どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

30 / 60
22話「魔女見習いのイレイナさん」

 

 

 

 

久しぶり?に始まったイレイナさんの説教に、ぶっちゃけ俺は快楽を感じていた。

何せ数日ぶりのイレイナさんのご尊顔&お説教だ。元々が魔女旅ヲタクの俺にとってそれがご褒美でない筈がなく、ありがたーく、それはもうありがたーくイレイナさんの説教を受け入れていた。

ふふっ、思わず気持ち悪い声が出てしまいそうになっちまうぜ!我慢しなきゃイレイナさんにシバキ倒されちゃうよ……

 

「大体、前日にもなって疲れるような事をするのが非効率的です」

「ふ、ふゲフンゲフン、ごめん……」

「謝るくらいなら休息してください。魔導具だって休ませながら使用するんです、生身のあなたが休まないでどうするんですか」

「おっふ──痛ッ!?

 

あーいったいいたいいたい!!(ガチギレ)

イレイナさんのナイフハンド・ストライク3連発が俺の脳天にクリーンヒットしたところで、先程までの浮ついた心が一気に冷めた俺は勢いの儘に土下座謝罪を始め、悶絶。

いや、なんであなた物理攻撃まで天才的なの?

 

「なんで叩いた……!?」

「反省してないみたいなんでシバキ倒しました

「魔導具を粗末に扱ったら壊れるんだぞっ!」

「大丈夫です。何処を叩けば良いのかくらい天才であるところの私なら簡単に分かっちゃいますから」

「俺をシバキ倒す天才、だと……!?」

「はい。今後もシバキ倒すつもりなんでよろしくお願いします」

 

よろしくされたくないです。

なんて言ったところで起き上がり様を撃ち抜かれる所が容易に想像できるので、ここは素直に引き下がり顔を上げる。

 

「……ふふ、こうして見下ろすのもなかなか良いですね」

「は?止めろイレイナ、ドSは俺の性癖に刺さる」

「『は?』はこっちの台詞ですよ変態さん。お願いですからこっち来ないでください、なんでこんな至近距離で土下座してんすか」

*1お前じゃい!!」

 

……うっわーいい笑顔!

なんだお前、俺のこと好きかよ!!久々のタイマンにボディタッチ(物理攻撃)挟まなきゃやってられねぇってか!?*2

ちくしょう、やっぱりイレイナは最高だぜ……!!

 

「で、どうしてずっと練習してるんですか」

「……」

「私、焦る必要はないと言いましたよね。その上で、私がしたいのは親友の名声で威張ることじゃないとも」

 

まあ、どれだけ『イレイナ最高ゥ!』と口に出そうが、心の中で想おうが本人は至って冷静なんですけどね。

昔は時々顔を赤らめて照れる、なんてこともあったのだが歳を重ねて精神年齢が高まっていくに連れ軽くあしらわれるなんてことも多くなり、今となっては塩対応のオンパレードです。

最近は「はいはい」やら「えーそーですねー」やら「あーうーあー」なんて取り憑かれたフリまでする始末。自分の可愛さを自覚してくれているのは構わないが、少しくらい……少しくらい昔のようにメニュー表で!顔を隠したりしてもいいんじゃないんですかねぇッ!!

 

「あなたが無事ならそれでいいのです。後は……分かりますね?」

「……五体満足?」

「10点ですね」

「え、それは……10点中?」

「100点中です」

「赤点じゃねえか!……はぁ」

 

さて。

俺の俺による俺の為の熱いイレイナさん推しもそこそこに、改めて彼女の質問に答えるべく口を開く。

テキトーに話をはぐらかす事もできるが、それは俺の本意では無い。イレイナさんの質問にしっかり向き合うのは、いつも通りの俺のルーティン。

ほうきくんのメンテと同じく、決して欠かしたくない俺の週間だ。

 

「……緊張してんだよ、俺」

「はい」

「だから、その……気持ちが晴れるまで練習!っていうか……精神安定剤キメたというか……」

「キメてましたね、お薬」

 

