リヴァイ兵長が机の下を触ると手に埃が付く。
リヴァイ「……十分に時間はあったはずだが…まぁ…いい…お前らが舐めた掃除をしていた件は後回しだ。状況を整理し方針を固めるぞ」
よかった…リヴァイ兵長のお説教を受けずに
済むぜ。
リヴァイ「まぁ…この短ぇ間には色々あったが突如の目標が変わったわけじゃねぇ。要するにウォール・マリアにある穴を塞げさえすりゃいい。それさえ叶えば大抵のことはどうだっていい。毛むくじゃらの巨人が岩を投げてこようが壁の中に多少巨人が湧こうがな」
あ、そういえば言ってたな。ウトガルド城で俺たちが来る前に毛むくじゃらの獣の巨人が岩投げてきたって。
リヴァイ「おいアルミン。上手くいきゃ素早く壁を塞げると言ってた話だ…アレをもう一度
言って聞かせろ」
アルミン「はい…巨人化したエレンの能力で壁の穴を塞ぐ……といった案です。壁は…どうやら硬質化した巨人の体から作られたようなので穴を塞げるだけの質量をその現場で生み出すことができれば…もし…そんなことができればですが…従来の作戦のように大きな資材を荷馬車で地道に運び続ける必要はありません。
つまり天候次第では巨人の活動しない夜に現場を目指すやり方も考えられます。馬だけなら
トロスト区からシガンシナ区に続く道を一晩で駆けることができますし…この理想が叶ったらウォール・マリア奪還に掛かる作戦時間は……
"一日以下"です」
アニ「…」
この話には一つ問題がある…それはエレンが
硬質化の能力を持っている前提であることだ。もしエレンが硬質化の能力がない巨人ならいくら調べたってできるわけがない。
アルミン「改めて話してみてもやっぱり…雲を掴むような話に聞こえましたが」
リヴァイ「その雲を…雲じゃないものにできるかはこいつ次第だがな」
まあ、やるだけやってみるしかないか…。
エレン「…えぇ…承知しています」
リヴァイ「聞いたかハンジ。こいつはやる気だ。そして実験の場を見繕うのはお前だ」
ハンジ「あぁ…もちろん私が生きている内は…それは私の役目だ」
リヴァイ「あ?」
ハンジ「今…駐屯兵団は総動員で壁を哨戒している。そりゃとてつもない労力と人員が要るわけだ…。城壁都市の警備が手薄になるばかりか治安の維持すらままならない。街は今この状況に輪をかけて荒れている。ウォール・マリアを奪還しなければならない…以前よりも強くそう思うよ。皆を早く安心させてあげたい…人同士で争わなくても生きていける世界にしたい。
だから…一刻も早くエレンの力を試したい……今度は恐れずに試そう。硬化の能力はもちろん巨人化の詳細な情報を…特に…巨人を操ったかもしれないって…すごい可能性だ。もし本当にそんなことが可能ならこの人類が置かれている状況がひっくり返りかねない話だよ!だから!グズグスしていられない!早く行動しないと…いけない!だけど…まだしばらくエレンには身を潜めておいてほしい…」
エレン「え?」
アルミン「それは…なぜですか?」
ハンジ「それが…我々が思ってた以上に状況は複雑なようなんだ」
リヴァイ「何だ…俺はてっきりお前らがここに来た時から全員がクソが漏れそうなのを我慢しているのかと思っていた。今もそういった顔をしている。一体なぜお前らにクソを我慢する必要があるのか。理由を言え。ハンジ」
ハンジ「ニック司祭が死んだ」
リヴァイ「あ?」
ハチマン「え?」
ハンジ「今朝トロスト区の兵舎の敷地内で
ニック司祭が死んでるのが発見された。死因はわからないけど…ニックは中央憲兵団に拷問を受け殺されたんだ。ウォール教は調査兵団に助力したニックを放っておかないだろうとは思っていた…だから正体を隠して兵舎に入れてもらっていたんだけど…まさか…兵士を使って殺しに来るなんて…私が甘かった。ニックが殺されたのは私に責任がある」
アルミン「…拷問って…憲兵はニック司祭を拷問してどこまで喋ったか聞こうとしたのですか?」
リヴァイ「だろうな…レイス家とウォール教の繋がりを外部に漏らしてないかってことと、
エレンとヒストリアの居場所を聞こうとしたんだろ」
エレン「…」
モブリット「もちろん今朝の段階からエルヴィン団長、ピクシス司令、全調査兵団に至るまで状況は共有されています。中央憲兵は逆に我々から監視されるハメになってますから…そう下手なマネはできないはずです。
とは言っても、形を変えてこちらを探る方法はいくらでもあるでしょう…今は何が敵かわからない状況です。
今日ここに来る時も二手に分かれたり、二重尾行をして来ました。まだここはバレてないと思いますが…」
リヴァイ「それで…エレンの実験をよそうって考えてるのか…ハンジ」
ハンジ「あぁ…」
リヴァイ「エレンの巨人の力が明るみになった時から、中央の"何か"がエレンを手中に入れようと必死に動いて来た」
ハンジ「しかし…今回の騒動以降はその切迫感が明らかに変わって来ている。兵団組織が二分しかねないようなマネを、壁の中の全てが不安定なこの時期に仕掛けてくる程にだ…」
この状況を普通に考えれば、ライナー達のような"外から来た敵"の仲間がずっと中央にはいたってことになる…つまり、今俺たちが危惧すべきは壁の外ではなく、背後から味方に刺されること。いや、もう味方ですらないが…。
リヴァイ「それで?俺たちは大人しくお茶会でもやってろって言い出す気か?」
ハンジ「室内でできることはまだ色々あるよ…編み物とか…今だけ頼むよ」
リヴァイ「"今だけ"だと?それは違う。逆だ。時間が経てば奴らが諦めるとでも思ってんのか?ここはいずれ見つかる。逃げてるだけじゃ時間が経つほど追い込まれる」
ハチマン「…ハンジさん。ニック司祭の爪は何枚剥がされていましたか?」
ハンジ「…は?」
ハチマン「見たんですよね?何枚でした?」
ハンジ「わからないよ。一瞬しか見れなかったんだ…でも、見えた限りの爪は全部剥がされてた」
ハチマン「…喋るやつは一枚で喋ります。喋らないやつは何枚剥がしたって喋りません。
ニック司祭は…」
リヴァイ「あいつはバカだったとは思うが、自分の信じるものを最後まで曲げることはなかったらしい」
ハチマン「ニック司祭が口を割らなかった可能性が高いなら、中央の"何か"は調査兵団がレイス家を注視してるってとこまで警戒していないかもしれません」
リヴァイ「まぁ…俺に言わせりゃ今後の方針は二つだ。背後から刺される前に外へ行くか、背後から刺す奴を駆除して外へ行くか。
お前はどっちだハンジ?刺される前に行く方か?」
ハンジ「…両方だ。どっちも同時に進めよう」
リヴァイ「…まぁ、エルヴィンならそう言うだろうな」
〜〜〜
コニー「正直言うと…話の半分もわかっていない気がする」
エレン「…何だと?要するに…俺たちはできるだけ目立たないように実験をする。それで俺たちを邪魔してくる奴らもぶっ潰すって話だ……詳しくは…まぁ、あれだな…後でアルミンに説明してもらおう」
〜〜〜
ハチマン「アニ」
アニは何も言わずに俺の方を振り向いた。
ハチマン「エレンの硬質化、できるのか?」
アニ「…今のままじゃ無理。エレンの巨人に硬質化をする能力はない」
ハチマン「…お前はできるんだろ?」
アニ「あの穴を塞げるほどの質量を出せるかわからない。試したことがないから」
ハチマン「そうか…まあ、エレンには頑張ってもらうしかないな。硬質化ができなくても巨人の力を操る力をもっと付けないとならねえし」
アニ「それはずっとやってれば身につくよ…
多分苦労するけど…それより、ヒストリアは大丈夫なの?」
ハチマン「え?」
アニ「ここに来た夜、自分の生い立ちについて話してからなんか…」
ハチマン「あぁ…まあ、放っておくってのも大事なんじゃねぇの?そういう時期は誰にでもあるんだろうしな…」
かつて雪ノ下雪乃でさえそういう時があった…あの時は…どうなったんだっけか…。
ー翌日ー
ードオオォンッ!!
