ハチマン「」
アニ「は、ハチマン……」
「ゲホッ…ゲホッ…」
アニ「!」
「やりやがったなぁ…ハチマン…アニちゃん…」
アニ「戦士長…」
ードドドッ! グワッ!
アニの後ろから現れたのは四足歩行型の巨人。
アニ「ッ!」
アニはハチマンを抱えて避けるが、代わりに獣の本体を連れ去られる。
アニ「ぁ…あぁ…ふざけるな…クソ野郎…!」
「ゲホッ…お前ら!!あいつらを殺せ!!」
その叫びと共に、左右を囲っていた巨人全員がアニの元に走り出す。
「痛ぇ…やりやがったなハチマン…痛ぇよぉ…だがあいつももう終わり…運が良ければ女型を奪える…」
〜〜〜
アニ「…」ビリッ
ードオォンッ!!
アニ「アァァアアッ!!」
アニは巨人化すると、目前に迫った巨人のうなじを上段蹴りで貫通させる。
アニ「(逃がさない…絶対に…!)」
女型の巨人の手の内にはハチマンがいる。
アニ「(戦士長…あんたは私が…必ず殺す…!)」
そして、アニは四足歩行型の巨人を追って走り出した。
その後ろを巨人の群れが追ってくるが、そんな事は全く気にも止めない。
巨人の全速力での疾走はすぐに壁まで辿り着いた。
リヴァイ「おい…あの巨人はアニか?」
エルヴィン「あぁ…女型の巨人と言うらしい」
リヴァイ「…は?…お前まさか…知っていたのか?なぜそれを先に言わない?」
エルヴィン「アニは元々ライナー達の仲間だった。アニの立場を考えて言わないようにと、ハチマンから頼まれている」
リヴァイ「…まぁ、いい…だが、あの様子だと失敗したようだ…ハチマンの姿もない…」
エルヴィン「…リヴァイ。お前は先にアニの後を追え」
リヴァイ「了解だ」
〜シガンシナ区〜
エレン「…こうなることは…わかってたはずなのに…でも…お前の力に頼るしかなくて…」
エレンの目の前には、超大型の熱風で黒く焼け焦げたアルミンがいた。
そして、その隣には────
エレン「こいつを捕らえることができたのも全部お前の手柄だよ…」
超大型巨人の本体ベルトルトがいた。
エレン「アルミン…お前はどうして、逃げないんだよ…」
ードォォォンッ
エレン「!」
壁付近の家に何かが落ち、煙が立つ。その中の何かは徐々に顔を出した。
エレン「…巨人!?」
四足歩行型の巨人だ。獣の巨人の本体を鞍に乗せてここまでやってきたのだ。
その巨人はエレンを認識すると、こっちに向かって走ってくる。
エレン「クソッ!それ以上近付いてみろ!!こいつを奪われるくらいなら殺すからよ!」
(こいつ…目の周りに巨人化の跡が…獣の巨人か!?)
「お前がエレン…イェーガーか?」
(ダメだ!
ーブシャッ
エレンの刃がベルトルトの首に食い込む。
「全然親父と似てないな…」
エレン「……何…?」
「信じてほしい。俺はお前の理解者だ。俺たちはあの父親の被害者…お前は父親に洗脳されている」
エレン「父…さん!?」
だが、獣の本体は壁上にいる存在に気づいた。
「オイオイ……まさかここまで追ってきやがった……アニちゃんらしくないねぇ…」
エレン「(あ、あの巨人は!?こいつの言葉…まさか…アニ!?)」
ーガガガガガガッ‼︎
女型の巨人は壁から降り始める。
「あぁ…わかったよアニちゃん。痛み分けで手を打とう。ベルトルト…悪いが…お前はここまでらしい。エレン…いつかお前を救い出してやるからな」
そう言って四足歩行型の巨人と獣の本体は去って行った。
エレン「は…?逃げた…??」
ードォンッ!
