【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪   作:甘味の皇帝

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30話:聖魔交渉

ヒナタは順調に、魔国連邦へと向かっていた。

 

ルベリオスからイングラシアヘは『転移門』で一瞬だったが、そこからは普通の旅だ。替えの馬もいないので、休み休みの旅であった。 

 

行軍で慣れているので、荷物は最小限。馬一頭と、寝袋。その中には、非常食や鍋といった携行用品を纏めてある。

 

季節は冬。雪で道が閉ざされるという事はないものの、急ぎ旅には不向きな時期であった。

 

ヒナタが旅立って直ぐに、四人の部下と合流している。後方から馬が駆ける音が聞こえたので振り向くと、そこには見慣れた顔が並んでいたのだ。

 

アルノー、バッカス、リティス、フリッツの、四名の隊長達だった。

 

ヒナタ「貴方達、何をしているの?」

 

アルノー「ヒナタ様、それはこっちのセリフですよ。一人で抜け駆けですか?」

 

ヒナタ「馬鹿なの?話し合いに行くのに、抜け駆けも何もない」

 

副団長のレナードは、ヒナタの留守を守る役目がある。そして、隊長が全員抜け出すのも流石に問題がある為、後の五人でくじ引きしてギャルドの残留も決まったのである。悔しそうにする二人を残し、アルノー達はヒナタを追って来たのだった。

 

アルノー「またまた。そんな決戦に赴くような出で立ちで言われても、説得力がありませんよ」

 

リティス「そうですよ。私達は、ヒナタ様の犠牲の上に立ちたいなどと思いません。栄光は、貴女の下でこそ輝くのです」

 

フリッツ「そうですって。あの伝言でも、別に一人で来いとかは言われてなかったじゃないですか」

 

ロ々にそんな事を言う部下達。ヒナタは呆れつつ、溜息混じりに言う。

 

ヒナタ「わかっているの、相手は魔王よ?私が怒りを買ったのだから、これは私の問題。貴方達には何の責任も関係もない。即刻、国に戻りなさい」

 

しかし、そんなヒナタの命令にも、アルノー達は従わなかった。そして遂にはヒナタが諦め、「好きにしろ」と言って同行を認めたのである。

 

人数が五名となったヒナタ達。整備されているとはいえ、荒れた街道をゆっくりと進む。宿もまばらで、この時期は満室である場合が多い。

なので、野宿になるのも止む無しなのだ。

 

 

____魔物に出くわす事はなかったものの、冬の寒さと非常食のみという厳しい旅路は、それだけでヒナタ達の心身を疲れさせた。

 

十日の行程を終えてブルムンド王国に入る頃には、思っていた以上に体力を消耗していたのだった。

 

それでヒナタ達は、久しぶりにゆっくりと、宿屋で休む事にしたのである。

 

 

〜ブルムンド王国〜

 

アルノー「しかし、この街は発展しましたね」

 

それぞれで部屋を取り、食堂に集まった。

 

「はい、らっせ」

 

ヒナタ「(この掛け声…)そうね」

 

リティスからの報告にもあったのだが、自分の目で見るとその違いは明白にわかる。宿で着替えて、落ち着いてから街の様子を見てみると、冬だというのに市場に活気がある。見慣れぬ商品も出回っているようで、以前に任務で訪れた時に感じたような田舎臭さがなりを潜めていた。

 

アルノー「見ました?服の種類も豊富になって、イングラシア王国でしか見られないような、豪華な衣装を着ている人も歩いていましたよ?」

 

バッカス「それを言うなら、武器防具もだぜ。魔物の素材で出来た装備みたいだが、やたら質のいいものが出回ってやがる」

 

アルノーやバッカスも、自分の目で見ても信じられないらしい。

 

そう、この街には、聖騎士である自分達の武器や防具には及ばぬものの一般的な小国で出回るには過分で上品質のものが溢れていた。

 

屋台の数も多い。冬は店を閉める者が多い中、これは極めて珍しい。店を開けているという事は、客がいるという事だ。つまりは、こんな田舎の冬の街にも、商人や冒険者が大勢いるという事を意味しているのである。

 

フリッツ「魔国連邦の影響、ですかね……?」

 

この国と魔国連邦が貿易するようになったから、この街は発展したのだろう。それ以外に、理由は思い当たらない。

 

しかしそれでは、ルミナス教の教義を完全に無視した行いがまかり通っている事になる。

 

リティス「魔王と取引して発展するなんて…」

 

リティスの呟きも、困惑の色が隠せていなかった。ヒナタも本心では、その意見に同意している。普通ならば、あり得ない。だが、彼なら。

 

