どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
かしこく、可愛く、つよつよな魔法使い。
この主人公なしで物語は成立しませんよね。アンケート取るまでもなかった(絶望)。
魔法の練習の一環として、俺とイレイナが死なない程度の魔法を撃ち合い雌雄を決するという行為は既に何度も行っていることであり、日常でもある。
それは、俺の12歳の誕生日の日も例外ではなく──俺とイレイナは今日も今日とて勉強をしたり、今のように魔法を撃ち合ったり等といったことをして、魔法の技量や経験を高めていた。
魔法を撃ち込むイレイナの表情は真剣そのものであり、俺の気持ちすら真剣にさせてしまう程の気概が溢れ出ている。無論、こうしてバカみたいなことを考えて悦に浸っている俺ではあるがその実身体は至極真面目に働いている。
今はイレイナの魔法を防ぐ為に、絶賛防御魔法発動中である。
「ていっ」
イレイナが振るった魔力の塊が、俺の目の前に迫る。1度食らってしまえば暫くは立てないであろう一撃、それを食らってしまえば俺の『敗北』は確定するであろう。
流石の俺も3連敗はNGだ。前世でスポーツの応援をしていた時も好きなチームが3タテ食らった時は死ぬ程悔しくて、恥ずかしかった。
3連敗というものに恨みでもあったのだろう。俺は目の前に迫る敗北に抗うかのように、魔力の塊を幾度となく防御魔法で弾き返す。当然、何度も防御魔法を使っていれば疲労は溜まる上に心が焦れるものの、それは攻撃しているイレイナも変わらない。
攻撃魔法を連発するイレイナとて人間。そんな彼女にもいずれ『隙』ができる。亀のように固い守備と精神力を以て、俺は彼女の様子をじっと伺っていた。
「ッ‥‥‥」
そして、防壁により攻めあぐねたイレイナの一瞬の隙を見逃さない。俺は直ぐに防壁を解除すると、指を弾き箒を召喚。そしてその箒を一直線に、イレイナに向かって投じる。
なんでもない、一直線に投じられた箒。
そんな箒がイレイナに向かっていく様を見送り、俺は箒に向かって杖を振るった。
「任せたぜ、
「──えっ」
俺がそう叫んだ瞬間、箒が変化して俺と瓜二つの姿をしたほうきくんが、唖然としているイレイナを通り過ぎ、彼女の杖を奪い取る。
そこまで経過したところでイレイナも、現状を認識したのか、ほうきくんが奪い取った己の杖を奪おうとしたものの、所詮は非力な女の子。杖を奪おうと悪戦苦闘しているイレイナの背後に近付くと。
「返してくださ──あうっ」
俺はイレイナの頭めがけて軽くチョップを行ったのだった。
その一撃は、どちらかと言えば軽いものではあったのだがイレイナにとっては多少痛かったらしく、手で頭を抑えてじとっと睨みつける。
全く、怒ったイレイナは最高だぜ!と心の中の俺が叫ぶが、そんなことを言った日にはもれなくイレイナにボコボコにされるであろう。
妄言は胸に秘め、俺は強かに笑ってみせた。
「俺の勝ちだな、イレイナ」
「卑怯ですよ、オリバーは。ひとりじゃ勝てないからって2人がかりなんて最低です。あなたにプライドはないんですか」
「あるよ。だから真面目にやってんだろ」
「‥‥‥それはそうですけど」
と、まあ冗談を脳内で繰り広げていた俺だが、これに関しては本音だ。
あの約束から本気で魔法使いを目指しているのだから確りと実力を身につけなければならない。そんな俺にとっては、どんな訓練だって不誠実にやる訳にはいかないのだ。
スタイルは卑怯で邪道で外道、けれども正確に魔法を打ち据える。それが俺のやり方なんだぜ、うっへっへ‥‥‥と内心で下卑た笑い声を上げていると、「そういえば」と何かを思い出したかのように言ったイレイナが俺を見据える。
はて、どうしたのだろうか──
「今日、誕生日でしたよね?」
「あれ?俺、イレイナに誕生日のこと話したっけ‥‥‥って、もしかしてそこまで俺のことを考えてくれたのか──」
「何気持ち悪いこと言ってんですかそんな訳ないでしょう」
エグい。
いや、まあ言った俺も悪いのでそこは置いといて。
「確かに今日は俺の誕生日だな。何処で知ったのかは知らないが、事実だ」
「‥‥‥そう、ですよね」
「けど、それがどうした?」
確かに今日は俺の誕生日ではあるのだが、イレイナには何かを強請った覚えはないし、予定に付いてきてくれとも言っていない。
