【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪   作:甘味の皇帝

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35話:寿司職人エイト

〜魔国連邦:首都リムル〜

 

町の入り口ではリグルドが出迎えてくれた。

先にソウエイを走らせ連絡しておいたので、

慌てて駆けつけてくれたようだ。

 

時間的には余裕があったと思うが、そこらリグルドの性分だろう。走るのが好きらしい。

 

リグルド「ようこそ皆様。歓迎致しますぞ!」

 

朗らかに笑って、聖騎士達を招き入れるリグルド。

 

リグルド「食事を用意させますので、何か食べれぬ食材があれば申し出て下さい」

 

ヒナタ「あ、いや。そこまでお世話になるのは…」

 

リムル「まあまあ、遠慮するなって。詳しい

話し合いは明日にすればいいし、今日は取り敢えず、和解の宴と洒落込もうじゃないか!」

 

ヴェルドラ「おお、宴か!それは良い案だな。

当然、酒は出るのであろうな?」

 

ルミナスにお仕置きされていた筈のヴェルドラは、嬉しそうにリムルの言葉に食いついた。

 

心配はしてなかったが、やっぱり無事なのね。

 

ルミナス「ふむ。その宴とやら、当然妾も招待してくれるのであろうな?」

 

うお!?…いつの間に来たんだよ…。

 

気配もなく俺の隣にルミナスが迫ってきた。

 

リムル「それはいいけど、ルミナス、殿?」

 

ルミナス「気色悪い。ルミナスと呼ぶが良い」

 

リムル「それじゃあ、ルミナス。俺の事もリムルと呼んでくれ。それで、ヴェルドラの事なんだけど…」

 

ルミナス「許さん。許さんがしかし、今日来た目的は妾の配下の尻拭いじゃ。リムル、エイトよ、貴様らの顔を立てて、そのトカゲを制裁するのはまた後日にするとしよう」

 

これで一件落着……と、思ったのだが…

 

ヴェルドラ「何ぃ!?もう十分であろうが!」

 

ルミナス「うるさい、黙れ!妾としても譲歩しておるのじゃ。何なら今から、雌雄を決してやっても良いのじゃぞ!」

 

ヴェルドラ「クアハハハ!面白い。我の進化した力を見せ付けて__」

 

エイト「止めろ馬鹿。ここで暴れるのは禁止だ」

 

こういう時に権力というのは役に立つ。俺とかリムルの言葉一つでルールが作れるからな。

 

まあ、そんなわけでルミナスはヴェルドラから大量の魔素(エネルギー)を奪った事で、一応は満足したらしい。これで当分は矛を収めてくれるだろう。

 

宴に参加してくれるのなら、精一杯饗すのみだ。

 

リムル「俺達の宴会だけどさ、魔王達の宴(ワルプルギス)で出たような豪華なコース料理じゃないけど、それでもいいかな?」

 

エイト「いやいや、ちょっと待てリムル」

 

リムル「ん?何かあるのか?」

 

エイト「一体いつから、魔王達の宴で出たようなコースを俺が出せないと錯覚していた?」

 

リムル「は?どゆこと?」

 

エイト「貴族用にシュナと開発してた和食のフルコースが完成したんだが、五人前くらいなら作れるぞ?」

 

丁度ルミナス、ヒナタ、ルイ、リムル、ヴェルドラで五人だろうし、全員に出すのは難しいがこのメンバーなら文句もないだろう。

 

リムル「いいのか?食材とか集まってるんだっけ?」

 

エイト「いや、大半はあるけど足りない分は今から取ってくる。今度の祭りに向けて試食してもらおうかと」

 

リムル「…わかった!それじゃあよろしくな」

 

ヒナタ「(和食のフルコース……気になるわね。というか何でこの世界でそんなもの開発しているの…?)」

 

ルミナス「ほう、妾達には何かすごい物を出してくれるのじゃな?」

 

エイト「期待して待っててくれ」

 

俺としては魔王達の宴の料理にも引けを取らないと思ってる。まあ、あっちは西洋風だが、この世界に少ない…というかあるのか謎の和食をここでは出すのだ。その時点で相当すごい。

 

ルミナス「酒の方も珍しい物が揃っているのであろう?そこのトカゲが楽しみにしておるようじゃし、妾としても期待するとしよう」

 

ルミナスは宴に参加する気が満々なようだ。

 

ギュンター「ルミナス様、それは無用心なのではありませぬか?」

 

そんなルミナスに、付き従っていた老齢の執事がそう声をかけた。老齢と言っても、それは外見だけの話。背は真っ直ぐと姿勢が良く、その気配から只者ではないと察せられる。

 

