どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

31 / 60
「その分自分のことには一途で真面目で可愛くて……!そんな奴が親友でいることに対して、俺は優越感に浸ったわけだ。
 どや!俺の親友カッコいいだろ!!ってな具合にな!!」





23話「確かに色々言ってくる奴だけど」

 

 

イレイナさんの言葉は、俺という存在に底の知れない勇気と暖かさをくれる。

毎度の如く、上手く言語化するボキャブラリーはないけれど心が暖かくなり、その一言で何億倍もの進む力が湧き立つ。

与えられることで暖かな気持ちになれる思いやりの力って、こういうものなのかな──と思いながら見上げる群青はもう恨めしくなかった。

それはきっと、俺の心境が変化したからだと確信できる。

イレイナさんというかけがえのない親友が与えてくれたものだと、俺はそう信じている。

 

「気持ち、落ち着きました?」

「とっても」

「そですか。なら良かったです」

 

今もこうして隣にいてくれる事で味わうことの出来る暖かさ、安心感。

これがサヤさんやアムネシアさんが貰ったものなのか……!と悦に浸っていると、不意に影が生まれる。

はて、誰か来たのかな?と思い起き上がると、そこに居たのは未だこの世界に生を受けてから出会ったことのなかった、黒髪の美女。

あれ?この人見覚えがあるなぁ──と思った頃には、既にイレイナさんは起き上がり、服に付いた草を払いながら、黒髪の美女に向き合っていた。

 

……あるぇー?この光景、どっかで見たことがあるぞぉ?

 

「おや、こんなところにいたんですか。買い出しになかなか帰ってこないので不安だったんですよ」

「買い出しするつもりなかったのでオーケーです」

「ノーケーですよイレイナ。私、あなたをそんな風に育てた覚えはないです」

 

例えば、原作1巻での蝶々の追っかけ。

一目見て「あ、この人頭ぱっぱらぱーだ」と思ってしまいそうな態度に、当時のイレイナさんはなんとも言えない表情で箒を翻し、帰ろうとしていた。

当時の俺は、この人が師匠?なんかの間違いだろと思った。*1

 

「あ、先生。今日のお昼雑草でいいですか?丁度ここに山程雑草があるので」

「先生泣いていいですか?」

 

はたまた、王立セレステリアでの出来事。

旅で起こった様々な出来事に心を弾ませ、時に沈めてきたイレイナさんは王立セレステリアという妙な名を持つ*2活気のある国で再会した黒髪の美女に1つの考え方を示した。

その教えは、ヴィクトリカさんから約束された『特別だと思わないこと』の真意を突く内容のもので──図らずもイレイナさんの心を救った。

 

「それにしても。貴方とこうして会うのは初めて──ですよね?」

 

そう。俺にとっては、特別な人だ。

イレイナさんの物語に関わり、彼女の魔法の土台となっている師の立場にある人。そして何より容姿、しっかり者の反面ドジっ子でおっちょこちょいな内面、師としての立ち振る舞いや在り方。全てが美しい──そんな()()

 

「私、イレイナの師匠をしていますフランです。どうぞ、先生とでもフラン先生とでもなんでも──」

「プラネタリウム先生!?」

「それ誰から聞きました?」

 

星屑の魔女、フラン。

ついぞ14年半、顔を見ることさえ叶わずシーラさんの話で聞くのみだった1人の登場人物とのファーストコンタクトは、場所すら選べない『唐突』という言葉が正しい出会いだった。

 

 

 

実物は一層可愛い(真理)。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたがオリバー君ですか」

「は、はい」

「話はよく聞いていますよ。随分と年上の女性に好かれる、快活な性格をしていると巷で評判ですから」

 

夢見心地だった。

イレイナと初めて出会った時のように、衝撃に頭を思いっきりぶん殴られたような感覚。

その衝撃は俺の身体を硬直させ、言葉を紡ぐことにすら支障をきたす。

何せ俺、先程からガチガチに緊張して「はい」の2文字すらまともに紡げなくなっているのだ。

嗚呼、後ろからイレイナさんの突き刺すような視線を感じるよ。

「何キョドってんですか、えぇ?」って……幻聴が聞こえるよう!!