ミカサ「エレン!!」
ハンジ「どうしたエレン!!もうおしまいか!?」
エレンの巨人は倒れ、地に臥していた。
ハンジ「立てぇぇ!!人類の明日が君にかかっているんだ!!立ってくれぇぇ!!」
いや、あれはもう無理だろ…。
リヴァイ「メガネ。今度は様子が違うようだが?もうやつは10mもねぇしところどころの肉も足りてねぇ。そして本人(エレン)のケツが出ている」
ハンジ「わかってるよ!!エレン!まだ巨人を動かせそうか!?何かしらの合図を送ってくれ!!合図がなければすぐに君をほじくり出す!!」
すると、ミカサが馬を走らせてエレンにかけよった。
アルミン「ミカサ!」
リヴァイ「おいまた独断行動だぞ。あの根暗野郎は。処分を検討しとくか?」
ハンジ「イヤ、合図が無い。ここまでだ!」
ハンジさんは飛び降りながら言った。
ハチマン「ひでぇなこれ…」
アニ「ほら、言ったでしょ」
ハンジ「熱っつ!!エレン熱っついな君、本当に!!」
ハチマン「こっちにもひでぇのが一人…」
ハンジさんはエレンを巨人から引き剥がそうとしているが、中々癒着が激しくて剥がれていない。
ミカサ「ハンジさん待って!エレンから血が出ています!代わってください!!」
ハンジ「あぁ…こりゃすごい。さっきより強力にくっついてるぞ!!」
ハチマン「(話聞けよ…)」
ミカサ「ハンジさん!?」
ハンジ「巨人の体との融合が深くなって一つになりかけているんだ!もし放っといたら普通に巨人になっちゃうんじゃないかこれは!!試しちゃダメか!?人としてダメか!?」
アニ「あの人やばいね」
ハチマン「やばいな」
ハンジ「うおぉぉ見ろモブリット!!エレンの顔が大変なことになってるぞ!!」
ミカサ「あぁ!!」
ハンジ「急げ!スケッチしろ!!これ元の顔に戻るのか!?」
モブリット「分隊長!!あなたに人の心はありますか!?」
ミカサ「ッ!」
ミカサはブレードで伸びている肉を斬った。
ードサッ
ハンジ「…ごめん…また取り乱した…」
鼻血出す勢いだったぞ。どっかの腐った海老名さんみたいに。
ハンジ「実験は終了だ!!総員直ちに撤退せよ!!」
モブリット「よし、撤退するぞ!周囲を見張れ!!目撃者がいないかくまなく調べろ!!」
ハチマン「やっぱダメだったか…」
リヴァイ「お前はエレンと同じ荷馬車に乗れ」
ヒストリア「はい」
〜荷馬車内〜
ミカサ「エレン!!しっかりして!!」
ハンジ「だ…大丈夫だよ多分。ちゃんと元の男前に戻るって多分!!」
〜〜〜
ハチマン「(巨人化すればどうしても狼煙が上がってしまう…"ヤツら"にどこかで見られてることを覚悟しなくちゃな…)」
〜王都:ミットラス〜
少年二人組は高そうな仕立て服を来た男性からバックを盗んで逃げていた。
エルヴィン「少年窃盗団か?王都までこんな状態とは…」
ナイル「どこも同じだ。取り締まるにしても
収容施設は既に溢れ返っている」
エルヴィンはナイルの馬車に乗って何処かに移動していた。
ナイル「そんな状況で憲兵である俺を連れ出してどういうつもりだ?一人じゃ王政召喚もまともに務まらないのか?俺は訓練兵時代の思い出話なんかに付き合う気は無いぞ」
エルヴィン「つれないな…ナイル」
ナイル「お前はきっと…早く逝っちまうもんだと思ってたんだが…今は右腕をあの世に突っ込んだあたりか。それもガキの頃言っていた妄想を今も信じてるせいか?」
エルヴィン「あぁ…その妄想は真実に変わりつつある」
ナイル「…それはよかったな」
エルヴィン「ところでナイル。ニック司祭が中央第一憲兵に拷問を受けた後殺されたんだが…知っていたか?」
ナイル「……イヤ?」
ナイルは何のことか全くわからないらしく、エルヴィンの方に顔を向けた。
エルヴィン「……そうか。ヤツらはエレンの居場所を知りたかったようなんだが、お前達憲兵はなぜそんなにエレンが欲しいんだ?人殺しに手を染めてまで」
ナイル「我々は…上の御達しに従ったまでだ。ワケなど知らん。そして我々が憲兵団の表の顔なら中央憲兵はその逆。指揮系統も違えば接点もない…ヤツらを公に取り締まる者など存在しないからな。何をやってもお咎めなしだ。
そんなわかりきったことを聞きたかったのか?俺を絞っても何も出んぞ?」
エルヴィン「どう思う?」
ナイル「……は…?」
エルヴィン「彼らにエレンを委ねることでこの壁の危機が救われると思うか?
お前はどう思う?」
ナイル「それは俺が考えることではない」
エルヴィン「マリーは元気か?今度三人目が産まれるらしいな」
ナイル「お前は質問を絞ったらどうだ?」
エルヴィン「思えばお前とは一緒に調査兵団を志した仲だった…しかしお前はいきつけの酒場の女に恋をし一人の女性を守る道を選んだ」
ナイル「…あぁそうだ。俺はお前らを裏切り
今日までぬけぬけと生き延びた。だか後悔はしていない。家族を作ったことが俺の誇りだ」
エルヴィン「お前を尊敬してるよ。先に逝った同期も同じだ。俺たちにはできない生き方をお前はやったんだ。だが…組織に従うことが必ずしも家族を守ることに繋がるわけではない」
ナイル「…!」
エルヴィン「今この小さな世界が変わろうとしている。"希望"か"絶望"か。選ぶのは誰だ?
誰が選ぶ?お前は誰を信じる?」
ナイル「エルヴィン…お前何をやるつもりだ」
エルヴィン「毎度お馴染みの博打だ。俺はこれしか能が無い。お前はお前の仕事をしろ…ただ忠告したかっただけだ」
すると、馬車が止まった。
エルヴィン「ここまででいい。
それともう一つ。俺もマリーに惚れていた」
ナイル「…はっ!そんなことは知ってたよ!
だがお前が選んだのは巨人じゃねぇか!?
マリーより巨人の方がいいなんて、お前はどうかしてるよ!」
〜〜〜
ハチマン「(これは…ッ!)」
リヴァイ「全員読んだか?」
アルミン「は…はい。兵長…これは?」
リヴァイ「エルヴィンの指示だ。お前らはヤツを信じるか?信じるバカは来い…出発だ」
そのあと、俺たちは準備を整えると家を出て行った。
〜〜〜
コニー「危ねぇ…今夜もあそこに寝てたら…俺たちどうなってたんだ?」
俺たちのいた家の周りを兵が囲んでいた。
ハチマン「兵長。あいつらが中央憲兵なんですか?」
リヴァイ「さぁな。奴らが直接こんな現場に出向くとは思えんが…俺も舐められたもんだ。
合流地点まで急ぐぞ。月が出てて助かった」
〜トロスト区〜
ハチマン「そういえば俺たちってハルノ班だよな?ここにいていいのか?」
アニ「分隊長はしばらくこっちにいろって言ってたよ」
ハチマン「え?何それ?俺聞きてないんだけど…」
アニ「この作戦の途中に回収するかもって。
手紙来てた」
ハチマン「えぇ…それ俺にも読ませてよ…」
アニ「もう無いけど」
これ兵内いじめってやつですか?まあ、いいけど…。
ハチマン「この音…」
リヴァイ「…おい!気を付けろ!馬車が突っ込んで来る!!」
凄い勢いで俺たちの真ん中を突っ込んで来た。
そして、
サシャ「あっ!!アル__じゃなくてクリスタとエレンが!!また攫われてしまったあぁ!!」
ハチマン「…」
〜〜〜
エレン「あいつ…絶対オレに似てねぇのに…!馬面…なのに…大丈夫か…。あいつらがバレるのが早かったら、きっとひでぇ目に遭っちまう」
二人は馬車の荷台に乗って移動していた。
ヒストリア「…」
〜〜〜
「なぁ…どうだ。声を聞かせてくれよ」ハァハァ
アルミン「ッ…」
「なぁどうだ?ハァ…いいだろ?かわい子ちゃんの声が聞きたいな__」ハァハァッ
アルミン「う…」
アルミンは泣きそうな顔で、目の前に座るジャンを見た。
ジャン「くッ…(あのヤローの身代わりなんて…)」
〜〜〜
ミカサが屋根の上に登ってきた。
リヴァイ「中の様子はどうだ?」
ミカサ「急がないと…アルミンの変装がバレてしまいます。それに可哀想です」
リヴァイ「そうか」
ミカサ「…足の調子はどうですか?」
リヴァイ「割と動くようだ。悪くない。それより…賊の連中。あれはただの素人だな。なんでそんなのを使ったんだが…」
ミカサ「…」
リヴァイ「あとはお前達で十分だろう。俺たちエレンの方に行く。取り敢えず奴らを抑えたらすぐに合流しろ」
ミカサ「了解」
リヴァイ「それから念の為に言っておくことがある。アルミン達にも伝えろ」
〜〜〜
「確かにエレンとクリスタで違いないんだろうな?」
「はい、特徴は一致しています」
「変装してないか調べたか?」
「…それはまだです」
ーガチャッ
男は扉を開けて、ジャンとアルミンが拘束されている倉庫に入った。
「馬鹿野郎。またしくじる気か?」
「…申し訳ありません」
「ヤツらへの報告はまだ待てよ。俺たちにはもう次なねえんだ…」
「ん…?見張りは…?」
「おいおい…こういうもんはなぁ…一旦身ぐるみ剥がした所から始めるもんだろうが…」
と、言っている男の横…荷物の影に、ミカサが潜んでいた。
ーゴッ!!
