【休載中】転生八幡。スライムになったよ!てへっ♪   作:甘味の皇帝

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36話:国交樹立

今日は重要な会談である。リムルが二日酔いで頭を痛めているがそんなのは自業自得。俺は知らん。

 

 

今後の魔国連邦と神聖法皇国ルベリオスとの関係をどうするのか、それを相談の上で取り決めるのだ。

 

いつもの大会議室。俺が席に座ると、後ろから来たリムルは頭痛を我慢しつつ、席に座った。

 

これまでの事を顧みても、決して甘い対応はできない。だが、ヒナタから謝罪はもらってファルムスの対応も済んでいて、ついでに七曜も始末した。賠償が欲しいという状況でもないのは確かだ。

 

と、そんな事を考えている内にルミナス達が部屋に入ってきた。

 

魔国連邦側の参加者は、俺とシュナ、リムル、シオン、そしてリグルドとベニマル。それに、司法・立法・行政を司る長官である、ルグルド、レグルド、ログルドの三名の長老達だ。

 

一応ヴェルドラもいるけど、これは無視でいい。漫画を手に持っているし、どうせ話を聞く気などなさそうだからな。

 

対する神聖法皇国ルベリオス側の参加者はというと、ルミナスとルイ、そしてヒナタ。後は五名の隊長格である。

 

軽く自己紹介してもらった。

 

”光“の貴公子と呼ばれる、副団長のレナード。

 

ヒナタに次ぐ最強の騎士と称される、”空“のアルノー。そして、”地“のバッカス、”水“のリティス、”風“のフリッツと続く。

 

参加者が揃ったので、お互いに向かい合うように座り、会談が始まった。

 

先ずはお互いの認識のすり合わせから始める。

 

という事で、会議の前にお互いの状況とそれに対する認識を箇条書きにして、会議開始時に交換してあった。

 

それを見ながら、お互いに状況の流れを確かめていく。

 

今更相手に文句をつけても意味がないので、

事実確認が目的なのだ。認識の不一致があれば、早期に修正しておいた方がいいという俺の意見に、ヒナタが賛同したのである。

 

互いの言い分は想定通り。俺達からすれば言うまでもなく、ファルムス王国の侵攻から全ては始まっている。一貫して立場が変わる事なく、相手の出方によりこちらも対応を変えるというスタンスだ。

 

聖教会側の流れとしては、ファルムスの要請以前に問題が発生していたとヒナタが言った。

 

つまりは、魔物の国の存在を認める事がルミナス教の教義に反する事になる。それは、信者からの不信を招きかねない重要な案件であったのだ、と。

 

それを放置すれば、信者の離反を招き、西方聖教会の勢力が衰える原因になりかねない。

 

だからこそ、魔物の国など滅ぼしてしまう必要があった。だからこそ、俺達を討つ為の大義名分が必要だったのだと、ヒナタはそう言った。

 

ヒナタ「そんな状況の中でファルムス王国に滞在していたレイヒム大司教から申し出があったから、ニコラウスが許可を出したのよ。私としても異論はなかったし、それに何よりも、貴方の事が許せないと思っていたのよね」

 

というのが、ヒナタの言い分だった。

 

リムル「それは、シズさんの件か?」

 

ヒナタ「ええ、その通りよ。今考えれば、私も利用されていたみたいだけれども、ね。裏で動いていたのが何者なのかはわからないけれど、東の商人が絡んでいたのは間違いないわ」

 

リムル「商人、か。やはりな。魔王クレイマンのところにも、出入りの商人がいたらしい。俺の配下になったゲルド達、豚頭族の軍勢も武装していたから、どこかの国と繋がりがあるだろうと思っていたんだよ。その取引相手が、東の商人だったって訳だ」

 

リムルも納得して頷いた。シュナに調べてもらっていた帳簿には、膨大な量の商品をやり取りした記録が残されていた。

 

それらの品々は帝国製のものが大半で、元はドワーフ王国で作成されたものだったようだ。

 

帝国とドワーフ王国には取引があるので、ここに不審な点はない。問題は、それを仲介した者の名が、一切記録に残っていなかった事だ。

 

シュナが丁寧に調べてくれたのだが、取引相手の正体までは掴めなかった。

 