 

「そ、そうなんですか。へ、へー……ひょ、評判……」

「そして何より魔法の腕。これがかなりの曲者だとも」

「く、曲者?」

「はい。箒の操縦を初めとした魔法の調整、制御の観点で素晴らしい才能を持っていると聞いています」

 

というか、随分評判いいんだな。フラン先生が気遣ってくれてるだけなのかもしれないけど。

平和国ロベッタのオリバーさんって言ったらそりゃもう男の子の癖に魔法で一旗挙げようとしている時代錯誤の『あたおか野郎』って認識だったんだけどな。事実、イレイナと通っていた学校でも同級生達から「もったいない!」やら「できるわけがない!」やら散々ボロクソに言われてた記憶しかないし。

 

……あ、そっかぁ!フラン先生はドジっ子お姉さんキャラだもんね!料理に黒い物体作っちゃう位天然な人だし、俺の評価も天然で忘れてたり!

それでも面倒はしっかり見てくれる教職者ドジっ子お姉さん先生……くっ、性癖に刺さる……!

 

「1度家のお手伝いをしてもらいたいものです。どうでしょう、1度私の指導、受けてみませんか?」

「お手伝いに、指導……だと……!?」

「と、言うと思ったでしょう。実はこれ、とある方に禁止されています。驚きましたか?」

 

と、まあ。

そんなことを考えながらドジっ子魔法少女フーラたんの無限大の可能性について想いを馳せていると、フラン先生が唐突に魔法の指導をしてあげる的な事を俺に告げ、秒で嘘だと暴露する。

とある方というものに大体見当が付いている俺は、その誘いと嘘のコンビネーションに向ける感情を見失ったせいか、若干顔が引き攣ってしまった。

その引き攣り具合から素早く『困惑』の感情を悟ったのかは分からないが、「急にごめんなさい」と一言挟み、今度は俺の耳元まで顔を寄せ、囁く。

 

「……イレイナが自信と実力に満ち溢れてしまったのは貴方の仕業ですね?」

「ひゃ、ひゃい」

「おかげで先生、イレイナに教えることがあまりありません」

「あ、()()()ないんですよね?なら、その『あまり』の部分を解決してあげてください、お願いします」

「そうですね……では、家事手伝い一日で手を打ちましょう」

「え、えぇ……」

 

そこまでフラン先生が囁いた所で、俺はとある事実に気付く。

それは、この人がドSで守銭奴な美人魔法使い、ヴィクトリカさんの弟子だということ。

フラン先生といえばおっちょこちょいで、それでもキメるべき時はキメる最高にカッコイイ人というイメージがあったが、それでもヴィクトリカさんの弟子であり、その人を尊敬してるとなったら──勿論、ドSな所も継承してますよね。

思えばフラン先生もシーラさんもSかMかで言ったら紛れもないSだ。Mが弟子に鬼のような魔法責めをして泣かせたり、煙草の使いっ走りさせたりしてたまるものか。

親は子に似るという言葉は、師匠と弟子にも適用される言葉なんだろうなぁ……

 

「あまりオリバーを困らせないでください」

「おや、別に困らせているつもりはなかったのですが……」

 

と、俺がフラン先生の誘惑と交換条件のタブルパンチに殺られ、クラクラしていると、俺とフラン先生の間に割り込んだイレイナが助け舟を出してくれた。

あまりのクソザコっぷりに見兼ねた結果だろう。

いつもは俺より小さいイレイナの背中が、今はいつもより大きく感じた。

 

