【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪ 作:甘味の皇帝
ーとある屋敷ー
フットマン「嘘だ!!そんな事ある訳ない!!嘘だと言ってください!!ガザリーム会長!」
ガザリームと呼ばれた女は、以前エイトたちが会ったユウキ・カグラザカの専属秘書だった。
ガザリーム「…本当だ。クレイマンとの繋がりが途絶えた。もうアイツの魂を感じない。
デスマンに取って本当の…死だ。
(愚かで傲慢で…そして可愛いクレイマン。ゆっくり休みながらワタクシ達を見守ってちょうだい。必ず"野望を実現して見せるから")」
ーバタンッ
ドアから入ってきたのはグランドマスターの
ユウキだ。
ユウキ「ほら、拭けよ。雨と返り血でずぶ濡れじゃないか"ラプラス"」
ユウキはタオルを差し出した。
ラプラス「…」
そう、ラプラスは先程ルベリオスにある西方聖教会の奥の院の近くまで侵入して、バレンタインと交代して帰ってきたロイ・ヴァレンタインを殺してきたのだ。
ティア「で、でもさ、ラプラスが無事でよかったよ!ヴァレンタインって昔会長と互角だった魔王でしょ?良く勝てたよね!」
ラプラスは返り血を拭きながら言った。
ラプラス「ヴァンパイアの力が落ちる新月の夜だったしな。運が良かったんや。……それに、
"ワイはクレイマンほどアホやない"」
ティア「え…」
フットマン「ラプラス!そんな言い方はないでしょう!?」
ラプラス「事実や。忠告無視して弱いくせに調子に乗るからアイツは死んだんや」
フットマン「貴方という人は…ッ」
フットマンはラプラスに殴りかかろうとする。
ガザリーム「やめろ!…悲しいのは皆同じだ」
ユウキ「そうだね。そういうのは"雇い主"である僕の役目だ。一人で悪役になろうとするなよラプラス」
フットマン「…そういう意図でしたか…すみませんねラプラス」
ラプラス「ええて…でも、見透かされちゃカッコ悪いですやん。殴っとけやフットマン」
〜〜〜
ユウキ「実は、クレイマンに託していた拠点も例のスライム二匹に奪われた」
ラプラス「なんやて!?」
ユウキ「もちろん軍も財宝もね」
ティア「マジか…」
ユウキ「そういうわけで全ての作戦は一旦休止。手は出さずに様子見を決め込む」
ガザリーム「…そうね。スライムという予測不能な要素がある以上暫くは大人しくしているべきだろう。少なくとも今回の痛手がある程度まで回復するまでは…」
ユウキ「……とは言えやられっぱなしは癪だよね。僕達は手は出さないけど口は出してもいいだろ?クレイマンから全てを奪ったあのスライムには、少しくらい仕返ししておこうと思うんだ」
ユウキは口元をニャリと歪め、人の悪い笑みを浮かべて言う。
ガザリーム「何をする気なんだ?」
カザリームの問いには答えず、ユウキは薄く笑った。
ユウキ「あのスライム二匹は異常だよ。たった数年で、あれだけの一大勢力を築き上げた。正直、信じられないし、普通に考えたら敵対すべきじゃない。だからさ、見極めようじゃないか。その為に―つ、仕掛けてみようと思うんだよ」
楽し気にそう言って、ユウキは口を閉ざした。
「やれやれ、また何か悪巧みですか?ま、ワイに無茶を言われるよりはマシですよって、高みの見物をさせてもらいますわ」
その言葉を最後にその場は解散となった。
こうして魔人達は表舞台から一旦退場した。
深く静かに闇に潜るように……。
きたそして、来るべき復讐の日に備えて、その牙を鋭く磨くのだ。
〜〜〜
ワルプルギスを終えた後、ギィ主催の食事会が開かれた。
レイン「こちら、黒毛虎の煮込みシチューでございます」
ギィのメイドは料理を机に置いていく。
エイト「…」パクッ
リムル「…」モグモグ
リムル「(舌の上でほどけた肉がソースとよく絡まってもう少し味わっていたいと願うその一歩手前で儚く消えてしまう)」
エイト「(次の一口を渇望させるその演出まで込みでこれは文句なく…)」
リエ「「(旨い!!)」」
エイト「(叡智之王先生!)」
リムル「(智慧之王先生!)」
叡智『『了。レシピを解析します』』
エイト「(にしても…魔王の主催する食事会だし未知のマナーがあるのかと思ったが、特にそういうのもないみたいでありがたいな)」
ミリムなんかはファミレスでお子様ランチ食べてる子供みたいだ。
と、そんなことを思って見ているとミリムがグラスを持った。
エイト「おい、それ酒だぞ」
ミリム「わははは!いいではないか。頑張ったご褒美なのだ!」
リムル「頑張った?」
ミリム「無表情を保つ為にこっそり生ピーマンをかじったりな!」
そんなことしてたのかよ…
リムル「操られたフリはもっと早くやめてもよかったんじゃないか?結局クレイマンは黒幕のこと喋らなかったんだろ?」
ミリム「うむ!だが、ぜっかくリムルと戦えるチャンスだったのでな!」
リムル「おい!?」
二十歳なんてとっくの昔に超えてるんだろうが、子供舌のミリムからはリムルが酒を没収。
ギィ「本当に旨いブランデーだな。原料はユーラザニアのブドウか?」
リムル「よくわかるな。果実の輸入で最近やっと安定して造れるようになったんだよ」
ヴェルドラ「ではもう一本頂こう」ドヤッ
エイト「お前は遠慮を覚えような」
ああ、それと俺も飲んでるからな?この前飲んでみたら意外と美味かったんだよ。
スライムだし年齢なんて関係ないだろうし多分大丈夫だろ。
ダグリュール「勿体ないのぅバレンタインめ。あやつは絶対に気に入るだろうに」
と、ブランデーの評価をもらってる間にラミリスが酒を飲んでむせていた。
エイト「(あいつは見た目通りだな。ミリムは飲めそうだが…)」
叡智之王『分析が終了しました。コース料理の再現が可能となりました』
エイト「(世界最高峰のレシピも手に入れて、クレイマンも倒して魔王の座にもついた。他の魔王からの評価も悪くはない。ワルプルギスでの戦果は上々だな)」
そんなわけで食事を終えると俺たちはテンペストへの帰路についた。
〜神聖法皇国ルベリオス〜
西方聖教会 聖騎士団長 ヒナタ・サカグチ。
