どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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33話「旅の始まりと競箒文化」3

 

 

 

「このお店にしましょう」

「おー……いい雰囲気の店じゃあないか」

「でしょう。何せ今の私、お金持ちですから」

 

 数分後。あちらこちらとレストランや喫茶店の類を探し、『これ』と言える外観と内装を持った料理店を探し当てた私とオリバーは意気揚々とお店へと入っていきました。店内に入るとよく見られる木製のテーブルに椅子が規則正しく並べられており、一番奥にはカウンター席が8席ほど。喫茶店のような静けさとはかけ離れた喧噪がやかましいですが、国規模でのレストランのお昼時と言えばこのくらいの喧噪は当然といえば当然。

 極端に格式が高いわけでも低いわけでもないお店の雰囲気が、どこか心地よく感じる空間でした。

 

「んー……よし、窓際にでも行くか」

「奇遇ですね、同じことを考えていました」

「つまり俺達以心伝心?」

「まるで意味が分かりませんね」

「あっ、おい!待ちやがれい!」

 

 辺りをぐるりと見渡すと、ウェイターさんやウェイトレスさんとの会話が弾んでいるように見える──常連さんのような方々がカウンター席を陣取っています。と、なると必然的にカウンター席は除外され、中央の席か窓際の席の2択を迫られることになりますが。

 数秒の逡巡もなく、私は窓際の席に歩みを進め、山吹の魔道士さんも私の隣を歩きます。

 選択したのは窓側の席。窓から見えるのは国の景色と、程よく差し込む太陽の光。

 ここでなら、優雅なランチを楽しむことができるという確信が私にはありました。

 

「さて、何食べましょうか」

 

 窓際の席に座ると、私はテーブルに置かれているメニュー表を眺めながらオリバーに尋ねました。

 すると、オリバーは私と同じくメニュー表を手に取り──一通り眺めた後に「店長のオススメとか気まぐれランチセットとかないのかな」と天井を眺めます。

 そんな都合の良いメニューそうは無いと思うのですが。

 

「んー……迷うなぁ。依頼先ではレストランに行くなんてことなかったし……」

「そうなんですか?」

「ああ、そういや言ってなかったな。俺、依頼先が余っ程離れてない時って大体料理長……学生食堂の快楽調理師さんに保存の効く弁当持たされてたんだよ」

「はぁ」

「だからレストランでメシを食うってことがあまり無かった。あってもテキトーな露店でパンを食うだけだった。パンを食っている時は何故かイレイナさんと繋がっているような……そんな気がしたからな」

 

 じゃあ今日は米食ってください。

 

「恵まれた職場環境で何よりです」

「ああ。下宿先もメシも用意してくれてたからな。至れり尽くせりの環境じゃなかったら今の俺はなかったと思うよ。

 ……あ、そうそう。こっちの支部は毎日サヤちゃんがイレイナさんと妄想の中でイチャイチャしてる愉快な職場だ。もし良ければイレイナさんも顔を出してみたら──」

「あ、すみません注文お願いします」

「俺まだ注文決めてないんですけど!?」

 

 何かうるせーことを言っているオリバーの話を聞き流しつつ、片手を上げて店員さんを呼びます。

 すると、数分もかからない内にエプロンを付けた女性の店員さんがこちらへやってきました。

 先程までカウンター席にて忙しなく働いていたにも関わらず、疲労の色など欠片も見せない店員さんは、笑顔で私とオリバーを交互に見て、

 

「いらっしゃいませ。ご注文、お伺いいたします」

 

 と、元気よく注文を尋ねるのでした。

 見た目は20代でしょうか。腰まで伸びた小麦色の髪を後ろで結び、それでいて落ち着きと慎みのある振る舞いが、大人としての雰囲気を醸し出しています。

 そのような店員さんの紫紺の瞳が私を捉えると、その視線に応えるように私はメニュー表の一部分を指差します。

 

「シチューとパンをお願いします」

「かしこまりました。セットのドリンクの方は如何されますか?」

「コーヒーで」

「かしこまりました」

 

 選んだのはシチューとパン。それからコーヒー。

 ごくごくありふれたメニューではありますが、食事に奇抜さを求める必要はありません。

 いつも通り、自分の好物を、それなりに。そうすることで、私の中での食事は一日の中での幸福となり得るのです。

 

「そちらのお客様は如何されますか?」

「じゃあ俺も彼女と同じもので」

「かしこまりました。ドリンクの方もコーヒーでよろしかったですか?」

「大丈夫です。──あ、彼女のコーヒーはブラックで。んでもって、ミルクと砂糖をそれぞれ別添えでお願いしてもいいですか?」

「かしこまりました」

 