「は!?」
後ろにいた部下の男の顔面に、ミカサの膝蹴りが直撃する。
「ッ!?」
ミカサはもう一人の部下の男の首を掴み、投げた。
「くッ…!」
ミカサは、最後の一人…最初に入ってきた男を押し倒し、腕を背中に回した。
「クソッ…」
ジャンとアルミンも、縛られていた縄を解いて、倒した二人を縛った。
ミカサ「コニー!本当に三人で全部なの!?」
コニー「ああ、全部だ!!近くには誰もいねぇ!!」
「ッ…」チャカッ
ミカサに押さえつけられている男は、ポケットから拳銃を取り出した。
ミカサ「!」
だが、
ードスッ
サシャの放った矢によって、拳銃は床に叩きつけられた。
ジャン「オ…オイ。ミカサに当たったらどうすんだ!!」
サシャ「ミカサが獲物から目を離すのがいけないんですよ!」
コニー「まぁ…何とか…上手くいったな」
ミカサ「取り敢えずこいつらここに拘束して兵士長と合流する」
アルミン「どういうこと?」
ミカサ「兵士長の命令。それと伝言も」
ジャン「…あれ?そういえばハチマンとアニは?」
ミカサ「…?」
〜〜〜
「おい!ちょっと通してくれー!!」
エレンとヒストリアが乗った荷馬車は、人だかりを前に止まっていた。
そして、それを尾行するリヴァイとその部下。
建物の屋根や、高台から顔を出していた。
ニファ「兵長」
リヴァイ「どうだ」
ニファ「道が混んでる以外異常はありません。ピクシス司令の宿舎まであと少しです。
替え玉作戦の方は?」
リヴァイ「成功だ」
ニファ「その割には浮かない顔ですね」
リヴァイ「いや…(何か妙だ。中央憲兵が使う手じゃない。奴らは気位が高い。素人は使わない)」
ニファ「兵長、もうすぐ馬車が移動します」
リヴァイ「ニファ。"切り裂きケニー"を知ってるか?」
ニファ「都の大量殺人鬼ですか?憲兵が百人以上も喉を裂かれたという…でも何年か前に流行った都市伝説ですよね」
リヴァイ「そいつはいる。全て本当だ。ガキの頃…奴と暮らした時期がある」
ニファ「えぇ!?どうしたんですか急に…こんな時に冗談言うなんて…」
リヴァイ「(そうだ…奴なら平気で素人も使う)」
〜〜〜
ハルノ「ハチマン君。目標を集団でつけるときはどうするかわかる?」
ハチマン「両斜め後方と…見晴らしのいい高台ですかね?」
ハルノ「うん、正解」
ハチマン「それがどうかしたんですか?」
ハルノ「私の賭けが当たったってこと」
アニ「あれは…」
ハチマン「誰だ…?」
〜〜〜
リヴァイとニファの後ろから上がってくるのは一人の男。
リヴァイ「ぉ…ッ!ニファ!!」
ーダンッ!!
二つの銃声と共に、ニファの顔面が吹き飛んだ。
リヴァイ「ぁ…ッ…ちぃ…!!」
リヴァイは咄嗟に煙突の陰に隠れる。
〜〜〜
ハルノ「二人とも!行くよ!!」
ハチマン「了解」
アニ「…」コクッ
ニファさんを撃ったのとは違う男が、別の団員に銃口を向ける。
ハルノ「これからは…人も殺すことになるよ」
「ッ…!?」グサッ
男の喉元に刃が刺さった。そして、
ハルノ「君たちの好きにはさせないから」
返り血がハルノさんの周りを飛んだ。
アニ「まだいるよ」
ハチマン「ああ…めちゃくちゃいるな」
リヴァイ兵長を囲むように飛び上がったのは、二十名以上の立体機動装置保持者。
ハチマン「何だあの装備…」
アンカーが手の部分から射出されていて、形状も俺たちの使っているものとは違う。
ハルノ「新しいのが作られたらしいね…」
〜〜〜
ケニー「よぉ、リヴァイ。大きくなったか?」
ケニーは銃のカートリッジを外すと、脚部に付けている予備のカートリッジに付け替えた。
そして、持ち手からアンカーを射出。煙突に突き刺して飛び上がり、銃口を向けた。
ケニー「お…!?おめえもあんまり変わってねぇな!?」
リヴァイはブレードを抜く。
リヴァイ「ケニー!!」
アンカーの射出音と共に、エレンとヒストリアが乗った荷馬車の後ろを付ける三人組。
ハチマン「ハルノさん!馬車が…!」
ハルノ「ッ…馬車はリヴァイ兵長の担当。私たちは立体機動部隊の殲滅よ」
ハチマン「…了解」
ーダンッ!
ハチマン「ッ…!!」
俺がガスの噴射で体を回転させると、体の横ギリギリを散弾が通った。
ハチマン「…」
俺はアンカーを射出して、銃を撃った相手の首に当てた。
「ごふっ…!?」
ハチマン「悪いな」
そのまま地面に叩きつけると、別の敵の方向に向かう。
〜〜〜
リヴァイ「(クソ…俺たちの行動が読まれてる。このままじゃ部下もエレンもヒストリアも失う…よりによってなぜヤツが憲兵に…)」
すると、リヴァイの目の前に三人の憲兵が飛んで現れた。
ードンッ!!!
六つ銃声が重なり、リヴァイに向かっていく。
リヴァイ「ちッ…」
リヴァイは建物の壁を蹴り、銃弾を避ける。
だが、その先にも二人の憲兵がいた。
リヴァイ「(待ち伏せ…!!あの野郎…)」
ードンッ!ドンッ!
リヴァイ「クッ…!」
地面ギリギリを滑りながら移動するリヴァイ。
リヴァイ「!」
額に銃弾が掠った。
リヴァイ「ッ…」グイッ
リヴァイは体勢を立て直すと、近くの酒場にアンカーを射出。巻き取りを始めた。
ーバンッ!ドンッ!
先ほどまで楽しそうにしていた雰囲気が一瞬にして凍りつく。
「り…リヴァイだ…」
「調査兵団の…」
リヴァイ「チッ…」
リヴァイは目に付いていた血を拭った。
ケニー「どうもこの店から…薄汚ねぇネズミの匂いがするな。どチビのネズミのよぉ…」
ケニーは勢いよく店に入る。
ケニー「みーつけたー!!憲兵様が悪党を倒しに来たぜ!!バン!!バン!!」
「ひッ…」
店の店主は、リヴァイとケニーを見て身を震わせた。
ケニー「何だいねぇのかよ!」
リヴァイ「ここだケニー。久しぶりだな。まだ生きてるとは思わなかったぜ…憲兵を殺しまくったあんたが憲兵やってるんだって?
ハッ……あんたの冗談で笑ったのは正直これが初めてだ」
ケニー「ガキには大人の事情なんてわかんねぇもんさ。おっとすまねぇ。お前はチビなだけで歳はそれなりに取ってるんだったな」
リヴァイ「…」
ケニー「お前の活躍を楽しみにしてたよ。俺が教えた処世術がこんな形で役に立つとはな」
リヴァイ「…」カチャッ
リヴァイは置いてあった銃を持った。
「ひッ…!」
ケニー「しかし…俺ならこんな酒場に逃げ込むマネはしねぇ」
リヴァイは人差し指を口の前にやって、店主に口を開かないよう要求した。
ケニー「袋のネズミって言葉を俺は教えなかったか?これじゃあお前がどっから逃げようと上からズドンだぜ?なぁ…リヴァイ」スッ
ーガシャンッ!!
ケニーは椅子を投げ、リヴァイの前にある酒の棚を割った。
ケニー「どうしてお前が調査兵になったのか…俺にはわかる気がするよ。俺らはゴミ溜めの中で生きるしかなかった。その日を生きるのに精一杯でよぉ…世界はどうやら広いらしいってことを知った日は…そりゃ深く傷ついたもんだ」
リヴァイは目の前の酒瓶を少し回転させ、反射でケニーが見れるようにする。
ケニー「…だが、救いはあった。やりたいことが見つかったんだ。単純だろ。単純だが…実際人生を豊かにしてくれるのは"趣味"だな」
リヴァイ「…趣味か。俺の部下の頭を吹っ飛ばしたのもあんたの趣味か?」
ケニー「あぁ…大いなる目標のためなら殺しまくりだ。お前だって、てめぇのために殺すだろ?」
リヴァイ「あぁ」トンッ
ードンッ!
リヴァイは後ろ向きに銃を構えて、ケニーを撃った。
ケニー「ッ!!」
ケニーは咄嗟に椅子で受けたが、扉の奥…外へ吹き飛んでいった。
〜〜〜
「ッ!?」カチャッ
憲兵の一人が銃を構える。
「待て!!アッカーマン隊長が!?」
「撃たれ__」ピュッ
ハルノ「うちの兵長はそんな簡単にやられないよ」
ハチマン「にしても危なかったっすね」
〜〜〜
リヴァイ「助かったよじいさん」
リヴァイは銃を返した。
「ひぃぃぃぃ…!」
ーガシャッ!!
