【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪   作:甘味の皇帝

32 / 41
29話:なりたけ

エイト「…」

 

只今俺はブルムンドにてラーメンの布教中だ。

 

「旦那!これでどうだ?」

 

エイト「おお、見た目は完璧…」

 

俺は割り箸を割り、スープを飲む。

 

エイト「…」

 

そして、そのまま麺を啜った。

 

このラーメンを作ったキヤは緊張した面持ちで俺を見ている。

 

エイト「よし、合格だ」

 

「!」

 

エイト「これでこの"なりたけ"を任せられるな」

 

「ありがとうな!エイトの旦那!」

 

エイト「いや、こんな短い期間で覚えてもらえてよかった。こっちこそありがとうな」

 

キヤ「いや、こんな凄い料理のブルムンド本店の店長を任せてもらえて…本当に感謝しかねえぜ旦那には」

 

エイト「おう。これからも頑張ってくれよ」

 

俺はなりたけを出ようと思ったが、別の用事を思い出してキヤの元に戻った。

 

キヤ「どうしたんだい旦那?」

 

エイト「あー、今度テンペストで祭りをやるんだが…そこでラーメン屋を出す予定なんだ。よかったはそこで料理長やってくれねか?」

 

キヤ「お、俺なんかで?」

 

エイト「おう。一番の適任だからな」

 

キヤ「わ、わかったぜ…あれ?料理長ってことは他にも人は来るだろ?」

 

エイト「ああ、あと何人かスカウトする予定だ。この店で働いてくれてる子も連れて来てくれていいぞ」

 

キヤ「感謝するぜ」

 

エイト「って言ってもなりたけで働いてるのキヤとその子だけだろ?ラーメンの作り方教えたのか?」

 

キヤ「お、俺なんかじゃまだまだ…」

 

エイト「わかった。それなら祭りまでに基本的な作り方は俺が教える」

 

キヤ「いいのか!?」

 

エイト「時間はあるからな」

 

俺は祭りの担当でラーメン屋の展開に力を入れてる。これも立派な仕事だ。

魔導王朝サリオンへの街道の整備も俺たちが直接やるわけではないし、ファルムスの攻略はディアブロがやってくれている。ミリム達の新都市計画はゲルドに任せてるわけだ。

リムルが若干忙しいだろうが、俺は戦闘面でしか役に立たないのでこうしてラーメン作りに勤しんでるわけ。

 

だが、そんなところに悲報が入った。

 

エイト「え?ヒナタが?」

 

リムルの話によると、先程ヒナタがイングラシアから単騎で魔国連邦に向けて出撃したらしい。

しかもその後ろを完全武装した聖騎士四名が追従。追跡を振り切られたそうだ。

 

エイト「いきなりだな」

 

リムル『ただ、五人の速度的に急いでるわけじゃなさそうだからブルムンドに途中寄るんじゃないか?』

 

エイト「だろうな」

 

リムル『こっちは幹部達もいて動けるから、エイトは好きに動いていいと思うけど…どうするつもりなんだ?』

 

エイト「まあ、そうだな…リムルはテンペストの事だけ考えて動いてくれ。被害を最小限に留められる最善策をな。俺はヒナタに会った事がないし、もし会えたら話してみる」

 

リムル『わかった。こっちで何かわかったらすぐに伝える』

 

エイト「おう。サンキュな」

 

 

〜魔国連邦(テンペスト)〜

 

ディアブロ「リムル様。ご報告が…」

 

ディアブロは神妙な顔で、言いにくそうにそう告げた。

 

リムル「どうした?もしかして、何か問題か?」

 

もしかしなくても問題だろうな。なんせディアブロは、いつものように自信満々という様子ではないのだから。

 

ディアブロ「はい、問題が発生しました」

 

リムル「何があった?」

 

ディアブロ「レイヒムが死にました。死因は不明ですが、恐らくは殺されたものと思われます」

 

ディアブロが最後に見た時には健康に異常はなかったそうなので、事故に遭ったか殺害されたかの二択なのだという。

 

ディアブロ「リムル様が口封じを懸念しておられたというのに、これは私の落ち度です……」

 

申し訳なさそうに、ディアブロがそう言った。

 

そう言えば、そんな事を言った記憶がある。何気ない一言だったのだが、まさか本当にそうなるとは……。結界に阻まれた神聖法皇国ルベリオス内部での出来事なので、詳細は不明。

 

しかし前後の状況から考えるに、殺された可能性が濃厚だとディアブロは考えたようだ。

 

その状況を聞くと、思った以上に深刻な事態になっているようだった。

 

ディアブロ「ファルムス王国周辺国家に、

『悪魔の謀略によって大司教が殺害された』という伝聞が出回っております。魔法通信によって事情が拡散され、それに呼応するように各国の神殿騎士団が動き出しました。数日の間に準備を整え、新王エドワルドに合流するものと思われます……」

 

苦々しい表情のディアブロ。完全に予定外の出来事のようで、ディアブロが進めるファルムス王国攻略計画にも支障が出るのだろう。

 

ヒナタが動き出したこのタイミングで、この騒動間違いなく_____

 

《解。全ては繋がっていると思われます》

 

うん、それぐらい俺にもわかるわい。もしかして、そんな事もわからないくらい駄目なヤツだと思われているのだろうか?いやいや、それはないでしょ。

 

 

そのあとすぐに、ソーカによって幹部達が招集された。

 

ゲルドを除く幹部全員が集まっている。

 

ベニマル「リムル様、ゲルドは呼ばなくてもよかったのですか?」

 

リムル「ああ。あいつは今、大きな仕事を頑張ってくれている。今回は俺とヒナタの問題だし、戦いになっても大軍は必要としないからな」

 

国家存亡を賭けた防衛戦という訳でもないし、少人数を数のカで叩き潰すというのも何か違うだろう。というか、この世界では力の差が大き過ぎると、数の力に意味がなくなるんだよね。やって来る聖騎士達は、個々人がAランクオーバーの強者ばかり。

幹部連中が出ないと、相手にならないのだ。

 

