どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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21話「女神の説教10秒前」

 

 

 

魔法の上達に必要なのは、反復と理解、そして思考。

それは俺がシーラさんに魔法を教えて貰い始めて間もない頃、口酸っぱく言われてきたことである。

 

『いいかオリバー。魔法の実力を鍛えるにあたって必要なのは3つ……理解と反復と思考だ』

『おおっ……おおっ!!』

『この前言った撃ちまくるのは反復。だがそれだけじゃ魔法は上達しねえ。当たり前だよな、考え無しに撃ったところで魔力を浪費するだけだし、何より撃ちまくって魔法が上達すんなら今頃そこら辺の魔法使い全員魔女だ』

 

シーラさんの言いつけ通りに反復練習を行うこと早半年。

魔力の塊ばかり放つことで()()()()()()()()()精度や威力は申し分なくなった俺ではあるのだが、肝心の風魔法やら炎魔法に関しては手をつけず。

バリエーションの無さからイレイナには完封負け続きということもあり、そろそろ己の成長速度に謀反を起こそうかなと考えシーラさんに練習に関しての質問をしたところ、シーラさんは俺に上達の3原則を初めて教えてくれた。

当時はまだほうき君も作っていなかった俺は、そんなシーラさんの言葉にトンカチで頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

「なぜ俺は魔力の塊の反復練習だけで彼女に勝とうとしていたのか」と今更ながら疑問に残ったのだ。

 

『これから先は魔力の塊で遊ぶんじゃなくて、魔法を使いこなせ。その為には魔法の仕組みを()()して、一つ一つの状況に適した魔法を研究し、()()しながら()()しろ。間違えてもいい、考えんのを止めんな』

『ぐ……ぬぬ……?』

『難しいか?難しいだろ。けど、これが遊びと勉強の境界線なんだよ』

 

『ま、今のうちからそういう考えに慣れりゃ将来楽になんぞー』とシーラさんの柔らかな掌が俺の頭に触れ、いつも通りわしゃわしゃされる。

どうでもいいけど、この時期辺りからシーラさんのなでなでの回数が少し増えた。

年月が経つにつれて責任と重圧も増え、多忙になったシーラさん曰く「お前の成長が今の生きがい」で「その成長を肌で感じるため」に撫でているらしい。

地味ではあるが、このシーラさんの姿も魔法統括協会のエージェントとして活躍したいと思ったきっかけだったりする。

成長した姿を、シーラさんにはこれからも()()で見ていてほしいと少し思ったのだ。

 

『一流の魔法使いはテメェの頭で考えて、その場に適した魔法を撃つ。一流になりたいなら今から色んな状況を想定した魔法を撃て。()()()()だけじゃこの先やってけねーぞ』

『なるほど……つまり即興改変!塊を超えた弾丸を放てと!そういうことっすね!?』

『うわぁ……思考がセンセとまるで変わってねぇ……』

 

話がそれたが、まあ何が言いたいのかというと今までのやり方では弱いままだということだ。

魔力の塊だけ追究するのではなく、雷や風、氷や炎等、全ての魔法に精通し、その理解を深めること。

深めるだけではなく、それぞれの状況に適した魔法を思考すること。例えば住宅街のある場所では二次災害の危険性がある魔法を使わずに仕留める方法を考える等といった想定を怠らないこと。

反復に思考と理解を付け加え、より実践的な立ち回りをできるようになれればさらに強くなれるという一種のヒントをシーラさんは渡してくれたのだ。

 

そんなこともあり、今までの遊び気分ではいけないということを教えてもらった俺は、ヴィクトリカさんに会う前の練習で破壊力重視の魔法戦を意識して木をなぎ倒したり、陽動作戦を行えるようにほうきくんの作成を試みたり、新技開発したり、呪い、使い魔に手を出して見事に失敗したりと充実した魔法鍛錬生活を行ってきた。

結果としてはそう上手くはいかなかったけど、イレイナに魔法戦で勝ったり、学業が思いのほか上手くいったり、創作魔法のほうが順調だったりと良い誤算もあり。

さあ、この調子の儘に試験もごーかくだ、ぶいぶいっ!と楽観的に行ければ最高だったのだけれど。

 

「胃が痛いんだ、ほうきくん」

「は?」

 