捕虜となった者にも聞いてみたのだが、誰一人としてその正体を知らなかったのである。

 

魔王クレイマンは、恐ろしく用心深かった。何一つ証拠を残さぬように、部下達にも徹底させていたようだ。

 

特に、クレイマンの仲間だった中庸道化連に関しては、一切の記録を見つける事が出来なかったのである。

 

ヒナタ「そう。私は彼等から、貴方がシズさんを殺したと聞かされたわ。そして丁度、イングラシア王国に滞在していると。だからあの時、貴方を始末しようと動いたのよ」

 

リムル「確かに。あれは最悪のタイミングだった。今思い出しても腹が立つ」

 

というリムルの言葉に、ヒナタが僅かに身震いした。ヒナタだけではなく、アルノー達聖騎士も身を縮めている。

 

エイト「やめろリムル。[魔王覇気]が漏れてるぞ」

 

リムル「!」

 

リムルは慌てて謝罪して、話を続ける事にした。

 

リムル「まあ実際、その東の商人とやらが黒幕で間違いないだろう。それで、名前はわかるのか?」

 

ヒナタ「ダームと名乗っていたわね。でもどうせ、偽名でしょうけどね」

 

偽名か、そうだろうな。だが、名前自体はどうでもいい。重要なのは、東の商人が黒幕だった事なのだ。

 

エイト「魔王クレイマンと東の商人には繋がりがあった。そして、ファルムス国王だったエドマリスをけしかけたのも、恐らくだがそいつらだろう」

 

ヒナタ「それは間違いないわね。レイヒムからの事情聴取で、その点はハッキリしているわ」

 

リムル「魔王クレイマンが、ファルムス王国を裏で操っていたのは間違いない。協力関係にあった訳ではなく、相乗りしたって印象だけどな」

 

ベニマル「それを仲介したのが、東の商人達ですか」

 

リムルの発言に、ベニマルが納得したように言う。

 

ヒナタ「私もまた、その作戦に利用されたのね……」

 

エイト「(となると…誰が絵を描いたか、だが……)」

 

エイト「全ての事柄に東の商人が絡んでいる点から考えても、利害関係がたまたま一致しただけだとは思えないな。クレイマンは、真なる魔王へと覚醒しようとしていた。ファルムス王国は、領土的野心からこの国を奪おうとしていた。そして、それらを裏から操っていた”あの方“とやらがいる、と」

 

ルミナス「”あの方“か。クレイマンが口にしておったヤツじゃな」

 

俺とルミナスは頷き合う。

 

ヒナタ「何の話なの?」

 

ベニマル達は事情を知っているが、ヒナタ達は初耳だった。その事に思い至り、軽く説明を行う。

 

エイト「ああ、実は魔王クレイマンは何者かの意思で動いていたみたいでな」

 

ルミナス「小者のクレイマンにしては天晴れな事に、最期までその正体を口にせなんだがな」

 

ヒナタ「そう……」

 

リムル「もしかするとさ、その正体は”七曜“だったのでは?」

”七曜“だったのでは?」

 

ルミナス「何じゃと?貴様、妾に内緒で"七曜"が動いたと申すのか?」

 

ルミナスが不機嫌そうにリムルを見た。

 

ルイ「なるほど、その可能性は否定出来ないね」

 

ルミナス「ルイ、貴様までもそんな戯言を__」

 

ルミナスの威圧は、リムルからルイヘと移った。

 

しかし、ルイは臆する事なく、堂々と自分の意見を述べる。

 

ルイ「ルミナス様、お聞き下さい。あの者達は、ルミナス様の寵愛を欲しておりました。

それもそのハズ、御自覚はおありでしょう?」

 

ルミナス「何の話じゃ?」

 

ルイ「寵愛____つまり、愛の接吻(ラブエナジー)です。ルミナス様がその儀式を、前回彼等に行ったのは百年以上も前でした。

最初は週に一度の儀式だったのに、だんだんとその間隔が延びていたのです。もしかして、お気付きではありませんでしたか?」

お気付きではありませんでしたか?」

 

ルミナスは、ルイから指摘されて苦々しい表情となった。

 

ルミナス「なるほどな。確かに我等は不老不死故に忘れがちになるが、あの者共は元は人間。妾が生気を与えてやらねば、死ぬ事はないにしても老いてしまのうが必然か」

 

