う。何の心の準備も無いまま…いきなり自分達を殺そうと巨人が現れるんだ。

 

ハチマン「あの日のお前と同じだな…エレン」

 

エレンは、端に集められていた軍幹部らの特等席に走り込み、身体ごと飛び込んだ。

 

そして、そのまま逃げようとする幹部らを殴りつけて全滅させる。

 

 

ーカッ

 

ハチマン「ッ!」

 

俺が人間観察とエレンの様子見に明け暮れていると、突然ステージ中央から巨人の体が形成された。

 

ハチマン「(足元から身体ができてる…どういうことだ…?)」

 

と、疑問に思ったその瞬間────その巨人は完全な姿になる前に、エレンに顔面を殴られて吹き飛んだ。

 

ハチマン「うわぁ…そういうことしちゃうんだ…」

 

建物に倒れ込んだ巨人はエレンに殴られ続け、うなじを念入りに潰されていた。

 

ハチマン「(戦鎚の巨人か…なんか可哀想だな…)」

 

だが、心配する必要は無かったらしい。エレンの拳が振り下ろされ続ける中、戦鎚の巨人はその力の一端を表した。

 

ードオンッ!

 

進撃の巨人の身体は突然空中に押し上げられ、その腹には柱のようなものが刺さっている。

 

地面から生えたそれは、エレンの腹を容易に貫通し、動きを止めさせた。

 

ーシュゥゥ…

 

無数の拳を受けた顔が、蒸気を発して再生すると戦鎚の巨人の姿が見えた。

 

全身が白く覆われ、その手には巨大な戦鎚が形成される。

 

その柄の長さは本体の倍以上に及び、振り下ろされた場合の衝撃は尋常じゃないのは確かだ。

 

ハチマン「流石に食らうとまずいんじゃないか…?」

 

 

ーブンッ! ドオンッ!!

 

エレンは硬質化させた拳で、自分を貫いている柱を叩き折る。そして、ギリギリのところで振り下ろされた戦鎚を避けた。

 

だが、地面に着地したエレンには大量の対巨人野戦砲が放たれ、その体に穴を開けた。

 

ハチマン「あれ効くんだよなぁ…」

 

〜〜〜

 

「やったぞ!効いてる!!」

「対巨人野戦砲…すごい威力だ!!」

 

「マガト隊長!このままエレン・イェーガーを仕留めましょう!ここで始祖が散れば敵勢力はお終いです!!」

 

マガト「ダメだ。始祖を殺せば、問題を先送りにするだけだ。何としてでも戦鎚に食わせる。我々はその補助に徹するのみだ」

 

「し、しかし…隊長…戦鎚は…始祖を食うつもりはないようですが…」

 

ーブンッ‼︎

 

エレンが両腕で、しかも最大限硬質化を集中させた状態で…それだけのガードを固めても戦鎚の巨人が振り下ろした戦鎚は、容易く進撃の巨人の頭と両腕を叩き潰した。

 

「戦鎚…なんて威力!!」

「進撃をものともしない!!」

「戦鎚の勝利だ!!」

 

ーシュゥゥ…

 

マガト「ん?」

 

顔が無くなった進撃の巨人のうなじからは、エレンが出てきた。そして、その顔は……あの頃の元気っぷりが皆無になっていた。

 

マガト「奴が…エレン・イェーガーか」

 

戦鎚「…」フッ

 

戦鎚の巨人はエレンを確認すると、再び戦鎚を構えた。

 

「本当に…仕留める気だ…!」

 

戦鎚「簒奪者…エレン・イェーガー…最後に…言い残すことはありますか…」

 

ハチマン「(喋れたんだ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレン「今だ…ミカサ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ープシュウッ! ギュィンッ

 

戦鎚「ッ!」

 

聞き馴染みのあるその"音"と共に、戦鎚の背後に現れた人影。そいつが放った八本の"雷槍"が戦鎚のうなじを吹き飛ばす。

 

ードオンッ!!

 

 

マガト「なっ…!」

 

ープシュウッ! ドォン!

