どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
11話 「14歳の、私です」
私にとって魔法というものは夢であり、約束でもあります。
ニケの冒険譚に憧れ、私自身もそのような魔法使いとなり様々な場所を旅したいと自らの両親に打ち明けたその日から、魔女になろうと魔法を懸命に習いました。
その修練の過程で家に火をつけてしまったり、大木を切り裂く等といった環境破壊をしてしまったという黒い歴史こそあれど、その記憶は思い出深いものであり、その軌跡を後悔したことは1度もありません。私にとっての魔法は魔女になって旅をするという夢に繋がる──そんなものです。
そして、山吹色の髪をした少年との約束も私自身の魔法を語る上では外せない出来事と言えるでしょう。
幼い頃から友人として、親友としてそれ相応の付き合いをしてきたその少年の名前をオリバーといい、そんな彼と私はとある確約をしました。
それは、お互いの未来の話。
私達が将来魔法使いとして、それぞれの道を歩んでいく道程の中での誓い。いつか何処かで再会して、話をしようという内容のものであり、その確約を私は胸に秘め、確約が確約である為に魔女としての道を邁進していくのです。
夢でもあり、約束でもある魔女というひとつの道。その道には困難も勿論存在することでしょう。
しかし、私には先程の確約から織り成す決意と、1人の親友がいます。その2つがあれば、どんな困難さえ乗り越えていくことができます──と考えていた私は、正直に言うと浮かれてました。もしかすると表情筋が緩み、有り得ない位ににやけてしまっているかもしれません。
まあ、大丈夫でしょう。私可愛いですし。笑顔が1番とオリバーからも言われていますし。
「‥‥‥」
さて、それはそうとして。
将来を左右する試験中にも関わらず絵空事を考えてしまうほどの余裕と実力を兼ね備え、相対する敵を持ち前の才覚により幾度となく華麗に掃討する魔道士とは一体誰か。
そう、私です。
あ、半分は冗談ですよ。
「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
「誰が死にますか──ていっ」
「ひでぶっ!?」
筆記試験を合格した中では最年少となった私を自身の性差のアピールとして利用しようと考えている魔道士の方は非常に多く、箒でのらりくらりと戦況を見つめていた私を、たくさんの魔道士の方が攻撃してきます。
しかし、相手は年上と言えど私と同じ魔道士。凝った作戦もなければ、簡単で単純な魔法を馬鹿正直に打ち据えるのみ。年上というのはハンデにすらならないということを再認識した私は、迫り来る雷撃やら魔力の塊やらを躱し、お返しと言わんばかりにいくつかの箒に乗った魔道士さん達を攻撃魔法で落箒させます。
「うげぇ」やら「ひでぶっ」やらの情けない声が、私をぞくぞくさせました。
というか誰ですか今『死ね』って言ったやつ。魔術試験は殺さない程度の魔法を行使することが前提なのですが、ルールちゃんと見てました?
