どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

3 / 43
オイラ、イレイナパパとヴィクトリカさんが結婚した理由に関しては当初下手だったヴィクトリカさんの料理を『美味い!』って言ってくれたイレイナパパにヴィクトリカさんが惚れたって説を提唱したいでやんす。



2話 「え、やだ‥‥‥ヴィクトリカさんカッコイイ‥‥‥惚れる‥‥‥」

 

 

変なテンションになって『どちゃクソラッキースケベなハーレム生活』だなんて戯言を抜かしてから5年経った。

産まれてからの3年間は取り立てて何かあったという訳でもなくて、肝心の俺も一先ずは人並みに成長し、この新しい世界を知り、満喫しようという考えから、特に何か行動したという訳ではなかった。

この姿が仮に、女の子なのだとしたら魔女になるために努力をする未来もあったのかもしれないが、生憎俺は男だ。

魔法が使えるかは分からないが、このまま魔法使いになったとしても魔道士止まりになってしまう現状を知っている為、俺に魔法を生業にするという意欲は現状それほど無く。

たまにお隣さんであるところのヴィクトリカさんとお話したりといった行為を行っては、暇を潰していた。

しかし、肝心のイレイナさんとは話すどころか会ってすらいない。

 

その理由というのは1つ。

 

「会ってみる?」

「‥‥‥結構です」

「あら、そう」

 

単純に会うのが怖いって、それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えずは足腰しっかりしてきたので、試すだけ試してみようと思い立った魔法の試し打ちは予想外な結果を巻き起こした。

 

「ふぉぉぉぉぉ!?!?」

 

何故置いてあるのかは分からなかったが、家に置いてあった杖っぽい何かを拝借し、外へとこっそり出る。ドアを開けると広がる平原。これぞ中世の世界!と内心心を弾ませながら魔力の塊をイメージしたら、あらぬ方向に小さな衝撃波が発生。

母さんが外に干してた洗濯物を盛大に破壊してしまったのだ。

 

「‥‥‥ふぇ」

 

その衝撃波の威力。そして、俺がえげつない魔法を放ってしまったという事実。その2つの結果が俺を襲った時、俺──『オリバー』は賢者タイムへと移行する。

 

虚無感とでも言えば良いのか。とにかく遊び半分で起こした魔法のえげつなさに驚き、破壊した洗濯物の一点のみを見つめていると、不意に足音が聴こえる。

母さんが来たのかと思ったが、それすらもどうでもいいと思ってしまう位に、俺は思考を停止してしまっていたのだった。

 

「‥‥‥あらあら、どうしたのかしら?」

「‥‥‥杖」

「ええ、あなたの持っているそれは杖ね」

「振ったら、あれ、壊れた」

「あらまぁ、狙ったの?」

「誰が自分の家の洗濯物を狙うか!」

 

反射的にそこまで答えたところで、俺は漸く今まで誰と話していたのかということに気が付く。

落ち着き払った声に、風によって靡く本で灰色の髪。結んだ髪を右肩付近に下ろしている女の人は、何の因果か、この世界で初めて出会った『俺が知っている』人。

 

「‥‥‥ヴィクトリカさん」

「おはようオリバー君。リア──こほん。お母さんはいる?」

 

イレイナママ。

そう、赤子の時にこの世界を認識する『きっかけ』となった人が、俺の後ろでほんわかとした笑顔を向けていた。

どうやら俺の新しい母さんとヴィクトリカさんはそこそこ仲がよろしいらしく、偶にヴィクトリカさんがこっちの家を尋ねてきたのかと思えば、料理のお裾分けをくれたり、はたまた母さんが料理のお裾分けを作ったりと、それなりのご近所付き合いをしているらしい。

俺の家の母さんとそこそこ仲が良いのは一体何が原因なのかね?

まあ、ご近所付き合いに関しては確かそんなに詳しく書かれてなかった筈だし、そこら辺は曖昧なのかなーなんてことを考えつつ、俺は先程の質問に答える。

 

「います」

「そう」

「今日はどうかしたんですか?」

「おすそ分けを持ってきたの。イレイナと一緒に作ったクッキーよ」

「ほぇー、すごいっすねー」

「会ってみる?」

「あ、結構です」

 

そして、今日も俺はヴィクトリカさんにとある提案を持ちかけられる。

曰く、自分とお話できるのだからイレイナさんともお話出来るかも。同年代だし、お話してみたら?と灰髪の女性は語っており、そんな思考から織り成す打診を、俺は子供らしくやんわりと拒否している。

 

正直、子ども時代のイレイナさんに会ってみたい気持ちはあるにはあるのだが、欲望のままにエンカウントしたら名前すら覚えて貰えない嫌われルートに片足突っ込みそうな気がする。

ここは己の未来のため、やんわり拒否して煩悩を退散するのが1番なのだろう。

 

「もし会ったらちゃんとあいさつしますから。だからごめんなさい」

「むぅ‥‥‥」

 

けど、そうやって拒否する度にヴィクトリカさんが頬を膨らませるもんなんで、俺の良心は既にズタボロだ。

『行っても良いだろォ!?こんなかぁいい人にあんな顔させ続けるつもりかァ!?』‥‥‥なんて心の中の悪魔が叫ぶ位に、俺の心が揺らいでしまっているのは一重にヴィクトリカさんの拗ねた表情が可愛くて仕方ないから、というのはあながち間違ってはいないのかもしれない。