 と、まあ。

 そんなことを考えながら、私の中での昼食の最適解に満足感を得ているとオリバーが私と同じメニューを注文し──私が注文し忘れていたことまで注文していたのです。

 この瞬間、私のメニューの最適解は崩壊しました。まじで業腹です、この幼馴染どうしてくれようか。

 

「……」

「あ、頬が膨らんで……悪ぃ、けど好きだったんじゃなかったか?コーヒーの味の微調整」

「それはそうですけど。……真似しないでくれません?」

「フッ……これは戦略なんだよ、イレイナさん!」

 

 なんの戦略ですか。

 

「同じ料理を食べることでイチャイチャぶりをアピール……!もし俺が席を外してもナンパ男を近寄らせない……牽制球なのさ!!」

「昼食でナンパ男さんを牽制するのやめてくれませんか」

 

 というか、それでナンパ男が消え失せるわけないでしょうに。

 流石にナンパ男を舐めすぎです。

 

「まあ、ナンパ男さんを牽制したい気持ちはわかります。あの人達は魔女の優雅な時間をいとも容易く潰しやがりますから」

「イレイナさんはナンパ男を引き寄せる魅力的な美人さんだからな。現に今もチャラ男1号とふたりきりでイチャイチャラブラブしているわけであって……」

「は?今聞き慣れない単語が聞こえたんですけど訴訟していいですか」

「うぇーい!サヤちゃんさん見てるー!?あなたの大切なイレイナさんですがー……なんと今、俺とふたりきりでーす!!

 くっやしーのぅ♪くっやしーのぅ♪」

 

 オリバーがここには居ないサヤさんを煽り倒している間に、コーヒーが2つ運ばれてきます。

 どうやら先程の小麦色の髪の女性店員さんは常連さんの接客に戻ってしまったようで、別の方が持ってきてくれたみたいです。

 お洒落なマグカップに入れられたコーヒーからは、特有の香ばしい香り。その香りを嗜みつつ、私はコーヒーの味を堪能するのでした。

 

「……へー、聞いてくれよイレイナさん」

「なんですか?」

「俺の読んでいる新聞によると、この国の競箒。なんと女性で5連覇している猛者がいるらしい」

「それはそれは。皆さんがその人にお金を賭けるので簡単には儲けられない……しかし、大穴が当たれば大儲けですね」

 

 そんな私を他所に、オリバーは新聞を読みながらコーヒーを啜っていました。何処から取り出したか分からない出処不明のその新聞は、どうやらこの国の情報が記されているらしく、有益な情報に目を通す姿は彼が魔法統括協会のエージェントさんだということを黒衣とバッジがなくとも雄弁に示していました。

 

「新聞、読むんですね」

「おや、新聞に嫉妬しちゃったか……隣空いてるぞ、一緒に見るか?」

「耳腐ってるんですか?」

「返しエグくない?」

 

 いつの間にか、眼鏡まで付けた山吹の魔道士さんの雰囲気はさながらできる社会人さんです。

 まあ、彼の性格を知っている私からしたら虚構も良いところなんですけどね。

 けど騙される人は騙されてしまうんですよね、悲しいことに。どのように取り繕っても、彼は百合に悶え、目指す目標に真っ直ぐ歩みを進めてしまう誠実なお馬鹿さんなのです。

 

「別に嫉妬なんかしてません。ただ、勉強も読書も苦手だったあなたが進んで新聞を読むようになったことが意外に思えただけです」

「ああ……そういう事か」

「挙句の果てにはその眼鏡です。いつからあなたは知的な様を装うようになってしまったのですか」

「喫茶店でイキる学生みたいだろ、笑えよイレイナさん」

 

 あっはっは、面白い冗談ですね。

 まあそれはそれとして。

 

「眼鏡は伊達だぞ。これがないと集中出来ないから勝手に付けてる。後は……これ付けて講義担当すると、生徒に舐められないんだ」

「え、……教鞭を執っているんですか?」

「教鞭なんて大層なもんじゃないけどな。精々シーラさんが過労と責任で気ィ狂いかけた時の代役みたいなもんだ」

 

「フラン先生やシーラさんの凄さを痛感する毎日だよ」と、新聞から顔を覗かせたオリバーが笑います。

 彼はそう言って謙遜しますが、その若さで師である方の教鞭を代わりに執ることは並大抵のことではありません。

 やり始めに時間がかかるだけで、事を起こせば類稀な集中力を発揮するオリバーのことです。彼の魔法統括協会での生活に不安等は抱いていませんでしたが、まさかこれ程とは。

 この4年間で成長した外見に、魔法に、立場。

 いよいよ私は彼に勝てるものが無くなってきたような──そんな気がしました。

 

「凄いですね」

「だからそんな大層なもんじゃないって」

「そう言って色んな人の賞賛の矢印をへし折ってきたんでしょう。昔から自己卑下は本当に得意な人でしたし」

 