「イレイナさん……!」

「オリバーは放っておくと変なことばかり言って人を困らせる変態さんです。フラン先生の身に何かあったら私が困りますし……」

「……イレイナさん?」

「そんな人を変人のフラン先生に任せられません。危うく私の弟子生活が崩壊します」

「イレイナさん!?」

 

そして、言葉で殴り飛ばされた。

これは語るまでもなくイレイナと俺の会話ルーティンの1つではあるのだが、まさかこんな場面で発揮されるのか……と若干の驚きと共に、イレイナを見る。

肩が震えていた。

なにわろてんねん。

 

「それで、どうしてここにフラン先生が?」

 

しばらくして、肩の震えが治まったイレイナが改めて尋ねるとフラン先生は人差し指を頬に当てて続ける。

 

「追加で購入する必要のあるものを自分で購入しようと思いまして」

「そんなこと言って、本当はどうだったんでしょうね……」

「まさか。ここを彷徨いていればオリバー君に会えるとか、そんなことを考えたりはしていませんよ?」

 

「しかし」と。

両手を合わせ、『パン』と音を立てたフラン先生は、新たな玩具を発見した子供の如く目を輝かせ、俺とイレイナを見て一言。

 

「ここでオリバー君に会ったのも何かの縁ですし……ここは3人で仲良く世間話といきましょうか!」

「あ、これ強制だ」

「ですね」

 

俺とイレイナは思わず目を合わせ、互いにため息を吐いた。

いや、別に世間話なら構わないんだ。俺だって初めて会ったフラン先生に全く聞きたいことがないと言えば嘘になるし、そうでなくともイレイナさんとフラン先生と一緒に世間話なんて滅多に無いことだから参加して百合の波動を感じていたいし。

しかし、ここで引っかかったのはフラン先生が()()()()とやらに俺への接触……というか、お手伝いをさせることを禁止されていたということ。

とある方っていうのがどんな人かは断定できないし、断定したところでどうなってしまうって話でもないが、お手伝い禁止令的なものを出されている以上フラン先生の家事手伝いはちょっとばかし気が引けてしまうんだよな。

 

後、お手伝いなんてしたらイレイナが言っていた休息どころじゃなくなってしまうんですよね。先程窘められて漸く心を落ち着かせることができたのに、これでまた身体を動かしたらイレイナとの貴重な時間が無駄になるだろいい加減にしろ。

 

「……先程も言った通り、とある方から接触を止められていたんですけど、どうしても聞きたいことがたくさんありまして」

「……聞きたいこと?」

「時として人間は好奇心が災難と化す事を知っていても知識欲に負け、好奇心の赴く侭に知ろうと行動を起こしてしまうものなのですよ」

 

俺とイレイナが揃ってため息を吐いたことにフラン先生が怒る──なんて学園系ドラマにありがちな生徒と教師のやり取りはなく、さも当然の如くため息や懐疑的な視線を受け流したフラン先生は、得意気な表情で俺にそう言う。

その姿、正しく鬼メンタルである。

邪険にされてもそれをコミュニケーションの一環と思い、普段通りの性格で人に接するフラン先生に、俺は涙が止まらない。

 

「で、聞きたいことってなんすか」

「すぐ答えを聞きたがりますね。誰に似たのでしょう」

「そりゃ……あれっす、生まれ持つセンスってやつなのではないでせうか」

「うふふ」

 

では、その感動を与えてくれたお礼代わりに質問くらいならキッチリ答えて好感度アップを狙おう。

そう思い、自分が今できる最大限のクソザコスマイルでフラン先生に接すると、その言葉に気を良くしたフラン先生が一言──

 

「イレイナとオリバー君は恋人同士なのでしょうか、ということです」

「……」

「らぶらぶですか?」

「は?」

 

衝撃的な質問をしやがった!