「‥‥‥全く、拍子抜けですね」
驚いたことと言えば、魔術試験という局面に立たされた人間の醜さ位のものでした。弱いと見たものを集中的に狙い、やられれば「反則だ、何かおかしな手を使ったに違いない」などと喚き散らす人達。自分の実力の無さを棚に上げ、弁明するのはさぞ気分が良いのでしょうが、その言葉に私の存在を巻き込むのは心底止めて頂きたいですね。気分が悪くなります、業腹です。
何なら『あなたが弱かったのがいけないのでしょう、あぁん?』と声を大にして言ってやりたい気分です。せめてもう少し心身共に強くなり、頭を使った作戦を講じてから、文句も苦言も呈したらどうですか。
仮の話をするとしましょう。
例えば、私の親友なら他の方よりも凝った作戦を講じるでしょうし、何より強いです。
空中離脱中に箒を『ほうきくん』なるものに変化させて攻撃したり、実験に実験を重ねた自分なりの攻撃魔法を使ったりといった風に、持ち前の精度の高さを備えた機転の利いた魔法を打ち据えることで私を窮地へと誘います。
彼はそれができる人間です。私の幼馴染はどれだけ負けても私の努力を認め、その数倍の努力で私を負かすメンタルつよつよな魔道士なのですから。
「待ちなさいっ!」
「‥‥‥はい?」
そんなことを考えつつ、不意にオリバーと1戦を交えたい気分に至りますが今は試験中。ここはしっかりと勝ち残り、勝利も試験合格ももぎ取ってしまいましょう──と、気を引き締め直していると、不意に箒に乗った魔道士さんがこちらを不敵な笑みで見つめていらっしゃる姿が見えました。
威勢よく声を挙げた魔道士さんはいかにも高貴なオーラが漂ってらっしゃいます。いいですね、縦ロール。ロールパンが食べたくなってきました。
「漸く2人きりになれたわね、小娘」
「あの、どこかでお会いしました?」
「会ったわよ!学校で!!あんたの卑怯な攻め手でボコボコにされた魔道士よッ!!」
はあ、そんな方もいましたっけ。
私の学校での数年は思い返せばオリバーが隣にいて、馬鹿げた発言をしたオリバーを罵倒していた記憶位しかないのですが。
年長さんでしょうか、全く覚えてませんね。
「‥‥‥して、その魔道士さんが一体何用で?」
「あら、周りを見て気付かない?この魔術試験は、終盤‥‥‥私とあなたの一騎打ちとなったのよ」
なるほど、道理で後方確認も怠ってぺちゃくちゃ喋ってる訳ですね。
私を見て「おーっほっほ」と嘲笑した縦ロールさんは、相も変わらず身振り手振りで私に対して言葉を紡ぎます。
「あなたのことは昔から生意気だと思っていたのよ。口の利き方も、振る舞いも、男の子といつも喋ってる姿も、全てにおいて腹立たしかったわ」
「生意気、ですか」
「ええ、本当に生意気。挙句の果てには
「プライドですか」
「問いかける必要も無いわね。あなたには無縁のものだったかしら」
ふむふむ。
まあ、私の舐め腐った性格に関して物申すまでは良いでしょう。私自身に内在する性格が生意気で腐っていることは他ならぬ私が理解しています。直す気なんて毛頭ありませんが、指摘されるのは致し方がないことです。
それに、私の性格なんてこんな人に好き勝手言われようが構いません。こんな性格でも好きと言ってくれる人はいるのですから、別に変える必要もありませんし。
しかし、後者は些か許容し難い一言ですね。
オリバーがダサいだなんてとんでもない。彼は客観的に見ても普通に二枚目ですし、そもそもオリバーの変態的思考の欠片も味わうことのなかったであろう関係性の浅い縦ロールさんには彼を馬鹿にする権利も資格もありません。
碌に見てすらいない人の性格を風の噂や外面だけで推し量り、その人のいない場所で馬鹿にする行為は滑稽を通り越して哀れです。聞いている人にも悪影響しか及ぼさない非建設的な縦ロールさんの行為に、私のフラストレーションはふつふつと滾っていきます。
とはいえ、ここは見逃しましょう。私情を持ち込み彼女をギタギタのズタズタにするのは容易いですが、仮にオリバーがここに居たとして、彼はその報復を望むでしょうか。
答えは否です。彼は報復よりも私を困惑させることを快楽とする変態さんです。彼女の暴言など見向きもしないでしょうし、気にも留めません。オリバーは何時でも心優しい変態さんなのです。
それに、彼の良さや素晴らしさ、格好良さは他ならぬ私がしっかりと分かっているのですから、ここは心を穏やかにして──