ルイ「その通りです。ですのであの者達は、ルミナス様がこれ以上"お気に入り"を作らないように必死だったのです」

 

ルイは、淡々と説明を続けた。

 

どうやら”七曜“とは、ルミナスに特に気に入られていた人間だったみたいである。

 

人間ならば、当然だが寿命がある。それを覆していたのが、ルミナスが施す愛の接吻という儀式みたいらしい。

 

ルイ「故にあの者達は、もう一度ルミナス様の歓心を買おうとしたのでしょう。東の商人と手を組んで、密やかに魔王クレイマンを篭絡していたのだとしても、何ら不思議ではありません。あの者達、特に”日曜師“グランならば、クレイマン如きに遅れを取らないでしょうから」

ん。あの者達、特に”日曜師“グランならば、クレイマン如きに遅れを取らないでしょうから」

 

そう言って、ルイは説明を終えた。

 

ヒナタ「まさかそんな理由で、"七曜"は私を邪魔に思っていたのかしら?」

 

ルイ「そうだね。クレイマンを覚醒させて、君と戦わせるつもりだったのだろう。少なくとも、彼等では君に勝てなかったからね。

手段を選ばなかった可能性は高いと思うね」

 

ヒナタ「あの時も、私を排除しようとしてリムルとぶつけたと?ルミナス教の教義も守れるし、一石二鳥という思惑もあったと考えられるわね」

 

ルイの推論をヒナタが引き継ぐ。

 

となると、ますます”七曜“が疑わしくなる。

 

エイト「その、”七曜“が裏にいたというのは間違いないのか?」

 

という俺の質問に、ヒナタの隣に座っていたレナードが答えた。

 

レナード「それは間違いありません。あの商人共を我等に紹介したのが、その”七曜の老師“達なのです」

 

リムル「…あれ?七曜ってことは七人いるんだろ?後もう一人はどうしたんだ?」

 

ヒナタ「フフッ、その心配はないわ。本国に残っていたニコラウスから連絡があって、最後の一人も始末したそうよ。貴方からの伝言が込められた水晶球に、改竄の痕跡を見つけたのですって。それを証拠として、断罪を行ったみたいね」

 

リムル「ちょっと待てよ。その残りの一人ってのは誰だったんだ?」

 

ヒナタ「”七曜“の筆頭、”日曜師“グランだったらしいわね。あの男が自分で動く事は滅多にないから、残っていたのはグランで間違いないでしょう」

 

ルミナス「ほう?あのグランベルを倒すか。ニコラウス、確かお主に惚れ込んでいるという枢機卿じゃったな。どういう手を使ったのじゃ?」

 

ヒナタ「余り褒められた事ではないのでしょうけど、”霊子崩壊"(ディスインテグレーション)を事前に準備しておいたそうです。その不意の一撃で以って、仕留めたと」

 

ヒナタ「なるほどのう……。グランベルも老いたものよ。そのような罠に嵌るとは……」

 

ルミナスが嘆くように呟くが、

 

俺はそれどころではない。

危険な男が一人追加となってしまったのだ。

 

とは言っても、不意を衝いたようなのでそこまで危険視しなくても大丈夫そうだけど。

 

だが、油断は禁物である。俺とかリムルはともかく、大半の者に霊子崩壊は危険なのだ。

 

ニコラウス枢機卿、その名前は覚えておくとしよう。

 

ヒナタ「ところでルミナス様、そのグランベルというのは、"日曜師"グランの事なのですか?」

 

ルミナス「そうじゃ。アヤツの本名は、グランベルと言った。昔は”光“の勇者だった男でな、妾とも戦った事があるのよ」

 

そんな会話をするヒナタとルミナス。

 

ルミナスの口調って、たまにあどけない感じになるんだな。無理に偉そうな感じにしているように思えるけど、気のせいだろうか?