少なくとも、その執事の隣に立つルイに匹敵するだろう。

 

ルミナスは不機嫌そうに、その男を一瞥した。

 

ルミナス「フンッ、ギュンターよ。貴様はいつも煩いのう。だから連れきたくなかったのじゃ」

 

ギュンター「それが私の務めで御座いますれば…」

 

ルミナス「まあ良いわ。そこのエイトも話のわかる者のようじゃ。ここでヴェルドラと雌雄を決する訳でもなし、心配する事など何もあるまい」

 

ギュンター「ですが__」

 

ルミナス「くどい!古き魔王である妾に、指図するでないわ!という事で、そなたは先に戻っているが良い」

 

ルミナスが激しい気性を見せてそう言うと、ギュンターと呼ばれた老執事は困ったように溜息をついた。

 

ギュンター「それでは、私は先に戻っております」

 

その言葉にルミナスは笑みを見せる。

 

ルミナス「うむ、御苦労じゃったなギュンター。この場にはルイとヒナタもおるし、そなたは心配し過ぎなのじゃ」

 

ギュンター「姫が心配なのは、仕方ないでしょう」

 

そう返答しつつ、ギュンターはルイに視線を向けた。

 

ギュンター「それでは、後の事は頼みましたよルイ」

 

ルイ「心得た」

 

ああ、この二人は毎回ルミナスに振り回されている感じなのだろう。

 

ルミナス「さて、煩いヤツはいなくなったのう。これで存分に、宴を楽しめるというものじゃ!」

 

こうしてルミナスの勢いに飲まれて、ヒナタを筆頭にした聖騎士達も強制参加が決定した。

 

 

リグルドは空気を読んだのか、パンパンと手を叩いてから指示を出し始めた。

 

それを受け、待機していた町の住民達がテキパキと動き始める。

 

馬を預かる者、武器や防具を預かろうと、聖騎士達に近寄る者。

 

怪我をしている聖騎士に、回復薬を配っている者もいる。

 

そして聖騎士達の方も、ヒナタを信じるという言葉は本当だったようだ。

 

ヒナタが素直に従ってみせたので、疑いもせずに武器を預けていた。回復薬を試したのか、

その効果に驚いている者もいる。

 

もっと揉めるかと思ったが、案外上手く落ち着いたのである。

 

〜〜〜

 

「それでは、食事の準備が整うまではもう暫くかかるかと思われますので、先に風呂に入り、身の汚れを落とされてはどうでしょう?勿論、休憩室の用意は整って御座いますので、そちらで寛がれるのも御自由にどうぞ」

 

言われた方の聖騎士達は、意味がわからないという表情を浮かべていた。

 

風呂の習慣はイングラシア王国にもあったし、言葉の意味を知らないわけではないだろう。

 

ヒナタ達は街道の宿屋を利用していたらしいし、そこにも風呂はあったからな。

 

魔物が風呂を利用するなどと、想像していなかったのかも知れないな。

 

リムル「(ふん、せいぜい驚くがいいさ!)」

 

なんかリムルがドヤ顔をかましているが…そんな事はどうでもいい。

 

 

うちには温泉街にあるような、様々な種類の風呂を用意してある。

 

何しろ自慢だが、王都の風呂よりこの国の風呂の方が出来がいいのだ。風呂というより温泉だし、大浴場から自慢の露天風呂もあるのだ。

 

いい宣伝になりそうだな。

 

あとは着替えだが…

 

ハルナ「お任せください。シュナ様が既に手配して下さっております」

 

どうやら、俺が心配するまでもなかったようだ。なら、さっさと行くか。

 

リムル「それじゃあ皆さんも、我が国自慢の風呂を楽しんで下さい。源泉から引いた温泉になっているので、疲れも取れますよついでに、美肌効果も抜群です」

美肌効果も抜群です」

 

ちゃっかりと宣伝するリムル。

 

これにルミナスが食いついた。

 

ルミナス「ほう、風呂とな?それに、美肌効果とは興味深い。妾が利用する個室は、この国で最上のものを用意しておるのじゃろうな?」

 

とそこで俺は思い至った。技術大国のドワーフ王国でも、個人用の蒸し風呂がメインだった。

 

大勢が利用するような風呂などなかったのだ。

 

イングラシア王国には大衆浴場があったけど、ブルムンド王国にはなかった。何しろ、庶民は生活魔法の浄化で、水浴びしなくても清潔だったし。

 

ちょっとした小銭で浄化してくれる者が、どこの街にも居たのである。つまりこの世界では、お湯を沸かして入る風呂は一般的ではないのだ。

 