彼女はルベリオスの学校で遊ぶ子供達を横目に歩いていた。
ヒナタ「(争いのない平等な社会…ここでは皆が幸福に生きることが許される。管理者を神に委ねることで実現する完全な平等性。それが、神聖法皇国ルベリオスという国の在り方。
私の生き方を決定づけた"神"の理想を体現する唯一のやり方。弱者が強者から搾取されず誰もが笑顔で自由がないことに不満も疑問も抱かない。すごいことだと思う。けれど…)」
ヒナタ「…ほんの少し違和感、かな」
〜〜〜
「待っていたよヒナタ」
歩いてきたのは法衣を纏った吸血鬼族。
ヒナタ「なんの用かしら、ロイ・ヴァレンタイン。…いえ、"ルイ"だったかしら」
「仮にも同志に対して興味がないにも程があるな。私はルイだよ。"法皇役"のね」
ヒナタ「仕方ないでしょ。ロイも聖地では法衣を纏うし、貴方達双子のどっちがどっちでも私の役目が変わる訳ではないもの」
ルイ「昨夜、ロイが殺された」
ヒナタ「…冗談?」
ルイ「冗談で弟を殺すほど悪趣味ではないよ。深夜に何者かが聖神殿に侵入したのは知っているだろう?」
ヒナタ「ええ…見つけたのは私だもの。すぐ逃げに回ったから陽動の可能性が高いと思ったのだけど」
ルイ「確かに。そうであれば追跡は相手の思う壺だろうな。だが侵入者はワルプルギスから帰還したロイを殺害し逃走したようだ。私にはアイツの最期が感じ取れたが目撃者はいない。
駆けつけた衛兵は全滅だったのでね」
ヒナタ「そう…(ロイは決して弱くない。偽りの称号であれ魔王を名乗るに足る能力を持っていた。つまり"あの道化"は魔王以上に強かったということ)」
〜奥の院〜
ヒナタ「貴方はここにいていいのかしら。衛兵が殺されたのなら、騒ぎになっているのではない?」
ルイ「ああ、今はもっと重要な用があるからね。後始末は法皇が不在でも問題ない。直に、ルミナス様がお戻りになられる。
ロイの死をお伝えせねばならない。…それによって生じる問題についてもな」
ヒナタ「(…魔王役が消える事による問題。
それはルベリオスにとっての全てを揺るがしかねない)」
ー××年前ー
ヒナタ「ふざけた話だわ。これがルミナス教の本質だなんて」
ヒナタはルイとロイの前に立ち塞がる。
これは、ヒナタが聖騎士団長になる前の話である。
ヒナタ「私が聖騎士となったのは…こんな馬鹿げた宣伝行為(プロパガンダ)の先鋒になるためじゃない!」
完璧に見えたルベリオスだが、教会内部での地位が上がるにつれその実態が見え始めてきた。
ヒナタはヴァレンタイン兄弟を相手に互角に渡り合っていた。
法皇の正体はルイ・ヴァレンタイン。
そして、ルベリオスが打倒を掲げる鮮血の覇王はロイ・ヴァレンタイン。法皇ルイの双子の弟だった。
魔王ロイの所業に嘆く人々は、教会へ助けを
求める。そうして救われた人々は、それが仕組まれた救済とは気づかずにルミナス教への信心を深くするのだ。
ヒナタ「ふ…ふふふ…」ドサッ
ヒナタは血だらけになりながらも、ロイとルイを殺してみせた。
ヒナタ「(ここまでか…けれど…一つの邪悪は滅ぼせた。これで…)」
「妾の寝所まで騒がしいぞ。一体何をしているのじゃ」
ヒナタはその時初めて唯一神と崇められる存在に出会った。
その正体は…魔王達の宴にもいた夜魔の女王であった。
ルミナス「!…ふぅ…二人とも。妾を置いて
死ぬことなど許さぬ」
ルミナス・バレンタインの背中から魔力のようなものが流れ出る。
ヒナタ「(何を…?)」
次の瞬間。殺されたはずの二人は蘇った。
ヒナタ「(終わった…私のしたことは…)」
ルミナス「お前もよ、人間。驕った考えを抱いたまま死ぬでない。正義とは何ぞや?悪を挫くことか?仮にそうだとして…妾の行いが悪かどうか。それを矮小な身で勝手に判断するとは、何様じゃ」
ルミナスはヒナタの傷も回復させた。
そして、両手をヒナタの両頬に触れさせると、
ルミナス「全ての自由意志を満足させる正義などない。それを行えると考える方が傲慢であろうよ。違うか?」
ヒナタ「…!」
ルミナス「一週間やろう。妾の腹心達を倒せるお前なら"七曜の試練"を乗り越えられよう。
その時こそ妾も本気で相手をしてやろうぞ」
一週間後。"簒奪者(コエルモノ)"を用い
試練を乗り越え、新たな力を得たヒナタは再びルミナスの前に立ち、身命を賭して挑み、敗れ
降った。
唯一神ルミナス。ルベリオスの秩序を象徴するその絶対的な存在に……
ー現在ー
ルミナスは、カウチソファに寝そべりながら
飲み物を飲んでいた。
ルミナス「____というのが昨夜のワルプルギスのあらましよ。あの忌々しい邪竜が。どこまでも妾の邪魔をしてくれたわ」イライラ
ヒナタ「…」
ルイ「…」
ルミナス「ロイもロイじゃ!妾の目の届く所であれば"生き返られせて"やったものを」
ルミナスはグラスを机に置きながら言った。
ヒナタ「申し訳ありません。私が侵入者を取り逃したばかりに…」
ルミナス「……良い。そなたは復活した暴風竜に備え聖地の防衛に徹したまで。責めを負うべきは妾であろう」
ルイ「いいえ。弟がルミナス様の期待に応えられなかった結果です。どうかお気に病まれませんよう」
ルミナス「……今は喪失を嘆いている時ではないな。邪竜は復活し、エイトとリムルという新たな魔王が誕生した。その対策を考えねばならぬ。奴らとの関係は今後のルベリオスの在り様を決めるだろう。忌憚のない意見を述べよ」
ヒナタ「はい」
ルイ「心得ました」
ルイ「ジュラの大森林に出現した脅威。これに対し西側諸国は一丸となるでしょう。人類共通の敵として認識されれば都合がいいのですが」
ルミナス「確かにな。ロイ亡き今信仰心が薄れる可能性はある。ならば我々の良き共犯者として迎え入れるか…否。それは無理じゃろうな」
ヒナタ「?」
ルイ「それはどういう…」
ルミナス「あのリムルという新参の魔王はな、楽しく過ごせる国を造りたいそうじゃ。
それには人間の協力が必要不可欠だから自分達が守ると、妾達を前に大見得を切りおったぞ。
『それを邪魔する者は人も魔物も聖教会も全て等しく俺の敵だ』
___とな」
ヒナタ「…ヴェルドラの方はどうでしょう?
