【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪ 作:甘味の皇帝
34話:"邪竜"ヴェルドラ
エイト「それじゃ___」
ヴェルドラ「魔王ルミナスではないか!我が城を吹き飛ばしてやった、あの女吸血鬼(ヴァンパイア)。いやぁ、先程はエイトに邪魔をされて言えなかったがよかったよかった。これで、スッキ___」
と、言った頃には俺とルミナスがどこからともなく出した剣をヴェルドラに突きつけていた。
完全なる沈黙。聖騎士達は今言われたことがわからなかったのだろう。ヒナタは知っていたのか、頭に手を当てて溜息を付いている。
ルイはルイで我関せずを貫いていた。
エイト「あのなぁ…俺がお前が喋るを邪魔した理由がわからなかったのか?」
わざわざ何でここまで戻って来たんだよ…。
ルミナス「このクソトカゲが、毎回毎回、妾の邪魔をしおって__ッ!!」
〜〜〜
あれから大変だった。
何があったのかというと……
西方聖教会の信奉する神ルミナスの正体は、
魔王バレンタインその人だった。本当の名前は、ルミナス・バレンタインというらしい。今までは腹心を影武者に仕立て上げて、脊属名を与えて魔王ヴァレンタインと名乗らせていたようだ。
もっとも、魔王達の宴(ワルプルギス)でヴェルドラがルミナスの正体を暴露した事で、それも出来なくなってしまったみたいだが……。
ヒナタ率いる聖騎士団(クルセイダーズ)は、そんな魔王ヴァレンタインと対立していた。
そうして、民衆からの支持を得ていた模様。
完全にマッチポンプだが、ヒナタはそれを知っていたそうだ。合理的といえばそうなのだが、そんな事で本当にいいのだろうか?
ヒナタ「仕方ないでしょう。私はそれを止めようとして、ルミナス様に敗北したのだから。
でも、ルミナス様としては、民衆の支持なんて興味ない御様子だったけれど___」
俺が疑惑を抱いた事に気付いたのか、ヒナタがやれやれという感じに説明してくれた。ヒナタとしても納得がいかなかったようだが、ルミナスに敗北した身としては従う他なかったらしい。と言ってもヒナタは、民衆を犠牲にしないという約束をルミナスから取り付けたのだと。
その約束が守られている限り、ヒナタはルミナスの意に従うと決めたそうである。
何にせよ、ヒナタがマッチポンプを仕組んだ訳ではないらしい。
ルイ「そうだね。その計画を立案したのは私で、弟のロイが乗り気になったのだよ。実際、ルミナス様にとっては余り関係のない話だし、ヒナタは最初、それに反発して私達を滅ぼそうとしたぐらいだしね。この件で文句があるのならば、ヒナタではなく私が聞こう」
ヒナタに続いてそう言ったのは、ルミナスと
一緒にやって来た男だ。確か自らを、法皇ルイと名乗っていた。
リムル「それで、法皇ルイ、殿、さん?だっけ?」
リムルがそう言うと、ルイは苦笑した。
ルイ「呼び捨てで構わないとも魔王リムルよ」
聖騎士達がいる前なのに、その辺りは無頓着であるらしい。というか、彼の主である魔王ルミナスと同格である俺達に対し、謙るのが当然と考えているようだ。
そしてルイは、聞き耳を立てている聖騎士達にも聞こえるに、これまでの経緯を軽く説明してくれた。
エイト「という事は、魔王達の宴で会った魔王ヴァレンタインは、お前の弟だったのか?」
ルイ「その通り。双子の弟、みたいなものだったのだがね。けれど残念ながら、あの宴の後で何者かに殺害されてしまったのだよ」
とルイは、それほど残念ではなさそうな口調でそう言った。
リムル「えっ、殺されただって?」
ルイは気にしていないようだが、それは少し驚きである。何しろあの魔王ヴァレンタインは、影武者だったとは思えないほどの実力者だったからだ。