”異世界人“が多く住む大国の上流層のみが、

贅沢品として個人用の風呂を所持出来る程度なのである。我が国では個人の家にも風呂が常設されているので、ついついそれを失念していた。

 

ルミナスも王侯貴族が利用するよう個人風呂を想像したのだろうが、生憎とそんなもの内にはない。

 

リムル「いや、皆で入る風呂があるんだよ。男と女は流石に別だけどね。もしも希望するなら混浴場もあるから、そっちを利用するのも止めないけど……?」

 

ルミナスの思い込みを是正すべくリムルはそう答えたのだが、それに反応したのは別の者達だった。

 

アルノー「ッ!?」

 

レナード「何ですと!?」

 

「ほほう……」

 

アルノー以下聖騎士の男達が、目をキラリと輝かせてリムルを見たのだ。

どの世界でも男は変わらないようである。

 

リムル「うむ。興味があるなら、そっちに_」

 

と言いかけたリムルだったが、ヒナタの冷たい視線に気付いて押し黙った。

やっぱりな。ヒナタが許すわけがない。

 

ヒナタ「ルミナス様、女風呂へ向かいましょう。私も温泉は久しぶりなので、とても楽しみです」

 

ルミナス「ほう?ヒナタがそう言うのなら、妾にも異存はない」

 

流石ヒナタ。ルミナスは性別など気にしないからどうでもいいんだろうけど…ヒナタがそこら辺をちゃんと管理しているらしい。

 

リムル「それじゃあ女風呂に案内するよ」

 

エイト「」

 

ヒナタ「ちょっと待ちなさい。何で貴方が、

私達を案内しようとするのかしら?」

 

リムル「何でってそりゃあ、案内は必要だろう?」

 

[自由之王]による"真偽確認"。俺の目には

リムルの言葉が"嘘"だと映ってる。

 

うん、こいつただヒナタの裸が見たいだけだ。

 

リムル「だって君達、知らないじゃん。それに各種効能別に浴槽も分かれてるし、サウナだって完備している。やはりここは__」

 

エイト「やめろ馬鹿」ゴンッ

 

俺はリムルの頭に手刀を落とした。

 

リムル「な、何するんだよエイト!」

 

エイト『ヒナタに嘘が通じるわけないだろ』

 

俺は気を遣って、[思念伝達]を使ってリムルに教えた。

 

リムル『っ…い、いや、まだそれは…(というか何でバレてるの!?)』

 

ルミナス「ふむ、それならばエイトでよかろう?」

 

エイト「…は?何で俺?」

 

ヒナタ「…ルミナス様が言われるのであれば。それに、君はリムルと違ってデリカシーはあるし前は男だったという感じがしないからね」

 

エイト「いや、無理」

 

即答。即答である。いや、だって…殺される。俺は殺されてしまうよそんなことしたら。主にシュナとリムル。

 

ルミナス「妾の頼みが聞けないとでも?」

 

エイト「うん、無理」

 

マジでやばい。多分この会話聞かれてるし…

 

リムル「おいエイト」

 

エイト「今度はなんだよ…」

 

リムル『俺が行けなくて、誘われてるんだぞ?それをわざわざ逃すのは俺に失礼なんじゃないか?』

 

俺を対象に[魔王覇気]を解放するのはやめてもらっていいですかね?

 

エイト「何で俺こうなってるんだろう…」

 

何故か味方からナイフを突きつけられてる感じがする…そして、目の前に立ちはだかるのは…

 

シュナ「エイト様」ニコッ

 

エイト「え?何でいるの?」

 

思っただけなのに本当に立ちはだかるとは…。

 

どうやって来たかはわかる。恐らく俺の影を通って来たのだろう。

 

にしても行動が早すぎだろ……。

 

ルミナス「誰じゃ?」

 

シュナ「シュナと申します。エイト様の専属秘書をさせて戴いております」ペコリ

 

エイト「(俺帰ろうかな…)」

 

リムル「シュナは食事の準備をしてたんじゃないのか?」

 

シュナ「はい。ですが…少し予定が変わりまして」

 

エイト「いや、俺行かないからな?断ってるからな?知ってたよな?」

 

シュナ「質問は一つに絞って下さい」ニコッ

 

怖いよその笑顔…エイト泣いちゃう。

 

ヒナタ「その子はエイトの恋人か何かかしら?」

 

エイト「え?そうだけど?」

 

ヒナタ「そう。なら仕方ないわね。ルミナス様。あの者に案内してもらいましょう」

 

ヒナタが指名したのはシオンだ。

 

リムル「いや、シオンだけでは頼りな__」

 

ヒナタ「そんなだから彼女ができないのよ。

少しはエイトを見習ったらどうかしら?」

 