元々の性質を思えば言わずとも災厄を振り撒くのでは」
ルイ「しかし奴は復活してから不思議と大人しい」
ヒナタ「必要とあらば私が逆鱗に触れて参りますが」
ルミナス「!…ヒナタよ。そなたは確かに強くなった。妾と戦った時よりも更にな。じゃがな魔王リムルはともかくヴェルドラには勝てぬ」
ルイ「その通りだよヒナタ。まともな勝負になるなどと驕らない事だ」
ヒナタ「しかし、かつては勇者…人間によって封印されたのでしょう?」
ルミナス「良いかヒナタよ。アレは意志を持つ自然エネルギーと思え。並の剣では切れず、
魔法は通用しない。そして奴が暴れたその衝撃波は下手な魔法以上の破壊力を伴い地上を蹂躙するのじゃ」
ルイ「アレは悪夢でした。夜薔薇宮(ナイトローズ)が見るも無惨な廃墟に…」
ルミナス「ルイよ。思い出させるでない。あの美しかった城も今は記憶の中にしか存在せぬのだ」
ルイ「ええ…」
ルミナス「妾はそなたまで失いたくない。自重せよヒナタ」
ヒナタ「…はい」
ルイ「大人しくしているのなら下手に刺激しない方が賢明でしょう」
ルミナス「うむ。各国の信者どもには事実のみを告げよ。暴風竜ヴェルドラが復活したとな」
ヒナタ「…では、彼らの町はどうしますか?」
ルミナス「ん?」
ヒナタ「"魔物は人類共通の敵"。ルミナス教の教義を信じる信徒達にとってあの町の存在は混乱を招きます」
ルミナス「ふむ…幸いにも"神敵"と正式に触れを出してはおらぬであろう?西側諸国に追及されたならうまく誤魔化しておくがよい。リムルは政治的な取引に応じる相手であろうし、また話す機会もあろう」
ヒナタ「ですが…」
ルミナス「どうした?」
ヒナタ「彼の町は"天魔大戦"の勃発を早めかねません」
ルミナス「ああ…それがあったわ」ハァ
"天魔大戦"五百年周期で起こるその大戦は
天使族"エンジェル"の襲来から始まる。彼らの目標は発展した都市。理由は不明でも標的にされる条件は明確である故に…文明の発達に歯止めをかけさせる世界共通の災厄と言えた。
ルミナス「羽虫に煩わさせるのも鬱陶しいが、リムルと暴風竜を敵に回す方が厄介よな。
それにあの者たちが天使どもの的になるなら、対策も取りやすい。今は考えても仕方あるまいよ」
ヒナタ「承知しました。…最後にもう一ついいでしょうか」
ルミナス「何じゃ、まだ懸念があるのか!」
ヒナタ「もう一人の新参の魔王…エイトはどのような魔王だったのでしょうか?」
ルミナス「奴はリムルと同じ立場じゃが…基本的にはリムルが話しておったからよく分からん奴だった…」
ヒナタ「リムルたちの戦いにはエイトは参加しなかったのですか?」
ルミナス「…どうだったか…あぁ、一度だけ
クレイマンに攻撃しておったな。しかもギィの結界の外から一歩も動かずにじゃ」
ヒナタ「えっ…?」
ルミナス「それでクレイマンの右腕が消し飛んでおったわ。あまりに何もしてない様に見えたから一瞬誰がやったのかわからなかったぞ」
ヒナタ「…エイトの実力はリムル以上ですか?」
ルミナス「じゃろうな。実力の一部も感知出来なかった。何なのじゃあやつ…不気味でならんわ」
ヒナタ「…リムルは、私を恨んでいるかもしれません。こちらとしては正当な理由があっても彼らからしたら理不尽な話ばかりだったでしょう。エイトがその友人なのめあれば尚更です。
話も聞いてくれないかもしれません…」
ルミナス「…ま、私怨でルベリオスと敵対するほどリムルは…そしてエイトも短慮ではあるまい。必要とあらば神ルミナスの正体を明かして構わぬ。それで良いな?」
ヒナタ「…善処します」
〜魔国連邦(テンペスト)〜
リグルド「お帰りなさいませリムル様!!エイト様!!」
ディアブロ「この度は九星魔王"エニアグラム"
襲名の儀、誠におめでたき事にございます!