同郷者であるリムルならば、そういう事があっても不思議ではないのだろう。

 

その証拠に、この店の名前___"なりたけ"

 

宿屋と同時にラーメン屋を展開しているらしい。どう見ても日本にある"なりたけ"と殆ど 変わらない見た目に雰囲気だ。

 

 

だが、ヒナタは一つ勘違いをしていた。

 

これだけのアイデアを出し、実行したのが

リムルではないということを___。

 

 

ー数十分前ー

 

キヤ「旦那!例のお客さん本当に来たぜ?」

 

エイト「おお、やっぱ来たか」

 

俺はミョルマイルに協力してもらって、ヒナタ達をこの店に誘導した。どうやったかって?

簡単な話だ。門番にヒナタ達の姿を確認したらその前後でこの店のチラシを配ってもらう様お願いしてもらっただけだ。

 

そうすれば、同郷のヒナタは間違いなくここに来ると思っていた。どうやらその予想は的中したらしい。

 

エイト「それじゃあ、そいつらの当たりは俺が店持たせてもらってもいいか?」

 

キヤ「それは、構わないが……あれは西方聖教会のもんだろ?何かあんのかい?」

 

エイト「…そんなとこだな。別に戦闘するわけじゃねえからな?」

 

キヤ「旦那も苦労するねぇ…」

 

エイト「ああ、本当な…」

 

 

と、しばらくしたらヒナタ達が降りて来た。

 

エイト「はい、らっせ」

 

アメリア(店員の女の子)はヒナタ達に注文を取りに行った。

 

アメリア「ご注文はお決まりですか?」

 

ヒナタ「ラーメンを頼む」

 

即決か…やっぱりラーメン食べたかったんだろう。

 

アメリア「ラーメンですね!最近の人気商品なんですよ。みそ、しょうゆ、とんこつ、の三種類。コッテリ味とアッサリ味とそれぞれ御座いますが、如何致しましょう?」

 

計六種類。スタンダードなラーメンをブルムンドには布教している。特に捻りもないが、この世界では革命と言えるだろう。

 

ヒナタ「とんこつをコッテリで頼む。後、ギョウザとライスを追加で」

 

うん、わかってる口らしい。それなら俺のなりたけ愛でその胃袋を完璧に掴んでやろう。

 

アメリア「かしこまりました!お客さん、初めてなのに通ですね。他の方はどう致しましょう?」

 

ヒナタが迷わずに注文するのを、感心したように眺めていた一同。

 

「あ、じゃあ……同じものを」「わ、私も……」「うむ」「自分もそれで」

 

アルノー達はどんなものかわからないので、

右に倣えでヒナタと同じものを注文した。

 

リティス「ヒナタ様、この、ラーメンというのは、一体どんな食べ物なのですか?」

 

アルノー「知っているんですよね?」

 

ヒナタ「ああ。でも、そうね……貴方達では少し、食べるのが難しいかも知れないわね」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

ヒナタの言葉に、不安になる一同。

 

ヒナタ「ああ、心配しないで。ただちょっと、慣れないと食べにくいだろうと思っただけよ」

 

ヒナタは単純に、アルノー達が箸を使えないのでは、と心配しただけである。

 

それをアルノー達は、ゲテモノ料理が出るのかと心配になったのだった。

 

 

だが、運ばれて来たのはヒナタにとっては懐かしの、アルノー達にとっては初見の食べ物だった。

 

エイト「とんこつ"ギタギタ"お待ち」

 

ヒナタ「っ…!?」

 

リティス「あれ?さっきコッテリを頼んでいませんでしたか?」

 

エイト「代金はいらねえから取り敢えずくってみなって」

 

まあ、勝手にそんなこと言うのもあれなんでその分の料金は俺が払うんだけどね…。

 

ヒナタ「(ギタギタ…まさかメニューに無いものが来るなんて…でも…)」

 

ヒナタの目は若干光り輝いていた。

 

エイト「(やはり通だったな。間違いない)」

 

俺は追加のギョウザとライスを置きながらヒナタを観察。

 

エイト「(こいつにラーメンは効く)」

 

ヒナタは唾を飲み込んだ。なんかワクワクした雰囲気が漂う。

 

リティス「ひ、ヒナタ様…?」

 

ヒナタ「いただきます」

 

ヒナタは隣の人の言葉などガン無視で割り箸を割った。そして、髪がスープに入らないように髪をかきあげた。

 

ヒナタ「(割り箸とは…こだわるわね。どうやったらこの短期間で隣国の食堂まで割り箸を普及させる事ができるのかしら…)」

 

エイト「(さあ、食って驚け。俺のなりたけのスープと背脂の再現度に…!)」

 

ヒナタ「チッ…」

 

エイト「!」

 

アルノー「毒ですか!?」

 

リティス「大丈夫ですかヒナタ様?」

 

な、なんだ…?気に入らなかったのか?