リムル「ぐはっ…」ドサッ

 

エイト「(憐れめ)」

 

まあ、その後シオンはアッサリと案内を引き受けてくれた。

 

リムル「はぁ…俺は久しぶりに男風呂に入るか」

 

エイト「俺は食材の確保に行ってくるから。

ゆっくりしててくれ」

 

リムル「…どこに行くんだ?」

 

エイト「海」

 

リムル「ユーラザニアのか?」

 

エイト「ああ、ユーラザニアが漁で使ってるとこより沖に出て魚を取ろうかと」

 

リムル「まあ、美味しいの期待してるから。

頼むぜエイト!」

 

エイト「おう」

 

シュナ「厨房の準備は整えておきます。来賓用のメニューでよろしいですね?」

 

エイト「いや、最近作ったもう一つ上のを四人前作りたいんだ。そっちの準備を任せてもいいか?」

 

シュナ「!…わかりました」ニコッ

 

エイト「ありがとうな」

 

俺はシュナの頭を撫でると、海の方に[空間移動]をした。

 

シュナ「///」

 

リムル「(はぁ…俺にはいつ彼女ができるのやら…)」

 

〜〜〜

 

エイト「それじゃあ、やるか」ドボンッ

 

俺は海の沖の上に出ると、中に潜った。

 

エイト「(…そういえばここって異世界の海だから……)」

 

「グォオオッ!」

 

エイト「(はい、さっそく来ましたー)」

 

やって来たのはデカいタコのようなやつだ。

いや、足が四十本くらいあるしタコじゃないな。

 

叡智之王『解。対象は海中100m前後に生息する"化蛸族"(オクター)です。脅威度は災害級(ハザード)。自由組合の基準でA級になります』

 

エイト「(そこそこ強いのな)」

 

まあ、気にするのはそこじゃない。こいつは元々の予定にないヤツなわけだし…味の方は…

 

叡智之王『情報がないので直接食べることをお勧めします』

 

おお、了解だ。

 

化蛸族は黒いスミのような物を出す。

 

叡智之王『対象の攻撃から毒の成分を感知しました』

 

エイト「(俺に毒は効かないからなぁ…)」

 

俺はタコを結界で囲み、水を箱に回収。

 

「!?」

 

エイト「(炙り焼きだな)」

[青炎]

 

生きたまま一瞬にして焼き上げた。

 

俺は結界の中に入る。

 

エイト「味見味見…」パクッ

 

俺は足の一部を一口サイズに斬り、口に入れた。

 

エイト「宴に出すにはな…まあ、美味いけど。お土産に持ち帰るか」

 

俺は箱にタコをしまい、海に戻った。

 

エイト「(いつまでもこうしてはいられない。先ずは予定の食材調達だ)」

 

俺は万能探知を使って獲物を探知、結界で覆って俺の方に持ってくると海の中で内臓を処理して箱に閉まっていく。

 

エイト「(この方法だとめちゃくちゃ新鮮な魚が手に入るよな)」

 

相変わらずこの世界は便利なことが多い。科学的な進歩が遅いが、魔法のおかげでそれ以上の事ができたりする。

 

エイト「(大漁大漁)」

 

鯛みたいなやつに鮭みたいなやつ、鯖みたいなやつに鯵みたいなやつに、なんと鰻っぽいやつまでいる。

 

エイト「(まあ、どれも見た目は違うし味が似てるだけなんだけど…)」

 

うっかり前世の常識のまま見た目で判断してまうと毒料理を出してしまいかねない。

気をつけねば…。

 

と、そんなことを考えているうちに予定の数が揃った。

 

エイト「(取り過ぎはよくないからな。使う分だけ取ったら、それだけだ)」

 

俺は海から出ると、魔国連邦に戻った。

 

 

 

〜リムルside〜

 

早風呂を済ませた俺は、先に準備状況を確認する事にした。

 

場所は宴会場。

 

これだけ宴会が多いのだから用意しておこうと思い、急逮作らせたばかりの出来立てほやほやの建物だ。見た目は円形ドーム。

 

体育館のような広さがある。中に入ると、畳敷きされた吹き抜けの空間が広がっている。いざという時は避難所を兼ねるので、結構な人数が入れるのだ。

 

場所だけはかなり余ってるので、それなりに頑丈で大きな建物を用意した骨組みは鉄骨製だけど、時間が経てば”魔鋼“に変質してくれると思う。

 

そういう点で考えると、この国は凄く有利なんだよね。何せ、魔素量が豊富な魔人が多いのだから。

 

そんな事を考えていると、食事が膳に載せられて運ばれてきた。高級料亭で出されるような、結構手の込んだ茶碗が並ぶ。

 