やかましい。

 

「そう考えたら気合いが入って……気付いたら緊張して、いても立ってもいられなくなった。おかしいよな、ちょっと前までは緊張してなかったのに」

 

緊張って、本当に不思議だ。

最初は「どうってことない」って感じていた物事も、日を追うに連れて重要性に気付き、心音がうるさくなっていく。

失敗した時の事ばかり考え、いてもたってもいられなくなってしまう。緊張しない為のおまじないやら何やらを試したところで、結局心の中に潜む何かがずっと、鼓動を早め、結果苦しくなっていく。

事実、今の俺は苦しいし、胸が痛い。心做しか呼吸も浅いような気がする。

まあ、前よりはマシなんだけどな。

なんてったって、ほうきくんと──それからイレイナと話すことができているから。

誰かと話し、悩みを共有している間は何故か胸の苦しさが無くなっていく。

これまた緊張の怪奇っぷりを表しているような、そんな気がした。

 

「……」

 

さあ、そんな俺の話を聞いたイレイナさんはどんな表情をしているか気になったところでじーっとイレイナさんの目を見てみると、それはもう真面目な表情で俺を見つめてくれていました。

熱い眼差しですねこれは(当社比)。

この時のイレイナさんの安定感は半端ないので、今回も例に漏れず悩みを華麗に、真面目に解決してくれるのでしょう間違いない。

今もこうやって緊張という檻の中で懊悩している俺に、『お説教』という大菩薩もビックリな救いの手を差し伸べて──

 

「どうしようもないことで悩んでます……あ、悩んでますうぇいね」

「何故出来もしない陽キャさんの真似を……」

 

くれませんでした。

初めに言われた言葉が「どうしようもない」の一言なので、本当にどうしようもない悩みだったのでしょう。

イレイナ先生お悩み相談室常連さんの俺には分かります。

真面目な表情から一気に変化した胡乱げな表情が物語ってんですよね。

 

「まあどうせこんなことだろうと思ってたんですけどね……変なところで臆病というか、二の足を踏むというか……」

「ッ……笑えよ!どうせ俺は直前まで試験にビビる腰抜けなのさ!」

「いや笑わないですけど……それにしたって……いや、そこで悩みますか……」

 

あー恥ずかしい!!

割と真面目にぶつけた悩みをこうやって華麗に躱された時の恥ずかしさったらありゃしない!!

「いっそ殺してくれ!」と叫び、アルマジロもビックリな程に身体を丸めるオリバーさん。

それを嘲笑うかの如く気の抜けた「あははー、馬鹿なんですかー」というイレイナさんの声が、丸まった俺の鼓膜に響いた。

 

「まあ、仕方ないですね。ここで見捨てて何年もの努力が泡になったら見るに堪えないですし」

「はあ」

「なのでここは可愛すぎる魔女見習いであるところの私に任せてください。一瞬であなたの心に潜む悪魔を退治してみせましょう」

「イレイナ。聞いてもらう手前こういうのもなんだけど、最近自信に満ち溢れすぎて恥ずかしいこと言いまくってない?」

「……意地悪なオリバーには相談料をせしめます」

 

自覚あったのかよ。

そんな思いを込めて放ったジト目は、イレイナさんにとって『こうかばつぐん』だったのだろう。

目を逸らし、苦笑するイレイナさん。

その表情の、いとおかしポイントったらありゃしない。

可愛いなんてレベルじゃねえぞ。国宝級の可愛さだ。写真に撮って、飾っておいて一生その表情いじり倒して辱めたい。

うん、キモイ。

 

「まあ、それはともかくとして」とイレイナが話題転換を試みたので、キモイ感情と体勢を直し、芝生の上に寝転がる。

目を逸らした彼女の目が俺の目を捉えると、イレイナは少し微笑み、言葉を紡いだ。

 