何よりもよくぞご無事でお戻りくださいました!!」
エイト「(え?うん?何で知ってるの?それにディアブロはファルムス攻略があるよね?いや色々聞きたい所なんだが…)」
リエ「「(いつコレ練習したんだよ…)」
俺たちの通る道の両脇に綺麗に並んで跪く町の皆。全員。一人残さず。
エイト「(恥ずかしいんだが…)」
〜〜〜
リムル「で、お前は何でここにいるんだよディアブロ。ファルムス攻略でトラブルか?」
ディアブロ「いえいえ、とんでもございません。全て計画通り、順調に進んでおります。
経過をご報告してもよろしいでしょうか?」
リムル「…おう(やり過ぎてる予感…)」
ー時は遡りファルムス王国 王城 謁見の間ー
「な、何をしておる!誰ぞ早く神官を連れてまいれ!それから回復薬を!」
「これは…魔物の国の者にやられたのか…?」
王座に置かれる"箱"の中には人体構造がぐちゃぐちゃにされ、それでも普通に生きているファルムス王国の王 エドマリスがいた。
もっとも、こんな姿にしたのはシオンである。
「王をお連れしたショウゴはまだ目を覚まさんのか!?叩き起こして説明させるべきであろうが!!」
「落ち着かれよカルロス卿。喚いても事態は変わらん…!」
その日、異形となって帰還した王を出迎えた王宮は上を下への大騒ぎとなった。
「だ、駄目です!回復魔法も効果がありません!」
「馬鹿な!」
「そもそもご存命なのか?どう見てもその…」
「は、はい。意識もおありです。それどころか
切り傷一つもありません。まるで"最初からこのお姿だった"かのように…」
「通常の回復魔法は効かぬ」
「身体を構成する法則が書き換えられておるのだ」
すると、その後ろから歩いてくる人物が一人。
「おお…目を覚ましたらか。そなたは無事のようだな。ショウゴ・タグチよ」
「痛み入りますミュラー殿。衛兵。レイヒム殿が英雄ヨウムを連れフルポーションを持ち帰る手筈となっている。直到着するであろう。門番に話を通しておくように」
衛兵「え、あ…」
「ショウゴ貴様…!事情を知っておるなら早く説明せよ!魔物の国への遠征で一体何があった!?」
「ラーゼン殿は何処におられる!?貴様が無事ならあの方も生きておろう!」
リムル「え、待った。ショウゴって異世界人の体にはラーゼンの精神が入ってるんだよな?」
ディアブロ「左様です」
リムル「そいつは元々ファルムスの伝説的な魔導師なんだろ?お前の指示に従って動いているのか?」
ディアブロ「ええ。王宮魔術師長の地位は重鎮どもを説得させるのにうってつけでしたので使役することにしたのです。本人の申し出もありましたしね」
エイト「(自分からディアブロに降ったのか…俺なら死んでもこいつの下には付きたくない)」
ー再び時は遡りー
ショウゴの姿のラーゼンがテンペストで何があったのかを話した。
「ぼ、ぼぼ…暴風竜の復活だとぉ!?」
「あり得ん!彼の竜は消滅したと聖教会が発表したはずではないか!」
「そ、そうだ!しかも全軍行方不明?敗北の言い訳にしては荒唐無稽ですぞ!!」
「貴公は本当にラーゼン殿か!?ショウゴの奴めが出鱈目を言っているのではあるまいな!?」
ラーゼン「(…まぁ、予想通りの反応よな)」
「儂は信じますぞラーゼン殿」
ラーゼン「ミュラー卿」
「ミュラー卿!こんな出鱈目を信じるなど…」
ミュラー「他でもない数百年我が国を守護してきたウィザードであるラーゼン殿が告げたのだぞ。他の誰よりも確かで確実な情報だ」
「しかし…しかし…!では全軍が行方不明というのはどういうことですか?殺されでもなく潰走したでもなく行方不明とは…」
ラーゼン「我が軍と魔物達との戦いが彼の竜を蘇らせた。彼らは皆生け贄…苦痛も恐怖もなく何が起きたのかわからぬ間に暴風竜に喰われてしまったのです」
「そん…な…」
この男は初陣の我が子でも亡くしたのか、その場で倒れ込んで泣いた。
だが、この作り話は真実より幾分も優しい。
本当は…自分がもうすぐ死ぬという恐怖と仲間が目の前で殺される恐怖を味わいながら殺されて行ったのだ。
そこから考えれば天災に運悪く生贄にされた。その方がマシなのだろう。
「しかし、ならばなぜラーゼン殿は助かったのです?何か理由がおありなのでしょう?」
レイヒム「助けられたのですよ、あの方に」
やって来たのはファルムス王国の最高司祭であるレイヒム。ファルムス側で生き残った三人のうちの一人だ。
「レイヒム殿!」
レイヒム「そなたも無事であったか…!」
「待たれよ、今助けられたと申されたか?暴風竜を相手に誰が助けてくれたというのじゃ?」
レイヒム「私とラーゼン殿は王をお守りするのが精一杯。暴風竜の復活に絶望していた我らの前に、"あの方"は舞い降りたのです」
「あの方…?」
ヨウム「勿体ぶり過ぎだぜレイヒムさんよ。
あの人そういうの照れちまうぞ」
「な、何者だ!?」
現れたのはヨウムだった。
ラーゼン「(来た…!ここからが本番だ…)」
レイヒム「失礼。紹介が遅れましたな。遅くなって申し訳ないラーゼン殿。無事お連れした」
ラーゼン「ヨウム殿…我が国で唯一あの方と縁を持つ架け橋なりえる存在です。ぜひ彼の話を聞いてほしい」
ヨウム「待たせたな。どうにか"あの方"…リムルさんの説得に成功したぜ。王を元に戻す薬をもらってきた」
すると、辺りがザワつき始めた。
「ヨウム…英雄ヨウムか…!」
「あの豚頭帝を倒したという…!」
ディアブロ『貴族共が話を聞く姿勢は整いましたか?』
ディアブロは思念伝達でラーゼンに話しかける。
ラーゼン『完了しております。今ならばヨウムの話に耳を傾けるでしょう』
だが、そんな中一人の貴族が群れを割って出てきた。
「なんじゃ貴様は!英雄だかなんだか知らぬが平民風情が無礼であろう!!」
ラーゼン「!?」ゾクッ
ラーゼンが怯えたのはその声ではない。この状況に怒るであろうディアブロに対してだ。
「ここは下賤な輩が来るような場所ではないぞ!」
ラーゼン「か、カルロス卿!!まずは話を聞きましょうぞ!」
ディアブロ「…」ゴオォッ
ヨウム「え、え〜と…じゃあ話すぜ」
ヨウムはディアブロに怯えながら話し出す。
ヨウム「まずわかってねぇみたいだから教えてやる。ファルムスは今滅茶苦茶ピンチだが同時にチャンスでもある。暴風竜ヴェルドラ。あんたらは二万の軍隊と引き換えに天災級を目覚めさせちまった」
その場の全員が怯え、頭を抱えた。
ヨウム「ファルムスはジュラの大森林と隣接してる。まず無事に済むわけはねぇよな。これが最大のピンチだ」
貴族たちの目の前に立つディアブロだが、その姿は全く気付かれていなかった。
ヨウム「次にチャンスについてだ。リムルさんから和睦協議の提案があった」
先程ヨウムに怒鳴った貴族が聞く。
カルロス「そ、それの何がチャンスだと…」
ヨウム「忘れたのか?さっきレイヒムさんが
"助けられた"って言ってたじゃねぇか。
魔国連邦"テンペスト"の盟主リムル=テンペストは現状 暴風竜と交渉可能な唯一の存在だ」
「暴風竜と交渉可能…!?」
ヨウム「おっと、希望が見えて来ちゃったか?でも忘れちゃいねぇよな。自分たちがあの人の国に何をしたのか。
…リムルさんは人間との協調を望んでいるが仲間が殺されて泣き寝入りを決め込むほどお人好しじゃねぇ。…正直、滅茶苦茶怒ってるぜ?