俺が暇な時に粘土を捏ねて茶碗を焼いて見せたのだが、それを子供達が真似し始めた。それがきっかけとなって、今では結構な力作も多い。

 

色をつけるのに薬草の汁を塗ったり、何やら怪しい鉱石を取ってきて粘土に混ぜたりして、

色鮮やかな出来栄えの物もあるくらいなのだ。各家庭の茶碗は、子供達が作ったものが使われているのである。

 

何でもやってみるものだ。

 

運ばれる膳も、それなりに細工が細かく施された一品物である。

 

加工木材の余った部分を利用して、ドルドに作ってもらったのだ。

 

それも子供達が真似するようになり、今では遊びの一環として工作の時間が設けられていた。こうして見ると、温泉から料理の器にいたるまで、俺とエイトの趣味が諸々に反映されている。

 

草を食べていた当初から思えば、考えられないほどに快適な生活が出来るようになったものだ。

 

味も楽しめるようになったしね。

 

やはり、自分の為になると思うからこそ、頑張れるのだろう。

 

リムル「(さてと…)」

 

エイトが本気で料理を作るらしい。正直超楽しみだ。聖騎士達にもそれなりに高い水準の食事を用意しているわけだし、それを超える我が国一番の料理を持ってくると言うのだ。

 

俺も食べた事なかったし、何が出てくるのか。

 

空くはずのないお腹が鳴っている気がする。

 

食文化の発達に力を注いできたが、ここまで来れたのは間違いなくエイトとシュナの活躍だろう。

 

ギィの用意した料理だって西洋風のフルコースだったし、イングラシアにも和食系はなかった。この国は今食文化の最先端に立っていると言っても過言ではないのだ。だが…

 

目下の課題は白米だ。未だに納得のいく味まで改良が進んでいない。エイトでさえも行き詰まってるレベルだ。まあ、時間はかかるけど、

ほぼ確実にできるらしい。

日本みたいに時間をかけて品種改良をしなければいけないっぽいな。やはり日本米はすごい。

 

 

てな事を考えているうちに配膳も終わり、後は風呂を上がってくる聖騎士達を待つだけとなった。

 

 

〜〜〜

 

エイト「これはリムル達の席に配膳しといてくれ」

 

シュナ「わかりました」ニコッ

 

聖騎士達もやって来たので、そろそろ宴会が

始まるだろう。

 

 

 

〜リムルside〜

 

宴会場の座席はコの字になるように並べられてある。上座には三つの座席。俺を中心に、左右にヴェルドラとルミナスが座る。その席からは皆を見渡せるようになっていた。

 

向き合うように、我が町の幹部達と聖騎士達が並ぶ形だ。親睦会という意味合いもあるので、互いの顔が見られるように配慮してある。

 

そして、宴会場に聖騎士達が案内されて入って来た。風呂から上がった聖騎士達は、用意されていた浴衣や甚平を身に着けている。

 

着慣れぬ服だったろうに、一度その着心地を確かめると気に入った様子。

 

 

恐る恐るという様子で座席まで案内された聖騎士達だったが、テーブルや椅子がない事に戸惑っているようだ。それ以前に、素足で畳を歩くのも困惑しているっぽいね。

 

文化の違いなので、戸惑うのも無理はない。

 

案内の女性達(ゴブリナ)に緊張はなく、自然な動作であった。驚くほど手慣れている。ベスターからの教育の賜物だ。

 

そうした事実も、聖騎士達にとっては驚きなのだろう。気まずく思っている雰囲気が見受けられた。

 

先頭に立つのはルミナス。優雅な仕草で、上座で待つ俺の隣に座る。続くのは、ルイだったか。魔王役だったというロイと瓜二つだし、法皇としての貫禄はある。そして、三番目がヒナタ。

 

ヒナタは席に座るなり、意を決したように俺を見た。

 

ヒナタ「貴方たちには多大な迷惑をかけたわね、心より謝罪します。前回にしろ、今回の件にしろ、私の独断で行った事。ルミナス様の指示ではなく、まして部下達に責はない。私の身一つで許してもらえるとは思ってはいないけれど____」

 

リムル「ああ、ストップ!」

 

俺に向かって頭を下げようとしたヒナタを、俺は慌てて止めさせる。

 

前回はともかく、今回は誤解だった。

 

黒幕は”七曜“だし、それはエイトが断罪している。ファルムス王国の方でもディアブロが始末したみたいだし、俺としてはこれ以上問題にするつもりなどないのだ。

そう思って居ればヒナタを止めた。

 

リムル「ヒナタ……誤解が解けたのならそれでいいって。どうせなら、魔物だからと偏見を持つのを止めてくれればそれでいいよ」

 

