どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
プロローグ 「何言ってんすか」
「それで、確かに色々言ってくる奴だけど、その分自分のことには一途で真面目で可愛くて‥‥‥そんな奴が親友でいることに対して、俺は優越感に浸ったわけだ。『どや!俺の親友カッコイイだろ!!』ってな具合にな」
「‥‥‥はあ」
凡そ普通とは形容できない爆撃音が鳴り響き、爆風が吹き荒れる城下町。
以前はこのような状況ではなく、つい1時間前程は豪勢なパレードが開催されていた筈なのですが現状は悲惨も悲惨。建物は壊れ、観衆は逃げ惑い、この街は阿鼻叫喚の渦に巻き込まれています。
せっかくの気分が台無しになりました。罰金を支払って欲しいくらいです。
しかし、
彼女の睨みは彼にとっては所詮可愛いもの位としか認識されておらず、この状況を打破する起爆剤にはならないということは自明の理と言えるでしょう。ですが、彼女にとってはその一睨みはこれから紡ぐ言葉の正当性を証明するには必要な行為。他人がどう思うか関係なしに、彼女にとっては大切なものなのでした。
「あの」
「なんだい、親友」
「いい加減離してくれませんか?」
得意げな笑みを見せた山吹色の髪の男を睨み、このおかしな状況に関してツッコミを入れた灰色の髪の彼女は痺れを切らして、手足をバタバタと動かします。
しかしその動きはとある体勢で抱きかかえられているためか尽く空を切り、最終的にはバランスを崩して落ちそうになってしまう始末。追い討ちのようにかけられた「ドジだなー」という声により、怒りは最高潮に達しました。
ともあれ。
不意に起こった爆風により弾き飛ばされた身体を抱きかかえられ、あまつさえ娯楽小説で度々拝見する『お姫様抱っこ』なる屈辱的な構図を取らされている魔女は、一体誰か。
そう、私です。
悲しいことに、私です。
「この好機にそんな馬鹿な真似は出来ないな。つーかここ足場悪いし、ここは大人しく俺に抱かれてろよ」
私の身体を抱き上げた張本人は、バランスを崩しそうになった私をドジだと笑った後にそう言うと、優しく微笑みかけます。
その笑み自体には爽やかで暖かな印象を得ますが、言っていることは不純極まりない為、どうにも胡散臭い笑みに見えてしまいます。
良くも悪くも、彼は変わらない。それはこの笑みが紛れもない証左となることでしょう。
「如何わしい言い方止めてくれます?」
「抱っこしてんじゃん。娯楽小説のように、結婚式のように!」
「今すぐ下ろしてください本当に何考えてるんですか怒りますよ私」
この体勢のまま彼と話すのは恥辱そのものでしたので、何とか彼の両腕から解放できないかと模索してみますが、先程のようにじたばたしたところで彼に笑われるだけでしょうし、諸々の理由から魔法を行使する気にもなれません。
つまり、この状況を打破するには山吹色の髪の男の良心こそが鍵だったのですが、この胡散臭い笑顔を見る限りそれも無理だと悟りました。
というか、赤子のように私の身体をゆらゆら揺らすのやめてくれませんか?