どの道、今からゲルドの部下を全員呼び戻すのは困難なのだ。俺の転送魔法で連れ戻すのは可能だが、現地に全員集合するのに時間がかかり過ぎる。

 

捕虜の見張りも必要だし、いきあたりばったりで命じる訳にもいかないからな。俺の説明に皆が納得したところで、情報共有をかねてソウエイに状況を説明してもらう。

 

ソウエイ「はい、それでは説明します。

まず一つ、聖騎士団長ヒナタを含む五名が、ここ魔国連邦に向かっています。どうやらクルセイダーズの中でも上位の実力者ばかりのようでソーカ達の追跡は振り切りました」

 

ここで一旦ざわめきが起きた。

ソーカ達も、一応はAランクを超えているのだ。それなのに追跡に失敗した時点で、相手の実力がかなりのものである証明になる。

 

空を飛べば追いつけただろうが、そうすると発見されていただろう。無理をしなかったのは正しい判断だったと褒めていい。

 

それに、この町の周辺には警戒網が構築されているので、既にソウエイがヒナタ達の動向を把握しているのだ。情報を掴むのは戦略の基本。

 

それにしても、ソウエイの情報収集能力は大したものだ。金で雇った情報屋を利用したり、自らの『分身体』を変装させて送り込んだり。

ソウエイのヤツに忍者の心得なんかを教えた事があったのだが、それを自己流に発展させていたようだ。”隠密“という役職を与えた俺がビックリするほど、この仕事が天職だったのだろう。実はそれだけではなく、ソウエイはフューズにも実務的な事柄を教えてもらい、諜報活動のプロになっていたのだという。俺の怪しげな心得を聞いただけでそこまで出来たのなら、誰も苦労しないというもの。

も苦労しないというもの。

 

ソーカ達もソウエイに鍛えられて、更にその配下にまで教育が行き届いている。その上に現地人まで利用して、情報を集めてくれているのだと。今では俺が指示しなくとも、必要と思われる情報収集を行ってくれていた。今もごく当たり前のような様子で説明するソウエイ。実に頼もしくなってくれたものだ。

 

ソウエイ「ファルムス周辺のテンプルナイツの動きですが、ファルムスを囲むように続々と集結する模様。少数規模での移動ゆえその動きは速く、その総数は三万を超えるのではないかと予想されます。どうやら”悪魔を滅ぼす“事を目的としているようで、内乱そのものに干渉するつもりではない模様。ですがこのままでは、他国やファルムスの有力貴族達からのヨウム殿への援軍は期待出来ません」

 

それを聞いて、ディアブロの顔色が悪くなった。自分でも情報は掴んでいたようで、驚いている様子はない。しかし、話題に出ている悪魔というのがディアブロを指すとみて間違いないので、どこから情報が漏れたか気にしているのだ。

それにしても三万とは……周辺諸国から、数百から数千ずつ派兵されたのが集まると、かなり大規模で無視出来ない戦力になってしまうようだ。兵姑も農村部から補給し放題だし、持久戦になると不利なのはヨウム側か。面倒な話だ。

 

ソウエイ「ですが各国の王達は、西方聖教会に同調して軍を動かしてはおりません。そもそも教会内部にも派閥があるようで、どうも命令系統が複雑になっているようなのです。内情を詳しく知る事が出来れば判断もつきやすいのですが……」

 

ソウエイはそう言って、自分の報告の不備を恥じるように小さく頭を振った。うーん、確かに謎の多い組織だよな。ユウキも詳しく知らないと言う程だし…。

 

ディアブロ「こんなことなら、レイヒムに事情を聞いておくべきでした……」

 

ディアブロは基本的に自己完結しているので、下等と見下す者から意見を聞いたりしない。それが今回は裏目に出た感じだ。

 

シオン「その通り!先輩として私が、お前の失態だぞ、ディアブロ。やはりここは、お前の代わりに指揮を執った方が良さそうだな!」

 

ここぞとばかりに、シオンが言う。後輩であるディアブロが重要な任務についているのを、羨ましく思っていたようだ。普段なら言い返すディアブロも、今回は自分の失態だと思っているからか、黙ったまま反論する気配がない。

 

仕方ない。俺が代わりにシオンに聞いてみるか。

 

リムル「それで、シオン。仮にお前にファルムス攻略を任せたとして、お前は一体何をするつもりなんだ?」

 

もしかしたら。そう、万が一ではあるが、シオンにも素晴らしい作戦立案能力が____

 

シオン「はい!勿論、私が部隊を率いて王侯貴族を皆殺しに__

 

あるわけなかったよ。

 

リムル「馬鹿野郎!却下だ、却下!」

 

今の支配体制の頭を潰してしまったら、それこそ群雄割拠する内乱が勃発してしまう。

 

シオン「やはり駄目でしたか…」ショボン

 

リムル「ディアブロ。誰にだって失敗はあるし、レイヒムが殺されるなんて俺も思っていなかった。それに、お前の正体がバレたのは別にそこまで問題じゃないだろう?」

 

ディアブロ「えっ!?ですが、リムル様……?悪魔の関与と騒がれては、任務の続行は……」

 

驚いたように俺を見るディアブロ。落ち込んでいたのは、任務から外されると思っていたからみたいだ。

 

リムル「いいか、失敗した時は、それをどうやって挽回するかを考えるのが大事なんだ。責任を取って辞めますじゃあ、誰でも簡単に出来るだろうが!それに、元々ヨウムと俺の繋がりは公表してある。ディアブロは悪魔だが、俺の部下だ。周囲が騒ごう全く関係ない。今問題となっているのは、レイヒムを殺した犯人が誰なのかって事だろ?それがディアブロではないと証明すればいい話で、そこまで難しく考える問題じゃないよ」

 

そもそも、俺は魔王なのだ。その配下に悪魔の一人や二人いたとしても、全然不自然ではないだろう。

 

シュナ「そうですよ。シオンだって、貴方に代われるとは考えていないでしょう」

 

シオン「いいえ、シュナ様。私ならば、即座にファルムス王国を灰塵に___」

 