いや、いや、いやいやいや。

何を言っているんだフラン先生。

そう言おうと思った口を、フラン先生の笑顔が止める。

無言の笑みが醸し出す圧力。これはフラン先生の紛れもない武器の1つであり、もれなくその笑みに魅せられた者はいつの間にか会話の主導権をフラン先生に握られてしまう──そんな武器。

詰まるところ、俺はフラン先生に綺麗なカウンターを返されてしまったということになる。

畜生、誰だお礼に質問くらいなら答えようとか言い出した奴ッ!!

 

「……ちらっ」

 

うん。

そうだ、こういう時はイレイナに任せよう。

思えばこういう時、常に頼りになるのは冷静沈着でハキハキと自分の意見を言うことが出来るイレイナさんだ。まあ彼女の冷静さが際立つほど優柔不断な俺の情けなさが際立ってしまうのが辛いところではあるのだが、今はそのようなことも言っていられない。

さあ、イレイナさん!フラン先生が作り出した根も葉もない噂話を事実という暴力で破壊するのだ!

もれなく非モテ&彼女いない歴=年齢+前世な俺の心がボロボロになるが、キミの名誉のためなら甘んじて受け入れるさ!

さあ、来いよ!

事実で殴って、来いよ!!

キミならキッパリと『違います』って言ってくれ──

 

「うーあーうー」

「うーあーうゥ!?」

 

うーあーうーじゃ伝わらねェッ!!

なんだお前!!なに難聴系ヒロイン演じてんだ!?

というかここにきて取り憑かれたフリって……あぁ、何やってんだって言いたいけどめっちゃ可愛い……きゃわわで強く言えないよ……!

 

「……私はフラン先生にちゃんと言いました」

「何を?」

「私達が特別な関係ではない特別な関係だということを」

「どういう意味だよ」

「あなたはどうなんですか」

 

漫画のような関係。

あいや冗談です、ちゃんと言うから杖を頭に突きつけるのやめて。

 

「わかったよ、ちゃんと言う。イレイナが言ったのに俺が黙秘じゃフェアの欠片もないもんな」

「……ちょろいですね」

「あああああぁぁぁぁ!?!?今!!何かめっちゃ屈辱的な事を言われたような気がしたんですけどぉ!?」

「うるさいって言いました。……いや、本当にうるさいんでやめてくれませんか?」

「あっはい」

 

イレイナさんから割と切実にそう言われたため、大人しく引き下がる。

兎にも角にも頼みの綱だったイレイナさんがポンコツったので、半ば強制的に俺が彼女との関係を説明しなければいけなくなってしまった。

えぇ、わかっていましてよ。こうなる状況になる可能性があったことくらい分かっていましたわよ。

イレイナさんがこういう時に取り憑かれたフリするのも最近増えてきたしな。

尤も、なんでそれをやっているのかは知らんのだが。

 

「フラン先生、俺とイレイナは……」

 

なのでここは少しだけ頑張ってみよう。

何、案ずることはない。少しだけ頑張って事実を伝え、俺の女性経験の無さを露わにすれば良いだけだ。

何も嘘をつけなんて言っていない。事実と、想いと、これまでと、これからを。

疑いようのない事実と確約に、誠実で在れば良いだけの事なんだから。

 

「別にそういう関係じゃないです。けど、俺達お互い魔法の道を辿った上で、逢うって確約してるんで。だから時間を奪うって意味では師匠であるフラン先生に許可を貰わなきゃかもですね」

「堂々と交際宣言ですか?先生少し悲しいです」

「だから違うと言っておろうに」

 

盛大に勘違いをしてみせたフラン先生に、軽くツッコミを入れる。

これでも真面目にツッコんだつもりだ。本来なら訂正した部分をまるで聞いていなかったフラン先生に「なんでやねーん!!」と叫んだ後に頭しばき倒しているところだったからな。

んで、激おこのフラン先生にわからされると。

即オチ2コマかな?