ガラスを突き抜けて、酒場の中から何かが出てきた。
ードンッ!ドンッ!
憲兵たちは、それを撃ち抜く。が…
「なっ…!?椅子!?」
リヴァイ「ッ…!」ダッ
リヴァイは銃を撃ち終わった後に外に出る。そして、憲兵の一人の首にアンカーを刺した。
「ごッ…!?」
そのままそいつをアンカーで自分の元まで持ってくると、そいつを盾にしながらもう二人の憲兵に接近。
「は…ッ…??」
「ッ!?」
ーグサッ
そのまま二人の首を掻っ切った。
リヴァイ「(十人以上いるか…!あれは…)」
リヴァイは後ろを追ってくる憲兵を見ていたが、さらにその後ろにいる人物達を見る。
リヴァイ「(ハルノ…ハチマン、アニ…)」
〜〜〜
「アッカーマン隊長。やっと死んだんですか?」
ケニーの部下の一人が、倒れている彼の元に向かってきた。
ケニー「…バカ野郎…死人がどうやって返事するってんだよ。イテテ…やられちまったぜ。そういや酒場なんかは護身目的に銃の所持が認められてたな…どチビなりに成長してたらしい」
「…よかったですね」
ケニー「あぁ?いいわけねぇだろ。俺の夢が遠退いちまうたろうが」
〜〜〜
エレン「何があったんですか!」
エレンは荷馬車から顔を出し、ケイジに聞いた。
ケイジ「出るな!」
ケイジは追跡して来る憲兵に気付き、速度を上げたが…
ーバシュッ
アンカーを引っ掛けて、荷馬車を覆っていた屋根を引き剥がされる。
エレン「!?」
ードンッ!ドンッ!
エレンとヒストリアに麻酔銃が撃たれた。
エレン「ぁ…」ドサッ
ケイジ「エレ──ッ!」
ーダンッ!!
ケイジが振り返ると同時に、頭を散弾で吹き飛ばされる。
そして、エレンとヒストリアを乗せた馬車は憲兵に奪われた。
〜〜〜
ミカサたちは、銃声のする方に立体機動で迫ってきていた。
ミカサ「エレン!」
ミカサがエレンとヒストリアを乗せた馬車を発見。
ジャン「…兵長!」
その後ろを追うリヴァイ。その目の前に憲兵が現れるが、すぐにその二人を斬り裂いた。
ジャン「なんだありゃ…!」
ジャンは憲兵の使う新型の立体機動装置を見て驚く。
五人はそのままリヴァイに合流した。
リヴァイ「いいか、奴らは対人の戦闘に慣れている。もう二人やられた。エレン達を取り戻すためには躊躇するな!
殺せる時は殺せ!分かったか!」
ミカサ「…はい!」
ジャン「…ッ」
リヴァイ「アルミン、ジャン!馬車に移れ!
あとは援護だ!」
ジャンとアルミンは、リヴァイの指示通り馬車に乗り込んだ。
だが、それに気づいた女憲兵が後ろを振り向き、銃口を向ける。
ハチマン「ッ…!」
俺は後ろから憲兵の首を蹴り、荷台まで吹き飛ばした。
ミカサ「ハチマン!」
ハチマン「悪い。遅くなった」
ハルノ「こいつら本当しつこいんだよね〜」
〜〜〜
ジャン「動くな!」
ジャンは女憲兵に銃口を向ける。
だが、女憲兵はゆっくり体勢を変え始めた。
ジャン「動くなっつってんだろ!!」
ーガキィンッ!!
ジャン「うぉ!?」
女憲兵は、ジャンの銃を叩き飛ばした。
ジャン「あ、あぁ…」
そして、そのままジャンは追い込まれる。
ミカサ「ジャン!!!」
ジャンに向けられる散弾の銃口。
アルミン「ッ…!!」
ーダンッ!!
ハチマン「!」
ハルノ「…ふぅん……」
アルミン「クッ……」
女憲兵の頭に風穴が空き、馬車から転げ落ちていった。
銃を撃った張本人はアルミン。憲兵が引き金を引くよりも早く、銃を撃ったのだ。
ハチマン「…まずい…!アルミン!ジャン!」
俺は二人に銃口を向けようとしている憲兵を見た。
俺とリヴァイ兵長がそれぞれ突き飛ばし、馬車から下ろした。
ーダンッ!ダンッ!
先ほどまで二人がいた場所に複数箇所の穴が空いた。
ハチマン「ちッ…!」
三人の憲兵が馬車に乗り込むと、振り返って俺たちに散弾を撃ち込む。
ーダンッ!!
ハチマン「ッ!」
俺は体を捻って、銃弾を避けた。
馬車が壁の扉を通った後も、何人かの憲兵が後を追って行った。
ミカサ「クッ…!」
ミカサはその後を追おうとするが…
リヴァイ「ダメだ!一度退く!!」
ミカサ「ッ…!!エレンーッ!!」
ハチマン「クソッ…」
〜〜〜
アルミン「あ"あ…うッ…!…ガハッ!」
ミカサ「アルミン!」
ミカサは、吐き続けるアルミンに駆け寄ると、背中をさすった。
アルミン「ミカサもこうなったの…?」
ミカサ「え…」
アルミン「あ…!あぁ…ごめん…ミカサ」
ミカサ「いいよ」
アルミン「ごめん…ごめん…」
〜〜〜
ーガラッ
ミカサ「見張り、交代」
ジャン「あぁ…アルミンは?」
ミカサ「…まだ外」
ジャン「そうか…」
:
:
〜リーブス商会の倉庫〜
リヴァイ「どうしたアルミン。こんな汚ねぇ場所じゃ食えねえってのか」
アルミン「…いえ。…ジャン」
ジャン「…何だ?」
アルミン「一つ…わからないことがあって。その…僕が銃を出そうとした時…正直間に合わないと思ったんだ…ごめん…でも、相手の方は既にジャンに銃口を向けていたから…なのに…」
ジャン「…」
アルミン「何で先に撃ったのは…僕なんだろうって……」
ジャン「……それは…」
アルミン「ジャン?」
リヴァイ「相手が一瞬撃つのを躊躇した。そうだろ?」
アルミン「え…」
ジャン「アルミン…すまねぇ…俺が撃たなきゃいけなかったのに…」
アルミン「そうだったんだ…僕が殺した人はきっと優しい人だったんだろうな…僕なんかよりずっと人間らしい人だった…僕はすぐに引き金を…引けたのに。僕は───」
リヴァイ「アルミン。お前の手はもう汚れちまったんだ。以前のお前には戻れねぇよ」
ミカサ「なぜそんなことを…!」
リヴァイ「新しい自分を受け入れろ。もし今もお前の手が綺麗なまんまだったらな、今ここにジャンはいないだろ」
アルミン「…!」
リヴァイ「お前が引き金をすぐに引けたのは、仲間が殺されそうになっていたからだ。
アルミン。お前が手を汚してくれたおかげで俺たちは助かった。ありがとう」
ジャン「……リヴァイ兵長。俺は…あなたのやり方は間違ってると…思っていました。いや…そう思いたかった。自分が…人に手を下すのが怖かったからです…でも、間違っていたのは自分でした。次は必ず撃ちます」
リヴァイ「何が本当に正しいかなんて…俺は言ってない。そんなことはわからないからな。お前は本当に間違っていたのか?」
ジャン「…え?」
リヴァイ「さてと…そろそろアイツらの話を聞かないとな」
リヴァイは男の猿轡を外した。
リヴァイ「お前がここの商会のボスか?」
「違う…違うんだ。俺は馬車の運送にコキ使われてるただの老耄だ。だから…ひでぇことはやめてくれよ旦那…俺は何も知らね……あ…」
男はミカサを見て視線を止めた。
ミカサ「ん?…あぁ、あの時の…こいつです。以前街で部下から会長と呼ばれていました」
「チッ…」
リヴァイ「あぁ…知ってる。ディモ・リーブスだろ」
ディモ「中央憲兵に命令されて従っただけだ。しかも失敗したからな。リーブス商会はこれから全財産没収。俺やあのバカ息子はもちろん。部下達まで…何らかの事故にあって死ぬだろうな」
リヴァイ「黙って殺されていいのか?」
ディモ「ん?」
リヴァイ「破綻寸前のトロスト区が何とか持ってるのは、リーブス商会が人と仕事を結び付けてるのが大きい。だが、商会が無くなったら…一体何人が冬を越せるだろうな」
ディモ「まさか…あんたらにつけと?」
リヴァイ「俺たちはどうしてもエレン達の行き先が知りたい。憲兵御用達のあんたたちなら、できることがあるだろ」
ディモ「それで町と俺の部下が餓死するのを止められるってのか?」
リヴァイ「保証はしない。ただ、そのために動くことだけは信用してもらっていい」
〜宿舎〜
ーバンッ!