「にしても、しばらく見ないうちに変わったなお前」
それから爆風が止んだのちに山吹色の髪の男は、私の顔を見つめると感嘆の声をあげました。その声色はかつて私が故郷で耳を腐らせる程聴いた声であり、その声を聴くのと同時に故郷での暖かな記憶を呼び起こします。
その年月は4年。いつか会って話を──とか言っておきながら仕事の忙しさを口実にして私との会話を手紙のみに留めていたクソ野郎は、いつの間にか外見を大人びたそれに変え、山吹色の髪を靡かせて颯爽と私の前に現れたのです。
「‥‥‥具体的にどのような所が変化したのでしょうか」
「可愛いの押し売りが可愛いのバーゲンセールになった所かな」
「なるほど、全く分かりませんね」
「イレイナは何時でも可愛いってことだ」
「結局変わってないじゃないですかそれ」
「イレイナサンアイシテルー」
「こっち見てそのセリフ吐かないでください」
まあ、この腐りきった態度はまるで変わってないんですけど。
褒められると直ぐに調子に乗ると専ら噂の私ではありますが、誰彼構わず褒められて嬉しがる程賞賛を乞食しているわけでもありません。褒められて嬉しいと思える人くらい選びますし、第一言われ慣れた言葉を今更になって言われても困ります。
特に『この男』には、今更外見なんて褒められたとしても嬉しさなど微塵も感じません。
貴方の立場を考えれば、私を喜ばせたいのならせめてもう少しボキャブラリーに富んでいて、かつ内面に踏み込んだ賞賛をして欲しい所です。
「さて、与太話はこれくらいにしておいて」
「まさかこの一連の流れが与太話とか言いませんよね。私をお姫様抱っこしているこの現状も与太話だとか言いませんよね?」
「‥‥‥さて、俺は俺で依頼内容を片付けなきゃなー」
何誤魔化してんすか。
「それよりもこの状況を最優先すべきでは?」
「問題ない。俺はイレイナを抱っこできて幸せだ」
マジで何言ってんすか。
「私は不幸そのものなんですが」
「俺が幸せにしてみせるから心配ないな!」
「何か戯言が聴こえた気がしたんですが、取り敢えずぶん殴っても良いですか?」
「お前にぶん殴られるなら、それも吝かではないな。いいぞ、殴れ」
「‥‥‥‥‥‥」
「おやおやどうしたんだいイレイナさん。まるでゴミを見るような目付きだよ」
ここまで彼の会話を聴いて、私は改めてこの山吹色の髪の青年が人類史に名を残すレベルの馬鹿野郎だということを思い出しました。
出会った時から、何処か大人びた雰囲気を持ってこそいるものの大人と呼ぶにはやや寸足らず。あまつさえ馬鹿げた発言を繰り返すその様から呼ばれたあだ名は『変態さん』。
そのあだ名の通り、今日も今日とて変態さんは私に対して恥辱の限りを尽くします。本当に勘弁して欲しいのですが、それが彼らしさでもあるのが憎たらしい所です。
そのようなことを考えていると、倒壊した瓦礫の山が大破し、その中から大柄の男が飛び出てきます。
表情は、仮面によって隠されているので分かりませんが肩が激しく上下していることから、怒気に身を任せているということが容易に察せられました。
「貴様が‥‥‥貴様が俺の野望をォ!!」
「‥‥‥野望も何も、お前さんがやっていることは犯罪なんすよ。そして、俺は魔法のお巡りさん‥‥‥魔法を使って犯罪している仮面ダンサーを捕まえに来たんすよ」
「何だと‥‥‥!?」
「悪いヤツは捕まる。それは世界の常識っすよね」
そして、山吹色の髪の男は私を抱えたまま杖を構えます。そしてその杖を横に振るうと、大気が切り裂かれ大柄の男の隣にあった瓦礫を真二つに切り裂きました。それを喰らってしまえば恐らく生命の灯火は一瞬で消えてしまうであろう一撃。大柄の男は唖然と口を開き、その一撃を放った山吹色の髪の男はニヒルな笑みで返します。
「お前が仮面ダンサーだな。依頼が来てる。観念しろ」
「クソッ!いつもとは違うペアがいたから怪しいとは思ってたが、まさか筋金入りの魔法使いが2人もいたなんてッ‥‥‥!!」
「あ、俺達ラブラブです。ふひひ」
「違います、人違いです」
「聴いてねえよッ!!テメェら一体なんなんだよ!!」
更に火に油を注いでどーすんですか。
そんな不安は的中し、大柄の男は杖を取り出すと山吹色の髪の男に杖を突き出します。
獰猛な瞳は、魔法を使って何人もの人々を屠ってきた様を連想させるような瞳であり、そのような瞳に気を取られていると「良い子は見ちゃいけませんよー。よしよし」と子どもをあやす様な声色で窘められました。
彼は長く続いた勤務生活で気でも狂ったんでしょうか。当然、彼の妄言は無視です。その方が精神衛生上幾らか健全ですし。