 

「なるほど。つまりオリバー君はイレイナと付き合ってはいない。しかし遠くない未来で逢う約束……こほん、確約をしていてそのために私に許しを乞おうとしていると……そういうことですね?」

「フラン先生が壁として立ち塞がるのであれば」

「では、私はイレイナとオリバー君の間に立ち塞がる壁となりましょう」

 

壁。

多くの約束事には、その過程の上で胡座をかいて立ち塞がる壁がある。

しかし、その壁を乗り越えた瞬間に視界は一気に開け、新たな世界や未来、その続きで待っている約束事が壁を越えた人を祝福してくれる。

俺は今も昔もそう信じて疑わないし、想いの強さと叶えられる確率は比例すると本気で信じている。

青臭いといわれるかもしれない。馬鹿だと嗤われるかもしれない。それでも信じてしまっているし、それしか見えない。

だから、俺は。

壁を目の前にした俺は、その壁を乗り越えないワケにはいかないのだ。

 

乗り越える以外の選択肢を、持っていないのだ。

 

「……壁?」

「ええ、壁です」

 

先程まで温厚な雰囲気を目と表情で作り出していたフラン先生が途端に厳しい表情を浮かべることで、完全にスイッチが切り替わった。

嘘をついて壁をすり抜けられれば楽だろうけど、楽を選ぶつもりはない。

射抜くような視線に負けず、俺は恐怖心を煽る壁に()()()()()()で答えた。

 

「仮に私が拒否をしたとして、あなたはどうしますか?」

「認めてくれるまで諦めないの一択で立ち向かいましょう、何度でも」

「おや、好戦的ですね」

 

フラン先生の不敵な笑みは、見聞きしたもの以上の恐怖心がある。

大人の笑みと言えば聞こえは良いが、その実見せられているものは「愛弟子を誑かす得体の知れない幼馴染」を疑う()()を見定める笑みだ。

実に気分が悪く、その視線に晒されているのが面白い。

その視線にニコリ。クソザコスマイルで応え、俺は言葉を続ける。

 

「フラン先生は、俺のことを大切な一人娘にも近しい愛弟子を掠め取ろうと決心した悪代官だと思っているのでしょうが、それは誤解なんです」

「いえ別にそこまでは言っていないです」

「自分で言うのもなんですが、俺は言ったことには責任を持ちます。幼馴染を大切にすると決めた年から欠かさずに行った誕生日前夜祭、プレゼント、魔力の塊パーリーナイト。何よりも優先した彼女との日々、高め合い、競い合い、ボコボコにされた青春時代」

「あの、えっと……はい、ご愁傷さまです」

「つまり何が言いたいのかというと、俺はイレイナ第1主義ってことです。イレイナの事が大好きで仕方ない。彼女が喜んでくれることならなんだってしてあげたくなってしまう──それくらい俺は彼女に殺られてしまっている」

「えぇ……」

 

実際、出会ってからの日々がそうだった。

イレイナという少女の可愛さに固まってしまったあの日から、今日に至るまで。俺は目を凝らさずとも見えてくる彼女の様々な面に負け、殺られてきた。

 

確かに、色々言われたりする時はある。

「お前は俺の母か」と叫びたくなるほど、勉強に関して口酸っぱく言われてきたし、人をおちょくる才能に恵まれているが故の小悪魔っぷりも遺憾無く発揮された。

今日みたいに無茶なことしてたら休息を勧めてくるし、知らず知らずのうちに気負ってたら何も知らないフリして一緒にいてくれたり。

知り合った誰かのために何かをしてしまうイレイナさんのお節介は、人によっては忌避されるようなものなのかもしれない。

 

それでも、自分のことには人一倍一途かつ真摯で、何より可愛くて。

その上で俺みたいな奴のことをずっと優しく見守り、気にかけてくれていた大切な人(イレイナ)に何を物申すことがあろうか。

仮に俺を見て「実の所はムカついてんだろ?イレイナのお節介なんていらないんだろ?」とか思っている奴がいるとするのならば、そいつの観察眼は赤ちゃんレベルだ。

俺はもう──出会った時から、否。

もっと前から、イレイナさんのことが大好きで仕方ない一般人なんだ。

 