そう言いかけたシオンを、シュナが一瞥して黙らせる。エイトがいないことでテンションが低いシュナの眼光は鋭くシオンでも逆らえない。

 

シュナ「_____考えていませんでした。不器用ですが、シオンなりの激励だったのですよ。貴方もリムル様にお仕えしているのだから、小さな失敗で落ち込んでいる場合ではありません」

 

優しくも厳しいシュナの言葉。しかし、

シオンは、黙ってられないとばかりにそれを否定する。

 

シオン「シュナ様、それは買いかぶりです。私はこの新参者に、第一秘書として先輩の威厳を見せ付けただけですので!」

 

ドヤ顔で言うが、そこには少し照れの色が見えた。やはりアレは、シオンなりの激励だったって事か。わかりにくいけど、シオンらしい。そしてシュナは、それを正確に見抜いたのだろう。普段は脳筋な事ばかり言うシオンだが、たまには粋な事をするものである。

 

リムル「ま、そういう事だな。援軍については作戦次第だ。最悪の場合はエイトを引きずってでも連れ戻して前線に出させるさ」

 

ディアブロ「では、このまま私が作戦を続行しても……?」

 

リムル「当たり前だろ。こっちはヒナタを相手にするので精一杯だし、ファルムス王国の攻略はお前の仕事だ。そもそも、レイヒムを送り出す事を許可したのは俺だ。その責任は俺にもあるさ。だから、この作戦はお前が最後まで全うしろ。それとも、無理そうか?それなら」

 

ディアブロ「いいえ、とんでも御座いません!せっかくリムル様より与えて頂いた仕事です、是非とも最後まで私にお任せ下さい」

 

リムル「やれるのか?」

 

ディアブロ「クフフフフ、当然です!」

 

リムル「良し。キッチリと汚名を返上してくれ」

 

自信と余裕を取り戻したディアブロが頷く。  

 

 

シュナ「リムル様、ご提案が御座います」

 

リムル「珍しいな、何か意見があるのなら言ってくれ(エイトがいなくてテンションが低いから今日はいつも以上に喋らないと思ってたんだが…)」

 

リムル「この前私が倒したアダルマンですが、彼から話を聞いてみてはどうでしょう?

数百年前とはいえ、彼も一応は西方聖教会に所属していたそうですし…」

 

アダルマンと言うと…

 

『解。クレイマンの居城を防衛していた__』

 

ああ!シュナが仲間にしたというアンデットだな。確か力を失って今は死霊(ワイト)なんだよね。

 

リムル「それはいいな。ちょっと話を聞いてみるか」

 

しばらくして、ガビルに呼んでできてもらった

アダルマンがやって来た。

 

「__拝謁の撓倖を賜りました事、誠ににありがたく__」

 

リムル「長い!」

 

俺がアダルマンについて考えている間も、感謝の言葉を述べ続けていたようだ。聞き流していたが終わる気配がない。

 

これはまた本当に強烈なヤツである。

 

シオン「お前は見所がある!」

 

ディアブロも笑みを浮かべて優しそうにアダルマンを見ているけれど、他の幹部は流石に若干引き気味だった。

 

シュナ「アダルマン、そのへんで。リムル様に会えて嬉しい気持ちはですが今は時間もないので、そろそろ本題に移りなさい」

 

シュナが呆れたように止めなければ、このまま祈りの言葉まで捧げられそうな勢いだった。

 

なんとこのアダルマン、昔は西方聖教会で枢機卿という最高地位に就いていたらしい。当時は西方聖教会の立場が弱く、神聖法皇国ルベリオスにおいてはそこまで上位の立場ではなかったというが、詳しい話を聞く事が出来た。

 

まず、神聖法皇国ルベリオスという国は、神ルミナスを頂点と定める宗教国家である。法皇は神の代弁者であり、その正体は不明。世代交代しているのかも知れないが、そうした話を聞く事はなかったという。国を統治するのは、法皇庁という組織だ。この組織が、神聖法皇国ルベリオスの最高執政機関となる。アダルマンがいた当時は、西方聖教会はこの法皇庁の下部組織に過ぎなかったのだと。

 

アダルマン「西方聖教会とは、ルミナス教を布教する目的で組織されたのです。武力など所有せず、信者に神の教えを広めるだけの組織

だったのです。ですがそれだけでは、布教する者達の身を危険から守れない。そこで法皇庁が傘下の国々に要請して神殿騎士団(テンプルナイツ)を結成した。法皇庁の予算で賄われる

神殿騎士団は各国も歓迎し、協力を約束した訳だ。魔物の脅威から信者を守るという事は、

 

即ち各国の国民も安全になるという事。予算を出してもらえるのだから、協力するのは当然だな。そうした関係が構築されていくと、本国と各国の間で摩擦が起きるようになる。そこで登場するのが、法皇直属近衛師団という訳だ。

 

アダルマン「師団と言いますが、実際には数名しかおりませんでした。異常な強さで、神殿騎士団に命令する権限を持ちます。神と法皇にのみ忠誠を誓う集団でして、法皇庁の最高権力者である執政官でも、彼等にはあくまで要請する事しか出来ません」

 

執政官というのは、行政を任された者らしい。そんな権力者でも命令出来ない権限を持つ、法皇直属近衛師団。かなりの実力者なのは間違いなかろう。

 

アダルマン「ちなみに、我が友であるアルベルトも、近衛師団に誘われたようです。ですが断り、西方聖教会にて私の副官を務めてくれました。そこで、聖堂騎士(パラディン)という称号を法皇より賜ったのです」

 

骸骨の顎をカタカタと鳴らし、どこか誇らしげに笑うアダルマン。

 

なるほど、ハクロウが苦戦したという死霊騎士(デスナイト)今は骸骨剣士(スケルトン)だな。剣技はそのままに魔物の肉体を得た訳だから、強いのも当然か。

 

アダルマン「ですが、今は状況がかなり変わっているようです」

 

おっと、アダルマンの話は終わっていなかったようだ。

 

そのまま説明を聞くと、当時とかなり様変わりしているのだと言う。

 