「覚悟しろッ!幾ら魔法使いがいようが俺は強い!!何せ俺は魔道士の中でも魔女級の力を持つとさえ言われているんだからな‥‥‥少なくともテメェみたいな軟弱そうな魔道士に敵う相手じゃねえ!!」
随分な自信がお有りなのか、大柄のクソ野郎は笑みを零して叫びます。
確かに覚悟はしなければならないでしょう。魔法の才能の殆どが遺伝である以上、大柄のクソ野郎が魔法を使えないという道理はなく、更に言うのなら逮捕の依頼が来るようなお尋ね者。この場の惨状を見ても分かるように、苦戦を強いられるのは確かですし。
ですが、それとは別に私の友人──というより幼馴染が軽んじられている現状はなかなかに腹が立ちます。業腹です。
少なくとも私の幼馴染は、魔法を外道の道に使うようなクソ野郎に負ける程意思も実力も薄弱ではありません。大柄のクソ野郎が私の幼馴染を馬鹿にするなど100年早いものであり、それこそ彼を馬鹿にして良いのは魔法の道を極めた関係の深い人物──つまり、私です。私の他には許されません。
故に私は杖を構え、臨戦態勢に相応しい真顔で敵を睨む親友の名前を呼びます。
「オリバー」
「?」
「気が変わりましたので私を運びながら戦ってください。けど、落としたりしたら後で酷いですからね」
目の前の親友に対して小生意気にも指示を出す私はまるで暴君そのもの。それでも、彼はそんな私の言葉に真顔を解くと優しく微笑みます。
私の親友は、昔からこんな感じです。大人びているようで大人びてなくて、馬鹿げた発言をしたかと思えば核心を突く言葉も発する。そして何より、魔法が好きで、見てきた中で誰よりも素敵な笑い方をする──そんな人。
胡散臭い笑みも多い中で稀に見せるその優しい笑みこそ、私が彼を信頼している1番の理由なのだということは最早言うまでもありません。
まあ、それでも彼は馬鹿野郎で変態さんなんですけど。
「‥‥‥じゃ、落とさなかったらご褒美頂戴」
「それで私にどんなメリットがあるんですか?」
「やる気が上がる」
「本当にオリバーって卑怯で単純な生き物ですよね」
そんなアイデンティティを持った山吹色の髪の男の名前は、オリバー。
黒を基調としたローブに、上から臙脂色のセーターと濃紺のネクタイ、白のワイシャツを着込んだ青年であり、ローブの右肩付近には彼の身分を明確にすることができる見慣れたバッチが1つ付けられています。
そして、誠に不本意ではありますが彼は私の幼馴染であり、悪友であり、親友です。
「まあ、私をこうして運んでいる以上怪我だけはさせないでください。1度でも危ないと判断したら箒を使いますので」
「俺がイレイナを怪我させる‥‥‥?ふっ、万が一にも有り得ないね」
「その万が一が昔にあったから言っているんですけどね」
「ふっ‥‥‥いや、マジでそれはすいません」
と、私の言葉にテンションをガタ落ちさせ、膝を突きそうな勢いで膝を落とすオリバー。そんな彼の豹変ぶりにため息をひとつ交えた後に、私は目の前の、たった1人の親友にハッキリと告げます。
「そんなことよりもご褒美、考えておいてください」
「‥‥‥膝枕、余はうつ伏せを所望する」
「最低ですね1度死んでください」
口を突いて出た罵倒に「誰が死ぬか」と彼は挑発的な笑みを見せ、「お前嘘ついたらひでーからな」と反抗的な言葉を吐いてため息をひとつ。
「当たり前です。誰にでもご褒美を与える程、私もお人好しじゃないんですから」
私は最後にそう締め括ると、抵抗することも馬鹿らしくなりオリバーに身体を預けます。結果はモチベーションが上がった彼が無理やりにでも運命を勝利に導くでしょう。そんな期待と、何一つ揺らぐことのないオリバーという存在の安心感が、この危機的状況にも関わらず私の心を安堵の色に染めたのです。
信頼しているから、信用しているから、付き合いが長いから。
それだけではない、この安心感の証左である『何か』に気付かないように、私はオリバーにこの身の無事を委ねました。
結果は──言うまでもないでしょうとも。
イレイナしか勝たん。
というわけでぼちぼち投稿させていただきますねー
2章終了後の3章は……?
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魔法統括協会編!(全15話完結予定)
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2人旅編(全30~40話完結予定)
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両方同時並行(がんばる)
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アムネシア編