ヒナタは一瞬迷うような表情を浮かべたが、何も言わずに頷いた。

 

リムル「まあ、簡単には信じられないのもわかるよ。相手の本心なんてわからないんだし、

狡猾な魔物もいるみたいだしな。人類の守り手が、簡単に蝙される訳にもいかないだろうさ」

 

ヒナタ「そうね。会話は相互理解への第一歩だけど、危険な取引にもなる。言質を取られ、魂を束縛される危険もあるのよ」

 

リムル「だろうな。だから、魔物全てが悪だと決め付けないでくれれば、俺達はそれでいいさ。疑わしいなら、俺達で預かるよ。人類社会では受け入れられなくても、この町なら大丈夫だからね」

 

ヒナタ「わかったわ。直ぐに考えを改める事は難しいけれど、魔物を悪として断罪するのは禁止にします。宜しいですか、ルミナス様?」

 

ルミナス「そのような瑣末な事など、どうでも構わぬ。ただし、妾への信仰に疑いを持たれるのは許さぬぞ」

 

ヒナタ「承知しました。その点は、全てに優先させて遵守させます」

 

ルミナスも納得したようだ。神聖法皇国ルベリオスが神ルミナスヘの信仰の上に成り立つ国である以上、そこに疑いを持たれるのは根幹が揺らぐ事態となる。

 

西側諸国にも多大な影響力を持つ宗教なのだし、慎重になるのも当然か。

 

寧ろルミナス本人の方が、自身の影響力を軽く見ている気がするね。口では許さぬとか言いながら、どうでも良さそうな感じに見えるのだ。

 

ヒナタ「あなた方にも謝罪を。今後は、魔物だからと敵対視しないと約束するわ」

 

そう言って、ヒナタは深々と頭を下げた。

 

そんなヒナタの行動に、慌てたように他の聖騎士達も追随する。

 

思い込みが解けたのだと__

一斉に「「「「済まなかった!」」」」

と、頭を下げて謝罪したのだ。

 

リグルド「気にする事はありませんぞ。我等も、リムル様より命じられていなければ、人間共は敵だと思っておりましたからな」

 

ベニマル「俺としては、貴女が敵に回らぬだけで十分だ」

 

リムル「シオン、お前もさ、許してやってくれよ。お前の痛み、お前の怒りはわかる。だけど、人間の全てが邪悪って訳じゃないんだよ。中には悪いヤツもいれば、いいヤツもいる。

それだけの話なんだ。それは魔物も一緒で、よく見極めないと駄目なんだよ。それに、人間は間違いを克服出来る生き物だ。それは人間だけじゃなく、俺達だってそうだろ?大事なのは、魂の有り様なんじゃないかな?」

 

人と魔物。そうした区分でわけるのではなく、その者の生き様、魂の在り様こそが重要なのだ。シオンにも、それをわかってもらいたい。

 

そう思って俺が声をかけると、シオンは更に

迷う素振りを見せた。彼女にとって、人間は邪悪なものなのだろう。だが、全ての人がそうであるとは思って欲しくなかった。

 

今は俺の命令に従っているけど、何時どのタイミングで不満が暴発するかわからない。

 

それでは駄目なのだ。命令されたから従うのではなく、自分の意思で考えて行動して欲しいのである。そう思っていた俺だったが、心配し過ぎだったようである。

 

シオン「わかりました!良き者や悪しき者、私もリムル様と同様に、”魂“を見て判断する事に致します!」

 

そしてシオンは、俺に向かっていい笑顔を見せたのだった。

 

俺は別に人の”魂“なんて見られないのだけど、シオンが納得したのならそれでいいだろう。

 

紫克衆も、それで問題ないようだ。聖騎士達に対してもわだかまりはないようだし、シオンと同じく自分の意思で考えて、人の善悪を判断してくれそうである。

 

気のいいヤツ等だ。俺の自慢の仲間達なのだ。謝罪を受け入れ、過ちは水に流す。許せる範囲と許せぬ範囲の境界は難しいが、今回は上手く仲直り出来た。

 

これで、一つ和解が成立したのである。

 

〜〜〜

 

シュナ「食事の準備が整いました。リムル様」

 

シュナはリムル達の机に前菜を並べた。

 

リムル「ありがとう。シュナ」

 

そんな訳で全員が席についた。これ以上待たせるとヴェルドラがもっと不機嫌になるので宴会に突入しようと思う。

 

そんな訳で乾杯する。

 

リムル「それでは、互いの健闘を称えあって、乾杯!」

 

という俺の適当な挨拶で、宴会が始まったのである。

 

 

リムル「あいつ本気だな……」

 

つい言葉が溢れてしまう。前菜から始まるこのガチ感はそう簡単に演じれる物じゃない。

 

ヒナタ「…」パクッ

 

用意されている酒は様々だが、先ず最初に注いだのが日本酒だ。

 

そして、それに合うように俺たちのメニューが組まれている。あれ?エイトって未成年でこっち来てたよね?なんでそんなこと知ってるの?