ハンジが勢いよく扉を開けて入ってきた。
ハンジ「エルヴィン!事態が悪化した。それも二つだ!一つは…エレンとヒストリアが拉致された。私の部下が二人もやられた」
エレン「エレンが…ベルトルトとユミルの会話を思い出したんだけど…これが事実だとしたら…飛びそうだ頭がぁ…!」
モブリット「落ち着いて下さい分隊長!」
エルヴィンはコップに水を注いで、ハンジに差し出した。
エルヴィン「問題は何だ?」
ハンジ「ゴクッ…ゴクッ……早く救出しないと…
"エレンは食われる"!」
〜〜〜
ービュオォッ
強い雨の降る嵐の中、馬車が道を上がっていく。
乗っているのはニック司祭を殺したサネスと、その部下だ。
サネス「オイ!リーブス!本当にこんな所にエレンとクリスタがいるんだろうな!」
ディモ「はい!巨人の力を使い果たしたエレンを洞窟に閉じ込めているんです!急ぎましょう憲兵の旦那!」
ーガコッ
馬車の荷台が道から外れ、崖から川へ落ちていく。
「あ!!サネスさん!!」
サネス「うあああああ!!」
ディモ「何て事だ…俺の部下…俺の馬が…」
「おい!何とかしろ!任務が___」
ディモ「クソ!!奴らが馬を急かすからこんなことに!!ここを越えるのは今日は無理だってあれほど言ったのにクソッたれがあぁ!!」
「と、とにかく!!救援を要請してくる!!」
そう言ってサネスの部下は馬を走らせて行った。
ディモ「(ひとまずは…上手くいったかもしれんが…これは時間稼ぎにしかならねぇ…)」
部下がいなくなった所で俺とミカサが二人を崖の下から回収した。
ディモ「(これからだ…途方もねぇ戦いになる)」
〜〜〜
サネス「おい!?待て!!目的を言え!!」
ハンジ「うるさいな!!こっちは人間の拷問なんて初めてなんだよ!!」
ハンジとモブリットは、エルヴィンへの報告後すぐにリヴァイと合流。サネスの拷問に参加していた。
サネス「拷問ならせめて何か聞け!!何も聞かずに爪を剥がす奴があるか!!」
ハンジ「黙ってろ!!全部剥がしてからが本番だ!!…あっ…!」
サネス「ッ!?」ボキッ
サネスの爪ではなく、第一関節が反対側にへし折れた。
〜〜〜
サネス「ああああぁぁああぁあぁ!!?」
ハチマン「…」
ジャン「ついに始まったか…まったくよぉ…俺は巨人と殺し合ってるつもりだつたんだが、いつの間に敵が何なのかわかんなくなっちまってる。なぜ俺たちはこんなことに手を染めてんだ?」
ハチマン「仕方ねぇだろ…俺たちはクーデターをやってるわけだし。あの時の…団長の計画通りにな。まだこんなもんでは済まねえよ」
サシャ「私たちって…もう反逆者なんですよね。失敗したらどうなりますか?」
ジャン「そりゃ吊るされんだろうが…広場とかで」
アルミン「100年以上続いてる体制を変えようっていうんたからね…」
ハチマン「…前例はないんだろうが、民衆を味方にするのはどうだ?度重なる巨人の襲撃で壁の中は混乱状態。コレを利用すれば…例えばこれまでの事件を全て王政の責任にするとか、それで民衆の不安を煽れば上手くいくかもな」
アルミン「ただその場合は民衆にも銃が向けられて様々な悲劇を生むことになるよ…人類全体のことを思えばそれを仕方のないのかも…」
ハチマン「何か象徴的な事件をでっち上げてその全てを王政か中央憲兵のせいにすればいいだろ?そこに調査兵団が救世主のように現れて、王政を打倒すれば民衆の味方は調査兵団しかいないってことを思わせられる。民衆は記事一つで騙されるようなやつらだしきっと___」
「「「「「」」」」」
アルミン「なんちゃってね…」
ハチマン「」
ジャン「アルミン…あの変態に嬲られて汚れちまったんだな…」
アニ「バカ、ボケナス、ハチマン」
ハチマン「ハチマンは悪口じゃねえだろ…」
アルミン「…でも、僕らはもう犯罪者だよ」
ハチマン「!」
アルミン「今相手にしている敵は僕らを食べようとするから殺すわけじゃ無い。考えた方が違うから殺すんだ…もしくは所属が違うってだけかもしれない…この先そんな理由で…人の命を奪うことになるかもしれない…
"僕らはもういい人じゃないよ"」
ハチマン「…別に、"いい人"である必要はないだろ。"何か"であろうとしたって、そんなの
疲れるだけだからな」
〜〜〜
ーゴンッ!バキッ!
リヴァイ兵長のワンツーがサネスの顔面に入った。
リヴァイ「…ニックが受けたメニューってのはこんなところか」
ハンジ「サネス。見てくれ」
ハンジはトレーに乗ったサネスの十枚の爪を見せた。
ハンジ「いや〜なかなか難しかったよ。やってるうちにコツを掴めて来たんだけど…」
サネス「…」
ハンジ「ごめん…サネスほど上手くは剥がせなくて…一体何枚剥がせばあんなに上手くなれるの?」
サネス「数え切れないな……お前らは、何でこの狭い壁の中で今まで戦争が起きなかったかわかるか?俺達第一憲兵がこの汚ねぇ手で守って来たんだよ!火種がどこかで生まれる度に一つずつ消していった」
下手に利口な教師から…王を脅かすような銃を作ってやがったじじい共も…空を飛ぼうとした馬鹿な夫婦も…田舎の牧場にいた売女も…!!
サネス「全部俺たちが消したから…人類は今までやって来られた!!それもこれも全部俺達第一憲兵のおかげだろうが!!感謝しろよ!!」
リヴァイ「そうか…大変だったな。お前らはお前らなりに…頑張った。それはよくわかった」
すると、リヴァイ兵長はサネスの鼻を掴み、
へし折った。
サネス「ッ〜〜!!クッ〜!!」
リヴァイ「そろそろ拷問を始めよう。いいか?質問に正確に答えなければお仕置きだ。
レイス家とは何だ?」
サネス「お前ら程楽しそうに人を痛めつける奴は見たことがねぇ!バケモンだ!!でも…俺は怖くねえんだよん…俺は…俺には…王がいる。俺は…この壁の安泰と王を信じてる。俺たちがやってきたことは間違ってないと…でも…こんなに痛かったとはな…」
ハンジ「…」
サネス「俺を嬲り殺しにしてくれ…それが、俺の…血に染まった人生の全てだ」
リヴァイ「…休憩だ」
ハンジ「困ったねぇ…なんか可哀想になっちゃったね」
三人は拷問室から出て行った。"少しだけ扉を開けたまま…"
サネス「…」
:
:
ナルフ「おい、痛てぇな…」
リヴァイ「情けないやつめ。爪一枚で全部喋りやがって」
サネス「…!」
リヴァイ「サネスの爪はもう残ってねぇんだぞ。お前とは大違いだ」
ナルフ「知るかよ…それはアイツの勝手だ。王だの平和だの暑苦しい奴で、俺らは迷惑してたんだ。あんた達で奴を殺してくれよ」
リヴァイ「お前の証言と一致するか確認するまではダメだ」
ナルフ「もう俺の証言したことで全て当たってるのに抜かりねぇな。なぁ、俺の牢には…ベットはあるのか?」
サネス「ぁ…あぁ…」
:
:
ーギイィッ
扉を開けて入ってきたのは…今度はハンジとハルノ。
ハルノ「サネス君。よろしくね♪」
サネス「"レイス家が本当の王家だ"」
〜〜〜
ディモ「たく…一眼につきたくねぇってのに…フレーゲルのやつ…どこまで」
フレーゲルは用を足しに、町の路地に入って行っていた。
ディモ「ふぅ…」
ディモはそれを待つ間に、タバコに火をつけた。だが…
ーバンッ
ディモ「んぅ!?ん〜ッ…!?」
ディモの口が、長身の男に覆われ、首元にナイフが突きつけられる。
ケニー「商人ってのは、信用が売り物じゃなかったのかよ?」ジャキッ
ディモ「んッ…!?……………」
「リヴァイたちの居場所を聞き出さなくてよかったのですか?」
ケニー「黙ってても奴は出て来る」
「わかるんですか?」
ケニー「俺が育てたからな。"リヴァイ・アッカーマン"ってのはそういう奴だ」
そう言って、二人はその場を立ち去った。
フレーゲル「ぁ…あぁ…ッ…!」
〜〜〜
アルミン「正当な王位継承者?ヒストリアが?」
ハンジ「つまり、エレンもヒストリアも
ロッド・レイスの元にいる可能性が高い」
モブリットはロッドの似顔絵を壁に貼った。
リヴァイ「こいつだ」
〜??〜
ロッド「…ヒストリア。今まですまなかった」
ヒストリア「…!」
ロッドはヒストリアを抱きしめながら、謝罪の言葉を述べた。
エレン「…」
ハチマン「…」
アニ「どうしたのハチマン」
ハチマン「いや…わからないことがあってな…」
アニ「何?」
ハチマン「俺は…何も思わなかった」
アニ「…」
ハチマン「考えたのは…どうやって殺すかってことくらいか…ジャンみたいに躊躇はしなかったし…アルミンのように後悔もしてない…」
アニ「ハチマンが躊躇しなかったのは、仲間のためでしょ…アルミンと同じ」
ハチマン「でも…そうやって仲間のためを思っても…アルミンは…泣けたんだ…だけど俺は……
涙なんて…一滴も出ねぇんだよ…」
こっちに来てからいつもそうだ…どこか他人事みたく思えて仕方ないし…きつい鍛錬だって何も感じなかったから簡単に毎日続けられた。
理性の化け物なんてものじゃない…単純に抑えつける感情が壊れたんだ…その証拠に…俺は…ここの世界で一度も恐怖なんてものを感じたことがない。
アニ「嘘」
ハチマン「…はぁ?」
アニ「だってほら」
アニは俺の頬に手を当てると、何かを拭き取った。
アニ「本当は苦しいんでしょ」
ハチマン「!」
アニ「ハチマンは何で調査兵団に入ったの?
