どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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大体ひとつの話を4-5話位に分けて書こうと思っています。


31話「旅の始まりと競箒文化」1

 

 

 

レースの国。

競箒(けいそう)という1つの文化を語るには決して外すことのできないその国は、僕の生まれ故郷。

建物の屋根の奇妙な湾曲。路地の真上の網のようなロープは、僕にとっては本当に懐かしいもので、眩しいものであった。

その国の街を歩き、幼い頃の記憶を辿り、また歩く。そうしてたどり着いたとある集合住宅の二階の一室。

その部屋のドアを二回たたい……ここは幼い頃の名残で三回叩いて数秒待ってみる。

すると、部屋のドアの鍵が開く音と同時に一人の女性が姿を現した。

 

「はい、どちらさまで――」

 

そして、女性は絶句した。視界に映りこんだ僕の姿が数年前に、この家に入り浸っていた少年の面影と被ったのだろう。

とはいえ、問題はない。その理由は、その少年と僕が同一人物だからだ。かつてそうしたように、右手を軽く上げて、その女性の反応に応える。

 

「ドロシーのおかーさん!」

「……もしかして、あなた」

「お久しぶりです!」

 

彼女が僕のことを完璧に思い出してくれるように、昔の面影は出来るだけ残して。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に久しぶりね。確か、まだ私が現役の頃だったから……」

「うっす!もう数年以上前の話になるっす!うっす!!」

「うふふ、元気なところは本当に変わらないわね」

 

再会後、部屋のリビングでドロシーのおかーさんが作ってくれたアツアツの珈琲を啜る。

子どもの頃には馴染まなかった、苦い珈琲の味。それが無事に飲めるようになった、その事実は僕の身体が大人になったということの何よりの証左となる。

しかし、内面の方はそう変わっていないらしい。

優しい笑みを見せたドロシーママの表情は現役の頃と同じく安心感を与えてくれる。

それこそ、親友の手紙に綴られた病気なんて気にもしない素振りで。

その事実は、僕の内面は子どもの頃と大して変化していないという決定的な証拠となり得た。

 

「変わったって言ったら……病気の方は大丈夫なんですか?」

「病気……心臓のこと?」

「はい。見た感じとても元気そうで……その!親友から手術も受けたって聞いたけど、やっぱり心配で……」

 

子どもの頃。

まだ僕が小さな少年だった頃、目の前に座る人はこの国を代表する競箒の選手だった。

自由自在に箒を操り、持病のハンデにも負けずに勝ちを重ね、価値を高めていったすげー人。

勿論僕は男で、彼女や幼馴染の女の子との性差の違いは火を見るより明らかだったけど。

当時の僕はその人が持つ全ての格好良さに憧れて、気が付けばその人と同じ道を追いかけていた。

だからこそ、親友からの手紙に元気がなくなり、その理由が彼女の病の悪化だということを知った時は本当に落ち込んだ。

目標とした人の不幸が、自分の不幸のようにすら思えて――本当に悲しかったんだ。

 

「もう、あの時と比べたら本当に良くなったのよ?」

「そうなんですか!?なら──!!」

「だけど、箒はダメ。もうブランクもあるし……治ったって言っても魔力を使うような激しい運動はできなくて……あの子からも止められてるの」

「……あの子、とは。まさかドロシーですか!」

「うふふ。もうそろそろ帰ってくるだろうから、元気な顔を見せてあげてね」

 

優しく微笑んだドロシーママの表情が明るいものとなる。

と、同時に窓の外からほうきに乗った魔法使いたちが通り過ぎて行った。

疾風の如く速さ、それでいて湾曲した屋根には当たらないように旋回する制御能力。

このほうきの操縦能力の高さと、それに熱狂できる環境は、紛れもなくレースの国の醍醐味だ。

……ま、まあ。端的に言っちゃうと賭博に燃える博徒予備軍達とも言えるっちゃあ言えるんだけど。

それでも、この熱さが。この光景こそが。

レースの国の良いところであり、僕がこの地に帰ってきた理由なんだ。

空を見ながら、そんなことを回想していると、不意にドロシーママが僕の方を見て問いかける。

 