 

そんな事を思った瞬間、ギロリと脱まれた。

 

うん、気のせいだね。気のせい気のせい。

 

という訳でやはり、この疑惑は俺の胸に仕舞っておく事にしよう。

 

ヒナタ「そうですか……。まさか、いや、しかし」

 

ヒナタは何か思い当たったのか、気になる事があるようだ。だが確信も持てないらしく、結局それを口にする事はなかった。

 

ルイ「昔はかなり強かったね。私に匹敵するほどだった」

 

ルミナス「まあのう。"勇者を名乗る者には因果が巡る“ 故に、あの者も心の奥底では、妾を恨んでおったのやも知れぬな」

 

そんなルミナスの言葉を聞いて、俺はなるほどと思った。

 

ミリムも言っていた通り、勇者と魔王には因果が巡るのだ。

 

グランベルは魔王ルミナスに敗れ、恭順した。

 

しかしその本心は、複雑な思いがあったのかも知れない。数多の英雄を育てたという伝説上の存在になってまでも、その因果からは逃れられなかったのだろう。

 

今となっては、憶測しか出来ないがな。

 

リムル「けどまあ、これで一安心だな。魔王クレイマン、ファルムス王国、七曜の老師達、俺達にチョッカイを出していた者達は全員滅んだ訳だし」

 

そう結論を下したリムルに、ベニマルを筆頭に俺達の配下達が頷いた。

 

リグルド「これで一件落着となりそうですな」

 

リムル「いや、本当だよ。厄介な相手が多かったけど、これで問題はほとんど片付いたも同然だな。でも、裏で暗躍されると面倒だよな。

コソコソ動き回っている商人の存在に気付かなかったらユウキが黒幕なんじゃないかって疑うところだったよ」

 

エイト「…」

 

レナード「ユウキ?自由組合総帥(グランドマスター)ユウキ・カグラザカですか?」

 

リムル「ああ」

 

エイト「…まだ可能性は捨てきれないぞ」

 

ヒナタ「そうね。絶対に違う、とは言い切れないわ」

 

リムル「おいおい、同郷者を疑うのか?」

 

ヒナタ「あら?私はあらゆる可能性を考慮しているだけよ」

 

エイト「それに、黒幕が滅んだと考えるのも早計だぞ。中庸道化連とかいうのは見つかってないし、東の商人はまだ西側諸国に根を張ってるんだからな」

 

リムル「そうか、そうだったな。まだ全てが終わったわけじゃないんだし楽観視は駄目だな」

 

ベニマル「そうですね、皆にも通達しておきましょう」

 

リムル「エイトの言うように、黒幕が残っている可能性も高い。”七曜“が黒幕かも知れないと言ったのは俺だけど、あくまでも思い付きで言っただけだしな。決定的な証拠が出た訳でなし、決め付けは良くない。この件に関しては、今後とも要注意という事でいこう」

 

リムルがそう結論を出すと、皆が同時に頷いた。

 

まあ、今回の話し合いは黒幕の正体じゃなくて今後の付き合い方についてだ。俺たちの間に恨みを残さないようにしっかりやらなければ。

 

と思っていた頃、丁度シュナがコーヒーとお菓子を運んできた。今日のメニューはスコーンとポテトフライだ。

 

流石シュナ。見計らったようなタイミングだ。

 

ヴェルドラ「オヤツか?我は大盛りで頼む」

 

まるで会話に参加していなかったが、こういう時だけは素早いヴェルドラさん。

 

シュナ「はい、心得ておりますよ」

 

シュナの対応も手慣れたものである。

 

ヒナタ「あら、これも美味しいわね」

 

〜〜〜

 

さてと、オヤツを食べて一息ついた。

ここからは本格的な話し合いである。

 

リムル「さてと、それでは今後の関係だが」

 

ヒナタ「その前に、ハッキリとさせておきたい点があるの」

 

リムルの言葉を遮るようにヒナタが言った。

 

ヒナタ「今回の件、私達の謝罪は受け入れてもらえたのよね?」

 

リムル「ああ。我が国としては今後良好な関係を築きたいと思っているし、これ以上問題にするつもりはないよ」

 

これはリムルだけの意見ではなく、俺やベニマル以下幹部達と相談して決めた事だった。

 

これ以上争う必要はないし、誤解が解けたのだから手打ちでいいと。

 

そう判断しての返答だったのだが、それでは納得しない者がいた。ルミナスである。

 

ルミナス「駄目じゃ。妾は借りを作るのが嫌いなのじゃ。今回は明らかに此方に責がある。よって、何らかの形で賠償を行おう。手打ちはその後じゃ」

 

