どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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原作でいうとぶどうふみふみの話から切り裂き魔の中間に書かれた日記。


常に女性が近くにいる黒衣の死神さん

 

 

 

唐突ですが、私には親友と呼べる存在がいます。

山吹色の髪に中性的な顔。そして、それらが織り成す柔らかな雰囲気と笑顔は彼の髪色である山吹の花のように綺麗な──そんな魔法使いさんです。

 

幼少の頃から本を読むことが好きだった私は、同年代の友達というものを大して作らない傾向にありました。家に帰れば、待っているのはお母さんから買ってもらった本の数々に当時から大好きだった物語である『ニケの冒険譚』。

生まれてこの方趣味に悩まされることのなく、趣味を謳歌していたからでしょう。当時の私は、友達というものに大した関心がなかったのです。

 

そんなコミュ障路線まっしぐらな状況を心配したお母さんの紹介により出会ったのが、その親友でした。

当時から短く切られた髪は風により靡き、私の呼びかけに応じて振り向いた時に見えた碧眼は吸い込まれるように綺麗で、それらが織り成す美しさに思わず言葉を失いそうになったのは、ここだけの話です。

 

ともあれ、そのような出逢いから紆余曲折を経て1つの確約をするにまで至った私達は今日までそれぞれの目標と、確約の内容である1つのゴールに向かって歩いていきました。

その過程で、私は『灰の魔女』として自由に空を翔ける魔女に。

そして、親友は──

 

『おい、聞いたか?最近ここで起きた窃盗団の事件、あの『黒衣の死神』が1日で沈静化させたらしいぞ』

『ああ、アイツだろ?山吹の髪のやべーやつ‥‥‥依頼先の街の可愛い子たちが百合ってると悶え始める特殊性癖で有名な‥‥‥』

『そうそう、この前は()()()()と一緒に潜入捜査してて‥‥‥』

 

魔法統括協会内部では名前の知らない者はいない『黒衣の死神』として、様々な人を助ける魔導士となっていました。

今、私が滞在しているこの街でも少し前に大規模な窃盗事件があったらしく。その手口は相手の気を失わせる精神干渉系の魔法を使った卑劣非道なものだったと聞きます。

そのような事件の主犯である窃盗団を黒衣の死神と呼ばれた親友は、僅か半日で壊滅状態に陥れ事件を沈静化させてしまったのです。

 

因みに報酬はキッチリ貰ったようで、お母さんの約束をしっかりと守っていることに安堵しつつ、私は行先の宿屋で紅茶を啜ります。

 

「……」

 

なんというか。

些か悔しさも抱きつつ、それでいて嬉しさも存在する複雑な心境と言えば少しは言葉になるのでしょうか。片や様々な人を救い、依頼を颯爽と解決する『黒衣の死神』さん。片や住所不定の、良いことも悪いことも等しく手を出す『灰の魔女』。どちらが立派な人かと問われれば間違いなく黒衣の死神さんだという答えが出るでしょう。

当たり前です。彼は死神なんて大層な渾名を付けられても己の信念を曲げず、どんな時でも助けられる人を助けてきました。そのような人に私が立派か、そうでないかの対決で勝利を収めることなど叶う筈がありません。

本当に複雑な心境です。

やってらんねーですよ。

 

「……灰より煤がいいって話ですか」

「イレイナ様、紅茶のお代わりは……」

「ください」

 

そんな彼ですが、実の所私が滞在しているこの街のみならず、かつて私が滞在したことのある国や街でも多くの事件を沈静化させてきた実績を持っています。とある日は、花の咲き誇る街の近くに蔓延る生気を養分とする花畑にて、養分となりかけていた女性を助け、元凶を摩訶不思議な魔法で抑えることで街の人々の安全を確保したらしく。

成り行きでこの街に滞在し、不意に話しかけてきた女性に招待された大きな家にて、彼女の兄からその話を聞いた私は、それはもう久しく聞いたその名前に大層驚いた記憶があります。

 

『随分前にアルテミシアを助けて貰ってな‥‥‥まあ、感謝しているよ。あの男には』

『はあ、そうですか』

『それはそうと、最近アルテミシアが紫のライラックばかり見つめてため息を吐いているんだが、心当たりはないか?』

『自分で調べてくださいシスコンさん』

 

蛇足ですが彼は花畑の危険を摘むついでにアルテミシアさんが本格的な兄離れを起こすきっかけを作ってしまったらしいです。

何してんですかね、あの人。

 

また、とある日は亜人の子どもを襲って売り飛ばそうとする人達を返り討ちにして、逆に警察に突き出したらしく。これは親友の独断専行ではなく、親友の師匠である人の弟子──つまりは妹弟子にあたる人と行ったのですが、非常に危ない橋を渡った出来事であったと獣人の2人は語っていました。

燃え盛る火の中で助けた子ども達が見たのは間一髪で短刀から少女を守った紫髪の少女と、ナイフを持つ数人の男に相対し『この姉妹を愛する心ナッシングかよッ!!』と憤る山吹の髪の魔導士さん。

 

『……あるわけないでしょう、こんな人達に』と睨みを利かせる魔女の方を尻目に得意の魔力の弾丸を打ち据え敵を無力化した親友は、2人の顔を見ると優しく笑いかけます。

 

