どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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......俺、残りの話書き終わったら最近活発になった魔女旅の二次創作読み漁るんだ。
あと、皆さんの書いてくれた誤字脱字指摘も直すんだ......特に言葉間違いが悲惨すぎるので......いやほんと、他の方の作品見習わなきゃ......


9話 「私が彼に騙された日の話」

 

 

 

 

 

オリバーという人間を紹介するにあたって、1番分かりやすく説明できるのなら、それは『馬鹿野郎』という言葉が最適解だと言えるでしょう。

母に「魔法を学んでいる同い年の子がいる」という情報を頼りに話しかけたその時から彼はそうでした。頭で考えていることを止めることなく妄言とし、様々な人を困惑させ、特に私に関しては所構わず妄言を正論よりも多く口走ります。

また、魔女になるという目標といつかニケのように世界中を旅をするという夢から魔法を真剣に勉強する私と違い、彼は魔法を遊びと割り切り、探究心においてやや欠けている場面も見られました。この前「時間逆転の魔法を使えばお肌つやつやだよね!それはそうとイレイナの足綺麗ですね!」なんて言ってやがってた時は思わずぶっ飛ばしてやろうかと考えてしまいました。

 

けど、それでも私は彼を嫌いになることはできませんでした。その大半の理由は彼のコミュニケーション能力が良い意味でも悪い意味でも旺盛であり、話をしていて飽きなかったということもあるでしょうが、何よりもオリバーという人物は積極性と真摯な気持ちに応えようとする気概があったのです。

魔法に興味を示せばその魔法を懸命に学び、私が教えるという誠意を見せればその誠意に報いようと必死に学び、そのいずれも何日か経てば完全にマスターしてしまいます。

 

そんな彼の積極性や真摯さに私が心のどこかで感じていた嫌悪感はいとも容易く壊されました。気がつけば、私はオリバーという人間に確かな友情を覚え、行動を共にすることが多くなったのです。

そして、それは私の誕生日前日にも変わることはなく──今日も私達はお互いが出会った平原で魔法や勉学を学び、高め合います。

 

「なあ、見てくれよイレイナ!俺、過重力の魔法を自分にかけることで負荷をかけえ゛え゛え゛!」

「あ、すいません。過重力の魔法が勝手に」

 

馬鹿をしながら、この時を過ごしていました。

 

 

 

 

 

 

頬を撫でる風が、髪をも揺らす勢いで吹きつけて心地良さを与えます。風というものは強すぎると厄介なものとなるのですが、適度にさえ吹けば人の心を癒す清涼剤にもなり得ます。

『程々』という言葉はこういった天候の為にあるのでしょう。バランスの良さこそが至高だとは全く思いませんが、せめてこういった気候位は程々に入れ替わり、人々の生活を豊かにする一因となって欲しいものです。

 

さて、それはそうとして。

溢れ出る知性と才能に、思わず太陽すらもため息を吐き、風を吹かせる一因となってしまう天才少女とは、果たして誰か。

そう、私です。

 

「こうして横になると、風が気持ちいいですね」

 

平原に横になって休憩しようという話になったのは、オリバーの一言がきっかけでした。隣で私を見つめながら「あーいいですよ!横顔いいですよ!」とか抜かしやがっていた山吹色の髪の少年が、魔法の勉強と練習に疲労した心身を休めるためにと取った方策に私も半ば無理矢理付き合わされたのです。

いやしかし、こうして寝てみると、平原での休息もなかなか気持ちが良いものでした。

もしかしたら私は遺伝子レベルで平原でのお休みが好きなのかもしれません──なんて考えていると、オリバーが視線を私から空へと向けます。

 

「平原での休息が気持ち良いって知ったのはヴィクトリカさんがきっかけなんだよ」

「お母さんがですか?」

「ああ、たまにヴィクトリカさんがここに来てお話してくれたりしてさ。今はイレイナと話す時間が増えたからあまり無くなったけど」

 

「つーか、ぼっちだったから気を遣ってくれたのかもな」とオリバーは言い、乾いた笑い声を上げます。

 

「その時に感じた空の青さが、今でも心に残ってる。だから俺はここで休むのが好きなんだろうな」

「オリバーの過去は置いといて、空の青さが素敵なのは同意です」

「そこは興味を持ちなさいな、イレイナさんや」

 