ルミナスはそう言って、嫌そうにヴェルドラを脱んだ。要するに、ヴェルドラにどういう形であれ負い目を作りた<ないのだろう。

 

ヒナタ「ルミナス様もこう仰っているし、私としても迷惑をかけたままというのは心苦しい。出来る限りの誠意を見せたいわね」

 

ルミナスに追従するように、ヒナタもそう申し出た。

 

とは言っても、賠償ねえ……。先も述べた通り、金銭での解決は俺達の意図するものではない。

 

ルミナス達が、というよりも神聖法皇国ルベリオスが、俺達の存在を認めてくれたならば…。

 

その上で、敵対しないという宣言があれば言う事なしだ。

 

エイト「あー…それなら、俺達の国を正式に承認して、国交を結んでくれないか?」

 

俺がそう申し出ると、ルミナスは軽い調子で頷いた。

 

ルミナス「構わぬ。馴れ合うつもりはないし、いずれはそこのトカゲを成敗するつもりじゃがな」

 

ルミナスの怒りの大半はヴェルドラに向かっているようなので、最悪はコイツを犠牲に差し出そうと思う。それで百年の平穏が訪れるのならば、俺としては迷うまでもない選択だ。

 

リムルも同じことを思っていたのか、俺達二人はヴェルドラに睨まれる。

 

ヴェルドラ「ちょっと待てリムル、エイトよ。お前たち今、かなり酷いことを考えてはおらぬか?」

 

リムル「気のせいだよヴェルドラ君。君がちゃんと大人しくお利口さんにしていたら、何も心配する事はないのだからね」

 

ヴェルドラ「待て待て、お前が”君“とか付ける時は、大概悪辣な事を考えておるではないか!」

 

ヴェルドラも鋭くなったものだな。

だが、甘い。

 

エイト「まあまあ。俺達のスコーンもあげるから、ちゃんとルミナスと仲良くしろよ?」

 

ヴェルドラ「何?そういう事ならば、善処しようではないか。まあ、我が本気を出せば、ルミナスを認めさせるなど簡単な話よ!

クアーーーッハッハッハ!!」

 

ほらな?ヴェルドラは単純なのだ。

ルミナスも呆れている。

 

だが、一度口に出した事を覆すつもりはないようだ。

 

ルミナス「調子に乗るでないわ!じゃが、暫しの間は休戦と洒落込もう。今後百年、国交を結ぶも良かろうな。それを妾からの、詫びの証とするが良い」

 

そう言って、驚くほどに簡単に休戦を受諾してくれたのである。

 

ヒナタ「相互不干渉ならばともかく、国交樹立を認めるのですか?」

 

まあ、そりゃそうだな。そんな軽くていいのか?

 

ルミナス「くどい。これは妾の決定である!」

 

そう言うだけ言って、後は任せたとばかりにスコーンのお代わりに手を伸ばしている。

 

ヒナタは困ったと言いた気だが、ルミナスに逆らうつもりはない様子。

 

ルイ「こうなっては、従うしかないだろうねえ」

 

レナード「国交ですか、それはしかし」

 

フリッツ「いいんじゃないの?エイト殿達が真に邪悪な者だったならば、俺達は既にこの世にいないのだから」

 

アルノー「そうだな。エイト殿達は信用出来る。魔物という偏見は捨てるべきだ」

 

リティス「私も賛成です」

 

レナード「しかし、問題があります。我等の教義をどう扱うのか。それ次第では、西方聖教会そのものが矢面に立たされてしまう。流石にそれは容認出来ません」

 

教義____魔物の生存を認めないというアレか。

 

確かに、俺達を認めるとなると、今までの教えは何だったのだという話になるな。

 

せっかく問題が片付きそうだったのに、事はそう簡単ではないようだ。

 

と思ったら、当のルミナス本人がとんでもない事を言い出した。

 

ルミナス「くだらぬ。その教義は妾が定めたものではないし、別段それが守られていなかったからと言って、妾への裏切りだとも感じぬわ。そもそも、それは迷える民への指針として、当時の指導者達が頭を悩ませて考えた規則でしかないのじゃ」

 