ライナーに言われたからとかじゃなくて、ハチマンの理由を教えて」
ハチマン「……見たくなったんだ」
アニ「え?」
ハチマン「アニは何でなんだ?」
アニ「…私は、ハチマンが入るって言ったからかな」
ハチマン「え?」
アニ「私はずっとハチマンと一緒にいたいから」
ハチマン「!?」
アニ「私はもっとハチマンのことが知りたい。それだけ」
ハチマン「それだけってつってもな…」
アニ「そろそろ戻ろう。ハンジさんが探してると思う」
ハチマン「…ああ」
〜〜〜
ヒストリア「私は…ウォール・シーナ北部の小さな牧場で生まれました」
貴族家・レイス卿の領地内にある牧場です。
私は物心ついた時から牧場の手伝いをしていました。
母はいつも本を読んでいて、家の仕事をしている姿は見たことがありません。とても美しい人でした。
夜になると、誰かが馬車で迎えに来て、派手に着飾った母を乗せて街に行きました。
私にとっては、それがいつもの生活でした。
八歳の時に、ハチマンと出会って初めて友達というものができました。
ハチマンに字の読み書きを教えてもらい、母の真似事で本を読み出した時、私は自分が孤独であったことを知りました。
どの本にも…親は子に関心を示し、話しかけたり抱いたり、叱ったりするものとして書かれていたのです。
私にはそのどれも経験の無いことでした。母とは会話もしたことがなかったです。
ある日私は好奇心で母に────
ヒストリア「お母さん!」
と抱きついてみました。
母がどんな顔をするか興味があったのです。
だが、そのあとすぐに、おもいきり突き飛ばされた。
結果は突き飛ばされただけでしたが、母が私に
に何かしたのは初めてだったので私にはそれが嬉しかった。
「こいつを殺す勇気が...私にあれば...」
母が私に発した、最初の言葉でした。
それ以来母は家を出て、他の場所で暮らし始めました。
そして5年前の"あの日"____
ウォール・マリアが陥落して数日経った夜…
「はじめまして、ヒストリア。私はロッド・レイス。君の父親だ」
5年前。ウォール・マリアが陥落した数日後の夜、初めて父と会いました。その男性はこの土地を治める領主の名前を名乗り、数年ぶりに見る母はひどく怯えているようでした。
ロッド「ヒストリア、これから私と暮らすぞ」
そう父に言われ手を引かれましたが、外には
中央憲兵が来ていました。
母「きゃあッ!」
ケニー「困りますなレイス卿。このような真似はご容赦いただきたい。ウォール・マリアが破られたことで不安に襲われましたか?」
母は逃げようとしましたが、すぐに男に拘束されました。
ヒストリア「お母さん!」
母「違う!私はこの子の母親ではありません。私とは何の関係もありません!」
ケニー「ほほぅ?本当ですかなレイス卿?この女も、その子もあなたとは関係が無いと」
ロッド「…仕方ない。この二人は私と何の関係もない」
ケニー「やはりそうでしたか」ドサッ
男は母を地べたに押し付けると、ナイフを突きつけました。
母「何を…!」
ケニー「お前は存在しなかった。屋敷に勤めていたこともない。誰もお前のことなど知らない」
母「そんな…!旦那様!話が違うではありませんか!」
ヒストリア「お母…さん…」
母「お前さえ…お前さえ産まなければ__」
それが、母の最後の言葉でした。
ロッド「待て」
私も殺されそうになる直前で、父はある提案をしました。
ここよりずっと遠くの地で、慎ましく生きるのであれば、見逃してやってはどうかと。
ロッド「君の名は…クリスタ・レンズだ」
〜〜〜
ロッド「今までのことを許してくれ。お前を守るためにはああするしかなかったんだ」
ヒストリア「お…父さん…」
ロッド「いつだってお前のことを思っていた。こうやって抱きしめることをずっと夢見ていたんだ」
ヒストリアの頬を、涙が伝った。
ロッド「それは、お前こそが王家の血をひく者だからだ」
ヒストリア「私が...?」
ロッド「そうだよヒストリア。私たちレイス家こそ本当の王家なんだ。そしてお前こそが、人類を救うことができる唯一の存在なんだよ」
ロッド「さあ行こう。ヒストリア。すべてが始まった場所へ」
エレン「…」
〜〜〜
アルミン「エレンが食われる…!?」
ミカサ「…ッ!」
ハンジ「あぁ…エレンが思い出した会話の内容はこうだ」
〜〜〜
ユミル『私を恨んでいるか?』
ベルトルト『どうだろう…よく…わからない…君も人なんか食べたくなかっただろうし』
〜〜〜
ハンジ「そこから推測するに…ユミルは壁の外を彷徨く巨人の一人で、ベルトルトやライナーの仲間を食べたんだと思う」
ハチマン「!」
アニ「…」
ハンジ「当然巨人は、人を食べても人には戻らない。しかし、ライナーたちの仲間なら、それは巨人化の能力を有した人間だろう。つまりは、巨人がその巨人の能力を持つ人間を食べると人間に戻り、更に相手の能力を手に入れるんだ」
ハンジ「先日の戦いで、ライナーは逃げたエレンに巨人を投げつけたと言う。巨人を操れるという、"叫び"の力を他の巨人に移そうとしたんじゃないか?だとすれば…エレンは器であって交換可能な存在なんだ。つまり、もし王政が巨人を持っていれば、エレンはそいつに食われるだろう」
ミカサ「…」
ミカサは扉の外に出ようと、歩き出した。
リヴァイ「落ち着け。お前が取り乱したところで奴らがエレンを返してくれるわけじゃねぇ。とにかく、そのロッド・レイスとやらの領地を目指す。すぐに出発の準備をしろ」
「「「「「ハッ!」」」」」
ハルノ「私はエルヴィン団長にレイス家の情報を伝えて来るよ。結果を待ってるはずだから」
リヴァイ「あぁ」
ハルノ「レイス卿の領地で落ち合おっか。連絡は例の場所で」
〜〜〜
ーコンコンッ
ノックがなり、エルヴィンの部屋に兵士が入ってきた。
「失礼します。エルヴィン団長。ピクシス司令がお見えです」
エルヴィン「司令が?」
「はい。団長にお目にかかりたいと」
エルヴィン「…通してくれ」
ピクシス「夜分遅くにすまんな。居ても立っても居られないいられんくてのう。手紙は読ませてもらった。儂なりの考えも持ってきた。
その上で聞くが、本当にやるのか?」
エルヴィン「はい。我々はウォール・マリア奪還のため、王政を打倒します」
ピクシス「この狭い壁の中で…ついに人同士が血を流し合うというのか…」
エルヴィン「…」
ピクシス「いつかその日が来ると思っとった。
王が壁の外に興味を持つことを御法度として、107年。この狭い世界の中に人を留め続けることに限界を迎える日が近いうちに必ず来ると…その時が来れば、ワシも王に銃口を向けねばなるまいと…」
エルヴィン「…」
ピクシス「ワシは…お主が目論んだ通りの思想を持っとる。ただし、一老兵に過ぎぬワシには部下を人同士の争いに導くような権利は無いのだ」
エルヴィン「…ええ。ですが、あなたには私を裁く権利がある」
ピクシス「ほぅ…そのためにワシに話すというのか。いいじゃろう…ワシが納得すれば今の地位を捨てて調査兵の新兵としてお主につこう。ただ、お主がやろうとしておることが間違っておるとすれば…容赦はせん」
エルヴィン「覚悟の上です」
ピクシス「して…エルヴィン。どうするつもりじゃ?やはり武力を持って王都を制圧するつもりか…お主らであれば不可能ではなかろう。
じゃが、それでどうなる?この壁の世界の支配者の首を掲げて、民衆は従うじゃろうか?」
エルヴィン「…」
ピクシス「少なくとも貴族家は従わないじゃろう。銃を所持する貴族家と残存する王家支持派が反旗を掲げる筈じゃ。
武力による革命ではこの事態を回避できん。
ウォール・マリアの奪還どころではなかろう。エルヴィン、ワシにこれ以外の未来を提示できるのか?」
エルヴィン「我々は王の首をすげ替えるつもりです」
ピクシス「…そうか、残念じゃ」
エルヴィン「ただし、武力を行使するつもりはありません。人を殺すこともあってはなりません」
ピクシス「ほぅ…ではお聞かせ願おうか。そのような革命があり得るのか」
エルヴィン「ただ、それが叶うのに最も重要な根拠がまだありません…その決め手となるものがもし違っていれば…我々は皆、首をくくることになるでしょう」