いえ、別にあなたの過去なんてどうでも良いですので。

それよりも今が大切だと感じていますし、その意識でいた方がいくらか建設的でしょう。少なくとも私達はお互い現在を生きているのですから。

私は嘆息を漏らし、オリバーに語ります。

 

「私は別にあなたの過去は気になりませんし、そんな余地もありません」

「ひどい」

「何より、私達は今のこの空を見ているんです。その青さを語るのに、過去は必要ですか?」

 

昨日には昨日の空があり、明日には明日の空があります。私達が見ているのは今日の空であり、それはオリバーが過去に見た空とは幾分か違う要素が顕在しているのです。

例えば、雲の有無や増減、形状の変化でしたり、天候によっても微々たる違いがあります。その点を鑑みればオリバーが見た過去の空と今見ているこの空にも違いがあってもおかしくはないでしょう。

つまり、私はオリバーと『今のこの空の』青さを語りたかったのです。過去でもなく、お母さんと見た空でもなく、()()()()()()()()()()この空を。

 

「‥‥‥なるほど、ね」

 

そんな意思から発せられた私の言葉の意図をオリバーは汲んだのか、感嘆の声を上げます。オリバーにしては珍しく物わかりの良い態度を見せたことに不覚にも驚き、思わず視線を空から横にいるオリバーに向けます。

ニヤニヤ笑ってるオリバーがいました。

いや、なに見てんすか。

 

「つまり、昨日のイレイナの可愛さよりも今日のイレイナの可愛さを語れ。日々新たチャレンジ!ってことだよな」

 

そしてちっとも分かってねーじゃねーですか。

なんですかあなた、馬鹿が1周回って天才的な馬鹿になったんですか。とんだくそやろうですね少しは反省してください。

 

「話聞いてました?」

「イレイナは何時でも可愛いって話だろ」

「なるほど、ちっとも話聞いてませんね」

「イレイナは毎日可愛いぜ」

「こっち見ないでください」

 

見事なくらい薄っぺらいドヤ顔で私を見るオリバーを無視して、再び空を見上げます。

空から一羽の鳥が羽を広げ、遥か彼方へと飛翔していきます。その様は自由の象徴のようであり、図らずも私はその姿に憧れを見出します。

 

──今すぐにでも旅立てるのなら行けるのなら、行きたいという気持ちがあります。

 

ニケの冒険譚の主人公であるニケのように、物語の主人公のように様々な街を旅してみたい。

その願望を捨てたことは今も昔もありません。そして、その夢を叶えるための約束である魔女になるということを目指し、私はひたすらに努力を積み重ねてきました。この調子ならいずれは魔女として旅をすることも可能でしょう。

 

けれど、仮に私が旅を始めたのならば、オリバーとは別の道を歩むことになります。

そして、オリバー自身が魔法に触れる仕事に就くことがなければ決定的な繋がりのない私達は疎遠となり、話すことも少なくなります。そうした時、私とオリバーはこの関係を維持することが難しくなり、結果的に旅をすることで慣れ親しんだ彼との関係が破綻してしまうことになるのです。

 

そんなことを考えてしまう私は未来に対し勇敢であり、臆病でもありました。

いつか来てしまうであろう離別の苦しみが、無性に怖かったのです。

 

「‥‥‥さて」

 

そろそろ良い時間ですので箒に乗って家へと帰ろう──といったところで「待った」と言って起き上がったのはオリバーでした。自身についた草を手で払い、半身を起こした私を見下ろします。

 

「1つ、賭けをしないか?」

 

そして、不敵な笑みを見せてそう言ったオリバーは、なんともまあ薄っぺらい笑みをしておいででしたが、そんな笑みは最早慣れっこですので、私はその笑みを軽く受け流した後に立ち上がり、箒を召喚して飛び乗りました。

 

「あ、結構です」

「話くらい聞いてよ!え、ウソ、マジで!?話も聴いてくれないの──待って箒でゴーホームしようとしないで!