そのルミナスの爆弾発言は、聖騎士達だけではなくヒナタにも驚きであったらしい。

 

ヒナタ「えっ…初耳なんだけど……」ボソッ

 

ルイ「そうか、知らなかったとしても不思議ではないね。教義の書かれた原典は自由に閲覧出来るけど、その大本となった原稿は、既に紛失してしまっているのだから。あれを見ていれば、そもそもの教義の成り立ちが理解出来ただろうけどね」

 

ルイ曰く、そもそも教義とはルミナスを信仰する民を守る為のものらしい。

ルミナスやルイのような上位者は兎も角、下位の吸血鬼族(ヴァンパイア)は人の生血を食糧としている。

それも、幸福感溢れる人間の生血の方が、格段に味がいいのだ。

 

当時、魔物の猛威が荒れ狂う世界で人々は生きるのに必死だった。当然質の悪い生血しか手に入らず、吸血鬼族達にとっても死活問題となっていたという。

 

そこでルミナスは、引っ越しを契機として人類を保護する方針を打ち立てたそうだ。

 

ルイ「我々が無衷なる民を守る事で、彼等は幸福に生きていける。スパイスとして魔王の脅威を演出し、それから守られる事で安堵し、自身の幸福を噛み締めるのだ。ルベリオスの民は、神の名の下に守られているのだよ」

 

例えは悪いが”畜産“だな。

 

生血を吸うと言っても、本人が気付かない程度の少量で済むらしい。吸血鬼族の数に比して民の数が圧倒的に多いのだから、それも納得のいく話である。

 

献血を行った代償として、脅威から守られた安穏とした生活を送れる、と。

 

ヒナタ「つまり聖典ルミナス教の教義には、魔物から無用の被害を出さないように書き加えられた条項が多いという事なの?」

 

ルイ「そうだね、その通りだよ」

 

ルミナス「妾にとって重要なのは、信仰心そのもの。お主達は、妾を信じる事で〈神聖魔法〉の行使をしておるじゃろう?それこそが契約であり、絶対的な法則となる。民を守るというのは妾の眷属が履行すべき義務であり、妾にとってはどうでも良いのじゃ」

 

つまり、結論として。魔物の生存を認めないという教義は、人心を掌握する為の方便に過ぎない訳だ。だったら確かに、絶対遵守する必要はなさそうだな。

 

レナード「我等の教義が、神であらせられるルミナス様の意によるものではない、というのは理解出来ました。しかし現実問題として、我等は今までその教義に従って生きてきたのです。それを簡単に捨てるとなると、やはり問題が生じてしまうかと……」

 

ヒナタ「それでも、やるしかないのよ。問題が鎮静化するまで沈黙を守るつもりだったけど、貴方達が百名も動いてしまったのでは、各国に筒抜けになってしまったでしょうし。それに、

"三武仙"の敗北は、西側諸国の記者達に目撃されたのでしょう?」

 

そう言って、レナードから俺とリムルへと視線を移すヒナタ。

 

ヒナタの言う通り、ディアブロは”三武仙“のサーレという男を倒したと言っていた。もう一人いたそうだが、そいつはさっさと逃亡したらしい。

 

記者団はそれを目撃した訳で、ヒナタ達の人類の守護者という地位は、失墜しかねない状況にあるという事だ。

 

それに加えて聖騎士が敗北したという噂が広まれば、不要な混乱が生じかねないな。

 

エイト「それなら、俺とヒナタが相討ちだった事にしたらいいじゃねえか?それで、”七曜“の悪巧みに気付いて、俺達は休戦協定を結んだと。俺の正体がスライムっていうのは広まってるけど、”異世界人“の転生者だって情報も追加で広めれば、ある程度は納得してもらえるんじゃないか?」

 

ヒナタ「それは私達にとってはありがたい申し出ね。でも、貴方はそれでいいの?魔王が私と相討ちとか、威厳的に問題があるんじゃないかしら?」

 

威厳?そんなものは俺にはない。ついでに誇りもプライドもな。周りからの目など気にするまでもないのである。

 

エイト「問題ないだろ。別に負けた事にしてくれてもいいぞ」

 

ヒナタ「あのねえ、今まで人間に倒された魔王なんて、本当に数少ない事例しか確認されていないのよ?それを簡単に負けたなんて言ったら、それこそパワーバランスが崩れて大変な事になるわよ」

