それでも俺は進み続ける。   作:甘味の皇帝

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season3 Part4

〜トロスト区〜

 

エルヴィン「…つまり、エレンの父

グリシャ・イェーガーは"壁の外から来た人間"

である可能性が高いと…」

 

エレンが礼拝堂で見た記憶により、エレンの父グリシャが壁の外から来た人間であることが判明した。

 

エレンの記憶には調査兵団の男が映っていたが、それは教官のキース・シャーディス。彼が壁の外にいたグリシャを発見したのだ。

 

ハンジ「そう…ライナーやベルトルトと同じように彼は巨人の力を持っていたしね」

 

でもその2人と違うのは…壁の中の人類に協力的だったってこと。

 

「調査兵団に興味を持ってたって話ならもっと協力してくれてもよかったんだがなぁ…」

 

ハンジ「どうかな…物知りなグリシャさんならレイス家に受け継がれる思想の正体すら何か知っていたのかもしれない」

 

であれば…王政に悟られまいと情報を広めることはしなかった。しかし、ウォール・マリアが突破された瞬間彼は王政の本体であるレイス家の元まですっ飛んでいき狂気の沙汰に及んだ。

 

おそらくは、この壁に入ってから独力で王政を探るなどしていたんだろう。いずれにしてもすさまじい意識と覚悟がなきゃできることじゃない。

 

ハンジ「そんなお父さんが調査兵団に入りたいと言った10歳の息子に見せたいと言った地下室…死に際にそこに全てがあると言い遺した地下室…そこには一体何があると思う?」

 

エルヴィン「グリシャ氏が言いたくても言えなかったこと…つまり、初代レイス王が我々の記憶から消してしまった"世界の記憶"……だと思いたいが、ここで考えたところでわかるわけがない」

 

エルヴィン「本日で全ての準備は整った。ウォール・マリア奪還作戦は2日後に決行する。

地下室には何があるか?知りたければ見にいけばいい。それが調査兵団だろ?」

 

〜〜〜

 

ーコンコンッ ガチャッ

 

エルヴィン「ハルノか」

 

ハルノ「本当にいいのかな?私の班だけ別行動で」

 

エルヴィン「あぁ…今回は何が起こるかわからない。もしもの時に対応するためにも君が指揮を取る班は私の指揮下で縛られることなく戦ってもらいたい」

 

ハルノ「でも3人だよ?私とハチマン君とアニちゃん」

 

エルヴィン「むしろその方がいい。君たちそれぞれが別行動を取ろうと君の判断なら認めよう。勝つためなら何をしてもいい」

 

ハルノ「ふぅん…了解♪」

 

 

 

ー夜ー

 

奪還作戦前の夜ということで、今夜は肉が出た。そして、その所為で負傷者が数名出た。

 

ハチマン「俺ほとんど食べられなかったな…」

 

アニ「私も」

 

ハチマン「まあ、でも…ウォール・マリアを奪還したらまた食べられるんだろうな」

 

アニ「そうだね…」

 

ハチマン「そういえば、いいのか?もしもの時は巨人化の力を使うって…」

 

アニ「…いつまでも隠してはいられない。相手が"戦士長"なら尚更。ここで使わないわけにはいかないよ」

 

ハチマン「…そうか…まあ、それなら頼む」

 

すると、近くに誰かの話し声が聞こえた。

 

アルミン「だから!まずは海を見に行こうよ!!地平線まですべて塩水!!そこにしか住めない魚もいるんだ!!」

 

 

ハチマン「海か…懐かしいな」

 

アニ「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日没の直前…いよいよだな」

 

全ての準備は整い、全調査兵団員が壁上に集合した。そして────

 

 

 

「うぉぉおおお!!!」

 

 

その下ではトロスト区の住民が歓声を上げている。

 

 

「ウォール・マリアを奪還してくれぇぇ!!」

 

「人類の未来を任せたぞおぉ!!」

 

「リヴァイ兵士長!!この街を救ってくれてありがとお!!」

 

「全員無事に帰ってきて来れよ!!」

 

「でも領土は取り戻してくれぇぇ!!」

 

 

リヴァイ「勝手を言いやがる」

 

ハンジ「まぁ…あれだけ騒いだらバレるよね」

 

「それが…リーブス商会から肉を取り寄せたもので…」

 

「フレーゲルめ…」

 

リヴァイ「調査兵団がこれだけ歓迎されるのはいつ以来だ?」

 

