どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
トラックに撥ねられた時、1番最初に考えたことは『転生したらアムネシアだった件』を完結にまで導くことの出来なかったことによる後悔であった。
本来ならば『スマホ見ながら歩いてごめんなさい』とか『母さん父さんごめんなさい』等の自身の行動に対する謝罪が頭に思い浮かぶ訳なのだが、不思議なことにあの時の俺は違った。
端的に換言すると頭が狂っていたのだ。創作脳に駆られ、浮かんだアイデアをスマホのメモ帳にまとめていたことも災いしたのか、あの時の俺は二次創作のことばかりを考えてしまっていたのだ。
そして、そんな馬鹿げた思考はトラックにぶつかっても変わらず。
撥ねられ、空中に浮かぶこと数秒で考えたのは『アムネシアさんの可愛さの無限大の可能性』について。
地面に着陸し、一回転した時に考えたのは『イレイナさんとアムネシアさんがくっつく可能性』について。
漸く身体が弾み終わり、血まみれで倒れている時に走馬灯代わりで思い浮かんだのは『イレイナさんのハーレムエンド二次創作が投稿される可能性』について。
兎にも角にも、ここ1年でハマってしまった小説『魔女の旅々』のことばかりを考えてしまっていたオタクの俺は、走馬灯すらも『魔女の旅々』に毒されてしまっていたのだった。
「‥‥‥あーあ」
どうせなら『転生したらアムネシアだった件』の素晴らしさを少しでもこの世に広めたかった。
その二次創作のストーリー展開が頭の中だけでしか展開されなかったことを心残りとして、俺は出血多量により生命を引き取った──
「‥‥‥ばぶ」
んで、気が付いたら意識を取り戻しており、あれよこれよという間に母さん的な人にオムツを取り替えられていた『見た目は子ども、頭脳は大人』な赤ちゃんは誰だろうか。
そう、俺である。
幸か不幸か、俺なのである。
凡そ日常生活で使ったら痛いヤツ認定されてしまいそうな人気作品の名台詞を頭の中で展開するに留め、俺は改めて現状を確認する。
木造建築で建てられたその家は、モデルハウス等の類で見た事があるのだが俺の住んでいた場所は都内であり、近くに木造建築の病院や家は少ない。
薬品の匂いなどもしないことから、この場所が『俺の知らない場所』であるということが分かる。
そして、何よりも注目しなければならないのは目の前で笑顔を見せる2人の女性だ。
1人は知らん。多分、髪色や諸々の行動を含めると母さんだということが分かる。何より、生後数ヶ月の間に俺のオムツを交換してくれていたのはこの人だ。この身体の──つまり、俺の母さんはこの人で間違いないだろう。
そして、もう1人の女性は俺も
「あらあら、泣きそうね‥‥‥よしよーし。怖くないわよー‥‥‥」
ヴィクトリカさん。
そう、イレイナママと呼ばれていた彼女がこんなところにいるということ。そして、何故か母さんと一緒になって俺をあやしているということこそ、注目しなければならないことなのだ!
「ばぶ!ばぶ!ばぶ!」
「よしよーし‥‥‥あれ、もしかして興奮してる?」
「あうあうあー!!」
ああ、言っておくが俺のこれは決して『赤ちゃんプレイ』を要求している訳ではない。
かつてヴィクトリカさんにバブみを感じたのは確かではあるのだが、常識的に考えて意図的に『赤ちゃんプレイ』を行うのは不味い。俺のこれは『何でヴィクトリカさんがこんなところにいるの!?』と驚いてしまっているだけだ。
合法だ。決して意図的にやっている訳では無いんだ。
それでも、赤子が興奮していることに対して思うところはあるのか、もしくは娘の世話をしていた経験からか、ヴィクトリカさんはぎゃんぎゃん騒ぐ俺を落ち着かせようと赤子の俺の身体を縦抱きにして、背中を軽く『とんとん』と叩く。
すると、俺の腹から何かがせり上がってくる感覚に襲われた──
「げっぷ」
「あらやっぱり。いっぱいミルク飲んでたものねー」
あ、俺ちょっと前にミルク沢山飲んでたものね。
それでヴィクトリカさんが気にしてくれて、背中をぽんぽん叩いてくれたって訳なのね。
‥‥‥うん、下衆な考えしてごめんなさい。こんな赤子でごめんなさい。生きててごめんなさい。
「あら、やっぱり緊張してるのかしら。やっぱりママにぎゅーってしてもらう方が良かった?」
「あう」
ヴィクトリカさんの方が良いです。
※
何はともあれ、この世界が『ヴィクトリカさんのいる世界』だということで何となく全貌が見えてきた。
あれだ、この世界は『魔女の旅々』の世界だ。
付け足すのなら、これから魔女を志すであろうイレイナさんが旅を始め、日記を書き始める前日譚のようなもの。これからニケの冒険譚に触れるであろう子どもイレイナさんはその物語に書かれている世界中の美しい景色に惹かれ、ニケさんのように世界中を旅したいと思い、魔女になるための努力をすることとなる──そんなお話だ。
そして、そんなお話に迷い込んだのがイレイナさんの家の近所の家に出来た子ども。つまり俺って訳だ。名前は魔女の旅々では聞いたことの無い名前、そして男。詰まるところ、俺はオリキャラとかいう存在として『魔女の旅々』の世界に生まれてしまったのだ。
なるほどね、うん。
うん‥‥‥
──オリキャラに転生してどうすんねん!!