ルイ「ああ。ロイは少し自信過剰な性格だったのでね、油断したのだろう。西方聖教会を敵視する勢力も多いし、神聖法皇国ルベリオスが目障りだと感じている国家もあるだろう。そういった敵対勢力からの刺客に、不覚を取ったのだと思うがね……」
それにしても不甲斐ない話さ、とルイは言った。
悲しんでいる風ではないが、何も感じていないという訳ではないようだ。
このルイという男からも、かなりの力を感じる。ロイ以上の力を秘めているようだが、それでも魔王級の実力者である弟が殺されたとなると、楽観視は出来ないのだろう。
ヒナタ「最近では新兵の実地訓練代わりに、ロイを利用させてもらっていたわ。サーレに不覚を取ったりもしたようだし、ロイが弛んでいたのは事実でしょう。でも、ロイを殺した相手を警戒する必要はあるわね。まあ、貴方には関係のない話だけどね」
そう言って、ヒナタが話を締めくくった。
法皇ルイと魔王ヴァレンタイン、そして神ルミナスとの関係については理解出来た。
それは俺達だけでなく、一緒に話を聞いていた聖騎士団の面々にしても同じであったようだ。
初めて聞かされた者ばかりだったようで、誰もが驚き声も出ない様子である。俺が納得したのを見て取り、ヒナタは彼女の仲間達へと視線を向ける。
ヒナタ「さて、聞いていたでしょう?騙すつもりはなかったのだけれど、結果的には貴方達を駆していた事になるわね」
「ひ、ヒナタ様……」
何か言いかけた聖騎士を片手で制し、ヒナタは話を続ける。
ヒナタ「貴方達には話せなかったの。計画を知る者は少ない方がいいし、この事を他言するというなら、殺すしかなかったでしょうから」
冷たく言い放つヒナタ。
なるほど、本当に不器用なんだな。正直雪ノ下以上なんじゃないか?
アルノー「ふ、フフッ。このアルノー、騙されませんよ。神ルミナス、いや、魔王ルミナスに脅されていたのでしょう?」
アルノーとかいう聖騎士が、そんな事を言った。
しかしヒナタは、アッサリとその言葉を否定する。
ヒナタ「違うわよ。言ったでしょう。民衆はルミナス様の加護の下にいるのよ。これは本当。だから私は、あの方が人類に敵対しない限り、その意思に従うと決めただけ。だからねアルノー、ルミナス様の事を悪く言う事は許さないわよ」
眼力鋭くアルノーを睨みつけて、そう告げるヒナタ。
これでは誤解される訳だ。シズさんが心配していたのも当然である。
リムル「まあまあ。ヒナタもさ、もっと優しく言ってやれよ」
エイト「それじゃ全然説明が足りてないだろ…」
雪ノ下ですらそこまでではなかったぞ…というか説明くらいはまともにしてた。ヒナタマジパナイ。
ヒナタ「貴方達には関係ないでしょう?」
睨まれた。だから、それを止めろっての。
リムル「関係ない、って事はないだろう?お前達にここで仲間割れでもされたら、こっちとしても迷惑なんだし」
ヒナタ「余計なお世話よ。大体__」
俺の言葉に反発して、ヒナタが何かを言いかけるよりも早く…
アルノー「その心配はないです。俺達はヒナタ様を信じていますから!」
レナード「アルノーの言う通りです。魔王リムルよ。我々は神ルミナスではなく、ヒナタ様にのみ従う集団なのです。なので仲間割れなどの心配は無用ですよ」
アルノーとレナードが、息ピッタリに俺の言葉を否定した。思うところはあるのかも知れないが、誰もが皆、ヒナタを信じるという点では同じ気持ちであるようだ。
信頼関係があってなによりなにより。
リムル「ならいいけど」
リムルが頷くと、アルノーが上を指し示して言葉を重ねる。
アルノー「それにですね、アレを見ちゃうとですね……」
言葉を濁しているが、言いたい事はわかる。
アレ、ね。