 

叡智之王『否。個体名ヒナタ・サカグチは猫舌と推測されます』

 

あ、そうなのね…。てかよくわかったな…。

 

ヒナタ「静かに。黙って食べなさい」ギロッ

 

エイト「(本気の目だ…)」

 

アルノー「熱っ!?」

 

バッカス「旨っ!なんだこれ!?」

 

リティス「スープも美味しい!」

 

フリッツ「えっ、嘘!こんな食べ物があったなんて…」

 

エイト「(ラーメンは異世界でも高評価の食べ物らしいな)」

 

と、ヒナタ以外の四人が感動してる中、黙々と麺を啜る人物が一人。

 

エイト「(もう食べ終わるのでは…?)」

 

流石の俺でもそこまで早く食べないぞ…。

 

ヒナタ「店員さん」

 

エイト「あ、はい」

 

思わず敬語になってしまった。

 

ヒナタ「替え玉を…「バリカタですね」!」

 

エイト「(もうヒナタの好みは掴んだ。注文を予測するなど簡単なことである)」

 

俺はすぐに厨房に戻って替え玉を用意した。

 

そして、戻ってくると…

 

ーパシィッ!!

 

割り箸を割り箸で弾く音。

 

ヒナタ「フリッツ。それは最後に食べようと残しておいた、私の獲物だ。横取りは許さないわよ」

 

ヒナタが守ったのは更に一つ残ったギョウザ。

 

フリッツくん可哀想…。ギョウザで殺気当てられるとか…。

 

フリッツ「す、すいません…美味しかったもので、つい…」

 

ヒナタ「足りないなら、もう一皿頼めばいいでしょう?」

 

アメリア「あ、すいませんね、お客さん。それが最後だったんですよ…」

 

エイト「ああ、大丈夫だぞアメリア。材料持って来てるし」

 

アメリア「えっ!?ありがとうございます!

"エイト"さん!」

 

 

その言葉に場が静まり返る。

 

ヒナタ「…」

 

「「「「…」」」」

 

エイト「アメリア、下がっててくれるか?

ほら、替え玉」カタッ

 

俺はアメリアを厨房の奥に下がらせて、替え玉を渡した。

 

ヒナタ「…人違いなら悪いのだけれど…」

 

エイト「いや、お前の想像通りだぞ」

 

ヒナタ「っ…!!」

 

ヒナタは近くに置いておいた剣をすぐに握る。

 

エイト「おい、店でそんなもの持つなよ」ホイッ

 

俺はヒナタからそれを取り上げた。え?どうやったかって?スキルの応用だよ。剣の影を叩いて奪い取ったんだ。

 

ヒナタ「!?」

 

アドラー「ヒナタ様!」

 

エイト「だからちょっと待てって。ほら、これ飲んで落ち着け」

 

俺は"箱"からMAXコーヒーを出して、五人に渡した。

 

ヒナタ「これは…!!」

 

リティス「ヒナタ様、お気をつけ下さい。毒でも盛られていたら…」

 

ヒナタ「その心配はいらないわ」

 

リティス「えっ?」

 

ヒナタ「敵にこんなふざけた真似をする"魔王"

がいると思う?」

 

エイト「あー…取り込み中悪いんだが…ヒナタ以外の四人、麺伸びるぞ?」

 

俺的にはそっちを気にしてしまう。だってほら、美味しく召し上がってもらいたいじゃん?

 

ヒナタ「フッ…何でリムルではなくあなたが来たのかしら?いえ、初めましてね。魔王エイト。ヒナタ・サカグチよ」

 

エイト「エイト=テンペストだ。リムルはお前らが来てるって事で大慌てだぞ?俺はラーメンの布教に来てるだけだ」

 

ヒナタ「テンペストの盟主なのでしょう?リムルを手伝わなくていいのかしら?」

 

エイト「ああ、表向きな動きはリムルがしてくれるからな。俺はこうやって裏で動くんだ。

お前に会うためにな」

 

ヒナタ「!」

 

そこでヒナタは一つ思い当たったらしい。

 

ヒナタ「嵌められた、というわけね…」

 

エイト「悪くなかっただろ?」

 

ヒナタ「ええ。おかげでなりたけのラーメンを食べれたわ。ありがとう」

 