「さてなぁ…」

 

「そんな時あったか?」

 

エルヴィン「私が知る限りは…初めてだ」

 

そう言って団長は笑う。

 

エルヴィン「うぉおおおおお!!!」

 

 

「うおおぉぉおおお!!!」

 

 

エルヴィン「ウォール・マリア最終奪還作戦!────開始!!進めぇぇえ!!」

 

団長の叫びと共に、俺たちははじまりの街へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「麓が見えたぞ!!街道跡がある!!」

 

エレン「もう…すぐそこだ」

 

ミカサ「川の音が聞こえる!!」

 

アルミン「僕達…帰って来たんだ…あの日……

ここから逃げて以来…」

 

 

(僕達の故郷に────)

 

 

 

 

 

エルヴィン「物陰に潜む巨人に警戒せよ!!

これより作戦を開始する!!総員立体機動に移れ!!」

 

日の出と同時。団長の指示と共に、団員全員が立体機動に移った。

 

その総員140名がフードを被っている。敵の目的がエレンである以上、誰がエレンか悟られない為だ。

 

そして、この全員で外門に向かうことで───

誰がエレンかわかった時には既に外門を塞いだあと。

 

 

リヴァイ「止まるな!!外門を目指せ!!」

 

エレン「ッ!!……了解!!」

 

全員が外門を目指して行く中、アルミンはある物を目にした。

 

アルミン「(これは…焚き火の跡!?)」バッ

 

立ち止まると、手を振って団長に知らせる。

 

アルミン「(いる…近くに…ベルトルトとライナーが…!)」

 

 

 

〜外門周辺〜

 

ハンジ「何で…周りに全く巨人がいない!?」

 

リヴァイ「ここは敵の懐の中ってわけだが…」

 

ハンジ「やるしかない。作戦続行に支障無し」

 

作戦続行を知らせる信煙弾が撃たれると、門を塞ぎにエレンが飛んでくる。

 

 

エレン「(俺にはできる……いや、俺たちならできる)」

 

なぜなら俺たちは

生まれた時から皆特別で──────

 

エレン「自由だからだ!!」

 

 

落雷の光と共に現れた巨人は、門を塞ぐように硬質化する。

 

ービキビキッ ブチッ

 

エレンは硬質化した巨人から体を切り離すと、ミカサに救出された。

 

ハンジ「敵は!?」

 

「見えません!!」

 

ハンジ「くまなく見張れ!!穴は!?」

 

 

「成功です!!」

 

「しっかり塞がっています!!」

 

外と内の両方から、成功を示す緑の信煙弾が撃たれた。シガンシナ区外門に開いた穴を塞げたらしい。

 

ハンジ「やった…」

 

ミカサ「立体機動装置は?」

 

エレン「無事だ。でもやっぱりマントは持ってかれちまった」ファサッ

 

ミカサはエレンの肩に自分のマントを乗せる。

 

エレン「…ありがとう」

 

ハンジ「調子は?」

 

エレン「問題ありません。訓練通り次もいけます!」

 

ハンジ「では内門に向かう!!移動時に狙われぬようしっかり顔を隠せ!!」

 

 

エレン「本当に塞がったのか…?あの時の穴が…」

 

ミカサ「あなたがやった。自分の力を信じて」

 

エレン「…」

 

リヴァイ「まだだ。ヤツらが健在なら何度塞いでも壁は破壊される。わかってるな?ライナーやベルトルトら全ての敵を殺し切るまでウォール・マリア奪還作戦は完了しない」

 

エレン「当然…わかってます」

 

 

 

〜シガンシナ区内門の壁上〜

 

「襲ってこない…敵は俺たちの強襲に対応できてないのか?」

 

エルヴィン「…」

 

ープシュゥッ!