 

レナード「そ、その通りですよ!貴方はまだ、魔王になりたてなんです。そんな状況で他の勢力に祇められでもしたら、それこそこの地に要らぬ介入を許す羽目になりますよ!」

 

ヒナタが俺に苦言を呈すると、それに頷くようにレナードも言い募った。俺を心配しての言葉だろうが……

 

エイト「ベニマル、この地に介入しそうな勢力って何処か心当たりがあるか?」

 

ベニマル「ありません。仮にそんな愚か者がいたならば、俺が捻り潰して見せますよ」

 

うんうん、頼もしい限りだ。まあ、攻めて来たならその時は……。

 

リムル「本当にいいのか?」

 

エイト「ん?ああ、威厳なんて気にしないしな。大体魔王が二人も同じ領域にいるんだ。ちょっと威厳がないくらいで攻めてくる馬鹿はいないだろ」

 

リムル「まあ、それもそうだな。西側諸国はディアブロが上手くやってくれるみたいだし」

 

エイト「と、言うわけで問題無さそうだぞ」

 

ヒナタ「すごい自信ね。それならば、私としては異論はないわよ。その申し出を、ありがたく利用させてもらいます」

 

アルノー「この際だし、この国の住人が”悪しき者ではない“と発表しちまいましょう!」

 

フリッツ「そうだな。実際、元が子鬼族(ゴブリン)や豚頭族(オーク)だったなんて信じられないくらい、この町の住人は気のいいヤツらだしな」

 

リティス「亜人が魔物か否か、それは今までも議論に上っていましたわ。ですが、それは偏見からくる差別であると、私はそう思います」

 

レナード「そうだな。人と敵対する亜人の存在が厄介だが、ドワーフなどは紛れもなく人類の一員であろう。もしも彼等まで魔物だなどと言い出せば、精霊すらも魔物と区分しなければならなくなる」

 

大鬼族(オーガ)や晰錫人族(リザードマン)なんかも、本来は亜人という扱いだ。ただし、人類に敵対していたから、魔物として扱われていた。

 

その上位種族である妖鬼(オニ)や龍人族(ドラゴニュート)なんかは、区分としては魔物ではなく土地神である。

 

要するに、人類の味方か敵か、その違いしかないという事。

 

なので教義の解釈として、魔物を全て敵と定める事に無理があるのだ。

 

リムル「俺達はドワーフ王国とも国交を結んでいる。だからさ、ガゼル王も巻き込んで、百年の友誼を結べばいいんじゃないか?俺達が人を襲わないという保証があれば、少しは信用してもらえるだろう?」

 

リムルがそう言うと、ヒナタが考えを纏め終えたのか頷いた。

 

ヒナタ「そうね。信用さえあれば、少しは説得しやすいわね。それに、この際だから色々と、”七曜“に毒された者達の粛清も行うとしましょう」

”七曜“に毒された者達の粛清も行うとしましょう」

 

そりゃそうかと思う。組織というのはそんなものだ。

 

ヒナタが冷たく告げたので、反対意見はなくなった。

 

この機会を利用して、”七曜“に全ての罪をなすりつけてしまうつもりだな。汚いと思うが、それはルベリオス側の話だ。

 

俺達が口を挟む問題ではなく、任せておけばいいのである。それから両者で、細々とした点を話し合ったのだ。

 

今後の交流として、アルノーとバッカスが滞在する事に決まった。

 

準備のため一度は母国に戻り、文官達も連れてくるそうだ。

 

その間にこちらは彼らを受け入れるルミナス教の教会を建設するつもりだ。

 

宗教を入れていいものか…とも思ったが魔物は神なんて信じない。

 

そもそもこの世界に万人が認める神なんていない。祈ったら実際に助けてくれる、目に見える者を信じるのだ。

 

宗教はあれどそれは土地神への敬意に近い。

 

竜を祀る民なんかはいい例だが、西方聖教会はその中での最大派閥ってだけの話なのだ。

 

そう考えるとある意味俺とかリムルも神と言えるのか?いや、恥ずかしいのでそれは嫌だ。

 

この国の神はリムルで決定だな。

 

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