アニは地面に着地すると、すぐさま走り出す。
だが────
ハチマン「ゼェ…ゼェ……」
アニ「(ハチマン!?)」
ハチマンが息を吹き返したのを見て動きを止めた。
アニ「ハチマン!!」
アニは巨人の体から出ると、ハチマンを抱えてエレンのいる屋根に降りた。
エレン「あ、アニ!?お前…なんで…」
アニ「そんなこと今どうでもいいでしょ…!それより……そこにいるのは…?」
エレン「…アルミンだ」
アニ「そんな……」
ープシュウッ! タンッ
リヴァイ「おい…お前ら…これは…どういう状況だ…?」
〜〜〜
ハルノ「ライナーくん。この左胸に入っていた鉄のケースは何かな?君が手足を切り落とされる前…最後の力で取り出そうとしたものだよ。自決用の薬?それとも爆弾か何か?」
ライナー「……てがみ…」
ハルノ「手紙?…何の手紙?」
ライナー「ユミルの…手紙…クリスタに…必ず…渡してほしい…」
ハルノ「中身を改めたらね。さてと、聞きたいことが山ほどあるんだけど…君の口も鎧のように固そうだね。君は私たちが知りたいことを教えてくれるかな?」
ライナー「……いいや」
ハルノ「覚悟ができているようで何よりだよ」
そう言ってハルノは、刃をライナーの喉に食い込ませる。
ライナー「グフッ…!」
ジャン「待って下さい!!」
ライナー「グッ…」
ジャン「いいんですか?その力…奪えるかもしれないのに…」
───・・・・・・
エルヴィン「この注射を打った人間は巨人になる」
そして、巨人になった者が"巨人化できる人間"を食らうことで、一旦は知性の無い巨人となった者も人間に戻り、我々の誇るエレンのように"巨人の力を操る人"となるのだ。
もし条件が揃い、それが可能であれば積極的に巨人の力を奪いたい。それが果たせれば巨人の力や情報を得られるばかりではなく、瀕死に至った人間をも蘇らせることができる。
つまり、注射を打たれる者は重傷者が優先される。もし巨人の力を持つ敵を捕らえ、四肢を切断した後、安全が確保されたならリヴァイ兵士長を呼び求めよ。
エルヴィン「この注射薬はリヴァイ兵士長に託してある。くれぐれも承知してほしい。注射薬はこの一本限りだ」
ハルノ「私は条件が揃ったとは思わないよ。まずここには死に至るほどの重傷者がいない上、恐らく獣の巨人はハチマンくんが捉えてる。
わざわざライナーくんを生かす必要、あるのかな?」
ジャン「ッ…」
ハルノ「むしろ、この子達の底力は計り知れない…首を刎ねてもまだ安心できないよ」
ライナー「ガッ…‼︎」
ジャン「で、でも…もしもハチマンが失敗してたら…」
ハルノ「ッ…」
ジャンの言葉にハルノは手を止めた。
ミカサ「ジャン…」
ハルノ「…まぁ…それもそうだね。ミカサちゃん」
ミカサ「はい?」
ハルノ「ガスはあとどれくらいある?」
ミカサ「もうほとんど残ってません……ですがエレンとアルミンの元への片道分はあります」
ハルノ「それなら、すぐにエレンくん達の状況を見てきて。そうしたらガスを補給してリヴァイくんから注射薬を。何らかの理由でそれが不可能な場合は信煙弾を。それを合図にライナーくんを絶つ」
ミカサ「了解です」
そう言ってミカサは飛び上がった。
ジャン「……ハルノさん…俺は…」
ハルノ「私の判断だよ。君のは判断材料」
ジャン「(俺は…何だ?まさかこの期に及んで…)」
ハンジ「しかしどうする?」
ジャン「はい?」
ハルノ「そうだね…巨人になるとしたら…」
ハンジ「命に別状はないが重傷を負ったサシャか…もっと…相応しい誰かか…」
エレン「やった!!やったぞ!!アルミンが息を吹き返した!!」
アルミン「ヒュゥ……ヒュゥ…」
エレン「がんばれ!!もっと息吸え!!」
ミカサ「!?…アルミン…?」
ミカサがここに到着した頃、死んだと思われたアルミンは息を吹き返した。
だが、それはハチマンも同じ────。
ハチマン「ゼェ…ゼェ…」
ミカサ「ハチマン…!」
エレン「兵長!!注射を早く!!」
アニ「いや、ハチマンに注射を…」
エレン「アルミンを巨人にして…!!ベルトルトを食わせるんですよ!!」
アニ「生き返らせるのはハチマンだよ!!兵長早く注射を…!!」
リヴァイ「…あぁ……だが…」
ミカサ「ハッ…!」
ーパシュッ
ミカサは信煙弾を放ち、ハルノに状況を伝えた。
〜〜〜
だが、その場の誰も────それを確認することはなかった。
ジャン「ッ…ハルノさん!!ハンジさん!!」
二人の背後から迫ってきたのは、四足歩行型の巨人。二人を食おうと口を開いていた。
ハルノ「ッ!」
ープシュウッ‼︎ ガシャンッ!!