 

それと同時にマガトたち率いる兵士たちの背後には複数の立体機動装置を付けた人間が現れ、雷槍を用いて対巨人野戦砲を破壊した。

 

 

エレン「みんな…来てくれたんだな」

 

ミカサ「エレンお願い…帰ってきて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハチマン「エレンが…呼んだのか…?」

 

恐らくは調査兵団が全員…新型の立体機動装置を付けて飛び回っている。

 

俺は少ししか使った事ないけど…まあ、性能は折り紙付きだ。対人と対巨人の使い分けが楽な上に、こういう強襲に関しては最強と言っていいだろう。

 

アニ「…ハチマン」

 

ハチマン「…」

 

気づいてた。後ろから来てたのは…でも、もう俺は…こいつと目が合わせられない。合わせていいはずがないのだ。

 

だから俺は何も言わなかった。それがよくなかったらしい。

 

 

ードカッ

 

ハチマン「いッ…!」

 

強烈な蹴りが俺の脳天に直撃した。結構痛い。こんな女教師いたよなーって思い出すくらいには痛かった。

 

アニ「もう一撃喰らいたくなかったらこっち向いて」

 

ハチマン「は、はい…」

 

そろそろ頭蓋骨に穴が開きそうなので俺は諦めた。まだ一撃目だよね?また強くなったの?

 

アニ「…久しぶり」

 

ハチマン「アニ…」

 

アニの向けてくる眼差しに、俺は先程までの現実逃避を諦めた。できれば諦めたくはないのだが…。

 

アニ「…何で…勝手に行ったの?」

 

ハチマン「…」

 

来ると思っていた質問だ。俺があの日…あいつを追いかけていなくなった理由……まぁ、今はあまり関係ねぇけど。

 

アニ「言ってくれれば────」

 

ハチマン「言ったらどうしてたんだ?」

 

俺がアニに話したからって何かが変わるわけじゃない…全ては決まったことだ。むしろ…そこで話してしまえば俺は……

 

アニ「私も一緒に行ってた」

 

ハチマン「俺はお前らがここに来るなんて考えてなかった。エレンが呼んだんだろうが…こんな事にお前らを巻き込めるわけねぇだろ」

 

巻き込んでいいはずがない…俺はただ…お前らに────。

 

アニ「…」

 

ハチマン「これは戦争じゃない……ただの虐殺だ。あの日…お前らがやったことと同じことをやるんだ……なら、わかるだろ?」

 

アニは痛いほどわかってるはずだ……だってお前らは……壁を破壊した後…同じ屋根の下で、同じ飯を食った……何を感じて生きてきたのかが…今ならわかる。

 

ハチマン「お前…ずっと辛かっただろ…?」

 

アニ「…ッ……私は…償っても償い切れないことをしたと…今でも思ってる…」

 

罪悪感に苛まれて、それを誤魔化しながら訓練兵時代を過ごした。

 

アニ「だから、あの時…ハチマンが私を止めてくれたこと…ずっと感謝してる」

 

ハチマン「あの時…?」

 

アニ「ライナーにマルコの立体機動装置を取れって言われた時… ハチマンが止めてくれなかったら…多分私は言われた通り外してた」

 

ハチマン「…」

 

俺は彼女の真っ直ぐな眼差しに目を逸らせなかった。いつもあまり喋らなかったアニが…俺に何かを伝えようとしてる。

 

アニ「だからハチマン…帰ろう…」

 

きっと…アニの言いたいことはこれだけじゃないんだと思う。色んな感情があるんだろうし、色んな言葉で表現できる。でもそれで全てを表せるわけじゃない。

 

だからきっと…言葉をいくら重ねても…近づくだけで…それは本物じゃない。

 

ハチマン「もう遅い…エレンが何をするのか…俺はそれを知ってて見過ごす…今更お前らのところに帰れるわけが…」

 

アニ「それでもハチマンは私を守ってくれたでしょ…なら、私もハチマンを守るよ」

 

───・・・・・・言葉さえ信頼ならないなら、行動も合わせればいい

 

ふと浮かんだ恩師の言葉に、俺は何かを思い出した気がする。

 

アニ「忘れたわけ?私は人類の味方じゃない…ハチマンの味方だから」

 

俺を抱きしめたアニの温もりに、俺は自然と涙が溢れた。

 

〜〜〜

 

ーシュゥゥ…

 

エレン「ミカサ…まだ終わってない」

 