最大の違いは、教会の力が増した事だ。聖騎士団という戦力を得て、発言権も大きく向上したらしい。それ以前にも、西方聖教会の枢機卿から執政官が選ばれるようになったりと、立場はかなり改善されたのだという。その理由は、”七曜の老師“の存在だろう。

 

アダルマンがいた頃は、”七曜の老師“が法皇に次ぐ権力者として執政官も務めていたそうだ。その”七曜“とやらが西方聖教会の建て直しを命じられ、今のように枢機卿から執政官が選出される形態へと移り変わったのだという。

 

ただし、その”七曜“とやらは胡散臭いヤツらのようだ。アダルマン達を排除しようと罠にかけたのも、どうやらその”七曜“らしいのだ。

 

”七曜“の監督の下では目立った活躍のなかった聖騎士団だが、ヒナタが鍛えた事で名実共に最強の騎士団へと成長した。

 

これによって神聖法皇国ルベリオスは、聖騎士団という両翼を得たのである。

 

リムル「詳しいな、アダルマン。クレイマンの所にいた割に、えらく事情に通じているじゃないか……」

 

アダルマン「魔王クレイマンは、西方聖教会を敵視しておりました。その戦力を警戒し、情報収集を怠らなかった模様。私も一応は幹部でしたので、意見は求められずとも情報は与えられていたのです」

 

思わぬところでクレイマンの用心深さが役に立った。

 

アダルマン「我が神たるリムル様、どうか警戒して下さい。神聖法皇国ルベリオスには現在、”十大聖人“と呼ばれる”仙人“級の者達がおります。魔王クレイマンも警戒していた者共ですので、油断を召されぬようにお願い申し上げます」

 

アダルマンの説明は以上だ。詳細は不明だが、近衛師団の中でも”三武仙“と呼ばれる者が

”仙人“級の実力者なのだという。これに聖騎士団の六名の隊長格とヒナタを加えた十名が、

"十大聖人"と呼ばれているらしい。

 

 

”仙人“とは、”魔王種“に匹敵する力を得た人間なのだという。そんな者達が十名もいるのなら、クレイマンが警戒するのも当然か。すると恐らく、今ここに向かっているというヒナタを除く四名も、その”十大聖人“である可能性が濃厚だな。一般兵で迎撃するのは無駄死にになりそうだし、最初から俺と幹部で相手する方が良さそうだ。

 

 

アダルマン「我が神よ、ここはこのアダルマンが元枢機卿として、ヒナタとやらを諌めて見せましょう!彼女の信仰もリムル様へと鞍替えするように説得し___」

 

リムル「ああ、待て待て。そういうのはいらないから、お前はもう下がっていいよ」

 

話がおかしな方向へと流れそうだったので、慌ててアダルマンを退出させた。

 

思い込んだら一直線という感じで、ヒナタ以上に人の話を聞かなそうなヤツだ。

 

こういうヤツらが話し合っても、決して良い結果にはならないだろうな。そして……。

 

シオン「なるほど、素晴らしいアイデアです」

 

ディアブロ「クフフフフ、その手がありましたか!」

 

シオンディアプロなど、簡単に感化されている秘書と執事。

 

リムル「何を馬鹿な事を言ってるんだお前らは!余計に話が拗れるわ!」

 

アダルマンも退出して仕切り直しである。

 

 

情報も出揃ったところで、本格的に対策を考えるとしよう。相手の力を見極める捨て駒が欲しいけど、そうそう都合のいい……って、さっきからヴェルドラがチラチラと俺を見ているけど、お前は駄目だ。間違いなくやり過ぎる。

 

リムル「ヴェルドラは__」

 

ヴェルドラ「うむ!ようやく我の出番だな。任せよ!」

 

リムル「いや。ヴェルドラには、最終防衛ラインを任せたい」

 

ヴェルドラ「何ィ?」

 

リムル「格好いい響きだろ?最・終・防・衛・ラインだ。ここを任せられるのは君しかいない、と思うんだが」

 

ヴェルドラ「無論だとも。我もそうではないかと思っておった!」

 

得意げに頷くヴェルドラ。良し、これでコイツの暴走は未然に回避出来たな。ヴェルドラが出れば負けはないけど、それは流石にちょっとまずい気がする。まだヒナタとの話し合いの目が潰えた訳じゃないし、最初からヴェルドラをぶつける訳にはいかないだろう。

 

援軍に向かわせるなど論外だしな。ヴェルドラが落ち着いたところで、ベニマルが口を開いた。

 

ベニマル「まず、ヨウム殿への援軍を発表する」

 

その内容は___

 

ゴブタを隊長とした、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)が百名。

 

ベニマルの部下である"緑色軍団"(グリーンナンバーズ)が四千名と、

それを指揮する”紅炎衆“(クレナイ)が

百名。

 

”紅炎衆“の残り二百名は、この町の護衛として残るようだ。

 

そして最後に、ガビル率いる”飛竜衆“(ヒリュウ)が百名。合計四千三百名、その者達をヨウムヘの援軍と定めたようだ。

 

ベニマル「以上だ。この町を守護する戦力は減少するが、今は獣人族(ライカンスロープ)の戦士達もいるし、ヴェルドラ様も控えている。問題はないと思うが、意見はあるか?」

 

ゴブタ「ちょっ、自分っすか!?」

 

ベニマル「何か問題か?」ギロッ

 

ゴブタ「あ、いえ、何でもないっす…」

 

リムル「(愚かなやつよ)」

 

ベニマル「援軍の総指揮はハクロウが執る。

だが安心しろ。何かあれば、俺が直ぐに[空間移動]で援護に出向く。ただし、こちらも聖騎士団長ヒナタ・サカグチと交戦になる可能性が高い。そうなった場合には連絡が途絶える事態もあり得るので、各自無理をせぬようにハクロウの指示に従え!」

 

ハクロウ「お任せ下され」

 

ゴブタ「了解っすよ……」

 

ガビル「我輩も今度こそ活躍するのである!」

 