ハルノはハンジを抱えてそれを避ける。だが、立体機動装置に攻撃が掠り、破壊された。
ハルノ「(まずいッ…!)」
ハルノが次に見た時には、四足歩行型の巨人がライナーを咥えている。
コニー「ハルノさん!!ライナーを奪われました!!」
ハルノ「ッ!」
ジャン「あ…!!」
コニーはそれを追おうとするが────
ハンジ「コニー!!追わなくていい!!」
コニー「…!!」
ハンジ「もうガスはわずかしか無い…返り討ちにされるだけだ…残ってたハルノもガスごと立体機動装置を破壊されてる…」
ジャン「くそぉぉ!!俺のせいです…俺が…取り返しのつかないことを…」
ハルノ「…私の判断って言ったでしょ。エレンくん達と合流しよ」
〜〜〜
リヴァイ「二人ともまだ生きている……」
二人とも放っておけば死ぬ状態…そして、その二人共が調査兵団にとって大きな戦力。
リヴァイ「(どっちに打つべきだ…?)」
エルヴィン「リヴァイ」
エルヴィンは数名の護衛を付けてリヴァイの元までやってきた。
リヴァイ「エルヴィン……ハチマンとアルミンだ。…どっちに打てばいい?」
エルヴィン「ッ…!」
ハチマン・ヒキガヤは調査兵団最強の力を持っている……そして、アルミン・アルレルトは我々にはない発想ができる明晰な頭脳───。
二人の力のおかげでここまで辿り着けたと言っても過言では無い………どちらも優劣など付けられない存在だ────。
エルヴィン「(だが……このまま時間だけが経てば二人とも死んでしまう…それだけは避けなければ…)」
エレン「団長!!アルミンを────ッ!!」
アニ「…ハチマンがいなければ…あのまま調査兵団は壊滅していたはずです……それを防いだハチマンを…助けるべきじゃ…」
エレン「アルミンがいなかったら…ベルトルトを倒せなかった!!アルミンがいたから…これまでだって…!!」
エルヴィン「(そうだ…どちらも我々の危機を救ってきてくれた……実績だけを見れば決められない……なら、未来を考えればどうだ?)」
これから先…必要になるのは……武力か?だが世界の真相を知って…どう対応するか…頭脳も必要になる……いや、アルミンの発想こそ我々には────。
エルヴィン「この薬は───!」
エルヴィンが決断を下そうとしたその瞬間、ハルノたち一向が到着した。そして、この状況を目の当たりにする。
ハンジ「…何ってことだ……」
ジャン「おい…ウソだろ……こんなの…」
コニー「そんな…」
エルヴィン「この薬はアルミ────」
アニ「待って下さい!!」
エルヴィン「!」
アニ「私は…この世界がどうなっているか知ってます…その上で…私は…ハチマンが必要だと思います……力が必要なんです…」
エルヴィン「……それは…リヴァイやハルノではダメなものか?」
アニ「ッ……」
エルヴィン「リヴァイ。注射はアルミンに打て」
リヴァイ「…あぁ…了解だ。
全員ここから離れろ!!ここで確実にベルトルトをアルミンに食わせる!!」
ハンジ「…さぁ、行こう。アニ」
ハンジはアニを抱えると、屋根から離れた。
ジャン「クソ……クソ……」
コニー「ハチマン……またな…」
アニ「ぁ…あぁ……!」
104期生の全員の頬に涙が伝り、その場に残ったのはリヴァイだけとなった。
───・・・・・・もし…あいつに勝ったら…外の世界のこと教えてくれないか?
アニ「ハチマン……ッ…!」
───・・・・・・俺とアニで獣の巨人を殺します。
リヴァイ「…今までありがとうな、ハチマン。お前のおかげで救われた仲間はたくさんいる。本当にありがとう」
ーバキッ! バキッ!
その物音に、ベルトルトは目を覚ます。
ベルトルト「……??…え??…」
ーガシッ
ベルトルト「ッ!!うぁあああぁあ!!」
ベルトルトは巨人に掴まれ、徐々に口に近づいていく。そんなベルトルトの目には104期のみんなが見えた。
ベルトルト「み、みんなああぁ!!助けてえぇええ!!」
だが、ベルトルトは気づいた。今更自分がそんなことを言える立場では無いと────。
ベルトルト「ぁあああああぁああ!!アニ!!ライナァア────ッ!!」
ーバキッ‼︎
そして、ベルトルトは巨人の喉へ消えていく。
〜〜〜
アニ「…」
リヴァイ「アニ…こいつを…許してやってくれないか?」
リヴァイはエルヴィンを指しながらそう言った。
リヴァイ「お前が外の世界の何を知ってるか俺は知らねぇが……あの状況じゃ選べるものは限られてた。あいつはアルミンを選択するしかなかった…」
アニ「…わかってます……頭では…」
ハンジ「そうだよね…わかるよ…。私にも…生き返らせたい人がいる。何百人も…調査兵団に入った時から別れの日々だ……でも…わかっているだろ?誰にだっていつかは別れる日が来るって…」
アニ「…」
ハンジ「とてもじゃないけど…受け入れられないよ。…それでも、前に進まなきゃいけない」
アニ「…はい……」
ーシュウゥ…
エレンたちは、ベルトルトを食べて倒れた巨人の元に来る。
そのうなじからは、アルミンが現れた。