四人はラーメンを啜りながら目をパチクリさせている。話がとんとん拍子過ぎてついていけていないらしい。

 

エイト「そんなわけで、ラーメンならいくらでも奢るから話を聞かせてもらうぞ」

 

ヒナタ「…その前に。一つ言っておく事があるわ」

 

エイト「…?」

 

ヒナタ「私のせいであなたの国の民に多大な犠牲を出してしまったこと、悪かったと思っているわ。ごめんなさい」

 

エイト「…それはリムルに直接言ってくれ。俺はその時用事があって国を離れてたからな。俺の方こそリムルに悪いことをしたと思ってる」

 

ヒナタ「その中身を聞くつもりはないけれど、あなたはどこで"人間の魂"を獲得したのかしら?場合によっては…」

 

エイト「安心しろ。この大陸の人間ではないし、別に罪のない一般人を殺したわけじゃない」

 

ヒナタ「…そう。ならいいわ」

 

アルノー「ヒナタ様…!」

 

リティス「いいのですか?今の話が本当だったとしても人を殺したことには変わりな…「黙りなさい」!」

 

ヒナタ「これ以上問い詰めたところで彼が何を答えるかなんてたかが知れてるわ」

 

エイト「まあ、俺が許せないって言うならいくらでも相手はしてやるぞ。でも、今はそれどころじゃない」

 

ヒナタ「…直接会いにくるということは…何かあったのかしら?国で待っていればよかったと思うのだけど」

 

エイト「ああ、色々あったぞ。それについて聞きに来たんだ」

 

ヒナタ「…わかったよ。だけど、エイトの方からも話を聞かせてもらえるかしら?」

 

エイト「おう」

 

そんなわけで俺は、ヒナタからの話を聞いた後、ソウエイが報告した内容をそのまま説明した___。

 

ヒナタ「__そう…私って結構騙される人柄だったりするのかしら?」

 

エイト「真っ直ぐすぎるんだよ」

 

まるで雪ノ下だな。信念を貫く姿勢なんてまさにそうだ。

 

ヒナタ「それで?これからどうするつもりなの?」

 

エイト「七曜とかいうやつらがレイヒムを殺したっていう証拠が確保でき次第そいつらは処理する。ここまでの流れであいつらが何するかはわかったからお前らは予定通りそのままテンペストに向かってくれ」

 

ヒナタ「…?それならリムルと戦う必要も無くなったと思うけど…」

 

エイト「…え?ちょっと待って、お前ら何しにテンペストに向かってるんだ?」

 

ヒナタ「リムルの交渉に応じにきたのよ。その前に少し話せれば、と思ってるけど」

 

あれ?なんかおかしい……どういうこと?

 

叡智之王『告。水晶玉に込めたメッセージが改竄された可能性を進言します。個体名:ヒナタ・サカグチの言動と行動から恐らく"七曜の老師"

が何かしらの干渉をして事態を悪化させたと思われます』

 

エイト「…いつになっても悪意は湧いて出てくるもんだな」

 

ヒナタ「えっ?」

 

ヒナタの話からしても七曜というのは生産性のないゴミだというのが窺える。これは…あれだな。老害の保身のために俺たちはこんなに迷惑を被ることになるってことか?

 

エイト「(叡智之王。[無限詠唱]で五人に内容を整理したものを伝達しろ)」

 

叡智之王『了解』

 

[無限詠唱:"思考伝達"]

 

ヒナタ「ッ…!?」

 

リティス「これは…!!」

 

ラーメンを食べていた四人は俺たちの話を全く聞いていなかったらしく、伝達の内容の端から端まで全てに驚いている。

 

ヒナタ「(そんなに美味しかったのね…)」

 

エイト「どこかから監視されてる可能性もあるから、リムル達にもこのことは伝えない。お前らはこのことを知らないって事にして動いてくれ」

 

ヒナタ「了解したわ」

 

アルノー「で、ですがヒナタ様…この話が確実かどうか…」

 

フリッツ「もしも違えば伝説の七曜に仇を成す行為に…」

 

ヒナタ「いいえ、この話は間違いなく事実よ。でなければ後ろにいる聖騎士達のことが説明できないでしょう?レナードが可哀想になって来たよ…」

 

エイト「悪いのは全部七曜だ。みんな揃って騙されたんだからな」

 

ヒナタ「そうね。でも…七曜に関してルミナス様は何も信託を寄越していないわ。それを邪魔する様な行為であれば…」

 

エイト「俺が手を下すんだ。お前らは見て見ぬふりをしとけばいいんだよ。じゃあな」

 

俺は店を後にした。

 

ヒナタ「(なんでも一人で背負うのね…)」

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