待ちに待った魔法統括協会の試験、不定期開催編。

その日が近づくにつれて心臓の高鳴りは増し、胃の痛みも猛威を振るう。

ここまで緊張している理由というのは、イレイナさんとの確約故か。もしくはシーラさんの期待に応えたいという願望の現れか、もしくは己の自信のなさによる反動のようなものか。

 

「つーわけでほい、頼む。明日の試験開始前まで俺の話し相手に──」

「あっはっは!大丈夫ッスよ!多分上手く行きますって!……何に緊張してんすかね、ほんとこのご主人は」

「ほうきにすら心配されない俺ってなんなんだろ」

 

そんな緊張しまくりな俺が最終調整として選んだトレーニングは、休息&対話。

あまり思い詰めても良くないと言う考えから、今さっき召喚した相棒「ほうきくん」と談笑に興じようとしたのだが、何故か俺の愛箒はブチギレダンスを踊りながら俺に怒りの矛先を向けてくる。

ひゃー、ブチギレダンスめちゃこわ。

 

「大体っス。ご主人は俺の『扱い方』がなってないんすよね」

「扱い方?」

「メンテナンスを欠かさずやってくれてたのは有難いっすよ。けど、対話は?俺達最近対話してました?俺達、空を飛ぶ際に一心同体なんすよ。メンテだけで一心同体になれると思ってんすか、おぉん?」

「あー……そうだよな。すまん、最近話すの忘れてたわ」

 

ほうきくんはかつて箒を擬人化させたばかりの俺に対して『メンテナンスとは、ご主人であるところのアンタの愛を感じる一幕』だと語った。

曰く、ほうきのメンテナンスはただゴミを払い、磨くだけでなく『なでなで』したり『おやすみなさいのハグ』をしたり、『良い油を差していい感じにテカらせる』ことも大切らしく。

そのひとつでも怠った日にゃそれはもう大変。たちまち相棒であるハズのほうきくんはたちまち暴れ馬となり、振り落とし、サボりはもちろんの事、酷い時には『飛びたくないっす!飛びたくないっす!やーだーやーだー!!!』と地団駄を踏む始末。

それこそ貴重な一日がほうきくんのご機嫌とりで消え失せてしまうため、俺は必要最大限のメンテナンスを施し、普段俺を乗せてくれるほうきくんに良い気持ちになってもらうよう努めてきたつもりだ。

 

ところが最近トレーニングに比重を傾けてきたこともあり、遂に数年と続けてきたほうきくんのメンテナンスをサボってしまった。

対話もせず、メンテもせず、使いたい時に使ってれば、いくら温厚なウェイ系ほうきのほうきくんもブチギレる。

都合のいい時だけオマカセ!とか人間相手にやったら普通に失礼だし、キレられるだろう?

物とてそれは変わらないということだ。これを機に反省せにゃならん。

物を大切にすることも、一流の魔道士になるための条件なのである。

 

「……あ、そういえば最近ほうきくんが恋したっていう『ほうきさん』とは仲良くなれたのか?」

 

では、その条件を得るためにご機嫌とりから始めよう。

近頃のコミュニケーション不足を解消するため、そして何より胃の痛みを紛らわせるため。

「ここは軽く恋バナでもしとくウェイ!」と軽い気持ちで人様の恋愛事情に踏み込むと、ほうきくんはその質問に得意げな表情で──

 

「訝しげな視線を送られたッス!!」

「え」

「やー、会話の節々をチャラくしてみたのが奏功したッスね!ほうきちゃんの訝しげな視線……よきっす〜!!」

「えぇ……」

 

ドM宣言をしてくれた。

いや、なんで訝しげな視線で喜ぶんだよおかしいだろこのやろう。

訝しげってアレだろ?「何やってるんでしょうかこの同族……」みたいなこと言いそうな表情で見られてるってことだろ!?

実質イレイナさんに叱られている俺じゃん!

ご主人を反面教師にしてよ!

せめてほうきくんくらい恋愛成就させて夢見させてよ!!

 

「訝しげな視線を送られて満足か?男ならデレた時の表情で喜べよ……!!」

「や、だってしゃーないんすよ。ほうきさん……あ、俺はほうきちゃんって勝手に呼んでるんすけど。最近忙しなく持ち主の為に働いてるんすよ?」

「冷静だな、なんか変なテンションになった俺が恥ずかしいわ」

「知らんスよ。俺みたいにご主人のDNA引き継いだクソほうきの恋愛なんてこんなもんでしょ」

「あ?」

「ご主人の成れの果てがコレってことっすね、ぷーくすくす!」

「そもそも俺はチャラ男じゃねえだろうがよ!!」

 

変顔で踊りながらご主人を馬鹿にするほうきくんに憤慨し、鼻息荒く誠意のチョップを繰り出すも、華麗に躱されズッコケる。

ちくしょう……!どうして俺はほうきくんにコケにされるようなチョロキャラになっちまったんだ!