「それはそうと、君はどうしてこの国に帰ってきたの?」

「え、それ聞いちゃいます?」

「……大方分かってるわよ?けど、最後の抵抗、というか……まあ、お母さんとしては……うーん、うーん……」

「ならこの際聞いちゃってください!悩むより言った方がスッキリすると思います!僕の心の師匠がそう言ってました!」

「それを君が言っちゃうかぁ。

 ……なら、改めて。聞いてもいい?」

 

観念したように問いかけるドロシーママに、僕は胸を張って答える。

 

「ドロシーの連勝記録を止めて、求婚する為に来たんですッ!!」

 

「ついでに、手を繋いでデートするために!」──と畳み掛けるように。

 

 

 

競箒という文化の詳細は、まあ端的に言えば箒のレースだ。多くの者が時間と労力をかけ、稼いだお金で箒に乗る競箒騎手を応援し、その騎手の勝利次第で賭けたお金が増えたり、減ったりする賭け事。

僕は、その競箒という競技の()()になるために他国で修行を重ね、この地に舞い戻った──競箒騎手だ。

んでもって、僕はその騎手として。修行先の大会にて10連覇を達成した……自分で言うのもあれだけど、なかなかの実力者。

プロデビューしてからはなかなか勝てなかったけど、とある人との出会いが僕を変えた。

在り方とか、乗り方とか、気の持ち方とか。

勿論箒の乗り方は天才的で、開いた口が塞がらないくらいだったけど、技術という言葉だけでは表せない山吹色の髪の魔導士の存在が、臆病で仕方なかった僕の競箒騎手としての道を拓いてくれたんだ。

 

『魔法は心だ、少年』

『こころ……?』

『誰を乗せたいのか、何を勝ちたいのか。人や物への思いやりもそう。目的と、それを貫き通した先にいる人への想いもそうだな。

 キミだけにしか分からない心が、魔法をより強くするんだぜ?』

 

あの時、優しく微笑んでくれた山吹の魔導士の言葉を僕は生涯忘れることは無いだろう。

魔法は心。かつて教えてもらった『在り方』は、今の競箒騎手としての僕を僕たらしめているから。

だからこそ、忘れない。忘れられない。忘れるわけがない。

そんな確信が、僕にはあった。

 

「それにしても」

「?」

「昔はドロシーの箒をメンテナンスする職人さんになりたいって言ってたのにね」

「うっ……!そ、それはぁ……ドロシーママがかっこよかったからぁ……!思わずドロシーに啖呵切っちゃって……!!」

 

茶目っ気たっぷりなドロシーママの一言が僕の胸に突き刺さる。

そうだ。この際だから白状してしまうが、僕は1度抱いた夢を放棄してまで競箒騎手の夢を追った過去がある。

しかも幼年期に、競箒の天才である美少女幼馴染に「きみのほうきをなおすあいぼうになってみせましゅ!」とか何とか言ってその子をたいそう喜ばせた上での所業である。

クズである。

とはいえ、魅せられてしまったのだから仕方ない。僕はドロシーママに魅せられた1人として、魅せられたことにより生まれた夢を追ったのだから後悔はない。

むしろ、クズだろうがなんだろうがそれを後悔しちゃダメだとも思う。

自分が心に決めて、その上で幼馴染と約束したっていう結果が既に付いている「夢の塊」を、僕が否定しちゃダメだよな。

 

『男が競箒騎手!?身の程をわきまえなさいよ!というかこのわたくしの!わたくしが競箒騎手になった時の箒のメンテナンスは!?誰が受け持つのよっ!!』

『ごめんシェリーの姉御ッ!!身の程は確かに分かってないけど、僕は憧れちまったんだよ……!!あの紫の髪のご近所競箒騎手に……!!』

『あね……〜っ!!さんを付けなさいよダボスケッ!!』

『どうしてわかってくれないんだ姉御!もしかしてジェラシー感じちゃったのか姉御!可愛いぞあね――ゴッ゛!!』

 

