呪術?念能力の間違いだろ、そんなことよりラーメン食おうぜ   作:nyasu

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金に不誠実な奴は信頼に値しない、なぜなら金は信用がないと無価値だからだ

「おいおい、待ってくれ。ちょっとした悪い冗談だ、飯でも食って話せば、ッ!?ギャァァァァ!」

「俺は金が好きだ。だから、金に不誠実な奴が嫌いなんだ、意味は分かるな?」

「う、腕がぁぁぁ!あひぃぃぃ!?」

「騒ぐな。刺しただけだ、そうだろ?それとも、文句があるのか?」

「ねぇよ!いや、ありません!許してくれ!説明不足だった!」

 

朝活としてラーメンを食べた帰りに、仲介業者の所に俺は来ていた。

仲介業者がいた場所は開店前のバーであり、いつも開店してない裏の人間しか来ないような場所だ。

最初、見た瞬間に驚きはしたものの拝み屋の婆さんかと勝手に納得した仲介業者。

俺が死んだのどうのこうの、死体の一部がどうのこうの、勝手に喋ってる間に店内を見る。

誰もいない事を確認し、俺は店内にあったアイスピックを手に持って仲介業者の腕に刺した。

途中、何をされたのか分からないと言った顔をして、すぐに頭をフル回転させたのだろう。

死んでいなかったと判断した奴は命乞いをしたのだった。

 

「仲介料、貰ってるんだろ。どこにあるんだ、金庫でもあるのか?」

「や、やめてくれ!払う、払うから抜いてくれ!」

「有り金は全て貰うが、妙な事を言っていたな。拝み屋だっけか?」

「偶に来る婆さんだよ、もう今じゃ細々とやってるが仲介屋業界じゃ有名な呪詛師だ」

「面白い呪術を使いそうだな、ソイツの居場所を教えろよ。そしたら命までは助けてやる」

「ほ、本当だな!その婆さんならアイドルに夢中なんだ、へへへ……あの婆さん相当な好き者だぜ。追っかけのファンに変身してアイドルと寝てんだからよ」

 

アイスピックを抜いて、金庫の有り金を全て貰った俺は拝み屋という婆さんを探すことにした。

あの反応からして死者の復活とかもしくは死者に変身するという能力だろう。

有用そうな能力は欲しくなる性分だ、むしろそういう性分だからそういった念能力になっているのかもしれない。

肉体の一部を取り込んで肉体を変容させるとかも制約、つまりは縛りって奴なのかもしれない。

下手したら、死んだ呪詛師や呪術師の術式も手に入るかもな。

普段、回っているというアイドル巡回スケジュールという情報をもらった俺は早速会いに行った。

 

「きゃぁぁぁ!」

「こっち向いて!」

「好き!大好き!きゃぁぁぁ!」

 

絶を用いて侵入したライブ会場は熱狂していた。

テレビでも見たことあるアイドルのコンサート、まさかのジャニオタだとはこのジュウゾウの目を持ってしても見抜けなかったわ。

因みに、席の情報まで仲介業者は調べており、ある意味で驚愕した。

なんで知ってるんだよ、詳しすぎるだろ。

 

「凝」

 

目にオーラを集めて観察すると、会場の一角でオーラを纏った人物を見つける。

自然に纏われた、それこそ纏をしているかのような自然なオーラの流れ。

なるほど、あの女がそうなのか。

 

その女はババアと言うには若い女だ。

ミニスカートに黒タイツ、肩が剥き出しになった服、本当にババアかというレベルだ。

そんな女が、顔の写真が貼られたうちわを振り回して叫んでいる。

見るからに普通の女だが、しかし姿を変えたババアなのだろう。

 

ライブが終わり、会場を後にするババアを尾行する。

人通りの少ない場所に移動してから話をするつもりだ。

ババアは自然と人気のいない場所に移動していく。

繁華街からラブホ街、ラブホ街から裏路地、裏路地を進んでいたババアが立ち止まる。

 

「いるんだろ、出てきな」

「……驚いたな、気づいていたのか」

 

ババアは振り向かずにそう声を発した。

俺は堪忍して、絶を解除してビルとビルの間に姿を表す。

やはり、見る限りは若い女だ。

 

「呪力を上手いこと隠しても年季が違うんだよ。アンタ、呪術師か」

「おっと、誤解しないで欲しい俺は呪詛師だ」

 

振り返った女は、顔の半分がババアだった。

その顔は徐々に変わって、ババアになった。

なお、服装は変わらずである。

 

「その格好は年齢的に無理があるだろ」

「余計なお世話だよ!何だい、呪詛師が何のようだい!」

「アンタの術式を教えてほしくてな。金なら払う」

 

一見、警戒していないように見えて拝み屋の視線は周囲を見ている。

逃走経路の把握、こちらを観察する視線、随分と強気なのも気になる。

 

「円」

 

俺の身体から数メートルに伸ばしたオーラをグルリと回転させ、アクティブソナーのように運用する。

そして察知した気配が三つ、なるほど仲間がいるのか。

 

「アンタが呪詛師だと信用するには情報が足りないね」

「確かに証明する手立てはない。だが、アンタの仲間達と争うつもりもない」

「チッ、孫に勘付いていたか。どうして術式が知りたいんだい、情報屋にでも聞けばいいだろ」

「実はアンタに憧れていてな。五常悟を知ってるとも聞いた。アンタの口から術式の話は聞きたいし、出来ればアンタの真似をする許可が欲しかった」

 