「まあ、あなたもあんな落ちこぼれと幼馴染やってるなんて酷よねぇ」
‥‥‥和解を。
「もしかしてあなたも満更じゃなかったりして。後ろをついてくる落ちこぼれと比較して、快楽を得る気分はさぞ愉快なのでしょうね」
あ、無理ですね。
この人間の形をしたクソ野郎とは一生和解できないことを悟りました。
『言いたい奴には言わせておけば良い、そんなことよりもイレイナって本当に可愛いよね!』とはいつぞやのオリバーが言っていた言葉ですが、いくら私でも言わせておいたままにはできない言葉があります。
親友の名誉を傷つけられて黙ったままの幼馴染がどこにいましょうか。
何時だって私は、真摯に向き合ってくれている親友には、それと同じくらい真摯に向き合いたいのです。
「‥‥‥落ちこぼれですと?」
「ええ落ちこぼれよ。あなたの後ろを子犬のように付いていく自立のできない甘ちゃんじゃない」
「‥‥‥甘ちゃん、ですか」
故に、予定は変わりました。
取り敢えずこのクソ野郎はぶっ殺しましょう。
確かに殺す程の魔法を撃ってはいけないとされていますが、
私は杖を握り、その杖の先を縦ロールさんへと向けます。
握り締めた掌は、常時より震えているような──そんな気がしました。
「‥‥‥オリバーを馬鹿にしたことや、この状況下で戯言を吐いていることやら色々言いたいことはありますが、良いんですか?」
「‥‥‥へ」
「私、隙を見せる人の相手は得意なんですよ」
瞬間、彼女は右に左に、前から後ろから死なない程度の威力を纏った魔力の塊に次々と打ちつけられます。勝負は箒から落ちることで決しますが、1度これと決めた私が容易くそれを許すはずもありません。
前後左右からの攻撃を立て続けに行い続け、縦ロールさんを攻撃します。
「な、何すんのよ!!あんたまた不意打ち──」
えい。
「ぎゃっ!?も、もう怒ったわよ!!私の一撃を喰らいなさ──」
とりゃ。
「なっ‥‥‥なに、するの‥‥‥」
おりゃ。
「も、も‥‥‥ゆる、して‥‥‥」
と、1分もしないうちに魔力の塊を立て続けに喰らい続けた縦ロールさんは目尻に涙を溜め、軽く嗚咽を漏らし始めました。
なんですかあなたメンタルよわよわですか。いやしかし、まだまだ続きますよ──と、杖を振るったところで下にいた試験官さんから制止の一声がかけられます、ちくしょう。
「す、ストップ!試験は終わり!!」
「え、どうしてですか?」
「その子泣いてる!グロッキーよ!!」
と、ここで改めて縦ロールさんの様子をしっかりと見ます。縦ロールさんは目尻に涙を溜めるどころか、ぷかぷか浮かせた箒にしがみつき「下級生マジ怖い」と呟いています。
その様子は完全に戦意を喪失しているようで──ああ、これは納得ですねと軽く頷き、私は下にいる試験官さんに尋ねます。
「ということは私の勝ちで良いんですか?」
「うん、あなた合格!念願の魔女見習い!!だから降りてきて!!お願いだからこれ以上攻撃するのやめてあげて!!」
と、まあそんな風に言質は取れましたので箒を降下させ、華麗に着地。ニコリと試験官さんに笑みを送ると最後に私は一言。
「私、強かったですか?」
「う、うん!つよつよだよ!!だからこれからも健全に!くれぐれも他の子は泣かさないように精進してください!!いや、マジで健全にお願いします!!」
そして、「ひっ!」と断末魔のような声を上げた試験官さんは慌てたようにそう言って、私にくれぐれも大人気ない魔法使いにはならないでください的な講釈を行った後に、私を家へと帰したのでした。
え、泣かすのは健全じゃない?知りませんね。
私は目標のためならルールの穴すらサーベルで突き刺す賢い魔道士さんなのですよ。
〇
そして、結果発表の日まではなんの緊張感もなく悠々自適に時を過ごしたり、試験中にふと思い立ったオリバーとの対決に身を委ねたりしているとあっという間に結果発表の日がやって来ました。
結果として私は桔梗のコサージュを胸につけることとなります。
つまり、合格です。試験官さんの言うことは嘘ではなかったのでした。いやまあ、元より疑ってもいなかったのですけど。
そして、その後私を出迎えてくれたのは両親。最年少での合格と、純粋な努力を認めた上での賞賛は存外に嬉しいものであり、そんな両親の言葉に──
「はい、ありがとうございます」
私は笑顔でそう言って、合格の喜びを噛み締めるのでした。