 

箒で帰ろうとした私に縋り付き駄々を捏ねるオリバーは非常に滑稽だったのですが、流石の私もそこまで泣きつかれれば良心が疼いてしまいます。

ええい鬱陶しいですね。話くらい聞いてあげますから足を触るのやめてください。

 

「で、賭けとは?」

「小テストだ。1問1答形式で10題。俺が全問正解したらイレイナにはひとつ、俺の言うことを聞いてもらう」

「なるほど、そして全問正解するまで私を帰すことはないと」

「うん!」

「うんじゃねーですよなんの罰ゲームですか」

 

私に何の利もないじゃないですか。まさに百害あって一利なし。正解するまで帰れませんとか有り得ないこと抜かしやがってる暇があるのなら多少は現実的な意見を提示していただきたいものですが。

しかし、ここで暫く小テスト形式の問題を提示していなかったことも相まって、私はオリバーに小テストを提示しても良いのでは?むしろ鼻っ柱ごと折ってまた明日から勉学に向き合う精神を築き上げてしまえば良いのでは?などという悪魔的な思考に至ります。

オリバーはすぐに調子に乗りますからね。

ここで一発その伸びに伸びきった鼻を折ってしまうのは悪い考えではないでしょうと私は考えたのでした。

 

「1度きりなら受けて立ちましょう。それでダメなら大人しく諦めてください」

「‥‥‥ちぇっ、イレイナってケチだな」

「おや、そんなことを言うのなら金輪際小テストなんてしませんが」

「へ、へへっ!イレイナは可愛いなぁ!!あいや、そういうところ!そういう厳しさマシマシなところ本当に愛してるぜ!!」

 

なんという変わり身の速さ。そのプライドもへったくれもない態度は私も見習いたいくらいです。まあ、実際に行おうとは思えませんが。

「大体明日もあるのですから良いじゃないですか」と言えば「今日じゃなきゃダメなんだよ!」とか言い返してきやがりますし、本当になんなんですかこの野郎。喧嘩売ってんですか?

ともあれ、とっとと問題を提示してサクッと終わらせてしまいましょう。どうせ間違えた問題を学習せずに何度も間違える牛歩なオリバーです。今までの経験から少し薬草学等の問題を提示してしまえばすぐに間違えるでしょうし、何より今の今まで全問正解したことすらないオリバーが今日、すぐに高得点など叩き出せる訳が無いのです。

 

「では、第1問。鎮痛剤の作り方を説明してください」

 

と、そんな考えで。

今まで間違えた問題を提示し、悪戯心を内心で芽生えさせていた私は、後々その選択を心底後悔します。いえ、敢えて言うのだとすればこの頃から既に私はオリバーという人間に騙されていたのでしょう。事細かに言うのなら、もっと前──彼が私と今日のことを約束したその日から。

 

「薬草を鍋に入れることから始めるんだよな」

 

私は、見事なくらい騙されてしまっていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「して、ニケは壁の向こう側の住人に言ったのさ‥‥‥『壁の向こう側には既に多くの人が訪れた跡があった』ってな‥‥‥」

 

オリバーの声が、呆気に取られていた私の耳に解答を突きつけます。

今の解答は、問題の10題目。まさかここまで問題を当ててくると思わなかった私は、最後の最後でやけくそになってニケの冒険譚から問題を提示するという初歩的が過ぎるケアレスミスをしました。

何が間違いかというと、『ニケの冒険譚』は私がオリバーに布教用として貸した初めての本。そして、彼はその本を勉強の合間に読んでいたということ。

よりにもよって、1番に慣れ親しんでいた本の内容を提示してしまったことが私の敗因でした。

 

「‥‥‥正解、です」

 

そして、半ば諦めの面持ちで私がそう言うとオリバーは「いよっしゃあああ!!」という声とともに、右の拳を天高く突き上げます。その様は見るも腹立たしい光景でしたが、オリバーが全問正解したのは確かであり、その答えの中に難題があったのは事実。

素直に勉強に務めたオリバーを褒め、オリバーとの約束を守るのが筋を通すことに──

 

「ふはは!見たかぁ!!最後の最後でサービス問題提示しやがって!!どーせお前『10問目までは答えられませんよね、オリバー馬鹿ですし』とか思ってたんだろぉ!!プークスクス!節穴でちゅねぇ!!!」

 

成程、喧嘩売ってんですね。

この場合魔力の塊を撃ち込むか、過重力で潰すのが定番の流れなんですけど気が変わりました。ご褒美にどっちも撃ち込んでやりましょう。

目の前で絶賛鼻高のオリバーに杖を突きつけると、彼は「ぴっ!?」という言葉と共に小躍りを停止します。

 