 

アルミン「調べて来ました!地面には野営用具が一式散乱しています。紅茶のようなものを飲んでいたようです」

 

ポットは冷め切っていました。そしてポットの中身の黒い液体が注がれた跡があるカップ……それが少なくとも3つ。

 

アルミン「少なくとも3人が壁の上にいたようです」

 

「三人だと!?」

 

エルヴィン「鉄製のポットが冷め切っていたのか?」

 

アルミン「はい」

 

エルヴィン「それらおかしい…」

 

アルミン「えぇ…」

 

「!?…ぽ、ポットがか!?」

 

エルヴィン「我々は馬と立体機動を駆使して全速力でここに到着した」

 

ここから我々の接近に音や目視で気付いたのなら少なくとも2分前が限度のはず…。

使用直後のポットが2分で冷めるはずがない。

 

エルヴィン「敵は少なくとも5分以上前に我々の接近を知る何かしらの術を持ち、我々の接近に備える時間も十分にあったというわけだ」

 

アルミン「つ、つまり壁の上にいた三人以外の斥候が存在していて…イヤもっと大勢の敵が潜んでいると想定すべきで…」

 

エルヴィン「今は敵の位置の特定を第一とする。アルレルト。君はその頭で何度も我々を窮地から救い出してくれた。まさに今、その力が必要な時だ」

 

必要な数の兵士を動かし、内門周辺に敵が潜んでいないか探り出してくれ。

 

アルミン「え…」

 

団長が手を挙げると、近くで敵を探っていた兵士が集まり出した。

 

エルヴィン「これよりアルミン・アルレルトの指示に従い捜索を続行せよ」

 

 

〜〜〜

 

アニ「…」

 

ハチマン「で、俺たちはどうするんです?」

 

ハルノ「…ねぇ、アニちゃん。私に何を隠してるのかな?」

 

アニ「ッ…!」

 

おいおい…勘が良すぎるだろ…エスパーもここまで来ると危険だな…。

 

ハルノ「だって君たち二人、いつも一緒でコソコソ何か話してるし?何かあるのは見え見えよ」

 

アニ「…」

 

まずいな……いや、待てよ?相手はハルノさんだ…万が一バレてもそこまで悪い事ではない。大体アニが壁の外から来たと知られるとまずいのは新兵の奴らだ…だったら────

 

ハチマン「…」

 

俺は何もしなくていい。

 

アニ「…多分この作戦中にわかります。だから今は聞かないでください」

 

ハルノ「…いいよ。それが何なのか…よく見ておくから」

 

 

そして、エルヴィン団長の作戦中止の合図と共に捜索隊は"壁の中"に敵がいないかを探り始めた。

 

 

ハチマン「(アルミン…また何か思いついたのか…?壁の中とは大胆だな…)」

 

 

 

ーコンコン

 

「ッ…!ここだ!!ここに空洞があるぞ!!」

 

一人の兵士が音響弾を撃ってそう叫ぶと、目の前にあった壁に小さな穴が開いた。

 

「あ」

 

ーグサッ

 

そこにいた男は兵を刺し、顔を出した。

 

アルミン「ライナー!!」

 

 

ライナー「ッ…!?」グサッ

 

アルミンの叫びの直後、上から飛び降りて来たリヴァイ兵長はライナーの首を貫いた。そして更にもう片方のブレードで胴体を貫通させる。

 

だが、ライナーの眼球がリヴァイ兵長を捉えた。

 

リヴァイ「ッ!」ドコッ

 

リヴァイ兵長はライナーを蹴り飛ばすと、壁に戻った。

 

アルミン「兵長!?」

 

リヴァイ「クソッ!!これも"巨人の力"か!?あと一歩…命を絶てなかった」

 

 

ードオォンッ!!

 

ライナーは仰向けのまま巨人化し、そこには鎧の巨人が現れた。

 

 

〜壁上〜

 

エルヴィン「周囲を見渡せ!!

他の敵を捕捉し────」

 

 

ードドドドドッ‼︎ ドオォンッ!!

 

エルヴィン「ッ…」

 

団長の背には大量の光が放たれ、そこには夥しい数の巨人が現れる。そして、その中心にいるのは

 

ハチマン「獣の巨人…」

 

獣の巨人は後ろにある岩を持つと、砲丸投げの投球フォームのような体勢になる。って…!

 

ハチマン「はぁ…!?」

 

獣の巨人が投げた投石は俺たちに向かって来ていた。うん。あいつやばい。

 

エルヴィン「投石来るぞ!!伏せろぉぉ!!」

 

 

ードオォォンッ!‼︎

 

投石は壁上にいた俺たちには当たらず、その真下に着弾した。

 

「は、外したのか…?」

 

エルヴィン「いいや、いいコントロールだ」

 

ヤツは扉を塞いだ。馬が通れない程度にな。まず馬を狙い、包囲する。我々の退路を経ちここで殲滅するために。

 

エルヴィン「我々は互いに望んでいる。ここで決着をつけようと。人類と巨人共。どちらが生き残り、どちらが死ぬか」


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