戦鎚の巨人は、うなじから蒸気を発しながら立ち上がろうとする。

 

ミカサ「そんなはずはない…うなじを完全に吹き飛ばした!」

 

エレン「俺もうなじを念入りに潰した…だが奴は死んでない」

 

戦鎚が体を起こすと、その右手には硬質化が集中してクロスボーが形成された。

 

ーバシュッ

 

ミカサ「ッ!」プシュウッ

 

クロスボーの発射と共に、ミカサはエレンを抱えて離脱。ギリギリのところでそれを避けた。

 

 

エレン「戦鎚の巨人…硬質化で何でも器用に作っちまうってわけか。ミカサ、奴の注意を引いてくれ。うまくいけば戦鎚の巨人を食える」

 

ミカサ「!」

 

 

〜病院〜

 

医者「ダメダメ!ベットは満杯だ!その子もとっくに死んでるよ!」

 

コルト「そんな!?ちゃんと見てくださいよ!!」

 

コルトは、血だらけになったウドを抱えて病院に来ていた。だが、その病院はエレンによって殺された人々で溢れかえっていて、とても新しい患者を受け入れられる状態ではなかった。

 

医者「君こそこの状況を見ろ!戦士候補生だろ!?」

 

看護師「先生!お願いします!」

 

医者「わかった!すぐ行く!」

 

コルト「ッ…くっ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルト「ガビ…お前は家族と一緒にいろ」

 

どこが安全かもわからない状況だが…広場からできるだけ離れているんだ。

 

コルト「俺は…ファルコを探しにもど──「私も戻る」ッ!?」

 

ガビ「ウドとゾフィアが何で殺されたのか…わからないから…ッ!」

 

そう言うと、ガビは広場に走り出して行った。

 

コルト「待て!ガビ!行くな!!」

 

〜〜〜

 

コニー「ジャン。増援はしばらく来ないぞ」

 

ジャン「灯りの設置は?」

 

サシャ「すべて仕掛けました」

 

コニー「作戦は順調か?」

 

ジャン「今のところは…な。時間までにあいつさえ無力化できれば…だが…わからねぇ。何が起きたっておかしくねぇよ」

 

この戦いの先に何があるのか…それを見極めるためには生き残らねぇと。

 

〜〜〜

 

エレン「(違和感の正体がわかった…戦鎚の巨人が現れた時に感じた違和感だ。こいつは…足元から体ができていった)」

 

うなじからではなく…ステージ中央の地面からだ。

 

エレン「(戦鎚の本体は────)」

 

エレンは屋根からステージがあった方向飛び降り、巨人化した。

 

ードォンッ!

 

そして、戦鎚の足から伸びている管の先…地面に埋まっている何かを掴み取る。

 

ーブチッ

 

戦鎚「」

 

その水晶体と管を千切ると、戦鎚の巨人は動きを止めて倒れた。

 

進撃「…」

 

進撃の巨人がその水晶体を食おうと口を開いたその瞬間────

 

エレン「ッ!?」

 

ポルコ「この瞬間を待っていた!!始祖を奪還する!!」

 

エレンの背後から現れた顎の巨人が、エレンのうなじに噛み付いた。

 

ミカサ「エレン!!」

 

 

 

ープシュウッ‼︎ ザシュッ!

 

だが、突然上から飛び降りてきた何かが、顎の巨人の顎の筋肉を斬った。

 

ポルコ「(なんだ…!?噛み切れねぇ!?)」

 

 

ーザザザッ! プシュウッ!

 

 

ポルコ「今のはこいつか!?まさか…あれは…ハチマン!?」

 

進撃「オォオ!!」

 

ードォンッ!

 

進撃の巨人は、背中に噛み付いている顎の巨人を建物に叩きつけ、髪を掴んだ。

 

ポルコ「(ッ…ここはまずい!)」

 

ーブシャッ

 

ポルコは爪で進撃の手を斬ると、建物を登っていく。が、当然それを許す俺ではない。

 

ーザシュッ

 

顎の巨人の腕を斬り落とし、地面に叩き落とした。

 

ポルコ「バカな…俺は巨人だぞ……人間の姿のまた…俺を…殺す気か…!?

これが────パラディ島の…悪魔…!」

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