「そんな俺だからこそ、1つだけ。これだけは絶対に譲れないっていう芯があります」

 

だから、もうフラン先生にもハッキリ言わせてもらう。

思えばハッキリと声に出して、あまつさえそれを他人に言うのはシーラさんに夢のことを話した時──イレイナさんと確約した割とすぐ後のこと以来だ。

イレイナに聞かせるのだって、もうずっと前のこと。

それでも。

それでもハッキリ言わなくちゃいけない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()からこそ、フラン先生の圧にひれ伏し、言葉に詰まるなんてことはしてはいけないのだ。

それは──信じてくれている人に失礼な事だって、俺にも分かる。

 

「俺は1度友と確約した事を裏切る人間にはなりたくない」

「!」

「壁、皆の許可、能力。そんなもの、これから乗り越えて見据える未来に比べたら、遊具同然」

 

フラン先生の目を見据えて、芯の通った声で告げる。

その言葉に驚いたのかは分からないが、鋭い目つきを若干開かせたフラン先生。それでも、もう言葉が止まることは無い。

溢れ出した思いの丈が濁流のように口から流れ、嘘偽りのない誠実な言葉と化してフラン先生の耳に響く。

 

「俺は、イレイナと一緒に道を歩むって決めた。だから、その未来に向かってまっすぐ、誠実に進んでいくだけです」

 

最後にそう言って、締める。

しゃい……言い切ったんだ、あのフラン先生相手に……言い切ったんだぁ。

目を瞑れば愛弟子を取られそうになって情緒不安定のち様々な魔法で悪い虫を追っ払うフラン先生が見えるよ、と軽く現実逃避をしていると不意に漂う良い香り。

何事かと思い目を開き、現実に帰還すると頭に手を置かれる感触。

こ、これって……!!

 

「フラン先生の……なでなで!?」

「はい」

 

そう、なでなでです。

誰がどう見ても美人というであろう先生の、なでなでです(2回目)。

そして何より、至近距離。

目と鼻の先にある先生のご尊顔に俺の涙腺は崩壊しそうです。

嗚呼、先生は女神なり……!

 

「合格です」

「え、それは……イレイナと数年後に!?」

「はい。先生、あなたの熱い思いの丈に破壊されました」

「イチャイチャしていいってことっすか!?そうですよね!?そうでなくともそういうことっすよね!!」

「ええ。尤も、会話の節々に虚言や恥じらいが見えた場合は問答無用でしばき倒すつもりでしたが……」

「おいおいおいおい死ぬわ俺」

「ですが思ったより──否、それ以上に」

 

そこまで告げたところで、フラン先生が目を細める。

その瞳はまるで懐かしいものでも見るかのような暖かな眼差し。その瞳に記憶されたフラン先生の思い出がどのようなものであるかは初見さんの俺には皆目見当もつかない。

それでも、フラン先生の眼差しが厳しいものとは真反対に位置するものになったことはわかる。その瞳のまま、俺の頭に手を置いた星屑の魔女は、俺の顔をしっかりと見据えると、一言。

 

「もう少し頭撫でていてもいいですか?」

「やーだからそれはキツいって言ってんだろ撫で返すぞこら」

「そんなこと言って、本当は?」

よろしくお願い致します

 

「うわぁ……」とドン引きでもしているのかと疑いたくなる。いや、実際にドン引きしているのであろうイレイナの声を無視して、俺の頭を更になでなでしやがった!