さて、どうする?この状況で和睦協議の提案を突っぱねるか?よく考えて答えようや。俺らの国のことなんだからよ」
カルロス「なんという…なんという無礼な物言いか!!大国ファルムスが魔物の国に屈するだと!?あり得んな!」
ラーゼン「カルロス卿!!」
カルロス「リムルとやらに顔が利くなら都合がいい。取りなすのも英雄の仕事であろう!!」
ラーゼン「カルロス卿控えよ!!(怒ってる…!!)」
ラーゼンはディアブロの機嫌を伺いながらカルロス卿を宥める。
カルロス「国家の大義を貴様如き平民が語るでないわ!!よいか!儂は絶対に認め___
ラーゼン「控えろと言っておろうがこの馬鹿垂れがぁ!!」ズンッ
ラーゼンの魔法でカルロスは氷漬けにされた。
ラーゼン「事情を知らぬ者が出しゃばるでないわ!!」ギリッ
レイヒム「(ナイスですぞラーゼン殿!)」
ディアブロ「ほぅ…」
ラーゼン「はぁ…良いか。ヨウム殿の言葉に嘘はない。我らは敗北した。生き残ったのは儂とレイヒム殿と…そして暴風竜の魔素に当てられ、かのような姿に変じてしまわれたエドマリス王のみ。
我らが運命はテンペストの盟主にかかっておる。これがファルムスの現状よ」
「……提案を受け入れようではないか。のう?皆の者」
一人の貴族がそう言うと、他の貴族も黙ってそれを黙認するしかなかった。
ディアブロ「クフフフフ…賢明な判断です。
それでは約束通り、この国の王を解放きて差し上げましょう」
衛兵「な、何者だ!貴様いつの間に王の側へ…
ディアブロ「これは失礼。ガラ空きでしたもので。我の"名"はディアブロ。偉大なる我が王、リムル様の忠実な執事(バトラー)ですよ」
そう言ってディアブロはエドマリス王に回復薬を掛けた。そして、それと同時に誰にも気付かれぬ様に王の体の法則を組み替えていたシオンの呪縛を解いた。
その変化は劇的だった。一瞬にして王の体は
健全な元の姿に戻ったのだ。
ディアブロ「ご気分はいかがですか?エドマリス王」
エドマリス「あ、ああ…助かった。感謝する」
「おお…王が元の壮健なお姿に…!」
「信じられん。あれ程あらゆる治療を試みても効果がなかったと言うのに…」
ディアブロ「さて、ファルムスの王よ。我が王であらせられるリムル様より伝言があります」
エドマリス「聞こう。魔物の国の使者殿…」
その言葉に居合わせた貴族達はザワついた。
ディアブロ「では申します」
そう言うと、ディアブロは持っていた巻き物を広げて、読み始めた。
ー"これより一週間の後 両国代表による和睦協議を行いたい"
ー"講和条約の締結に先立ち貴国には三つの道を用意した"
「三つの道…?」
ー"選択肢を与えよう"
ー"一つ 王が退位し戦争賠償を行うこと"
ー"一つ 魔国連邦の軍門に下り属国となること"
ー"一つ 戦争を継続すること"
ー"貴国の前には三本の道がある"
ー"どれも茨の道だが、よく考えて欲しい"
ー"選んだ道が途絶えないことを祈る"
ディアブロ「以上となります。それでは一週間後までに答えを用意しておいてください」
「ま、待って欲しい!それはあまりにも時間が…」
ディアブロ「黙りなさい。私は気が短いのです」
「しかし、地方の貴族も召集せねば…
ディアブロ「黙れと言っている」ギロッ
ディアブロの威圧に、貴族達は口を塞いだ。
ディアブロ「お前達の都合などリムル様には関係ない。いいですか?つまらない小細工を弄そうなどと考えないことです。返事を先延ばしにすることは許しません。こちらの提示した選択肢以外の答えも許しません。
一週間後に返事がなければ"戦争の意思あり"と受け取ります。いいですね?では失礼。
せいぜいよく考えて返事をする様に」
ー現在ー
ディアブロ「___という感じに揺さぶりをかけておきました」
リムル「お、おう…」
エイト「(恐ろしいやつだな…)」
リムル「というか箱詰めのアレ見せちゃったんだな…」
ディアブロ「はい。恐怖心を植え付けるには
最適と判断いたしました」ニコニコ
エイト「リムルのクリーンなイメージは消し飛んだな」
リムル「いいよなエイトは。今回は俺の名前が上がってるせいで特に注目されてないし…」
ディアブロ「それで、講和の条件ですが賠償金として星金貨一万枚を要求しております」
リエ「「」」バブォッ
俺たちは飲んでいた紅茶を吹き出した。
エイト「戦争継続が不可能なのは火を見るに明らか…属国になるのも貴族達が納得しない。三つの選択肢を与えておきながら実質一択と…」
ディアブロ「その通りでございます。貴族達の一部は王に全ての責任を押し付け賠償を逃れようとするでしょう。ここでファルムスは国王派と貴族派に二分されます。貴族派にとって都合のいいことに王を守る騎士団はもういない」
エイト「ああ、それでヨウムを国王派に引き込むってわけか」
リムル「確かに。いくら国内で人気がある英雄とはいえ、いきなり王位を譲渡するには無理がある。ヨウムに国を救われたっていう状況を作り出せば国民も納得しやすい」
ディアブロ「ご明察恐れ入ります」
エイト「そんじゃ、内戦が起きそうになったら
ヨウムに戦力を貸し出せばいいんだよな?」
ディアブロ「はい。時が来ればラーゼンより連絡が入る手筈となっておりますので、その時はよろしくお願いします」
なるほどな。帰還がめちゃくちゃ早かったから武力でゴリ押しして来たのかと思って心配したが…ディアブロは優秀だな。完璧過ぎて怖いくらいだ。リムルの理念だってちゃんと盛り込んでるし…。
「お待たせしました。デザートをお持ちしました」
リムル「お、これは抹茶プリンかな?」
「はい。シュナ様にはまだまだ及びませんが、私も腕を上げたんですよ」
シュナか…ソウエイの報告ではクレイマン城の調査に参加してるらしい。「空間移動」が使えるまで魔力が回復したら帰ってくるそうだ。
エイト「ああ、そういえばラーメンがもうすぐ完成するぞ」
リムル「…ほ、本当か?」
エイト「ワルプルギスでクレイマンが喋ってた時に素材の解析と掛け合わせがわかったからな。あとはリムルが統合してくれたら材料も揃う」
シオン「リムル様エイト様。ラーメンとはなんですか?あの魔法使いのことですよね?」
エイト「それはラーゼンだ。ラーメンはな……旨い。その一言に尽きる食の頂点だ」
リムル「俺たちの国は食文化が進んできてはいるが、まだスタートラインに立ったばかりだ。ラーメンを作らなければ先には進まないんだ」
ディアブロ「(リムル様にそこまで言わせる食ですか…気になりますね)」
そう思いながらディアブロはプリンをヴェルドラに渡した。
ヴェルドラ「クァーハッハッハ!ディアブロよ。貴様は中々に義理堅い男のようだ」
リムル「!…なんだディアブロ。ヴェルドラにあげちゃったのか?」
ディアブロ「ええ。情報の対価としてお支払いしたのです」
情報…?