……ま、まあ。

最初はドロシーママの言う通り、両親の影響で競箒騎手の箒のメンテナンスの仕事に就くことを目標にしていたこともあって、色々といざこざはあったのだけれど。

紆余曲折あって、僕は他国で競箒の修業をすることになって、こうしてレースの国に帰ってきた。

無論、レースの国に帰ってきた理由は1つ。憧れ、夢見た競箒騎手として活躍し、この国の歴史を塗り替えるのだ。

そして、我が国の誇るハートのエース様を負かして、その上で告白するのだ。

 

「で、でも!ちゃんと別れ際の約束の通り……!!否、確約の通り!!僕はドロシーとの約定を果たした!後はもうどれだけ恨み節を言われようが構わない、胸を張って求婚するだけさ!

 いいよ!恨み節!!グーパン!!国中箒で引きずり回しの刑!!来いよッ!!!」

「……」

「うおおっ!なんかもう心のスイッチ入った!!ちょっと今から外でドロシー見つけて抱きしめてきます!!今どこにいますか、ドロシーママ!」

「もう帰ってきてるわよ?」

「……はぇ?」

 

ドロシーママが、そう言って指を差す。

釣られて、指の差す方を見る。

その時点で僕はドロシーママの言っていることが嘘ではないということを悟っていた。というか、ドロシーママは茶目っ気もあるけど嘘はつかない。そういう事実を長年の付き合いで理解していた僕は、心のどこかでドロシーママの言うことが本当であると理解し、その上で『あーっ、ドロシーママったら茶目っ気たっぷりの嘘ついちゃってぇ!!』みたいな希望的観測を抱きつつ、指の差す方を視線で捉えた。

 

「……ぅ、ぁ」

 

そこには。

ゆでダコもびっくりな位に頬を紅潮させていて。

その上で、その美しい外面を箒の柄で隠そうとしていて、全くできていない可愛くて仕方ない幼馴染が。

目の前で後ずさりしながら、ちょっと涙を流しながら、その場に存在していたのでした。

 

「しゅ……シュー、くん?」

「ほ、あ、が、ががっ……」

「……その、私の事。……すき、なの?」

 

あ、あ……あれー?

こういう時、どうするんだっけ。

目の前で女の子が泣いてて、頬を赤らめてて、その上で過去の話を聞かれてて……!?

あっ、やっべぇ!めちゃくちゃ恥ずかしい!!

というか先ず宣戦布告しなきゃ!!いやまあレースの国絶賛連勝中、目下敵無しであらせられる無敵の人に宣戦布告とか客観的に見てもイカれてるけど!!

けど、取り敢えず勝たなきゃ!!勝って!その上で告らなきゃ!!

そうじゃないと僕のプライドが!競箒騎手としてのプライドが──

 

「──ずっと前から好きでした!!僕と結婚してくださいッ!!」

「!?!?!?!?!?」

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

アニキ……山吹の魔ど──兄ちゃん助けてあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!

 

 

 

 




ドロシー→原作6巻『競箒』にて登場する競箒騎手。お母さんの病気を治そうとレースでお金を稼いで、その上で新聞配達のバイトもしている頑張り屋さん。14歳なのにちんまりとしてて可愛い可愛い……

シューくん→本名は別。ドロシーのお母さんの現役時代に魅せられた競箒騎手(男)。修行先の国で10連覇達成後、レースの国へ帰国。次の目標は幼馴染である天才騎手のハートをゲットすること。

山吹の魔導士→シューくんの修行先の国でどちゃクソラッキースケベなハーレム生活を模索していたド変態魔導士。
なお、自制と自重を師匠の元に置いてきたため早速同伴の保護者に頭をぶっ叩かれた。
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