ハクロウ、ガビル。二人はやる気になった様子。ゴブタだけは少し不安だが、要領だけはいいので何とかなるだろうけど…。

 

リムル「やっぱ心配だな。ランガ、起きてるか?」

 

俺は、俺の影の中で眠るランガに声をかけた。

 

ランガは俺の護衛を兼ねて、最近ではずっと影に潜っているのだ。それなのに変に魔素量が増えているようで、運動不足なんじゃないかと踏んでいる。

 

ランガ「我が主よ、出撃ですか?」

 

リムル「ああ。お前もたまには運動した方がいいだろう?ゴブタについて、守ってやれ!」

 

ランガ「ハハッ、身体が軽いです。目覚めの運動が楽しみですね」

 

何だろう、コイツを解き放つのはヤバイ!という風に感じる俺の危険予知は。

 

ゴブタ「ランガさんがついてくれるなら安心っすよ!」

 

リムル「ランガ、お前は無茶するなよ。相手は殺さないように」

 

ランガ「お任せを!シオン殿に、手加減の手ほどきは受けております!」

 

リムル「お、おう……」

 

余計に心配になった。影の中で眠っているとばかり思っていたけど、俺の知らない間にそんな事もしてたのね。シオンに習っている時点で不安しかないが、回復薬もあるし大丈夫だろう。

 

ランガは嬉しそうな咆晦をあげ、ゴブタの隣に寝そべった。最早、相手の無事を祈るのみである。

頑張れ!と、まだ見ぬ敵を応援してしまったのは秘密にしよう。

 

 

そんなわけで、俺はベニマルの決定を承認して、派遣する者が決まったのである。ここで問題は、新王側への援軍の存在だ。

 

リムル「それでディアブロ、作戦はどうするつもりだったんだ?」

 

ディアブロ「はい。多少の援軍は想定していましたが、三万ともなると想定外です。当初の計画では、新王側の戦力は、総数で一万程度だろうと見積もっておりました」

 

そう言って始まったディアブロの説明によるとまず、新王側が軍を動かそうとした段階で、エドマリスに理由を問う書簡を送らせる。

 

新王としては、賠償金の支払いをエドマリスに押し付けようと考えるだろうから、それを未然に阻止する形だ。

 

そうなると新王は、エドマリスが結んだ契約を履行する義務はない、と主張するだろう。

 

こんなものは評議会に加盟していたら通らぬ話だが、俺達にはギリギリで通用する。

 

エドマリスを処刑して、約束の無効を主張するのだ。そこで俺達が怒って軍事行動を起こせば、西側諸国で団結して対抗しようという腹だろう。それを防ぐ為に、窮地に陥るエドマリスをヨウム一味が救出した、と。

 

今エドマリスは、ヨウム一味に守られてニドル領に匿われているのだという。ここまでは、

予定通りに事が運んでいるらしい。

 

ヨウムが拠点とするニドル領で、ヨウムが集めた戦力が五千。それに加えて、俺が転送魔法で四千三百名を一気に送り込む。数の上でも互角だが、背後に一軍が出現する恐怖その心理効果によって、形成は一気に傾くという計画だった。新王側に援軍が集い始めた今、その作戦は使えない。相手の態勢が整うのを待っていると、四万対一万と四倍の戦力を相手にする羽目になる。事を起こすなら、早い方が良さそうだ。

 

ディアブロ「新王エドワルドは、エドマリスの所領に陣を張って援軍を待っているという状況ですね」

 

そう言って、ディアブロの説明が終わった。本来なら、その決戦でエドワルドを撃ち破り、エドマリスが復権を選ばず英雄ヨウムの即位を促す、という流れ。

 

ソウエイ「現在、エドワルドの下に集った戦力は、二万。後三週間もあれば、四万全てが揃うでしょう。そうなれば、背後の守りが薄いニドル領など___」

 

ソウエイが説明を補足してくれた。このまま待っていても、状況は悪くなる一方か。しかし打って出てしまうと、本気で殺し合いの戦争になってしまう。

 

二万もの人命を失った上で戦争が泥沼化すると、ファルムス王国に決定的なダメージが入りかねない。さて、どうしたものか……。

 

リムル「最悪、さ。今回は諦めるって手もある。俺が残る債権を放棄すれば、戦争は回避出来るだろう?ヤツらの大義名分を奪えば、これ以上戦いを続ける意味がなくなるからな」

 

シオン「駄目です!そんな事をすれば、リムル様が軽く見られてしまいます!」

 

リムル「軽く見られるのは問題だが、実利は取ったしな。ヒナタの件を片付けてからもう一度取り組む方が簡単なんじゃないか?」

 

実際、既に十分な量の賠償金一部をゲットしたのだ。ここで損切りしても利益は確定するし、無理して二正面作戦を行う方がリスクが大きい気がする。

 

ディアブロ「クフフフフ、作戦を諦めるなどとんでもない。リムル様、私にお任せ下さるのでしょう?」

 

リムル「ああ。だけど、出来ればこれ以上無関係な犠牲者は出した<ないんだが……」

 

ディアブロ「問題御座いません。それが我が王の望みとあらば、その意に従うのが臣下の務め。リムル様の申されていた通り、簡単な話ですとも」

 

俺は作戦中断も止むなしと思ったのだが、ディアブロは欠片も諦めるつもりなどないようだ。

 

リムル「どうするつもりだ?」

 

ディアブロ「犯人を見つけます。この私に罪をなすりつけようとした、犯人をね」

 

そして、静かな口調でそう言うディアブロ。

 

あ、これはかなり怒ってるね。

 

ディアブロ「”悪魔を滅ぼす“?つまりこの私を滅ぼすというのなら、相手をして差し上げるまで。やって来る三万の中には、犯人に繋がる者がいるかも知れません。"優しく"問い質してみるとしましょう」

 

微笑さえ浮かべて、ディアブロはそう言った。

アカン。これは優しさなんて、一欠片も持ち合わせていない。

 

そしてディアブロ、一人で三万の神殿騎士団を相手にするつもりみたい。

 