エイト「…ああ、そういうことか。なんでワルプルギスで決まったことをディアブロが知ってるのかと思ったが…」
ヴェルドラ「な、なぜ睨む…!?我は別に悪いことはしていないぞ!仲間に"ほーれんそー"して怒られることがあろうか」
リムル「プリンに目が眩んで、大事な仕事中のディアブロに茶々入れたのか?」
ヴェルドラ「そうとも。ちょっとタイミングが悪くて、講和の条件を読み上げてた時に声かけちゃったがそれ以外はいい感じのやり取りだったとも」アセッ
リムル「おい!」イラッ
エイト「なんて声かけたんだ?」
ヴェルドラ「うむ!ワルプルギスがそろそろ終わるから帰って来いとな!」
ディアブロ「はい。お陰様でお二人のお出迎えの準備もできました」
リムル「へーなるほどね。そうかそうか」ニコッ
ヴェルドラ「」ニコッ
リムル「おい」ゴオォッ
ヴェルドラ「我ちょっとトイレ…「君排泄とか必要ないよね?」」
俺はヴェルドラの肩を持って止めた。
リムル「もし肝心なところでディアブロがしくじったらどーすんだ!!自分の影響力の強さを考えろ!」
そんなわけでリムルがヴェルドラのプリンを
没収した。
エイト「ああ、ハルナさん。ヴェルドラのおやつはしばらく抜きでいいから」
ヴェルドラ「なっ…!酷い!!酷すぎるぞエイト!!リムル!止めてくれエイトを!」
リムル「俺もエイトに賛成かな」ニコッ
ヴェルドラ「がっ…!!」ガーンッ
エイト「(誰も想像できないだろうな。特にファルムス王国は。暴風竜とこんなやり取りしてることなんて)」
〜ファルムス王国〜
エドマリス「(穏やかで美しい街並みだった。あの光景の一部になるのなら…属国も、或いは悪くないのかもしれぬ。だが…)」
「属国などあり得ませんぞ!事実上ファルムスの消滅ではないか!」
「我らの立場も保証されぬ上魔物に従うなど!」
エドマリス「(無理だろうな…)」
「では賠償に応じると?星金貨一万枚じゃぞ!?」
「金貨にして百万枚相当…我が国の税収の20%に相当しますな…」
エドマリス「良いか皆の者。余の考えを聞いて欲しい。此度の戦は失敗であった。余は民のためではなく己の欲望のために進軍を決めた。
賢く 先を見据えた者達からの助言もあったというのに」
すると、エドマリスの弟が口を開いた。
エドワルド「兄上…いや王よ。誇り高き王が負けを認めるのですか?」
エドマリス「フッ…」
エドワルド「?」
エドマリス「クックック…誇りだと?エドワルド。
そんなもの暴風竜の前では塵芥に等しいわ」
エドマリスは瞳孔を開ききって、威圧するように言った。
エドマリス「居合わせなかった者も聞いたであろう?余がどのような姿になって帰還したか。
同じ目に遭いたいのか?」
エドワルド「…!」
エドマリス「誇りも名誉も幾らあったところで民の盾にはならぬ。だが、卿ら全員に貴族としての誇りを捨てよというのは無理な話。魔国の属国に下るという選択肢は選べぬだろう。
で、あるならば我らに残された道は二つ。
賠償に応じるか戦争の継続だ。
余が言うのもなんだが…願わくば民のための
選択をして欲しい」
「(あの強欲な王が…)」
だが、その瞬間…
衛兵「申し上げます!!」
「なんじゃ!今は大事な…「お、お許しを!!ギルドより最重要緊急伝達書でございます!!魔王の勢力圏に大きな変動があったと」
「「‥「「!?」」‥」」
衛兵「人形傀儡子"マリオネットマスター"が死に、獅子王"ビーストマスター"
天空女王"スカイクイーン"は魔王位を返上の上、破壊の暴君"デストロイ"の傘下へ。
十大魔王は九柱となり、
九星魔王"エニアグラム"を称するとのこと」
「エニアグラム…」
「九柱…」
「数が合わぬようだが…あと二柱は?」
衛兵「は…傾向が確立していないため仮の二つ名だと思われますが、
新星"ニュービー"エイト=テンペスト
新星"ニュービー"リムル=テンペスト
ジュラの大森林の二大盟主が"人形傀儡子"を
打ち破り、魔王となったとのことです…!」
「な…何ぃぃぃぃぃい!?」
エドマリス「…決まりだな。暴風竜以前に魔王リムル、そしてもう一人の魔王エイトとまたけして侮れぬ脅威。取れる選択肢はもはや一つしかあるまい。賠償に応じ、余は退位する。
そして、後継者にはエドワルドを推す」
エドワルド「…!」
エドマリス「この先ファルムスには困難な時代が訪れよう。頼んだぞ我が弟よ」
エドワルド「…は。まずは皆の意見を聞かねばなりませんが(落ち着け…笑うのは まだ)。
異論が無ければ謹んでお受け致します。兄上」
ラーゼン「(…ここまでは予定通りだな)」
〜魔国連邦(テンペスト)〜
シュナ「只今戻りましたエイト様♪」ダキッ
エイト「おう。お帰りシュナ(癒される)」
リムル「ソウエイも無事で何よりだ」
ソウエイ「は」
エイト「それで…その骸骨が例の…?」
ソウエイ「は。[空間移動]にへばり付いてきた元死霊の王(ワイトキング)アダルマンとその配下達です」
アダルマン「神よ…!」
リムル「(感極まって会話どころじゃないな)」
エイト「とりあえず封印の洞窟に連れて行ってやってくれ。後ろのアンデット達が日光で成仏しそうだ」
ソウエイ「承知しました」
そう言ってソウエイはアンデットを案内した。
エイト「それでハクロウは?一緒だったんだろ?」
シュナ「後の処理をお願いしました」ニコッ
エイト「あ、そう…」
どうやらハクロウは仕事を押し付けられたらしい。ハクロウは[空間移動]を使えないからな。仕事が終わった頃に迎えに行ってやるか。
シュナ「エイト様、少しだけお時間頂けますか?」
エイト「え?まあ、今は大丈夫だぞ」
シュナ「!ありがとうございます」ニコッ
〜〜〜
まあ、そんなわけで俺の部屋に来たわけですが…
エイト「え?何これ?」
シュナはベットで俺の左耳を甘噛みしていた。
シュナ「ワルプルギスで左耳、噛まれてましたよね?」
