どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
対戦よろしくお願いします。
26話「平原にて」
そこは何もない、平原でした。
建物の類は見当たらず、何処までも広がる緑に上空から差す暖かな日差し。その日差しに終わりは見えず、上空を見上げれば白雲ひとつない青が空一面を占有していました。
風の音が何処からともなく、聞こえてきます。
身体を包む凱風に身を委ねると心地よい気分に至り、予想外の所で旅をしていることに対する生きがいを発見しつつ歩みを止めます。
青と緑以外、そこには何もありません。
舞い降りた場所に、
「……平原、だな」
「はい、平原ですね」
平地となっている緑を歩くのも程々に、私達は程よいクッションのようになった芝に寝転がります。くしゃっと心地よい音が響き、心を落ち着かせる草木の香り、そしてその後の静寂。
それらが心地よい気分でいた私達の心を更に良いものとし、まるで家にいるような、故郷に帰ったかのような安心感が胸にすっと入っていきます。
私の隣で欠伸をする山吹色の親友の存在が、その気持ちを更に棹らせました。
「国ないやん」
欠伸混じりの声で、山吹の魔導士はそう言って伸びをします。
「面白おかしい国があるって言うから文句言わずに「しゅきしゅき」言いながら付いてきたの。これ、どうしてくれるん?」
「さて、なんのことでしょうか……」
本当になんのことを言っているんでしょうね。
私にとっては本当に覚えのないことなのです。いつ、どこで、私の人生の中でパンを何個食べてからの出来事なのか、そこら辺をはっきりしてくれない限りは何をすることもできません。
「嘘つき、明日から1週間白米確定な」
空に広がる青を見上げながら、山吹の魔導士はそう言いました。
短く切られながらも、艶のある、それでいて上質な糸の如く感触を想起することのできる山吹の髪が、風に揺れます。
それはそれとして無実の罪で食事のメニュー強制とか有り得ませんので、その髪を携えた頭に一撃を加えます。
山吹の髪の魔導士は悶絶しました。
正にしてやったりと言った感じですね、はい。
「……ここ、城が建っていたんです」
「へぇ」
「真面目に国を運営して、不正もなく、それでいて清廉潔白。色で表すなら白しか有り得ない国とまで言われていました」
「なるほど、つまりサヤちゃんからイレイナさん成分を抜き取った感じかな」
「真面目に話しているんでふざけないで聞いてください」
「すみません」
山吹の魔導士さんは、そう言うと続けます。
「原型なくなるくらいの反乱が起きたか、もしくは国が国で在る事を止めたのか」
「さあ、それはどうでしょうね」
原型なくなってますから証明のしようがありませんよね。
「もっと些細なことかもしれません。大きいサイズの犬が集団で国を襲ったとか」
「お前の言う些細ってそのレベルなの?というか犬を敵扱いって……猫派拗らせ過ぎ──」
「ほら、見てください。ここに犬の足跡があります」
「人の話聞け?」
聞いてますとも。
あなたの話を聞き逃す私ではありません。
何年腐れ縁やってると思ってんすか。
「……真面目なだけでは破滅から逃れられないということだろ?」
「……」
「俺のやってることは仕事だ。当然品行方正が求められるし、清廉潔白は当然。自らの行った事に嘘をつかず、それでいて人として道理の通った正しい行動をしなければいけない」
山吹の魔導士は寝転がっていた状態から起き上がり、私を見下ろします。
そして、
「けど、たまには腹の底から笑わなきゃな」
と、優しく微笑み、誰もが慕ってしまうような──事実、何人もの女の人を仕留めてきた彼なりの笑みと言葉で
その声は、芯の通った言葉。彼が幾度として声にしては実現してきた、信頼することのできる音でした。
「……それなら良かったです、──黒衣の死神さん?」
「やめなさい」
「とはいえ、2年前は存在していた国がここまで跡形もなくなってしまうのは解せませんね。予想としては衰退してはいるものの崩壊は逃れていると思ったのですが……」
彼の言葉に
城は廃墟どころか完全に、跡形もなく、綺麗さっぱり片付けられており、跡地とは思えないほどに地も整備され、挙句の果てには草木すら生えていました。
本来、跡地や廃墟はその名残を残すものです。壊れかけた建物、物を使い、古した痕跡。その他にも多くの人の影が見える──そう私は記憶しています。
それにも関わらず、何故ここには人の影がないのでしょうか。
「……もし、その国が清廉潔白で品行方正なフリしといて、影ではやることやってる国だったら?」
「?」
「実は魔法使いのことを食い物にして、品行方正、清廉潔白とは真逆を往く悪い奴らなら──」
山吹の魔導士さんはそのように語りながら、くすくすと吹き出しそうになる口元を抑え、にへっと笑ってみせます。
「……なるほど」
「聡いレナなら気付けるでしょ?」
「ええ、そうですね。──ノル」
その笑みは、子どものように華やかで。
これまでの生涯、後悔なんてひとつもなく。それでいてこれからの未来も全力で遊び尽くす──そのような気概を持った、魔導士の笑みでした。
「どうせあなたがしっちゃかめっちゃかにしたんでしょう」
「えー、別にしっちゃかめっちゃかにはしてないよ。モニカちゃんをスカウトして、その帰りに立ち寄った国で物見遊山と観光とデートしたってだけで……」
「でーと、ですと……?」
「あ゛」
山吹の魔導士の名は、オリバー。
服は彼のアイデンティティでもある黒のローブ、そして日によって変化するものの、やや比率の多い山吹色のネクタイに、白いワイシャツ。ローブの右肩付近には彼の身分を明確にすることができる見慣れたバッジ。
靡く山吹色の髪と、どこの誰に貰ったかも分からないブレスレット。
そして、彼は。
魔法で人を導く士として4年間、多くの人を救い、導いた人でした。
「半年間、下っ端確定ですね」
「やだ、下じゃなくて隣にいたいもん」
「なら、今は私と景色を楽しんでください」
ぶりっ子の真似して気持ち悪い山吹の魔導士に、私は告げます。
「離れないでくださいね」
私はそして立ち上がり、ほうきを手に取り空を翔ばたきます。
山吹の魔導士は「あっ、待ちやがれい!」と捨て台詞を吐き、ほうきを携えたと思えばすぐ、私の隣で翔ばたきました。
不意に山吹の魔導士が視線を下ろし、その視線に私も釣られて下を見ます。
「……」
「笑ってるね、かわいいね」
「黙ってください下っ端さん」
「ひどい」
そこには。
私の視界、いっぱいに。
まるで故郷のような平原が、果てしなく広がっていたのでした。