「辛いですね」

「え?」

「受かって当たり前。期待してる。いつも通りの力を出せれば良い。本来なら前向きに捉えられる言葉が、何故か試験とかになると重く感じてしまうんですよね」

 

「覚えがあります」と俺の目を見て言ったイレイナさん。

今の俺の視界には、いっそ憎たらしく感じてしまう位に透き通った群青とイレイナさんのみ。

そんな情景の中で、俺の視線からは直ぐに目を逸らし、芝生の上に寝転がった。その風景は幼少の頃の思い出と重なる点がいくつもあり──俺は何故か、無性に嬉しくなったのと同時に、嬉しさと同じくらい悲しくなった。

違う意味で心が痛くなったような、そんな気がした。

 

「そして緊張、のちお腹が痛くなってしまうと。よくある傾向です。何らおかしくないですし──あ、良かったですねオリバー。あなたも人の子です」

「……うん、そうだな」

「私だって緊張したんです。あなたが緊張しないワケがないでしょう」

「そういうもの、か」

「そんなものです」

 

と、イレイナがそこまで言い切ったところで俺はふと思う。

それは、先程まで行われていた会話。

原作を見て、アニメも見て、そして今、現在進行形で魔女の旅々の世界で活躍する主人公の幼少期に触れている俺が、それでも少し疑問に思ったこと。

 

「イレイナも緊張するんだな……」

「当然でしょう。まあ、蓋を開けてみれば──という感じではありましたけどね」

「楽勝ってか」

「はい。だって私、天才ですから」

 

イレイナも、試験で緊張していたということ。

思えば、どのコンテンツでもあっさりと描かれていたし、俺もお祝いしたってだけで出来事の詳細を知らないイレイナさんの試験の話。

俺はどこか、イレイナさんを鬼メンタルのつよつよ魔女と見ている節があったのかもしれない。

そりゃまあ、フラン先生にわからされたり、トラウマを感じてしまう程の辛い事件に遭遇したことだってあるだろうけど、普通の女の子なら「辛い」の過程で旅を辞めていてもおかしくないし、アムネシア救出作戦敢行したりしませんからね?

極めつけには友人逃がして自らが氷漬けになる選択肢を取るような子だ。俺でなくとも、イレイナさん本人を知らない人から見れば、さぞお強いメンタルをお持ちだと思うだろう。

事実、俺もその節があった。

俺が原作とアニメ以外で知っているイレイナさんは、いつも強くて、夢に一筋で、それでも俺みたいな友人のことを大切にしてくれる──かっこよくて仕方ない特別な人だったから。

 

「けど、受かった時は本当に嬉しかったです。またひとつ階段を上れたこともそうですけど、私にとっては試験に受かることはひとつの必須条件でもありましたから」

「必須条件?」

「ええ、必須条件です。何の必須条件か分かりますか?」

 

そんなことを考えていると不意にイレイナさんが俺に質問を振ってきたのだから驚きだ。

え、え、必須条件ってなんですかイレイナさん。あなたの必須条件って言ったらニケ・お金・パンのイレイナ三原則くらいしか分からんのですが!?

……せ、せや!パン!!パンやろ!!

ヴィクトリカさんに「受かったらとびき美味しいパンを作ってあげるわね」って交換条件突きつけられたんやろ!!

いーなー!俺もお呼ばれしたかったなー!

 

……え、マジで必須条件なんですか?

 

「時間切れです」

 

イレイナがそう言った瞬間、「ぎゃっ」と言う時間もなく、気付けば花のような優しい香りに包まれていた。

何故かって?

そんなの視線を空から俺に移したイレイナさんは横向きに寝転がって距離を詰め、俺の唇に人差し指を添え優しく微笑んでみせたからに決まってるだろいい加減に──いやマジで近い近い!!至近距離イレイナさんきゃわわで心臓止まっちゃう!!