ピクシス「は〜…何じゃ…要は、またすべて賭け事なのか…?」
エルヴィン「はい…どうも私は博打打ちのようです。今はその便りを待っています…どうかそれまで私の子供の頃の話でも聞いてください」
ピクシス「ん…?」
エルヴィン「私の父は教員でした。私の育った地域の教室を担当してましたので、私は父の
教室で学んでいたのです」
あの日のその教室で、私の人生は決定付けられることとなりました。
その日は歴史を学びました。人類がこの壁に追い詰められていく経緯について…誰もが教わることです。
この壁に人類が逃げ込んだ際、それまでの歴史を記すような物は何一つ残すことができなかった。人類の大半は失われ、住み処は僅かにしかなくなったが、争いの絶えなかった時代と決別できた。
我々はこの壁の中で理想の世界を手にしたのだと…そこで私は…
エルヴィン「先生」
あることを疑問に思い父に質問しました。
「…」
父は私の質問にはまともに答えず、そのまま
授業を終了しました。
しかし…家に帰った後で父は私の質問に答えたのです。王政の配布する歴史書には数多くの謎と矛盾が存在すると。
そもそもの謎は文献など残っていなくても…壁に入って来た世代がその子供に歴史を語り継ぐことができるはず。むしろ完全に口を噤んで次世代に外の情報を残さないことなど、本来は不可能に近いと。
そこからの話は、子供ながらにも突拍子がないと感じました。
そして、なぜ父がこの話を教室で話さなかったのかを察せられるほど私は賢くありませんでした。
私が街の子供達に父の話をして、その詳細を
憲兵に尋ねられた日…父は家に帰って来ず、遠く離れた街で事故に遭って死にました。
私の密告により、父は王政に殺されたのです。
ピクシス「…」
エルヴィン「いつの間にか父の仮説は私の中で真実となり、私の人生の使命は父の仮説を証明することになりました」
エルヴィン「今から107年前。この壁に逃げ込んだ当時の人類は、"王によって統治しやすいように記憶を改竄されたのです"」
ピクシス「……ほぅ…そんなことでも起きん限りこの壁の中の社会は成立しえんからか?」
エルヴィン「はい。それが父の仮説です。そして私はついに…父の仮説を裏付ける奇跡を目の当たりにしました。エレンが巨人を操ったのです」
エルヴィン「鎧の巨人も似たようなことをしていました。巨人の力を操る人間の中には…叫び声などを上げて不特定多数の意識を同時に操ることのできる者がいるようです」
そして、ラガコ村で判明した事実によれば…人間と巨人は生物的に無関係ではない。
その"叫び"の影響を受けるのが巨人に限らないのだとしたら…更に王政の我々に対する干渉が過激化したのはエレンが巨人を操ったという現象が王政に伝わって以降です。
エルヴィン「つまり、王政が欲しているものは厳密に言えばエレンの"叫び"の力ではないかと思われます」
ピクシス「……うむ…すると、話が変わってくるのう…当初の王政はエレンを殺すことを目的のようにして審議所で争った。その実、エレンの能力を欲しているのは、その"叫び"が巨人から人類を守る手段であるからではないのか?」
エルヴィン「ええ…私も五日前までは同じ希望を持っていました。王都で総統局に召集されるまでは…」
子供の頃からずっと考えていました。なぜ父は真実に近づいただけで死ななければならなかったのか…王政の役人にも彼らなりの正義があるはずだと…。
しかし、彼らについて分かったことは一つ。
彼らが守りたいものは人類ではなく彼らの庭付きの家と地位だけ。むしろ自分達の権利が脅かされるのならば、その相手が巨人でなく人間であっても区別無く排除する。
エルヴィン「やはり父の死に正当性は微塵もなかった。父は人の持つ欲と…愚かな息子によって殺されたのです。王政からすれば…死んでも構わない人間の数が多すぎる。
王政にエレンを託してはなりません」
ピクシス「そうじゃの…残念じゃ。それで…血を流さずに済む革命などありえるのか?」
ーコンコンッ
ピクシスの言葉に重なるように、ノック音が響いた。
ハルノ「失礼します。エルヴィン団長」
ハルノはエルヴィンに耳打ちをした。
エルヴィン「やはりそうだったか。どうやら、私の賭けは当たったようです。司令。捉えた中央憲兵が自白しました。
現在の王家は本物ではありません。レイス家が本当の王家です」
ピクシス「な、なんと…!」
エルヴィン「現在リヴァイたちが、エレンとヒストリアの救出に動いています。二人を奪還し、ヒストリア・レイスを王に即位させます。真に王家の血を継ぐ者として」
ハルノ「…」
ピクシス「仮初の王から、冠を譲らせるわけか。真の女王に」
エルヴィン「血を流すことなく、王政の打倒が叶います。民衆の前で、これまでの体制は嘘であるという宣言と共に」
ピクシス「いいじゃろう。お主の計画に乗ろう。ただし、実行するかどうか、それを決めるのは儂等ではない。わかっておるな、エルヴィン」
エルヴィン「もちろんです。司令」
:
:
ピクシス司令が帰った後────
ハルノ「それで、レイス家の調査は?」
エルヴィン「できる限りは調べておいた。その中に一つ、興味深い事件が見つかった」
エルヴィンは一冊の本を、ハンジに渡した。
ハルノ「事件…?」
ーガチャッ
「エルヴィン団長!中央憲兵が団長に出頭を命じてます!組織殺人の容疑だと騒いでます。それも町のど真ん中で」
エルヴィン「敵もただ手をこまねいているわけではないようだ。ハンジ、ここから離れろ」
ハルノ「どうするつもり?」
エルヴィン「俺は調査兵団の表の顔を通す。
お前は自分の判断に従って動け。
何より、次の調査兵団団長は…
ハルノ・ユキノシタ。お前だ」
ハルノ「…!」
エルヴィン「調査兵団を任せたぞ」
そう言ってエルヴィンは部屋から出て行った。
〜〜〜
「おい来たぞ…」
「エルヴィンだ…」
三人の遺体を囲むように、沢山の人間が集まっていた。
憲兵「彼が誰かわかるな?エルヴィン」
エルヴィン「…リーブス商会の会長。ディモ・リーブス氏」
憲兵「昨日、ここでエレン・イェーガーがリーブスの部下たちに襲われ連れ去られた。
しかし、それは王政からのエレン引き渡し命令を回避するため、調査兵団がリーブス商会を使って企てた狂言だった。そうして、調査兵団は用済みになったリーブス会長を口封じのため、殺害。実行犯は現在───エレンを連れて逃亡中と思われる」
エルヴィン「上手い話を考えたな…」
憲兵「貴様らのやっていることは、エレンの持つ巨人の力を私物化することと同義。その行為は、人類憲章第六条に抵触する。当然、内容はわかるな?」
エルヴィン「ここの利益を優先し、人類の存続を脅かした罪。だろう?」
憲兵「その通り。ではここに、同法への重大なる違反を認め、全調査兵の身柄を拘束する」
〜〜〜
フレーゲル「親父…ッ!」
その頃、フレーゲルは路地の間を中央憲兵から逃げ回っていた。
そして、リヴァイたちを除く全調査兵が拘束される。
〜〜〜
そうしてエルヴィンが馬車に乗り込まされそうになっていたが、
エルヴィン「少しいいか」
エルヴィンはディモ・リーブスの元までやってきた。
「主人に近づくな悪党め!」
エルヴィン「先のトロスト区襲撃時に、リーブス氏は財産を持ち出すため、避難の遅れを招いた」
「だから!殺して当然だって言うの!?」
エルヴィン「しかし…トロスト区が破綻寸前まで追い詰められたこの状況下では、町に踏み留まり、あらゆる手を尽くして、行く宛のない人々を支援し、復興を目指した」
「!」
エルヴィン「だが、何者かの手によってその想いは潰えた。この無念…私が必ず!」
そう言ってエルヴィンは憲兵に連れて行かれた。
〜〜〜
ジャン「兵長!買い出し行ってきました」
アルミン「街で憲兵がこんな物を」
アルミンは、リヴァイに街で配られていた記事を渡した。
リヴァイ「…」
アルミン「これが事実なら、調査兵団は解散状態です。午後には山狩りが行われるというし、加えて主要な街道には検問が貼られ、通行証がないと通り抜けは不可能です。兵長、どうしたら…」
ミカサ「早くしないとエレンが…!」