ベニマル「なるほど、お前が出るのなら心配は要らんな。ただし、無関係な者を殺すなよ?」

 

ディアブロ「言われるまでもない。リムル様の意に叛く真似はしませんよ」

 

俺が迷っている間にベニマルとディアブロの間で話が纏まってしまった。

 

ベニマル「ならばいい。ではハクロウ、お前は新王の兵を相手に犠牲者を出さずに制圧可能か?」

 

ハクロウ「問題ないでしょうな。不意打ちで一気に決める方が簡単でしたが、それでは兵の訓練にもならん」

 

ベニマル「そうだな。ガビル、回復薬は大量に用意しておけよ」

 

ガビル「承知!お任せ下され」

 

リムル「(あれ?あれれ??俺を置き去りに話が……)」

 

シオン「リムル様、ファルムス王国攻略に関しては大丈夫そうですね」

 

リムル「あ、ああ。そうだね。みんな、頑張ってね…」

 

シオンに笑顔でそう言われ、思わず頷いてしまった。

 

「「「ハハッ!!」」

 

そんな俺に、皆の気合の入った返事が届く。

 

こうして、俺の迷いを吹き飛ばす勢いで、この話は片付いた。

 

〜〜〜

 

色々と納得いかないが、もう―つの問題に話題が移った。

ヒナタ達の相手を誰がするか、である。

 

ベニマル「それで、やって来る五名に対しては…」

 

そう言って、ベニマルが俺を見た。良し、今度こそ俺の主導で話を進めねば!俺は満を持して発言しようとした。しかしその時、ソウエイが突然立ち上がる。

 

ソウエイ「リムル様、緊急事態です。聖騎士団に動きがあった模様__」

 

そして、緊張した様子でそう言ったのだ。

慌てる一同。というか、俺。

 

リムル「ヒナタ達に何か?」

 

ソウエイ「いえ、イングラシア王国を見張っていたホクソウからの報告で、たった今、百騎の人馬が出陣したと……」

 

ベニマル「なんだと!?」

 

ソウエイ「半日以上の時間差がありますが、このスピードだと先行組に追いつけるでしょう。少なくとも方角は一致しているので、この国を目指しているのは間違いないようです」

 

ヒナタは急ぐでもなく、普通の速度で移動しているらしい。それを追う四名は魔法も使った全力疾走だったらしいが、ヒナタと合流してからは普通の速度に落としたそうだ。

何やら揉めたようだが、そのまま行動を共にするようになり、五名でこの町を目指しているという。いまだにイングラシア王国からブルムンド王国への途上だが、その速度は緩やかなのだと。なので、後続の百騎が追いつこうと思えば追いつけるらしい。

 

しかし後続の部隊は、街道のような目立つルートを避けて、馬を捨てて旧道である森へのルートに入るのではないかとの事。

 

リムル「ヒナタと合流しようとしているんじゃなさそうだな」

 

ソウエイ「その意図は不明ですね。ヒナタの到着は早くても二週間後と予想されますが、後続部隊の到着も似た時期になりそうです」

 

ソウエイは困惑しつつも、追跡の指示を出している。このまま続報を待つ他ないだろう。

 

一難去ってまた一難、か。

 

いや、去ってくれずに難問が溜まっていく感じ。嫌になるね、ホント。ともかく、状況は変わった。嘆いていても仕方ないのだった。

 

幹部達が討論を始める。

 

俺はそれを聞きながら、どうするか考えていた。ヒナタ含め、仙人級の者が五名。そして、謎の動きを見せる後続の聖騎士百名。前回のファルムスの軍勢二万名よりも、今回の百数名の方が危険度は圧倒的に上であった。というか、ヒナタ一人が圧倒的にヤバイ。それが、この世界の真理。数の暴力は、個の力の前に霞むのだ。モヒカンの雑魚がどれだけ集まっても、

世紀末覇王には勝てないのである。

 

シオン「悩むよりも、全員切り捨てればどうでしょう?」

 

誰とは言わないが、本当、何も考えないやつというのは無敵だ。

 

ベニマル「あ、リムル様。エイト様はどうしたんですか?」

 

リムル「ああ、あいつならブルムンドでヒナタ達が来るの待ってるっぽいぞ」

 

ベニマル「っ!?直接会う気なんですか?」

 

リムル「ま、俺たちはここで表向きの最善策を考えとけばいいってさ。その間にエイトは裏で動くとか…何するかは俺も聞いてない」

 

ベニマル「はぁ…エイト様らしいというか…なんというか…」

 

ソウエイ「あの人なら問題はないだろう。それより俺たちはここで百騎の聖騎士の対策を考えるべきだろう」

 

リムル「そうだな。何か他に案があるやついないか?」

 

シオン「それならば、私に策あり!」

 

不安だ。そこはかとなく、不安を感じる。

 

リムル「……言ってみろ」

 

「はい!私の”紫克衆“(ヨミガエリ)も丁度百名います。相手に取って不足なし、我等が相手をしてやろうかと思います!」

 

シオンはドヤ顔でそう言った。

 

リムル「アホか!”紫克衆"はCランク程度の実力しかないんだから、相手の方こそお前らに不足ありだよ!」

 

シオンには、どこからその自信が来るのか問い詰めたい。数うんでいは同等でも、実力には雲泥の開きがあるというのに……。

 

ベニマル「いや、確かにシオンの言い分は問題ですが、その策は有効だと思いますよ」

 

驚いた事に、シオンを擁護したのはベニマルだ。

 

ベニマル日く。”紫克衆“にはエクストラスキル『完全記憶』と『自己再生』があるお陰で、

普通の攻撃では死ににくい。初撃から魂を砕くような攻撃を、雑魚相手に用いるとは思えないという。

 

ベニマル「弱いのが逆に、聖騎士達の油断を誘います。その隙を突けば……。時間を稼ぐならば、案外向いているかも知れませんよ」

 

そして、思案するように述べたのである。そう言われると、一理ある気がしてくる。聖騎士が魂への直接攻撃手段を持っていなければ、それこそ”紫克衆“が有利になるし。他の部隊が出るよりも、穏便に済む可能性は高い。