 

 

聖騎士達に出している料理は天麩羅がメインで、刺身なんかもある。

聖騎士達は口に入れるなり、食事の美味さに感嘆しているようだ。

 

と、俺が内心でほくそ笑んでいると…

 

ヒナタ「貴方ね、これはやり過ぎなんじゃないの?」

 

リムル「何がだよ!?」

 

ヒナタ「ここに来る途中でも、なりたけを完璧に再現した店があったわ。水場で水を無料で配っていたり、僻地のはずなのに大浴場があったり。そして今回はこれ。前の世界でもこんな高級料理食べたことないわよ。それに、何で大森林のど真ん中で、こんなに新鮮な刺身が出るのよ!山菜の天麩羅までは頑張って納得したとしても、これはどう考えても可笑しいでしょう!?」

 

エイト「食べたかったんだから仕方なーだろ」

 

リムル「あ、エイト」

 

ヒナタ「…なんですって?」

 

エイト「いや、だから…俺たちが食べたかったからだよ。今回の魚は俺がユーラザニアの方の海まで行って、捌いてからスキルに閉まって持ち帰って来た」

 

ヒナタ「魔王がそんな風に出歩いていいのかしら……まずまず魔王の手料理が出ている時点でおかしな気もするのだけど…」ハァ

 

ヒナタはどこか諦めたような顔をした。

 

ルミナス「まあ良いではないか、ヒナタよ。

どういう理由があるにせよ、これが中々美味であるという点は事実なのだ。少なくとも、妾は気に入ったぞ」

 

ルミナスが若干目を輝かせながら言った。

気に入ってくれたようで何よりだ。

 

俺は和食のコース料理の順番に従って料理を出していく。まあ、酒を楽しむのがメインな所もあるので、ルミナスとかは酒を飲みまくっている。

 

リムル「完璧過ぎて文句が言いたくなってきたんだが…」

 

エイト「お前もかよ」

 

ヒナタに続いて、リムルまで…。食文化に力を入れるって言ったのはリムルだろう。俺もそう思ったが、少なくとも言い出したのはリムルだ。

むしろここまでやったことを褒めて欲しいレベル。

 

リムル「俺前はこんな美味い刺身とか寿司とか食べれなかったんだけど…ただのゼネコン勤務のサラリーマンだったし…」

 

エイト「俺なんて高校生だったからな。大体親父達がこんな高価なもの俺に食わせてくれるわけないし、もしあっても食べるのは妹だっただろうな」

 

ヒナタ「私もね。久しぶりにこっちに来て良かったと思ったくらいだよ」

 

ルミナス「…」パクッパクッ

 

エイト「(あれ?ルミナスさんが意外と料理に集中しているんだが…)」

 

リムル「(寿司が気に入ったのか?)」

 

ルミナスが口に運び続けているのは種類豊富の寿司だ。俺の記憶から適当に握ってみたのを、叡智之王の解析と俺の反復練習を合わせることで、時間は相当かかったが最近納得のいく味まで仕上がった。

 

白米の味がイマイチだが、酢飯にしてネタと醤油を付ければそこまで気にならない。

 

握り方とかも工夫して、それ以外のところで

カバーできるからだ。

 

リムル「改良途中の白米をここまで美味しくするなんて、エイトって寿司職人の才能でもあったのか?」

 

エイト「かもな。自分でも驚くレベル」

 

リムル「あ、まだ米と魚は余ってるんだろ?」

 

エイト「?…まあ、余ってるには余ってるぞ」

 

リムル「それなら、あの"例"のやつここに出して、目の前で握ってやったらどうだ?聖騎士達の皆にも」

 

エイト「えぇ……」

 

ルミナス「エイトよ。妾からも頼もう。これのおかわりが欲しくなってきよった」

 

エイト「はぁ…わかったよ」

 

厨房はシュナに任せよう。予定のメニューは大方出し終わったし、いい宣伝にもなるからな。

 

俺は"箱"(ポケット)の中から回らない寿司でお馴染みの机を出した。サイズが少々デカいが、幸い場所はある。リムル達の後ろのスペースに出して、準備を始めた。

 

シュナ「エイト様、今度は何をなさるのですか?」

 

エイト「ああ、リムルの頼みで宴会場の中で

寿司を握る事になったんだ」

 