俺の理想では今頃ほうき『くん』がほうき『ちゃん』で、美少女ほうきにオリバー様なんて呼ばれながら優雅な魔法生活を送っていたというのに……!!

なんてことを思いながらほうきくんを睨むものの、当のほうきくんは俺の睨みなど何処吹く風。

もう対話とかご機嫌取りとか、そんなレベルじゃないです。

俺はほうきくんのストレス発散に見事付き合わされることになったのでした、まる。

 

「とにかく!俺も色々大変なんで話し相手なら他探してくださいっス!俺はほうきちゃんとイチャイチャする作戦立てて、実行に移すっていう用事があるんで!」

「…………」

「……なんか言わんのかーい!!」

 

最後にそう言うと、ほうきくんは散歩に行ってしまった。

「勝手に行け」と言葉を内心に留め、未だ見ぬ「ほうきさん」とやらに合掌。

ほうきさん、ウチのバカが世話焼きます、と。

これから起こりうる未来に苦笑しながら、俺は手を合わせたのであった。

 

「……試験終わったら、良い油使ってやるか」

 

さて。

なんだかんだ言いつつもほうきくんとの会話により気分転換はできた俺は何千何万と握ってきた黒杖を再度呼び寄せ、再度立ち上がる。

理由は勿論、訓練の再開だ。最近行使することのなかった鳥籠の魔法やら、風魔法やら諸々。魔力の弾丸以外の魔法を使い慣らし、いざという時に調整が利かないなんてことがないように万全の対策を取る。

イレイナ程の天才なら、咄嗟の状況でも今まで使っていなかった魔法を行使し、場を有利にすることが容易に可能だ。

それだけイレイナの魔法の才は群を抜いている。これは、転生してからの発見。前々から天才だとは知っていたけど、幼馴染という立場から、間近で見ると()()が分かってしまう。

速さだったり、正確性だったり、機転といった魔法を行使するに必要なモノが違う。この境地には正直言って──多分追いつけないんじゃないかな?

 

「……ま、それで諦めるってのも違うし」

 

但し、そんな天才魔法使いに勝つことを諦めたのか?と問われたら、それは違うと答える。

純然たる実力に差があるのなら、それ以上に頭を使って、培った強さを信じて願って越えていく。

そうして俺は成長していったんだ。今更そのルーティンを変えるつもりはないし、諦めて全てを投げ出すつもりもない。

今は弱くたって、いつかはきっと──

 

「でへへ……常勝……負け続けて『ぐぬぬぬ』するイレイナ……良きかな」

「何が『良きかな』なんですかね」

「大丈夫!もう半分勝ちみたいなもんだか──ぎゃああああ!?!?

 

なんて、思いながら頭に浮かんだ妄想を口に出していると不意に揺れる灰色の髪。風に靡いて俺の視界に移ると、嫌でもその髪を携えた可愛くて大好きなその女の子のことを想像してしまう──そんな馴染み深い髪色だ。

そして、その髪に見蕩れているといつの間にか隣にいた、お人形さんのように可愛らしい女の子。

至近距離だ。正に目と鼻の先。あなたはその距離に抵抗がないのかと、思わず叫んでしまいそうになるほどの、()()()()()()()()()()()距離感。

ドキドキを通り越して少し怖いレベルですよ、イレイナさん。

距離感バグってんじゃねえのかマジでいいぞもっとやれ。

 

「諸々一段落ついたので様子を見に来ました。まさか私を負かすことを考えて嫌らしい笑みを浮かべているとは、あなた随分と偉くなりましたね?」

「い、いや……それはほら、言葉の綾って奴で……」

「表出てください。……出れますね?」

 

まあ、兎にも角にも。

絶賛激おこ状態のイレイナさんは、その可愛らしい顔から織り成す破壊力抜群の笑みと絶妙な距離感でドギマギさせつつ、変なこと考えていた俺を叱るのでした。

 

情緒おかしなるで。

 

 

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編
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