寝転がった際に乱れた髪が少し顔にかかった様、そして何より今まで経験すらしなかった超絶至近距離にどうしようもなくドギマギしている間にもチクタクと制限時間は過ぎていき、イレイナさんの笑みが俺の視線を突き刺す!うん!女の子のまつ毛って長い!!

いっ、イレイナさんなにしてるんですか!不味いですよ──と叫ぶ勇気があるのなら、今頃俺にはガールフレンドができている!イレイナさんってとてもいい香りがするわね!!*3

それができないからこそのオリバーさんであって……故に、俺は距離を詰めるイレイナさんを見つめることしか出来なかった!!

 

「魔女になり、貴方との確約を果たすこと」

「……」

「ニケのような魔法使いになるのと同じくらい、私の魔女としての芯です」

 

唇に添えられた手が、俺の返答を封じる。

下手したら彼女の指を噛んでしまう恐れもあったかどうかは知らないが、何故か口が動かない……否、動かしてはいけないような、そんな気がした。

そうでなくとも多分、言葉なんて出なかったと思う。

それくらい今のイレイナは綺麗だったから。思わず言葉を失ってしまう程に綺麗だって、そう思ったから。

 

「その芯がたった1度の失敗で揺らぐことはありません。けど、それと緊張はまた別問題です。試験は独りですし、雰囲気も独特ですし。

 それでも進まなければいけないんです。何故なら、その先に進むべき理由があるから」

「……」

「進むべきものの為なら、緊張や痛みなんて振り払います。それが私の、魔法を使う者としての覚悟です。

 ……あなたはどうなんですか?」

 

ここでようやく、唇に添えられた人差し指が離れ。

これは、彼女なりの『喋っていいですよ』というサインなのか。もしくはお話が終わりというサインなのか。

しかし、人差し指が離れた以上俺の伝えたい事は決まっている。

そう。彼女に問われた質問の内容を噛み砕き、自分なりの思いを伝えること──!

 

「良い香りだね、結婚しよう!」

「はい、金貨5枚です」

「は?」

 

はい、全く話が噛み合いませんでしたね。

昔っからそうなのはもうお察しってところなのでしょう。イレイナさんは軽く俺の妄言を受け流し、俺に対して金貨5枚をせしめます。

大方質問&情報料の要求ですかね?

自らのプライベートを切り売りするその様に、俺は涙を禁じ得ない。

今度は自分の人差し指を頬に当てると、それも束の間。親指と人差し指で輪っかを作り「引っかかりましたねー」と悪戯っぽく笑ってみせるイレイナさん。

て、天使だ。

悪魔の皮を被った天使がここにいるよ……

 

「そういえば言ってませんでしたね。私、新しく商売始めたんですよ」

「遂に始めたんだね……金策……!」

「いえいえ、『いついかなる時も金策ができる知能を持ちなさい』とは私の師匠のありがたーいお言葉でして……って。どうしてそんなに嬉しそうなんですか」

「あいや、イレイナといえばニケ、お金、可愛いの三原則だろ?」

「……」

 

「こほん!」と咳払いをしたイレイナさんが続ける。

 

「緊張なんて誰もがするんです。大切なのはその緊張に対してどのように向き合うのか……少なくとも、緊張に懊悩し、魔力の無駄遣いをする位なら無理矢理にでも休息した方が幾らか建設的です」

「ど、ド正論……」

「……ですが。仮にこれだけ言ってもまだ緊張したくないというのなら、この言葉でもお守り代わりにしておいてください」

 

少し悩む素振りを見せ、唸った後。

「仕方ないですね」と呆れるように笑ってみせたイレイナさんを、俺は一生忘れることがないだろう。

 

「あなたは強い魔()士です」

「!?」

「……私の保証だけでは頼りないですか?」

 

だって、俺の緊張が一瞬で。

あのイレイナのご高説でも未だに拭いきれなかった微かな緊張が。

その笑みと、言葉だけで一瞬で消え去ったのだから。

 

 

 

 

*1
近付いてきたのは

*2
違う。

*3
CVアムネシア

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。