「ちょ、まっ‥‥‥暴力はダメだろ!」

「ならその暴言にも近いそれをやめてくれませんか?」

「わ、分かった!悪かったから!ちゃんと謝るよ、ごめん!!」

 

両手を上げて降伏の意思を示したオリバー。ですが怒りは収まらなかったので魔力の塊をオリバーに当たるか当たらないかの場所に放ちました。

空気が揺れ、髪の毛を揺らす魔力の塊を肌で感じるオリバー。すると、冷や汗を垂らした彼が、少しだけ頬を赤らめて一言。

 

「‥‥‥なんか興奮しますよね」

 

戯言が聴こえたので過重力の魔法を放ちます。「ぐえええええ!?」とカエルのような鳴き声が聴こえたところで過重力を解除し、彼に問います。

 

「‥‥‥で、私に何を要求する気なんですか?」

 

よくよく考えてみると、私は彼の言うことを素直に聞いたことがありませんでした。変態的な発言をする『変態さん』であるところのオリバーですが、私に何かを命令したり、それらを強制させるなどといったことはまるでなかったように思います。胡椒の件もお母さんに言われて渋々頷きましたが、元はと言えば断るつもりでしたし。

そう、私はオリバーの言うことを聞いたことがありません。

故に、私にとって()()()()()()()というこの状況は生まれて初めての出来事であり、どこか身が震えるような感覚に至ったのです。

 

故に発した一言に、潰れていたオリバーは立ち上がり笑みで返します。ああ、相も変わらず軽薄な笑みです。これで如何わしい要求などされた日にはどうしてやろうか等と考えていると、彼は一言。

 

「付いてきて欲しいところがあるんだ」

 

はっきりとした語調で、私にそう言いました。

 

「付いてきて欲しいところ、ですか」

「ああ。けど、俺はその場所の行き先を知られたくない。だからその上でお前に目隠しを要求したいんだ」

「目隠し?」

「ああ」

 

すると、オリバーは杖を振るうことで黒の布を召喚し、それを私に手渡します。やたら質感の良い黒の布は、急拵えで用意できるほどの安価なものではなく、この布が彼の計画の周到さを示していました。

 

「目隠しが出来たら、箒で俺が目的地にまで連れていく。俺の要求はこれだ‥‥‥できるか?」

「待ってください」

「どうした、怖いか?」

「いえ、そうではなく」

 

問いたいことがいくつかあるんです。

先ず問いたいのは、その目的地に行くのにどれ程の時間がかかるのかということ。もし遅くなるようなことがあれば家族が心配しますし、そもそも今は夕方。今その目的地に行くというにはかなり無理のある予定なのではないでしょうか。

そして、何より私が問いたいのは何故目隠しなんてしなければならないのか。それだけ行き先を知られたくない場所に連れていく理由は何故なのでしょうか。

そのふたつの疑問が私の頭に浮かんだその時、オリバーは笑うことを止めます。その代わりに見せたのは、彼が今まで1度も私に見せたことがないような真顔。いつもヘラヘラして私を外見諸々を褒めていたオリバーとは思えない程に引き締まった表情。

 

──真摯な彼の表情が、鮮明に映りました。

 

「心配しなくても、お前に悪いことが起こる場所じゃないよ。念入りに準備もしたし、イレイナの家族にも了承を取った」

「了承って、何故」

「必要だったから」

 

どうやら、私の知らないところで複数の何かが着々と進められていたようです。あまつさえ私の両親にさえ了解を取るなどというオリバーらしからぬ用意周到なその行動に開いた口を閉じることができずにいると、そんな私を笑うように真剣な表情をしていたオリバーが笑みを見せました。

 

「俺を燃えさせた報いはしっかり受けてもらうぜ、イレイナさんよ」

 

そして、その笑みは今まで彼が見せたことの無いくらいの()()()()()だったのです。

 

 

 

 

 

 

1章終了後の閑話(短編)

  • オリバーとイレイナさんの話
  • 意表を突いてシーラ先生
  • ヴィクトリカさんとオリバーくん
  • つべこべ言わず全部書け
  • 早く2章やれ

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