いや、もう……ここまできたら自分の姿を疑うレベルですよ。

なんで良い歳した14歳がシーラさんを筆頭とした年上美人に頭を撫でられたり可愛がられたりするのか、正直俺には分からんのです。

世話になった人の子だからという人も勿論いるかもしれない。事実、俺もそう思っている。

けど、あまりに……なんか、こう。おかしくないですか?頻度多すぎませんかと思うワケです。

とはいえ、なでなでされることが嫌だとは言っていない。

今後とも、なでなでしてくれる他者が存在するまで俺は他者の掌に甘える所存である。

 

「強い心を持つ人は、いずれ夢を果たすと。そう私は思っています」

「えっ」

「一途で在り続けること。その想いの強さに勝るものはありません。どれだけの魔法や能力を修めていようとも、心のない者には人も夢も結果も、なかなか付いていきません」

 

とはいえ、ずっと浮ついた心境のままで終わることはない。

先程までの甘ったれた雰囲気を締め直したフラン先生が俺の頭から手を離すと、語りかけるような優しい声色で言葉を紡ぐ。

その言葉の内容は、優しい声色には似つかわない教示。

先人の言葉は偉大だ。

言葉の一つ一つを咀嚼するべく、俺は褌を締め直した。  

 

「当然、想いの強さだけではこの先うまくいかないこともあるでしょう。しかし、その想いの強さがなければ習得することができないものがあるということも事実です」

「そんなものですか」

「ええ、割とそんなものです。心あってこその技や体だと、そう思いませんか?」

「……それは、はい」

「なので、その想いの強さ。決して忘れないでくださいね。この先頑張れば、もてもての人生も夢ではないでしょう」

「なんだとッ!?」

 

そしてすぐに緩んだ。

やー。やっぱり真面目ムーブは俺には合わないんやなあって。

だってほら、今まで頑張ってきたツケが祟ってきたのかは知らんけど口から勝手に大声が出てるし。

制御できない高揚感が身体を支配し、気付けば大袈裟なガッツポーズで歓喜を表現している俺。

心が強いとは何なのか。

 

「あなたにそっくりな方がそうでした」

「マジですか!!」

「現地妻量産機です」

「っしゃーい!!!!!」

 

そんな不真面目でファニーな行為を犯した罰が当たったのだろう。

気がつけば背筋を凍らせる、痛いほどに向けられた眼差し。

ああ、その威圧感は数少ないイレイナパパの遺伝ですか?と尋ねることすら叶わぬ恐怖の瞬間は、俺が後ろを振り向き確約の中心人物である1人の少女の名前を呼ぶことで始まる。

先程までの高揚感は鳴りを潜め、頬からは滴る冷や汗。

ああ、やってしまったなと直感で悟った俺は、絞り出すように一言。

 

「い、イレイナ……」

「良かったですね、現地妻量産機さん」

 

さあ活目せよフラン先生。そして空を駆ける小鳥たちに、森羅万象の全ての物たちよ。

これこそが自称怖いもの知らずのオリバーさんが唯一恐怖したイレイナさんのお仕置き&説教タイムだ。

覚悟の準備はできているか?

俺はできていない。

 

「重婚するような人が幼馴染に存在していたこと、しっかりと記憶しておきます」

「……トリプルスチールかな?」

「とっとと頭冷やして明日に備えてください」

 

誰か助けて。

 

 

 

 

 

 

あれからフラン先生に「私の部屋のお掃除してくれませんか?」と頼まれ、フラン先生がイレイナにしばき倒されたり、結局家にお邪魔した挙句夕食を3人で楽しんだりして一日を終えた。

その行為が試験を迎える前の俺に対して気を遣ってくれた結果か否かは分からない。聞いてもはぐらかされるばかりで、断定することも出来ない。

それでも、その行為が俺の心を打ったのは確かで。

イレイナさんの言葉、そして心に潜んでいた緊張を思い出させることすら許さぬ2人の行為は、図らずも俺を自然体の儘試験に向かわせる。

勇ましく、逞しく、刻む鼓動に合わせて歩を進め。

その歩が刻んだ結果が夢を叶える1歩となったり、色々あって──

 

 

 

 

そして。

その日まで穏やかに流れていた時は2週間後に進む。

 

 

 

*1
アニメ観てから原作を買った勢

*2
byイレイナさん

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。