俺達の頭上では、たった今、ルミナスとヴェルドラの壮絶な戦いが行われていた。
正直、迷惑なので止めて欲しい。まあ、俺が
結界で防いでるから被害は出ないだろうけど。
アルノー「あれでは、ヒナタ様が敗北したというのも納得です」
リティス「神を名乗るだけはありますわ。確かにあの方が人類の敵に回ったら、私達では打つ手立てがありませんわね…」
聖騎士団の面々には、言葉よりもその光景の方が、説得力が大きかったようだ。
そんな一同に、ルイが口を開いて告げる。
ルイ「安心するがいい。ルミナス様は寛大な御方だ。その庇護下にある者を虐げるような趣味などお持ちではない故に、敵対せぬならば人類とも友好な関係を築けるであろう。ただし、その正体を口にする事は許さぬが、ね」
神ルミナスが魔王であると口外するなと、ここでキッチリと釘を刺している。
まあ、ヴェルドラのせいでルミナスの正体がバレたのだから、俺達としても協力する事に否やはないのだ。俺達は協力するとして、聖騎士達だが……。彼等としても、この件を秘密にすると納得したようである。
ヒナタがそれを望んでいるというのが理由みたいだし、俺達が思っていた以上にヒナタは慕われているみたいだ。
これなら、心配する必要はなかったな。俺から見るとヒナタは、無愛想で言葉足らず、誤解されそうな性格という印象で…え?やっぱこの人雪ノ下二世だよね?
ヒナタ「君、何か失礼な事を考えていなかった?」
そういうエスパー的なとこまでよく似てらっしゃることで…。
エイト「そんなことないっての…」
ここは誤魔化せばいい話だ。と、俺が一人で納得していると…
凄い勢いで上空から落ちてきたヤツが、地面に激突して大地を扶った。なのにそのまま平然と立ち上がり、俺達を見て駆け寄って来た。
言うまでもなく、ヴェルドラだ。ヴェルドラは俺達の後ろに回り込むと、俺達を盾にして上空を脱む。
そしてヴェルドラの視線の先には、銀髪の美しい少女が一人。怒りの形相でこちらを脱みつけ、ゆっくりと空を飛んで降りて来た。
ヴェルドラ「り、リムル…エイトよ!あの頑固者を説得してくれ!我が寛大にも謝ってやったというのに、ヤツは聞く耳を持たぬのだ!」
ああ、はいはい。そこで俺達を巻き込むのは止めて欲しい。
本当に。今回ばかりは、ヴェルドラが悪い。
いや、考えてみれば、ヴェルドラが悪くなかった事があっただろうか?ヴェルドラが復活したのは最近なのに、かなり迷惑をかけられている気がするが…。
俺も見ていたけど、ヴェルドラの謝罪の仕方では、逆にルミナスを怒らせるようなものだった。
何せヴェルドラは、剣を納めようとしたルミナスに向かって……
ヴェルドラ『クアハハハ。あの時は我も悪気はなかったのだ。若さ故の過ちというヤツだからして、お前も寛大な心で我を許すが良いぞ!』
などと言い放ったのである。これにルミナスは激怒した。
ルミナス「そのトカゲをこちらに渡せ」
と、身の毛のよだつ様な声で俺に迫り、俺の後ろで踏ん反り返るヴェルドラを睨みつけたのである。正直、こんな事でルミナスと敵対したくない。それに、彼女の気持ちも理解出来る。
あれは断じて謝罪ではないし、ヴェルドラも少しは痛い目に遭って反省すべきだと思った。
エイト「ほい」
俺はヴェルドラの首を掴んでルミナスに引き渡した。
ヴェルドラ「げえぇ!?裏切ったな、エイト!」
エイト「いや、裏切るも何も、間違いなくお前が悪いよな?」
リムル「よくやったエイト」
こういう事はハッキリさせておくに限る。
ルミナスとの間に禍根を残さぬ為にも、ここでハッキリと白黒つけるべきだ。
まあ、付けるのはルミナスとヴェルドラだからな。俺たちを巻き込むな。
ルミナス「うむ。お主は中々に物分かりが良いようじゃな、魔王エイトよ。そこのトカゲとは大違いじゃ」