リヴァイ「落ち着け。奴らは馬車を使ってる。レイス卿領地まで、あと一日はかかるはずだ。その間に何とか…策を講じるしかねぇ」
サシャ「…!兵長…足音です。こっちに向かって来ます」
ー数分前ー〜山中にて〜
ヒッチ「ちょっと私たち離れすぎじゃない?」
マルロ「離れないと捜索する意味がないだろ」
ヒッチ「はぁ〜…何であんたとこんな…さてはマルロ、私と二人っきりになりたいんでしょ?」
マルロ「ヒッチ…悪いが俺もお前が相手で残念だ」
ヒッチ「あら、そう…そりゃよかったわ」
マルロ「しかし、おかしいと思わないか?」
ヒッチ「何がよ?」
マルロ「調査兵団が民間人を殺して逃げ回ってるなんて…」
ヒッチ「はぁ?」
マルロ「彼らは人類のために自分の命を投げ打ってる集団なんだぞ?」
ヒッチ「まぁ…それもそうだけど…」
マルロ「このまま調査兵団が解体されたら人類は───」
ハルノ「ふぅん…嬉しいこと言ってくれるじゃない」
マルロ「な…ッ!?」
ハルノは木から飛び降りると、二人の首にブレードを突きつけた。
ヒッチ「ッ…!」
ハルノ「二人とも、銃を前に投げて。それから三歩後ろに下がって」
二人は持っていた銃を投げると、後ろに下がった。
ハルノ「ありがと。それと、通行証を渡して」
マルロ「あ、あの…まさか…ハルノ分隊長でありますか?」
マルロは通行証を渡しながら聞いた。
ハルノ「そうだけど?私のこと知ってるんだ。昇進したばかりなのに」
ヒッチからの通行証も受け取ると、ハルノは答えた。
ハルノ「ストヘス区憲兵支部所属マルロ・フロイデンベルク二等兵」
マルロ「はい」
ハルノ「同じく憲兵支部ヒッチ・ドリス二等兵」
ヒッチ「はい」
ハルノ「二人とも104期の新兵かな…所属もストヘス区のみ。相変わらず新兵ばかりに仕事を押し付ける風習は健在らしいね」
マルロ「は、ハルノ分隊長はここで何を…」
ハルノ「山狩りに来る君たちみたいなのを捕まえようと思って」
マルロ「……は?」
ハルノ「中央憲兵の根城まで案内してもらうよ。まあ、その前に兵長たちと合流してからだけど」
ヒッチ「(拘束も無しに…バカなの?)」
ハルノ「バカじゃないよ。だって、特にマルロ君は私たちを信用してくれてるみたいだからね」
ヒッチ「!?」
マルロ「お、俺に協力させてもらえるんですか!?」
ハルノ「うん。だから、よろしくね」
マルロ「はい!!」
〜トロスト区〜
ロイ「では、調査兵団が民間人を殺害したことは間違いないと?」
ナイル「…状況証拠から見ればな」
ナイルは二人の記者から質問を受けていた。
ナイル「ただ我々も、まだ正確なところを把握できてはいない」
ピュレ「つまり、捜査は中央憲兵の主導で行われたということですか!?」
ロイ「おい…ピュレ!」
ロイはピュレと呼ばれる新人記者からメモ帳を取り上げた。
ロイ「すみませんドーク師団長。こいつはまだ新人でしてね。この壁の理を分かっとらんのですよ。中央憲兵に関わることは一切記述しませんので。例の新型立体機動装置についても」
ナイル「助かるよ、ロイ。(新型立体機動装置…散弾なんぞ巨人には無力だろうが、人を殺すならそれだ。まさに調査兵団を殺すためだけにある兵器。そして、
ナイル「とにかく、奴らからの報告があるまでもう少し待ってくれ」
〜〜〜
フレーゲル「ハァ…!ハァ…!」
「待てぇ!豚野郎!!」
フレーゲルは、三人の中央憲兵に追われていた。
フレーゲル「ッ!」
フレーゲルは角を曲がるが、その先は…
「馬鹿め!そっちは行き止まりだぁ!」
フレーゲル「クソッ!」
ープシュウッ キイィィッ!
フレーゲル「ッ!?」
フレーゲルは、突然降って来たハンジによって屋根の上まで持ち上げられた。
「クソッ!いねぇぞ!?」
「探せ探せ!!」
「逃すなぁ!」
〜〜〜
フレーゲル「ハァ…ハァ…」
ハンジ「リーブス会長のご子息だね。名前は?」
フレーゲル「フレーゲル…」
ハンジ「よろしくフレーゲル。私はハンジ・ゾエ。早速だけど、憲兵に追われてるってことはお父さんの死の真相を知ってるってことだよね?何があったか教えてくれ」
フレーゲル「…俺が小便行ってる間に、親父は中央憲兵の奴らに…黒いコートの長身の男が…親父を殺したんだ」
ハンジ「とにかく、君が生きててよかった。
この真実を明らかにしよう」
フレーゲル「どうやって!?あんた号外見てないのか!?調査兵がやったと憲兵が言えば、そうなるんだよぉ…!俺の証言なんか意味ねぇんだ!俺が現場にいたことは…もう中央憲兵にはバレちまったみたいだ…もう俺の居場所はどこにも…」
ハンジ「商会や家族に…!真実を教えてあげたくないのか!?」
フレーゲル「はぁ!?それあんたらの都合だろ!?」
ハンジ「当たり前だ!!お前も自分の都合を通してみろ!!さぁ、着いて来てもらうよフレーゲル!」
フレーゲル「ひぃッ…!ヤダ!もうあんた達は負けたんだ!敗者なんだよ!!」
ハンジ「何言ってんの?調査兵団は未だ負けたことしかないんだよ」
〜〜〜
リヴァイ「それで…こいつらを使って中央憲兵を探ると?」
ハルノ「そうだよ」
リヴァイ「信用できるのか?」
ハルノ「できる。私が保証するよ」
リヴァイ「…わかった。マルロ、ヒッチ。よろしく頼む」
マヒ「「ハッ!」」
〜〜〜
リヴァイ「あそこが中央憲兵の根城で間違いないみたいだ…」
ハルノ「今度はこっちから仕掛けるよ」
:
:
そんなわけで根城を荒らした挙句、中央憲兵を一人、リヴァイ兵長が連れて来た。
ハチマン「うわぁ…」
アニ「私、拷問だけは一生受けたくない」
「ハァ…ハァ…部下は…殺したか?」
リヴァイ「………残念だがあんたの部下は助けに来ない。あんまり殺すのも困りものだからな。しばらくまともに歩けないようにはしておいた。これで中央憲兵はしばらく使い物になんねぇよ」
「ははっ…勇ましいことで。丸腰の憲兵を片っ端から斬っちまえば誰でも英雄を気取れる……言っとくがあの屋敷には…何も知らない使用人も含まれていた。お前らが見境なく斬った中にも確実にな」
リヴァイ「そうか…それは気の毒なことをしたな」ゴッ
リヴァイは憲兵の口に足を突っ込んだ。
「ッ…!?!」
リヴァイ「俺だって可哀想だと思ってるんだ。特にあんたの口は気の毒でしょうがない。まだまともに喋れるうちに口を使った方がいいぞ。エレンとクリスタはどこだ?」
リヴァイは足を抜いた。
「ガハッ…ゴホッ…ゲホッ…無駄だ。無駄なんだよ…お前らが何をやったって…調査兵…お前らにできることは…この壁の中を逃げ回って!!せいぜいドロクソに塗れてセコセコ生き延びることだけだ───ッ!!!」ドカッ
「ガッ…!」
アニ「すみません。つい」
リヴァイ「…まあ、いい」
「ッ…お前らが出頭しなければ囚われた調査兵は処刑される!!お前らがやったことを考えれば世間も納得する当然の報いだ!!
最初は調査兵団最高責任者である
エルヴィン・スミスからだろう。ただし…お前らが独断でやったことだと…その首を差し出すのなら…他の団員の命だけは何とか助かるだろうがな」
ハチマン「…そんなわけねぇだろ。王政が調査兵団を潰す絶好のチャンスを俺たちの命だけで逃すとは思えない。それと、さっきの兵長の質問に答えなかったよな」
リヴァイ「あぁ…すっかりお仕置きを忘れていた」バキッ
「ぎゃぁぁあ…ッ!!」
リヴァイ兵長は男の右腕の関節を捻り折った。
ハチマン「痛そ…」
アニ「痛そうなんじゃなくて痛いんじゃない」
リヴァイ「うるせぇよ。エレンとクリスタの居場所を言え」
「しっ…知らない!!本当にほとんどのことは教えられてないんだ!!ケニー・アッカーマンはとても用心深い!!」
リヴァイ「アッカーマン…?」
ミカサ「!」
リヴァイ「しかし、心当たりくらいあるだろ?思い出すまで頑張ろうか」
「ひっ…よせ!!」
ハチマン「大丈夫だぞ。骨は沢山あるからな」
「あんたら…まともじゃない」
リハ「「…かもな」」
サシャ「…!!あっちから誰か来ます!!」
リヴァイ「!」ドサッ
「ひッ…!」
全員が警戒体制に入った。
ハチマン「…」チャキッ
「言ったろ兵長…もう無駄なんだよ…何もかもな。お前達のやって来たことを償う時が来た。調査兵団はここで最期だ」