つまり、今日の誕生日に際してイレイナが何かをする必要というのは全くないのだ。
それにも関わらず渋い顔をしたイレイナさん。はて、どうしたのだろうか‥‥‥と頭を悩ませていると、渋い表情のままに彼女が続ける。
「‥‥‥うっかりしてました」
「え、何が」
「今日がオリバーの誕生日だという事に気付いたのが、昨日の昼だったんです。本来なら10歳の時の意趣返しを盛大に殺ってやろうと思ったんですが」
「あの、『やる』の書き分け間違えてない?」
「さて、なんのことでしょう」
と、目を逸らして冷や汗をたらりと流すイレイナさん。いやまあ、ヴィクトリカさんの表情も大概だけど、イレイナさんの表情も分かりやすいですよね。
ムカついている時は口元をヒクヒクさせるし、逆に照れたり誤魔化したりする時は目を逸らすし。
今回も例に漏れず目を逸らしたイレイナさん。
成程、貴様は誕生日で俺を殺す気だったのか。どんな誕生日パーティ企画しとんねん。
「いや、まあ意趣返ししてくれるのなら嬉しいけど焦る必要はないんじゃないかな。俺、そんなことでイレイナから離れたりする気ないし‥‥‥ほら、時間をかければかけるほど意趣返しの威力も上がるじゃない」
「まあ、それはそうですけど」
「それに俺まだ生きてたいし」
「何を言っているんですか?」
いや、生存本能的な。
事故の後に心臓発作で死亡とか嫌だし。
「とにかく期待して待ってるよ‥‥‥あ、けど痛いことはしないでね。俺、イレイナの魔力の塊受ける被虐趣味は守備範囲外だから」
「あの、オリバーは私を何だと思ってるんですか」
攻めタイプ。
いやまあ、それも可愛いから別に問題はないのだが。
「友人の誕生日位普通に祝いますし、いくらオリバーの趣味嗜好が異常だからといってそれに合わせることもしません。私はノーマルなので」
「え、けど土下座されたら興奮す──むげっほ!!げっほ!!!」
「何か言いました?」
危うくとんでもないことを口に出しそうになったところで、わざと咳き込んで言葉を無理矢理飲み込む。どうやらイレイナは今の言葉を咀嚼するには至らなかったようで小さくため息を吐くと、俺に言う。
「なので
「えっと、それはつまり?」
「‥‥‥誕生日に付き物なのは、プレゼントですよね」
そして、不敵に笑って見せたイレイナは何も無いところから1つ。綺麗にラッピングされた小さな長方形のプレゼントボックスを召喚すると、それを俺に押し付けた。
「どうぞ」
「どうぞって‥‥‥これを俺に?」
「他に誰がこの箱を受け取るんですか」
押し付けたプレゼントから手を離しそう言ったイレイナの顔は伏せられており、どういう表情をしているのかは分からない。
心情も同様である。基本俺はイレイナの心情を顔から読んだりしたりしているのだが、今回は顔が見えないためこの場を面白がって「ねえ、今どんな気持ち?どんな気持ちか教えてよー」と茶化すことも出来ない。
ううむ。この状況、イレイナの表情がカギだろう。
「‥‥‥もしかして、意趣返し?」
そう言って、イレイナの顔を覗き込む。できることなら早い内にイレイナの表情を確認し、それ相応の振る舞いを行いたかったのだ。
仮に今、俯いているイレイナが「実にお馬鹿ですねぇ、くすくす」的な感じに笑っているようなら、俺は今すぐイレイナに反旗を翻し、置かれた立場を分からせてやらねばならない。勿論、お礼は言うが。
その一方で、真面目な表情をしているのなら真摯にイレイナに向き合う必要があるだろうし、茶化すなんてことは論外だ。そういった振る舞いの分別を行うためにもイレイナが今、どんな表情をしているのかは確認する必要があった。
すると、イレイナが俯いていた顔を上げて年齢相応のあどけない──されど将来的に美人になるであろう間違いなしの顔をこちらに向ける。
その表情は笑ってもなく、怒ってもいない。中途半端とでも言えば良いのか。まあ、そんな感じ。
いやしかし、何かを言おうとしていたのは伝わる。口を動かし「あ‥‥‥」やら「う‥‥‥」と呻くイレイナの口は何かを言いたそうに、震えているのだから。
おいおい、可愛いかよ。こんなにあーうー言ってるイレイナさんは悪魔に取り憑かれたフリしてる時位しか見れねえぞ。なんてレアな光景見れてんだ、俺ァ‥‥‥!!