エイト「い、いや…あれは不可抗力だったというか…それに拒否っただろ?」
やっぱバレてたか…。
シュナ「ええ。ですが…やはり上書きしておかないといけませんよね♪」ニコッ
そう言ってシュナは更に耳を噛んだ。
エイト「んっ…お、俺耳弱いんだが…」
シュナ「そうなんですか…ならもっとやっても大丈夫ですね」ニコッ
エイト「え、ちょ…」
シュナ「はむっ…」
エイト「っ…」
シュナ「ほ、ほれに…はまれるまえににげなはったのでおひおきでふ」ハムッ
エイト「(こ…この子怒ってる…のか…?いや違う……恥ずかしがってる…?)」
俺はシュナを抱きしめ、頭を撫でた。
シュナ「はぅ…///」
エイト「そんな無理すんなって…///」
俺も恥ずかしい…めちゃくちゃ恥ずかしい…。
シュナ「そ、その…もう少し…もう少しこのままにしてもらっても…?」
エイト「お、おう…///」ギュッ
シュナ「ふふ…///」
ーその日の夜ー
ベニマルも帰ってきて、クレイマン戦の報告を受けた。
リムル「三獣士達も来るの?」
ベニマル「ほら、ユーラザニアの首都はミリム様が吹き飛ばしてしまったでしょう?家をなくした市民を一旦我が国で受け入れようと言う話になったのです」
エイト「(獣人だけじゃなく戦場で捕虜にしたクレイマン軍の兵も来るんだよな)」
リムル「場所が確保できるなら構わないけど…」
ベニマル「身を寄せられる村がある者はそっちに行ってもらって、ここへ来るのは寝食に困っている者と技術の習得を希望する者たちです。
それに捕虜の大部分は大まかに編成してゲルドに預けてあります」
リムル「ああ、ユーラザニアの再建に従事してもらうからな。今のうちにゲルドの工作部隊に組み込むのはいい判断だ」
エイト「でも捕虜の中には悪感情を抱いているヤツもいるだろ。移動中に暴動が起きたりしないのか?」
ベニマル「ああ、それはご安心を。目の前で軽く説明(いあつ)しておいたんで」
まぁ、カリュブディスを瞬殺した男に脅は……説明されちゃ言う事を聞くか。
ベニマル「ただウチの連中には念のため周知させておきたい。頼めるかリグルド殿」
リグルド「わかりました。捕虜の件は私から皆に説明しましょう」
ベニマル「あー…その、それで…」
リムル「まだ何かあるのか?」
ベニマル「いえ、その…シュナは何をしているんだ?」
シュナ「ふふふ…」ギュッ
俺の腕に抱きつき続けるシュナ。
リムル「」
ベニマル「兄離れってこんなに悲しいものなんですね……」ハァ
エイト「ベニマル。その気持ちはわかるぞ」
ベニマル「いや、エイト様はいいですよね。
こんなに可愛い恋人ができたんですから…」
エイト「まあ、ベニマルも頑張れよ」
ー数日後ー
和睦協定を締結させたディアブロが報告に来た。
ディアブロ「こちらが証書になります。そして、こちらが…賠償金の一部として支払われた
"星金貨千五百枚"です」
リムル「うおおお…流石にファルムスは大国だな。よくぞこれだけ貯め込んだものだ」
エイト「(俺たちの国庫が一気に潤ったな)」
ディアブロ「はい。ですが大半はエドマリスの私的財産から捻出したようです」
製造元であるガゼル王曰くこの世界に出回ってる星金貨の総数自体が一万枚あるかどうからしい。つまり、全流通の一割以上がここにあるわけだ。
エイト「予定通り戦争になりそうなのか?」
ディアブロ「はい。間違いなく。請求額に足りない分を借款として貸し付けましたので新王エドワルドはこれに我慢出来ないでしょうから」
リムル「先王のエドマリスはどうなったんだ?」
ディアブロ「あの者は王位を返上の上、地方の小領地に移り住むことになりました。新王は先王に全責任を押し付けようと動くはずです。
そこをヨウム殿に阻止させます。新王の不誠実さを糾弾することで乱が起きるでしょう」キリッ
THE・悪魔(デーモン)。人心を操るのはお手の物らしいな。
リムル「お前に任せるよ。なるべく民衆には被害が出ないようにな」
ディアブロ「それがお望みとあらば。このディアブロにお任せください」
エイト「まあ、警戒は怠るなよ。計画が完璧でも外的要因でしくじる可能性もあるからな」
ディアブロ「はい。肝に銘じます。…外的要因と言えば…西方聖教会がレイヒムに出頭を命じたそうです」
リムル「レイヒム?」
叡智之王『こちらです』
そう言って叡智之王は俺にレイヒムの顔を見せた。
エイト「(ああ、はいはい。教会の大司教ね)」
ディアブロ「テンペストとファルムスの戦争状況を詳しく知りたがっているとか」
リムル「うーん…あそこはヴェルドラを特に敵視してるんだよな」
筋書きを話させたら作り話だと気付かれるかもしれないが…
ディアブロ「教会側の出方を見るためにも応じるべきかと思います」
リムル「だよな…」
西方聖教会…魔物を認めないという教義が厄介だな…千年以上続く教義を否定する気もないがこちらにそれを押し付けられても困る。
仲良しとまでは行かなくても適度な付き合いがしたいな…。
リムル「…よし、レイヒムにメッセージを持たせよう。シオン、クレイマンから押収した水晶玉を持ってきてくれ」
シオン「はい!」
ー1ヶ月後ー
ガビル、ゲルド、ハクロウが獣人と捕虜を連れて帰ってきた。
リムル「___と、いうわけで…ようやく皆揃ったな」
エイト「あー皆。知ってるヤツもいると思うけど」
リムル「この度私たちは魔王に就任いたしました!」
会議室に集まってる皆さんは盛大にお喜びになってくれた。
エイト「(まぁ、今更だが喜んでくれると嬉しいよな)」
リムル「そんなわけで俺たちの支配領域がジュラの大森林全域に決まったから」
全「「「「「「えっ!?」」」」」」
エイト「(ん?あれ?なんかまずかった?)」
ベニマル「全域となると…川の向こう側もですね?」
エイト「お、おう…多分」
なんだ?今までだって盟主やってたんだから何も変わらないんじゃないか?