エイト「いや、そんなことねえよ。今回はコイツがかなり迷惑をかけてたみたいだし。気が済むまでお灸を据えてやってくていいから、それで許してやってくれると助かる」
ルミナス「ふむ、考慮しよう」
ルミナスはニヤリと笑って頷いた。
そして、俺とルミナスの間で和解が成立したのである。
ヴェルドラ「ちょっと待て!我の、我の意見も聞くべきであろうが!?」
と、何か言っているが俺達は全く聞いていない。
「では今までの恨み、晴らさせてもらうぞ。
[生と死の抱擁](エンブレイスドレイン)」
ルミナスがヴェルドラに抱きついたように見えるが、甘い雰囲気など欠片もない。
体格差があるが、一種のベアハッグである。
もちろんそれだけでヴェルドラにダメージが入るわけがない。だが…
叡智之王『解。対象から生気(エナジー)___つまり、魔素(エネルギー)を吸収すると同時に[激痛]と[不快感]を情報として逆流出させている模様。これは情報を遮断しない限り、[痛覚無効]と関係なく"魂"に刻まれてしまうでしょう』
お、おお…恐ろしい技だな。精神生命体であるヴェルドラさんでもこの攻撃は"痛い"と感じてしまうのか…。
ルミナスの攻撃はしばらくの間続けられた。
ヴェルドラが泣き叫び、悲しそうな瞳でこちらを見てくるが、材木座に若干似てたので可哀想などとは微塵も思わなかった。
ルイ「___まあ、ルミナス様も楽しそうだったからね。ここ最近の鬱憤も晴れるだろうし、私としても嬉しいよ」
無表情のまま言われてもねぇ……。
ヒナタ「そうね。ロイを殺した勢力が不明である今、貴方達とまで敵対したくなかったもの。ところで気になっていたのだけど、まさか彼って___」
ルイの言葉に頷いたヒナタだったが、ヴェルドラに視線を向けて戸惑うように口ごもる。
ああ、そう言えば紹介がまだだったっけか…。
リムル「あれはヴェルドラだよ。竜の姿じゃなくてわかりにくいだろうけど、本人で間違いない。今は取り込み中みたいだし、また後でゆっくり紹介するよ」
ヴェルドラ「ま、待でリムル!今、今紹介を」
ルミナス「ほう?まだ余裕がありそうじゃな?」
ヴェルドラ「ヲボボボボォッ__ッ!?」
逃げようとしたヴェルドラだったが、そこから更にルミナスの攻撃が苛烈になったみたいだ。
エイト「(憐れめ…)」
ヒナタ「あれが、ルミナス様が警戒していた”暴風竜“だというの?確かに、凄まじいまでの力は感じるけれど……」
とは、呆れたようなヒナタの呟きだ。
まあな。今のヴェルドラさんは、かなり滑稽だよな。とても恐ろしい天災級モンスターとは思えん。
他の聖騎士達も同様に感じたらしく、誰もが戸惑いの表情を浮かべていた。
「し、信じられん……」
「あれが?我等が恐れていた”暴風竜“__」
「嘘でしょう……?ちょっと可哀想に思えるんですけど?」
中には、ヴェルドラの見た目に騙されている者もいるようだ。
リムルの『分身体』__つまり、若き日のシズさんを基本にしているだけあって、ヴェルドラも黙っていれば美男子なんだよな。
それが悲しそうな瞳で救いを求めているから、女性の中には絆される者もいるのだろう。
だが、騙されてはいけない。そいつは、甘やかしたら付け上がる生き物だ。
今の内に厳しく躾けておかないと、今後困るのは俺達だ。
叡智之王『告。暴発しそうになっていた
"暴風竜"ヴェルドラの妖気(オーラ)が安定値まで減少しました』
エイト「(えっ?マジ?)」
ヴェルドラをルミナスに預けてよかったわ。
詫びとして渡したのに、こっちとしても得を得てしまった。
すると、リムルが話し出す。
リムル「さて、取り敢えず場所を移そうか」
そんなわけで、聖騎士達を町まで案内することになった。