ここはせめて誰かに憑依転生するってのがお約束みたいなもんでしょうが!!
オリキャラってあれだろ!?巷で噂の俺TUEEEEって奴だろ!?過去に暗い何かを持っていたりとか、冷たくてクールなキャラだったりとか、そういう系のだろ!?
別にオリキャラ自体は否定しないさ!けどね、俺が二次創作好きだった理由分かる!?『主要キャラと主要キャラのイチャイチャ』が見たかったからやってたの!決してオリ主君と主要キャラのイチャイチャが見たかったから二次創作やってたわけじゃないんだよ!!それにも関わらず俺の立場がオリキャラってどういうことっすか!新手の虐めですか!?
仮に転生さすなら100歩譲って先ずは俺の意思と何になりたいかを聴いてくれよ!何俺の意思も聞かないで勝手に異世界転生させとんねん!こんなことなら天国か地獄で寝てた方がマシだわ!!
それに、あの魔女の旅々だぞ!?恋愛描写といえばシスコンに、女の子同士の純愛模様!可愛い娘は皆百合っ子!薔薇は咲かないくせに百合だけは盛大に咲き誇る!!
ないよ、主要キャラとのイチャイチャの可能性ないよォ!!
だってこの世界の主要キャラほぼ百合だよ!?現地妻量産機のイレイナ先生を取り巻く百合ラブストーリーだよ!?サヤさんも、アムネシアさんも、ミナさんも、アヴィリアさんも好きなの女の人、もしくはシスコンだよっ!
だから、せめて誰かに憑依転生して百合の一欠片でも楽しめたらって思っていたのに‥‥‥
なんだい神様、俺は一般人になってエミルくんよりもつまらない生活しろってか?それともこれから産まれてくるかも分からない妹の為に筋肉鍛えろってか?それとも巻き込まれてジャバリエに殺されろってか!?
ざっけんな馬鹿!こんな世界こっちから願い下げだ!何で俺をオリキャラとして『The Journey of Elaina 』に巻き込んだ!どうせなら俺をアムネシアに転生させてくれれば良かった!!
記憶喪失の対策法はこの頭ん中に入ってんだ!
4巻原作とオリジナルの作戦であのイモータル気取りのクソババアを牢獄にぶち込む算段がついてたんだ!
‥‥‥頼むから『転生したらアムネシアだった件』やらせてくれよぉ、と嘆いた所で現状は変わらない。俺の目の前に映るのは母さんと父さん。たまにヴィクトリカさんが顔を覗かせ、溜まったものを解放してくれる(ゲップ)のみ。願いを込めて睡眠を取っても、髪は白くなっていない。両親の血を色濃く引き継いだ山吹色の髪が、生え揃ってくるのみだ。
そう、どれだけの時間が経っても現状は変わらない。
そして、俺には与えられた世界がある。何の因果か、生まれ変わったら赤子になっていた、そしてヴィクトリカさんがたまに世話をしてくれるという現状が存在している。
ああ、そうかよ。ならもうヤケだ──と心に決めて、俺は生え揃ってくる髪と同時に決意を徐々に胸に秘めていく。幾ら
ならばせめて現状を生き抜いてやると決意した。
元々は不用意な余所見で死んだ生命だ。何の因果でこの世界に転生したかは知らんが、やるならやるで与えられたこの世界と立場を存分に楽しみたい。あわよくば百合を愛でつつ、優しくてカッコイイコミュ力バッチリな男になって、どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を築いてやるさ!!
「あうあうあーッ!!」
「あ、もうオリバーったらー。またお漏らししてるわよ。ママがオムツ替えてあげるからねー」
さあ、湿気た面した俺とは濡れたオムツと共にサヨナラだ。
今日、この瞬間からは割り切ってこの世界を目いっぱい楽しんでやるぜ!
「全く、オリバーは元気だねー」
「あう」
あ、話は変わりますがオムツ替えてくれて本当にありがとうございました。
そしてこれから世話になります、新たなお母さん。
イレイナのどちゃクソハーレム2次誰か書いて♡
2章終了後の3章は……?
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魔法統括協会編!(全15話完結予定)
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2人旅編(全30~40話完結予定)
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両方同時並行(がんばる)
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アムネシア編