 

「あ、そうそうオリバー君」

 

拗ねた表情を解いたヴィクトリカさん。「こほん」と1度咳払いをすると、俺が手に持っていた杖を見た後にしゃがみこみ、目線を合わせる。

そうして右手を俺の頭に乗せると、優しく髪を撫でた後に語りかける。

 

「それ、リア──あなたのお母さんの杖でしょう」

「うげ、バレてやがったんですか」

「私とあなたのお母さんは友達だから。普通に分かっちゃうのよ」

「‥‥‥友達なんですか」

「マブダチね」

「え゛」

 

そんな仲だったんですか。

いよいよ原作が頼りにならない位の魔境に俺は足を踏み入れちまいやがったんですか。

そんな俺の思考を悟ったのかどうかは分からないが、ヴィクトリカさんは話を本筋に戻すために緩んでいた顔を今一度締め直し、続ける。

 

「その杖はあなたのお母さんが使い古したもの。だから杖もあなたのお母さんにぴったりのものになっているの」

「そうなんですか」

「そう。だから、杖は自分に合ったものを使わなきゃダメよ?」

 

そう言うと彼女は俺の頭を2度『ポンポン』と叩き、「お姉さんとの約束よ」という言葉を最後に立ち上がって笑みを見せた。

 

‥‥‥ふむ。

まあ、『綺麗だけどお姉さんという年齢ではないでしょ?』とか『何処で母さんとマブダチになったんですか?』とか『やっぱり笑顔がナンバーワン!』とか色々言いたいことはあるけど。

やはり俺にとってのヴィクトリカさんはミステリアスでカッコイイ──そんな存在であり、そんな人に言うべきことが存在するのだとしたら。

 

それはきっとありがと──

 

「え、やだ‥‥‥ヴィクトリカさんカッコイイ‥‥‥惚れる‥‥‥」

「その言葉何処で覚えたの?」

「お‥‥‥ぉ、母さんです」

「ちょっとお母さん呼んできて貰える?」

 

やっちまったー。

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず洗濯物をぶち壊してしまったことは謝らなければならないため、ヴィクトリカさんと一緒に母さんに謝りにいくことになった。

先手を打ち、好印象を持ってもらうという作戦の元、俺とヴィクトリカさんは家のドアを開ける。

すると目の前には──どす黒い笑みで俺を見遣る母さんがいらっしゃった。

 

「おかえりオリバー。随分とまあ派手にやってくれたみたいだね」

「洗濯物を壊したんだ」

「知ってるよ。私の杖も使ってくれたみたいだね」

「あんなところに置いてたら触るしかないよね、はい」

「おいこらー、開き直るなー」

 

そして、既に洗濯物を壊したこともバレてしまった為、先手もクソもないということを知る。

こうなったら、もうどうにでもなれの精神である。正直に、洗いざらい起こったことを話そうと思い立った俺が母さんに杖の話をし終えると、後ろにいたヴィクトリカさんが俺の母さんに話しかけた。

 

「そんなことより、あなたまたオリバー君に変な言葉教えたの?」

「え、私そんなこと教えてない」

「嘘おっしゃい」

「そもそも嘘つく要素ないんだけど?」

 

ため息混じりにそう言うヴィクトリカさんに、俺の母──セシリアは「どうしてヴィッキーは何でもかんでも私を疑うかな‥‥‥」と呆れ混じりの一言で応戦する。しかし、ヴィクトリカさんがまるで動じないことから何かを察した母さんは、俺を見て尋ねる。

そう、初めて見た時から感じていたことなのだが俺の新しい母さんは何処か抜けている節があるのだ。杖を置きっぱなしにしていたのもそう、今のこの瞬間もそう。

とにかく母さんは頭のネジが緩んでいるってくらい、おっちょこちょいなのである。

 

「ねえ、オリバー。あそこの若奥様になんて言ったの」

「ヴィクトリカさんカッコイイ、惚れる」

「ああ、褒められた時の煽て返しのことか」

「うん」

 

故に、俺にそんな言葉を教えていたということも俺に言われるまで気が付かない。俺の先程の失言は母さんの言いつけを忠実に守ってしまったことに対する事故と言えるものだったのにも関わらず、肝心の本人はそれを自覚していないのだ。

「うんうん」と縦に頷いた母さんは、改めて視線を俺からヴィクトリカさんへと移す。そして、かつての『灰の魔女』の威圧的な笑みにも臆することなくサムズアップを敢行し一言。

 

「合法だね」

「何処がよ」

「むしろこの歳で煽てることを心得ている息子を褒めてしかるべきだね。俗に言う、褒めて伸ばーす」

「それは絶対違うと思う」

 

軽快なトークである。さして怒りに身を任せているわけでもなく、かといって双方うやうやしくしているわけでも、腫れ物に触るように接している訳でもない。

まるで10年来の親友のような、そんな2人の会話をぼーっと眺めていると、膝をついて俺と同じ目線になったヴィクトリカさんが俺の耳に囁くように語りかける。

 

「‥‥‥オリバー君、あなたは将来褒めて伸ばすやり方を間違えたらいけないわよ」

「あっはい。それは何となく分かります」

「よしよし、オリバー君はやっぱり賢いわねー」

「ひゃい」

 

耳がこしょばいから耳に吐息をかけるのヤメテ。

ASMRに目覚めちゃう。

 

 

 

 

 

 




2/16 誤字修正。

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。