『もう大丈夫、非番だが俺たちは魔法のお巡りさん。後は俺達に‥‥‥いや、石蒜のおねーちゃんにお任せだな!』

『責任を擦り付けないでください。2人で背負って然るべき尊い命でしょう』

『ごめんなさい』

 

なんて、傍から見れば『あなた達熟年のコンビですかそうですか』と言いたくなってしまうような会話を繰り広げつつ、結果的に2人の子どもの命を救ってしまった2人。

流石だと認めざるを得ないのは、その後のアフターフォローに終始徹底し、2人の居場所を確実に作り上げたということでしょうか。

現に今、ふらりと立ち寄った民家で採れたての料理を頂いた私はその()()()()()()()()()()姿()をしっかり目に焼き付けているのですから。

 

『私たちね、オリバーさんと紫の魔法使いさんに助けてもらったの!!』

『そうなんですか』

『でね、ミリーナがね!オリバーさんのこと──』

『え、エリーゼ!やめてよっ!!』

 

それはそうと、どうやら『黒衣の死神』なんて大層で聞いた本人が赤面しそうなあだ名を付けられた親友は、以前吹聴していたうんたらかんたらなハーレム生活とやらを謳歌しているみたいです。

良かったですね、ハーレムさん。

 

「……1人より複数がいいって話ですか、現地妻量産機さん」

「どのお口が……ではなく、イレイナ様。紙が皺になってますよ」

 

それからしばらくした後、私は門兵さん曰く領地に入ってしまった瞬間に誰だろうと嘘を付けない正直な身体にされてしまうおかしな国でとある魔女に出会いました。

その魔女の名前はサヤさん。私の魔女名と似たり寄ったりの『炭』の魔女名を師匠から授かった彼女は、初めて出会った日と同じように私にくっついて、べたべたしてきます。

それでも、あの時の依存度の高かった頼りなさげな彼女とは見違え、魔法統括協会のエージェントとして旅をしながら仕事をする立派な人として──または、エイヘミアさんの依頼を共に解決する良き相棒として、私の隣に立ち、飽きることなく話題を提供します。

その際にサヤさんから伝えられたのは、なんと彼女がオリバーの後輩であり、師匠であるシーラさんが急用の際に行われる彼の講義を姉妹共々受けたという話でした。

 

『ぼくのセンパイ、オリバーさんなんですよ!』

『──え』

『いやもう、普通ならじょーげ関係とか色々あるんですけどオリバーさんにはそういうのなくて楽でしたし、何より学ぶべきものが多くてタメになることばかりでした』

『……あ、えと。はい』

『流石イレイナさんイチオシの親友さんですね!ちょっとおばかな所はありますけど、いっしょに居て苦にならないっていうか……落ち着くんです!』

『……良かったですね』

『え?』

 

正直驚きました。

世間は狭いと思いましたし、何よりオリバーと共に鍛錬、日常生活の数時間を過ごす彼女を何処か羨ましくも思いましたし、その話の中で出てきたモニカさんという少女がオリバーを徹底マークし、彼の薫陶を受けているということを知り、何故かむかっときたり、こなかったり。

しかし、私も大人です。

一時の感情をサヤさんにぶつけるほど子どもでもありませんし、それがきっかけでオリバーの交友関係に淀みが生じてしまえば、彼の足を私が引っ張ることになってしまいます。

そうならないためにも、私は大人で在り続けたのです。

 

『彼は嫌がらせや強要の類をしません。時々女の人に困ったことをする人ですが、これからも信頼してあげてください』

『やだなー、ぼくもミナもオリバーさんのことは信頼してますし、師匠と同じくらい大好きですよ!』

『……大好き、ですと?』

『もちろん、イレイナさんには負けますけどね!なんていったってぼくはイレイナさんのことを──』

 

勿論、サヤさんは頼もしかったですしサヤさんと出会ったこと自体が喜ばしいものでした。何せ、このようなしがない旅人である私を慕ってくれるような人です。

彼女のべったり具合に鬱陶しいと思うことはあれど、嫌うなんてことは有り得ません。

それでも、思ってしまうわけです。

サヤさんの近い距離感。

溌剌とした笑み。

このように日記を書き綴る時に不意に視界に入ってしまう幾多の贈り物。

それを見た時に、ふと。

考えてはいけない、霞のような感情を。

 

……勿論、事細かには書きませんよ?

書かないんですけど、そういう気持ちに至ってしまうということだけでも綴らないと気持ちの整理がつきそうにありません。

なので、端的に書かせていただきましょう。場合によってはこの部分だけ滲ませて抹消するという断固たる決意を抱いて、私はこの気持ちを言語化するに相応しい文字を書き綴りました。

 

早くあなたに逢いたいです。

 

やっぱ消します。

 

「イレイナ様……ああ、おいたわしい……」

「ほうきくんにデレデレなあなたが言いますか」

「違います、誤解です。物は大切にしてください」

 

 




「ははっ、お前がここまで有名になるなんてな。鼻が高いよ、黒衣の死神(素)」
「カッコイイですね、黒衣の死神さん!!(煽り)」
「黒衣の死神……大層な渾名を付けられましたね(良心)」
「別にどうでもいいです(無関心)」
「死神いいわね!じゃあ私はマフィ──げぇぇぇぇぇぇ(ゲロ)」

「誰か助けて」

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編
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