シュナ「わかりました。厨房の方は私にお任せください」

 

エイト「おう、ありがとうな」

 

俺は一通りの準備を終えると、女性達(ゴブリナ)を数名集めた。

 

エイト「俺が握ったのを机に並べていってくれ。リムル達の方も頼むな」

 

「わかりました」

 

四人から六人くらいに一皿くらいの計算で、

俺は大皿に寿司を並べていく。

多分この国で寿司を握れるのは俺くらいのものだろう。教えてはいるが、流石に寿司の技術は難しい。ラーメンのように簡単にはいかないものだ。

 

大体寿司職人がこっちの世界に来た例がないのだろう。存在自体が知られていない。異世界人が知識として知っているだけで、実際に食べたことのあるやつは少ないのではないだろうか?

 

ルミナス「妾はそこのカウンター席に移動してもよいのじゃな?」

 

リムル「ああ、別にいいけど」

 

ルミナスが立ち上がると、ルイもそれに続いて

俺の前に座った。

 

俺は二人の前にお茶を出した。

 

エイト「(全員に寿司は回ったっぽいな…)」

 

ルミナス「…ふむ、このスシという食べ物には酒ではなくこういうものを合わせるのじゃな」

 

エイト「別に酒を合わせてもいいんだろうけど…まあ、それが一般的だと思うぞ。」

 

俺はルミナスに鮪もどきの大トロを出した。

商品名はマグロで決定ではあるが…。

 

ルミナス「…」パクッ

 

ルミナスの口元には笑みが浮かぶ。

 

聖騎士達や、うちの幹部達からも称賛の声が聞こえる。

 

寿司は試作段階だったので、食べたことがあるのは俺とリムルとシュナだけだったが、この様子なら貴族達にも余裕で出せるだろう。

 

ルミナス「初めての食べ物で何もわからん。

エイトのおすすめを頼もう」

 

エイト「おう」

 

まあ、全部おすすめだが、その中でもシュナとリムルからの評価が一番高かった二つと、ここまでで叡智之王が予測したルミナスの好みであろう二つをつくる。

 

先ずはリムル一押し秋刀魚だ。生姜っぽいやつとネギっぽいやつを乗っけて完成。

 

次にシュナ一押しの炙りサーモンだ。捌いて握って炙る。すると、

 

ルミナス「?なぜ焼いておるのじゃ?」

 

エイト「ああ、こうすると美味しくなるんだよ。原理は知らん」

 

ルミナス「ふむ、興味深い食べ物じゃな」

 

ルミナスと会話している間に、恐らくルミナスが好みそうな寿司…鰤と鯛を握った。

 

エイト「ほい」

 

俺は四つとも皿に並べて、ルミナスの前に出した。

 

ルミナス「いただくとしよう」

 

俺は同じものをもう一つ作り、ルイの前に出す。

 

ルイ「感謝する」

 

ルミナス「美味じゃ。実に美味じゃ」パクッパクッ

 

エイト「(そんなに美味しかったか?まあ、喜んでくれてるのはいいんだが…)」

 

ヒナタ「あなた、寿司職人に嫌われるわね」

 

いつの間にカウンター席に来ていたヒナタは、お茶を啜りながら言った。

 

エイト「生憎、この世界に寿司職人はいないっぽいからな。会う機会もねえよ」

 

そう言いながら俺はヒナタにお茶とネギトロ軍艦を出した。

 

ヒナタ「はぁ…本当、貴方達には呆れるわね」

 

ルミナス「良いではないかヒナタよ。このスシという食べ物、我が神聖法皇国ルベリオスにも持ち帰りたいところじゃ」

 

エイト「お土産として何箱か作るか?」

 

ルミナス「頼もう」

 

ヒナタ「(まさかルミナス様が寿司にここまで食いつくなんて…)」

 

〜〜〜

 

そのあとは、ルミナスがカウンターから席に戻って、ヴェルドラとリムルと酒を飲みまくっていた。リムルは半端強制だったが…。

 

聖騎士達とうちの連中も酒の力か仲が良くなったようで、ベニマル、ソウエイ、シオン、三獣士の面々は、アルノーを筆頭とした聖騎士のトップ連中と飲み比べをしたりしていた。

それをきっかけに緊張も解け、会話も弾み始めたりした。

 

俺?俺は酒ではなくMAXコーヒーをずっと飲んでた。カウンター席に座ってな。

一人で飲むことになるかと思ったが、仕事を終えたシュナがやって来て隣に座ってくれたりした。

 

そんな感じで宴会は上々の結果で成功したと言えるのではないだろうか。結構楽しかったな。

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