 

シオン「ベニマルの言う通りです!それにですねリムル様、私の特訓によって奴等も鍛えられております。『痛覚無効』は当然、『耐毒』や『耐麻痺』に『耐睡眠』まで。全員が獲得に

成功しているのですよ!しぶとさだけならば誰にも負けぬと、最近ではハクロウにもお墨付きをもらったのです」

 

ベニマルを味方につけ、シオンが勢い込んで言う。ハクロウも頷いているので、その言葉に嘘はないようだ。

 

リムル「ちなみに、そんな耐性をどうやって獲得したんだ?」

 

シオン「ああ、それはですね___」

 

嘘だと思った訳ではないが念の為に聞いてみると、驚きの回答が。クロベエに頼んで、状態異常効果を付与する武器を作ってもらったらしい。それで訓練しているので、自然と身に付いたのだという。

 

“不死性が高いから寸止めなどせず、行動不能になりにくいから勝敗が見分け難い。そんな訳で、立っていた方が勝ちとする、彼等独特の模擬戦で……。

 

ベニマル「リムル様、”紫克衆“が危険であると判断したら、"紅炎衆“が助けに入ります。

ゴブア、いけるな?」

 

オーガ部屋の扉を守護していた長身の大鬼族の美女が、呼ばれてやって来た。そして脆き、ベニマルと、俺に頭を垂れる。

 

その視線は鋭く、かなりの風格である。

 

間違いなく俺が名前を付けた子鬼族だったのだろうけど、最早、その面影など残っていない。

 

緋色の軍服を着たエリートさんだった。そしてベニマルに促され、凛々しい表情で俺を見た。

 

ゴブア「ハッ!私もシオン様に負けぬように、部下を鍛えております。その武威を今、リムル様の為に役立てる事を御許し下さい!」

 

 

ベニマル「聖騎士には実力で劣るかも知れませんが、俺の部下達もなかなかのものですよ。

二人で一人を相手にすれば、”紫克衆“が逃げる時間くらいは稼げます」

 

シオン「馬鹿を言うな!私の部下だけで、聖騎士共を無力化してみせる!」

 

そして始まるシオンとベニマルの口論。

 

両者共にやる気は十分。

ここは任せてみてもいいかもしれない。

 

リムル「よし、それじゃあシオンに任せよう。ゴブアだったな、フォローは任せるぞ!」

 

ゴブア「は、はい!お任せ下さいませ、リムル様!!」

 

リムル「シオン、あくまでも話し合いが決裂するまでは、こちらから手出しさせるなよ?」

 

シオン「大丈夫です!ですが、相手に不穏な動きがあった場合は___」

 

リムル「その時は遠慮しなくていい。俺が

[思念伝達]で確認次第、直ぐに行動に移すように!」

 

シオン「了解です」

 

聖騎士団の相手は、シオンの”紫克衆“に任せると決まった。ベニマルの”紅炎衆“は、万が一に備えて待機する。

 

この三百名で、百名の聖騎士達を相手にする。

 

ここは信じるとして、ヒナタと一緒に行動している四名を誰に任せるかだ。

 

前提として、今現在”仙人“に対抗出来るだけの力を持つ者は俺、ヴェルドラ、ランガ、ベニマル、シオン、ソウエイ、ゲルド、ガビル、そしてディアブロ。

ハクロウも魔素量では劣るものの、剣技だけなら相手出来るだろう。

 

シュナは……ちょっとわからないな。魔法戦ならともかく、近接を得意とする騎士が相手では厳しいと思う。仙人である”十大聖人“は”魔王種“に匹敵するらしいから、少なくとも

豚頭魔王に匹敵するという事。やはりシュナでは荷が重いかもしれないな。

 

という事で、ハクロウも入れて十名。俺はヒナタを相手にする。ヴェルドラは論外。暴走されると危険なので、町の守りを任せたい。というか冗談を抜きにして、俺達に気付かれぬように敵の別働隊が動いている可能性もあるのだ。守りはしっかりとしておかないと駄目だろう。

 

ゲルドは保留。なるべくなら、呼び戻したくない。ディアブロ、ランガ、ハクロウ、ガビルはファルムス王国に集中してもらいたい。

 

となると残るは___

 

リムル「自由に動けるのは、ベニマル、シオン、ソウエイ、の三名だけか」

 

一人につき一人で相手したかったのだが、数が足りないようだ。まあ、エイトが来れば話は別。全員エイトに任せるが…。

 

ベニマル「当然、俺は出ますよ」

 

ベニマルはその為に、ヨウムヘの援軍指揮を

ハクロウに譲っている。これは外せないな。

 

ソウエイ「俺も残ります。情報収集は[分身体]でも可能ですし、今はソーカ達もそれなりに使えるようになりましたので」

 

ソウエイも大丈夫。器用なので、情報収集も同時に行えるだろう。

 

シオン「私も!リムル様の秘書として、常にお傍に__」

 

シオンもそう主張したのだが、ここで俺の中から待ったがかかった。

 

智慧之王『告。別働隊に”仙人級“の者がいた場合、時間稼ぎすらままならぬ可能性があります。念の為にそちらにも戦力をまわす方が無難でしょう』

 

おお、そんな心配もあったか。まともな意見をありがとう!やはり智慧之王先生は頼りになるのだ。

 

リムル「待て、シオン。その前にソウエイに聞きたいのだが、ヒナタと別行動している聖騎士達に、”仙人級“の者がいるかどうかわかるか?」

 

そう問うと、ソウエイはしばし目を閉じた。その上で、

 

ソウエイ「申し訳ありません、個々人がAランクオーバーなのは間違いないのですが、その中に飛び抜けて巨大な気配というのは見受けられませんでした」

 

と、無念そうに答えてくれた。

 

魔物ならオーラ妖気を垂れ流しにしているから直ぐわかるんだけど…。。実力のある者ほど、その気配を上手に隠す。

 

例えばヒナタなんて、それこそ一般人にしか見えない程度の気配しか感じなかった。

 