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エイト「え?挨拶にくる?新たに森に入ってくる者だけじゃなくて既に住んでる者まで来るのか?」
シュナ「もちろんです。エイト様とリムル様が正式な魔王になられた今挨拶に来ないものは叛意ありと受け取られてしまうでしょうから」
ベニマル「二人が盟主として認識されていたのはドライアドの地盤のみでした。川の向こう側はドライアドの影響下になかったはずなので、新たな魔王の出現は頭の痛い問題でしょうね。
挨拶に来るならよし。逆らうなら…まぁ、やりようは色々あります」ハハハハッ
なんか申し訳なくなってきた…。
そらに、引っ切り無しに客人が来るなんて面倒くさ…
エイト「!そうだ。どうせならまとめて来てもらえばいいんじゃないか?」
リグルド「と、言いますと?」
エイト「ほら、最近ずっと緊張の毎日で忙しかったし偶には息抜きしたいだろ?」
リムル「みんなでお祭りしようぜ!って言いたいのか?」
エイト「おう」
リムル「そうだな。どうせ俺たちのお披露目を兼ねるんだしここは一つ盛大にやろうじゃないの!」
「「「「「「「はい!!」」」」」」
と、そんなわけであれよあれよという間に意見が出揃い気が付けば各国の首脳にまで招待状を出すという流れが出来上がっていた。
エイト「お前ら〜ご飯休憩にしねえか?」
俺は記念すべきラーメン一作目を作ってきた。
リムル「つ、遂にできたのか…!?」
エイト「おう。今回は醤油ラーメンだ」
ベニマル「これは?」
リムル「食べればわかる」キリッ
そんなわけで皆でラーメンの試食会だ。
リムル「…」
リムルはラーメンを啜った。
エイト「(さて…出来栄えは…)」
リムル「うんっっまぁぁい!」
エイト「よし」ガッツポーズ
シュナ「これは…」
ベニマル「旨い…!!」
ゴブタ「これめっちゃ美味しいっす!」
全員からの高評価。うまくできたな。
この国にラーメン文化を染み込ませるという俺の野望も意外と簡単に実現できそうだ。
〜〜〜
リムル「ディアブロ。計画は順調か?」
ディアブロ「はい。リムル様。予定通り新王エドワルドが兵力を集め始めました。内乱が起こるのも時間の問題でしょう」
俺の想像よりだいぶ早いな。
ディアブロ「ですが…まだ報告できる段階ではないので黙っておりましたが…レイヒムが戻らないのです」
リムル「確か俺のメッセージを持たせたんだよな。もしかして届いてないのか?」
ディアブロ「いえ、手の者に護送させましたので西方聖教会の本拠地に到着したのは確実です」
エイト「まさか死ん…
ディアブロ「それはありえません。[誘惑者](オトスモノ)は支配した対象が死ねばわかりますので」
西方聖教会か…正直情報不足なんだよな…。
リムル「実際敵に回るかな?」
ベニマル「難しい問題ですね。積極的に介入してくるようならここで雌雄を決して置きたいところですが」
ソウエイ「リムル様とエイト様が魔王となりヴェルドラ様もいる今、向こうから仕掛けてくることは考えにくい…」
エイト「リムルがヒナタと戦っている最中にテンペストは襲撃を受けただろ?やはり偶然とは考えられないな。絵を描いたやつがいると思うぞ。クレイマンが黒幕の存在をほのめかしてたからな」
リムル「"あの方"ってやつだな」
エイト「見逃すことはできない敵だ。今回も介入してくる可能性は十分ある」
リムル「…なあエイト」
エイト「んあ?」
リムル「ぶっちゃけ言うと…一つ気になることがあるんだ」
エイト「?」
リムル「黒幕がいるのは確定として、ヒナタがそれと繋がっていたとしても、だ。あいつが誰かの命令を聞いて俺を殺しにきたと思うか?」
エイト「!」
カイジン「旦那の言う通りだな。聖騎士団長であるヒナタが、誰かの命令で動くなんて考えられんよ。あの麗人が言う事を聞く相手は神ルミナスだけだ。あの女には法皇ですら口出しできないってのは有名な話だぜ?」
リムル「ヒナタに命令できる存在はいない、か…」
エイト「ヒナタは上手く利用されたのかもな。
リムルがシズさんの仇としてヒナタにリークした、とか」
リムル「かもな」
エイト「それに、黒幕は一人とは限らない」
〜神聖法皇国ルベリオス〜
「やぁヒナタ。もう皆揃ってるよ。随分のんびりじゃないか」
ヒナタ「…そ、じゃあ突っ立ってないで貴方も早く席に着いたらどう?サーレ」
〜〜〜
ヒナタ「待たせたわね。それでは法皇両翼合同会議を始めましょう。議題は暴風竜の復活……そして、新たな魔王の誕生について」