すると、私の笑顔を見たお父さんが何やらぶつぶつ言い出し泣き始め、お母さんは「あらまぁ」だなんて言いながらお父さんの肩を優しく擦ってあげます。
なんですか、涙腺よわよわですか。まだ私は家出もしませんし、魔女にもなれていないんですよ。泣くの早すぎでしょう。
「まだイレイナは家出しませんよ?」
「だ、だって‥‥‥娘の努力が報われたんだぞ!?あんなに頑張って、努力して‥‥‥家も燃やされかけたけど、それでも諦めないで‥‥‥!」
「あの話はタブーよ。イレイナも反省してるから」
おぅおぅ、存外に照れるようなことを言ってくれるじゃありませんか。しかし自宅のボヤ騒ぎに関しては言ってやらないでください。
あれは私の中でも1.2位を争う黒歴史です。あれでお母さんにどれだけ怒られ、その後に笑われたことか。
考えるだけで悪寒がします。
「で、イレイナ。魔女見習いになった気分はどう?」
「そうですね‥‥‥まあ、夢に近付いたと言うのと‥‥‥確約がありますから」
「確約?」
「はい」
私がそう言うと、先程まで涙腺を緩めていたお父さんが不意に顔を強ばらせ、涙を袖で拭った後に私の両肩を掴み、言います。
「か、確約というのは‥‥‥まさかオリバー君との事かい‥‥‥!?」
「え。あ、はい」
言ってましたっけ。
まあ、別に良いですよね。その通りですから。
「オリバーが頑張っているのに私が停滞して、不貞腐れて、遅れてしまう訳にはいきません。私はこれからも自分の夢に向かって前向きに頑張るだけです」
「‥‥‥あ、あぁ」
「オリバーに笑われるなんて死んでも嫌ですから」と最後にそう言った私は「ああ、娘が‥‥‥どんどん大人になっていく‥‥‥」なんて言葉と同時にお父さんが崩れ落ちる様を見届けます。
コサージュは私を大人に見せてしまう力も持っていたのでしょう。愕然と膝を落とすお父さんに、成長したという優越感を少し得ることが出来ました。
その一方で、このような気持ちになれたのは私や桔梗のコサージュだけの力ではないということも理解しています。
そして、その中には家族の他にもオリバーという人間がいるということもしっかりと分かっています。
彼が存在しなければ、私は試験での手応えの無さに夢へと近付いたという実感や嬉しさに対しての乏しさを感じて荒んでしまっていたのかもしれません。
共に魔法の力量を高め合い、同じ道の先にある『確約』に向かって歩んでくれている竹馬の友が、私に限りない幸福感と、実感を与えてくれていたのです。
と、ここで私はお母さんがクスリと笑みを浮かべて私自身を見つめていることに気が付きます。
そして、そんな私の視線に気がついたのかお母さんは「ごめんね」と言い、続けました。
「イレイナ、気付いてる?」
「え」
「今のあなた、とっても楽しそうな表情してる」
お母さんのそんな言葉に自分の表情が異常な位緩んでいることに気が付き、自身の顔をぺたぺたと触ります。そして、その事実に気が付いた私は自身がその表情をしていたことにひどく驚きます。
それでも私は、今までの時間によって構築されたその表情を認め、一言。
「当然です」
笑顔のままに、両親に向かってそう言ったのでした。
暖かな家庭に生まれ、たくさんの愛情を貰い、ニケの冒険譚に夢を見た少女は、すくすくと成長し魔女になるという夢への階段を順調に歩んでいます。
しかし、途中で少女は1人の少年に出会うことで魔女になることと同じくらいの確約を胸に抱き、更に快調にその階段を上っていくこととなります。
そして、ようやくひとつの区切りに辿り着いた灰髪の少女は山吹色の髪をした少年と共に今後も未来に向かって歩み続けるのです。
その少女こそ、未来に向かって足取り軽やかに、されどいずれ来るであろう壁にも負けないという確かな決意と気概を持った
14歳になった、私です。
2章終了後の3章は……?
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魔法統括協会編!(全15話完結予定)
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2人旅編(全30~40話完結予定)
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両方同時並行(がんばる)
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アムネシア編