「意趣返し、なのか?」
と、まあ戯言もそこそこに。
もしかしたらタイミングを逃したのかもしれないと思い立った俺は、イレイナにもう一度尋ねて瑠璃色の瞳をちょっぴり生暖かい面持ちで眺めてみる。
すると、俺を見つめていたイレイナさんはキョロキョロと視線を右往左往させ、もう一度俺を見る。
そして──
「‥‥‥意趣返しです」
一言、そう言って『ふいっ』と視線を逸らした。
あ、これガチの奴だ。
視線こそ逸らしているものの冷や汗や渋い顔のひとつもないイレイナの表情に、思わず釘付けになってしまったのも束の間。「こっち見ないでください」と睨みつけられ、俺は思わず視線をイレイナから空へと移す。
呆れるほどの快晴が、目の前に映った。
「‥‥‥そ、そうか。まさかイレイナがこんな意趣返しをしてくれるとは思わなかったな」
「意外でしたか」
「ああ。イレイナと言えば貰えるものはしっかり貰うが返すことに関してはかなりズボラな印象があったから──いひゃい!ほほをひっはらないれ!!」
「にやけながらほざく生意気な口はここですか、えぇ?」
途端、眉間に皺を寄せたブチ切れイレイナさんが俺の頬を両手で抓り、それと同時に自分の顔が意図せずに笑ってしまっていることに気が付く。
やばい、ひょっとして凄いアホ面晒してしまったか──なんて思いながら必死に笑みを抑えようとするものの、上手く表情をコントロールすることができない。
ち、畜生‥‥‥イレイナさんの意趣返しの威力がえげつねぇ‥‥‥!!後、抓り攻撃もえげつねぇ!!と半ば興奮気味にイレイナの抓り攻撃を受け入れていると、ようやく解放される。
その代わりと言っては何だが、ジト目のイレイナさんが俺を睨みつけている。恐らく内心で『この憎たらしいクソ野郎、どうしてくれましょうか』とか考えているんだろうけど、そんな表情したってイレイナが可愛いのは変わらない。
よって、クソ野郎はクソ野郎のままなのです。うっひゃっひゃっ。
「全く以て失礼ですね。少しは反省してください」
「ごめんごめん。つい、嬉しくて‥‥‥ありがとな」
「‥‥‥顔、緩みまくってますよ。本当に大丈夫ですか?」
「う、うむ‥‥‥大丈夫──ありがとな」
「しかも同じ言葉言ってますし。気は確かですか」
「‥‥‥ご、語彙力が。く、くそっ!お前は一体どれだけのものを殺したら気が済むんだ!語彙力に心!今のプレゼントで2人が殺された──」
「あ、これ正気じゃないですね」
失礼なことを言うな。
俺はいつだって魔女の旅々が大好きで、幼馴染に出会えたことを幸運に思っている変態魔道士だ。今更俺の変態っぷりを異常のように言うのはやめてくれ。照れるだろ。
──と、そこまで考えたところで、ふと俺は先程からこちらを睨みつける幼馴染の耳がやけに紅潮していることに気がつく。そして、目を凝らして見てみると何故だか頬も赤く、目は充血しており、更にはちょっとふらついているようにも見える。
いや、耳と頬までなら「照れてるんですか、随分と可愛らしいよわよわメンタルでちゅね」とか茶化すことができたけど、流石にこれは洒落にならないだろ。
この子、普通に体調崩してね?
「イレイナ。お前大丈夫か?」
「え」
「いや、顔っていうか‥‥‥お前昨日何時に寝たよ」
そう言って、イレイナの顔を覗き込むと彼女は何かに気が付いたかのように目を見開き、俺から1歩分距離を置く。それは、自分の失態を見抜かれないように振る舞う無理のある行為に見えて──その瞬間、何となく俺の頭の中でピースが嵌ったような感覚に陥る。
誕生日プレゼント、体調不良、紅潮。
もしやお主。
「緊張して夜寝付けなかったとか‥‥‥」
「何言ってるんですかそんなわけないでしょう巫山戯るのも大概にしてください屠りますよ」
「俺は一体お前に何をしたと言うのか」
強いて言うなら心配しただけだ。
いやしかし、それすら尋ねるのはタブーだったのか。俺だって変態ではあるが親友が熱っぽい所を放っておく訳にはいかないのだ。そこは分かって欲しいところではあるのだが。
「‥‥‥兎に角、なんでもないです。今日は疲れたので帰りますね」
「お、おー‥‥‥気をつけて」
まあ、見た感じ歩けてはいるし。先程まで魔法もバシバシ撃ってたからそこまで酷くはないだろう。
帰ると宣ったイレイナに声をかけて彼女の大事を祈っていると、踵を返したイレイナが何かを思い出したかのように俺に向き直る。
「ああ、最後に一言だけ」
そして、イレイナはアホ毛を揺らして俺に笑いかける。それは、何時ぞやに見た優しくて、暖かくて、誰かを慮る時に見せるような年相応の少女の笑み。
そんな笑みから織り成す彼女の言葉は、その笑みが示すものと同じ意味を持つ言葉なのだろうと容易に想像できて。
「お誕生日おめでとうございます、オリバー」
ああ、確かにこれは立派な意趣返しだなって。
そう思えた。
「イレイナに謝る前に、あの子の顔をよく思い出してみて。何か気付かなかった?」
「顔‥‥‥『ふいっ』てそっぽ向いてて可愛かったです」
「それなのに謝るの?」
「うぇい」
「‥‥‥やべーのは母親似の鈍感力ってわけね」
「‥‥‥え?」
おまけ。
【挿絵表示】
1章終了後の閑話(短編)
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オリバーとイレイナさんの話
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意表を突いてシーラ先生
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ヴィクトリカさんとオリバーくん
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つべこべ言わず全部書け
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早く2章やれ