以前の俺ではまるで見抜けず、その実カの高さに驚いたものだ。戦闘状態になれば話は別だろうが、

 

リムル「やはり、万が一に備えてシオンも別働隊を監視して欲しい。"紫克衆“だけでなく”紅炎衆“もシオンの指揮下に入るように。問題ないかベニマル?」

 

ベニマル「リムル様がそう判断されたのならば、問題ありませんよ。聖人ヒナタの付添い四人は、俺とソウエイが二人ずつ相手をすれば済む話です」

 

凄い自信だ。ソウエイも同意なのか、それが当然と自然な態度を崩さない。

 

リグルド「お待ち下さいリムル様。ここは、この不肖リグルドの出番かと。私も町で皆を取り纏めるだけではなく、たまには暴れたいと思いますぞ!」

 

その筋肉を誇示しつつ、リグルドが申し出てきた。

 

シュナ「そういう事でしたら、私もおります」

 

笑顔のシュナ。だからね、君は近接戦闘には不向きだろ?危険だと思うんだよ。

 

リグル「俺もいますよ。ゴブタにだけ良い格好をさせたくないですし!」

 

リグルドやリグルは、確かにAランクを超えて強くなっているけど、それでも”魔王種“には遠く及ばない。流石に無茶である。

 

竜帝「ああ、待て待て。お前達ではちょっと危険だと思うぞ」

 

リグルド「ですが、他に適任者がいないでしょう?」

 

ベニマル「俺達がいるから大丈夫だ」

 

リグルド「ベニマル殿達が強いのは承知していますが、相手を祇めない方が良いでしょう?やはりここは私とリグルで___」

 

とまあ、段々と議論がヒートアップしていく。

 

相手の出方次第では心配する必要もないんだけど、やはり安心して事に当たりたい。

万全を期すのならば、やはりゲルドにその日だけでも、戻って来てもらうほうが___。

 

纏まる気配のない議論を横目に俺がそう考えていると、扉の方から騒がしい声が聞こえ始めた。

 

 

ゴブア「ですから、今は大事な会議中でして」

 

スフィア「ええい、オレ達もその会議に参加したいんだって!」

 

アルビス「これスフィア、そう喧嘩腰で話さない。ねえ貴女、私達はただ、恩返しに協力させて欲しいと申し出ているだけですのよ?」

 

話し声は先程のゴブアと、三獣士のスフィアとアルビスだった。

 

扉が開き、二人が入って来る。

 

スフィア「よお、邪魔するぜ。さっき骨野郎が走っているのを見たけど、何かあったんだろ?オレ達にも協力させてくれよ、リムル様」

 

アルビス「魔王リムルよ、この度は突然の訪問をお許し下さい。スフィアは口は悪いですが、協力したいという気持ちは本当です。何卒、私共にも恩返しの機会を与えて下さいませ」

 

そう言いつつスフィアとアルビスは、俺の前正確に言えばその手前まで来て脆いた。

 

対照的な二人だが、その息はピッタリと合っている。二人を止めようとしていたゴブアは、ベニマルが片手を上げて制止している。そして自分が席を立ち、俺の前に移動してきた。

 

その横にはいつの間にかディアブロが立ち、

二人の俺への接近を阻んだのだ。ベニマルもこの二人を信用しているのだろうが、それでも俺に接近するのを良しとしなかった模様。そしてディアブロは、この二人をまるで信用していない。命令があれば疸ぐにでも、この二人を始末しそうな勢いであった。

 

スフィアとアルビスも無礼は承知の上での申し出だったのか、そんな対応をされても文句を言う素振りを見せなかった。

 

リムル「ベニマル、ディアブロ、二人とも控えろ」

 

ベニマル「承知」

 

ディアブロ「はい、リムル様」

 

二人が元の席に戻る間に、スフィアとアルビスにも席を用意させた。落ち着いたのを見計らい、会議を再開した。

 

リムル「協力してくれるって話だが___」

 

アルビス「はい、リムル様。やってくるのは

”十大聖人“なのでしょう?足止め要員が必要なご様子、私共がその役を賜りたく存じますわ」

 

スフィア「ああ!オレが役に立つのは戦う事だけだからな。こんな時じゃねーと、恩義に報いる事も出来やしねーし。是非ともオレ達を使ってくれよ!」

 

二人からの提案を検討する。この二人なら、

実力的に問題はない。しかし、万が一に怪我でもしたら、魔王、じゃなくて元魔王のカリオンに申し訳ないし…

 

リムル「しかし、カリオンに断りもなく、勝手な事は出来ないだろう」

 

「大丈夫だって!カリオン様は、そういうとこは寛容な方だし」

 

アルビス「それにカリオン様も、リムル様への恩返しに頭を悩ませているご様子でした。ここで私共が何もしなければ、かえって叱られてしまいますわ」

 

うーん、実のところ、二人の申し出はありがたい。この二人がいれば、戦力的にも安心出来るというものだし。

 

ベニマル「俺は賛成です。この者達なら信用出来ますし」

 

ベニマルは賛成らしい。

 

シオン「私がいない間、リムル様の邪魔をする者を排除してくれるのでしょうね?」

 

スフィア「ああ、任せろよ」

 

反対する者はなし、か…。

 

リムル「頼めるか?」

 

スフィア「お任せを!」

 

アルビス「そのお言葉に感謝を!」

 

そんなわけで、スフィアとアルビスという強力な戦力が追加された。これで準備は万全だろう。

 

リムル「最後にもう一度言っておく。もしも戦いになって、戦況維持が難しいようなら、即座に相手の熾滅に移るように。優先すべきは仲間の命だ。そして、自分が殺されたら意味がないと理解しろ。全員が無事に今回も乗り切れる事を期待する。以上!!

 

「「「「ハハッ!!」」」」

 

聖騎士に犠牲を出す事を厭って、仲間が殺されるなど本末転倒である。それだけは、皆にも徹底して理解させておこう。全員が首肯するのを見て、俺は満足して頷いた。

 

さて、と…あとはヒナタの出方を待つだけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。