勿論、嘘である。

若作りするババアに憧れるはずもなく、術式が知りたいだけの嘘だ。

年寄りになるまで生き残っているのなら、五常悟という危険人物と会ったことくらいあるはずだ。

真似をする許可なんていい方も、まるで生き方をみたいな勘違いもさせそうな言葉だ。

能力は実際に見た、後は術式について聞くことと許可さえあればいい。

 

念能力と術式はイコール、実際に手に入ることは紙袋で実証済みだ。

ギリギリのタイミングであったが、紙袋男に捕まった瞬間に奴の背後に分身を生み出して交換することは出来たからだ。

出来なくても問題ないくらいには首にオーラを集中させていたが、それで死ぬことを偽装して逃亡することも出来た。

つまり、上手いこと騙せればババアの能力も真似できるということだ。

 

「律儀に許可を貰いに来ただって?誰がそれを信じるんだい、何を企んでるか分かったもんじゃない」

「今風に言うならリスペクトだ、憧れの人物のように振る舞いたいと思うのは自然だろう。別に術式に必要な訳じゃない、疑うようなら俺の術式を見せよう。俺の術式は分身術式、最大1体まで分身を生み出し、居場所を交換できる」

 

呪詛師を長年やってるからか疑り深いババアを騙すために、最近手に入れた能力を使う。

術式と偽り、手から俺自身を生み出すことで俺の術式だと証明したのだ。

 

「ほぉ、どっかで見たことあるような術式だね。憧れるのは勝手だがね、術式は教えないよ。さて、そう言ったらどうする」

「そうか、残念だ。じゃあ、言いたくなるようにするさ」

 

俺の言動に、アクティブソナーのように使っている円で把握していた気配が少し動く。

孫、とやらか。

肉親で呪詛師と考えるには、この業界は死亡率が高い。

洗脳や養子と考えたほうが自然だろ。

 

「……分かった、気が変わったよ。金は貰うがそれだけじゃ不足だね。一度だけ、一緒に仕事をしてもらう、それでもいいなら教えてあげるよ」

「五百万、用意した。仕事の件も、元からするつもりだ。だから、アンタの術式の詳細が知りたかったんだ」

「大方、どういうものかぐらいは調べてるんだろ」

「死体を取り込んで、死者に成り代わると聞いている」

 

俺は札束を取り出し、地面に置きながら仲介業者から聞いている情報を言う。

警戒されてるので、金を置いたら後ろに下がって様子を伺う。

いつでも動けるようにか、ジリジリと距離を詰める孫とやらは円で把握している。

さて、どこまでちゃんと情報を吐くのか。

 

「ふん、そうだよ。死体の一部を取り込んで自身を変身させる。肉体の情報を完全再現、術式すら再現するから戦うのはやめときな」

「なるほど」

 

手応えとして、実感は湧かなかった。

発動したという、オーラを消費した感覚がないのだ。

つまり、条件を未達成だということに他ならない。

おかしいな、仲介業者の肉の一部を先程口の中に入れたんだがな。

説明不足、もしくは虚偽の申告と取っていいだろう。

 

「俺は、金に不誠実な奴が嫌いなんだ。確認するが、それがアンタの術式だと言い切るんだな?」

「……使うのには言霊が必要なんだ、これは弱点だから言いたくはなかったんだけどね」

 

死体の一部を取り込むは制約か。

それと言霊、シャーマンの念能力者などが民族的な慣習で使っている場合がある。

そういった場合、それが自然と制約となっている。

単行本で読んだグリードアイランドには、肉体情報を調べる能力者や呪文を唱えて念獣を出す奴がいた。

スペルカードには死者との通信を可能とするものもあった。

 

そこから考えられるのは、肉体の情報の取得、それと死者の念を見つけ出す、そして既存の肉体に死者を念獣として具現化、もしくは変化させるといったところか。

具現化と変化系の複合、もしくは特質系か。

だが、まだ再現は出来ない。

 

「金はな、信用なんだ。国への信頼が紙切れを価値ある物に変えたりする。つまり、金に不誠実な奴は信用に値しないというわけだ。さて、俺は一度目は目を瞑ったが、二度目にはどうしたらいいだろうか。まだ隠し事があるだろ?」

「アンタこそ、分身するだけが術式じゃないね。はぁ……自分だけでなく他者にも霊は降ろせる。肉体の情報と魂の情報だ。ただ、魂の情報は降ろすと制御できないデメリットがある。それと術式の再現までは流石にできんよ」

 

観念したのか、渋々と言った体で能力について説明された。

同時に、来たと確信できるくらいにオーラが消費され、能力の発動を実感として理解する。

俺の身体が変化する独特の感覚、これは肉体が変わったのか?

 

「なっ、なんだと!?それは私の」

「術式開示、とでも言おうか。俺の術式は模倣術式、聞いたことある術式の再現だ」

 

感覚として、魂とやらを降ろすというのは出来る気がしない。

あと、他人にやるってのも恐らくは出来ないだろう。

出来るという確信がないから、そういう認識は念能力に影響を与えるので無理そうだ。

俺の能力は模倣するという所から、自分ができないと思うことは模倣しようがない。

あと、劣化コピーなのは言わないほうが良いだろう。

 

「アンタのこと、覚えとくよ。まったく、とんだ食わせ者だ」

「よく言うぜ、情報の小出しや誤情報を掴ませる婆さんの方が食わせ者だろうが」

「私はピチピチのギャルだよ!婆さんじゃ、断じて無い」

「……よく言うぜ」

 

いや、その年でその格好はやめろってマジで。

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