 なので、オリバーはもう少し今の立場を誇って良いのです。

 4年間頑張るだけでも大変な事象に耐え抜き、その上で私との約束を守ってくれた現在地は、決して謙遜するような実績などではありません。

 口ではあーだこーだと言いますが、4年以内という約束を。確約と称した約束を律儀に守ってくれたことがどれ程嬉しかったか。

 筆舌に尽くし難いその喜びは、きっと言葉では伝えきれないでしょう。素面の私がそう考えてしまうくらい、本当に嬉しかったのです。

 

「幼馴染の賞賛くらい素直に受け取ってください。あなたはすげー人ですし、やべーやつです」

「お、おー…………お?今の褒めてた?やべーやつって褒め言葉として受け取って良いのか?」

「……」

「何も言わんのかーい!」

 

 まあ、その実績に比例するように頭のおかしな所、彼の変態性も右肩上がりに向上しているのですが。

 この国に来てからというもの、先ずは国に興奮。その後に百合を探してきょろきょろはぁはぁ。挙句の果てには魔女を煽り散らかし、怒らせる。

 前科3犯など朝飯前の山吹の魔道士さんは、今日も今日とて私の気持ちなど露知らず、国と百合に興奮し、私を煽り散らかすのです。マジできれそうです。

 

「おいっ!!お前らししょーの店で何やってんだ!!敵情視察か!?」

「それはそうとイレイナ、キミは眼鏡をかけたりはしないのか?」

「あの、前々から思っていたのですがあなたは私を着せ替え人形か何かと勘違いしていませんか?」

「思っていない!ただイレイナに可愛い衣装を着てもらって!その上で写真に撮って!トレーディングカードにしたいだけだッ!!」

「馬鹿なんですか?」

 

 それはそうと、先程からやけに店内が騒がしいですね。

 いや、騒がしいのは元々なのですが、騒ぎというか咆哮というか、怒りの矢印というか、騒がしさの種類というか。それらが先程の喧騒とは180度変化したように見受けられます。

 とにかくなんかうるせーです。右耳が痛くなってきました。

 

「無視すんなよっ!お前ら、さっきししょーの道場見てただろ!!乗っ取るつもりか!?更地にするつもりか!?そんなことぜってーさせねーからな!!」

「ハァハァ、イレイナさんの眼鏡姿……知的な私ハァハァ……」

「悶える所間違えてますよ。お願いですからブレーキ踏んでください。というか悶えないでください」

「あいや、サヤちゃんやミナちゃんにも来て欲しかったですなぁ……」

()()()()()ですと……?」

「あ、やっべ」

「聞けよッ!!」

 

 なんか今雑音が聞こえたような気がしますがスルーしましょう。

 ええと。先程から何故か店内が騒がしくなってましたが、ようやく理由が分かりました。

 ヒントはオリバーが眼鏡をかけたタイミングと、視界の端で捉えたウェイトレスさん達のひそひそ話です。

 想起されるのは過去の学校での出来事。年齢が上がってくるにつれて外見や知力、そして何より魔法の才能。ありとあらゆる分野において頭角を現したオリバーは、落ちこぼれと笑われていた少し前までの評価が年齢とともに変化していったのです。

 

「……」

「?……どしたのイレイナさん。さっきからずっと」

 

 外見はあどけなさと可愛さが残る姿から女性に受ける中性的なものに。魔法はシーラさんの助力もあり様々な魔法を行使できるようになり。そして知力はコツコツと積み重ねた読書と勉強の成果から優秀と称されるまでに成長し。

 そうした結果から発生したのは誹謗や中傷の類とは違うひそひそ話。

 本人達は聞こえないように話しているつもりなのでしょうが、私の耳には過去のひそひそ話も今、行われているひそひそ話も聞こえています。

 さて、それはどのような内容なのでしょうか。

 

「ねえ、あそこにいる眼鏡の男の人……カッコよくない?」

「ほんとほんと!旅の魔道士さんなのかな……新聞を読んでる姿も知的で素敵なのねー!」

「お腹減った」

 

 そう、ガールズトークです。

 女性の方のみで行う、ガールズトークなのです。

 ……誠に不本意ながら、ガールズトークなのです。

 

「……おや、オリバー。口元にソースが」

「まだ何も食べてないんだよなぁ。何言ってんだこの幼馴染──いたたたた……!ストップイレイナさん、それソースじゃなくてほっぺ!ほっぺもげちゃう!!」

「牽制です」

「なんの!?というか絶対他の理由があっ──いたたたた……!!いたたたた……!!」

 

 他意?あるわけないんじゃないですかんなもん。

 これは牽制です。あなたが私にそうしてくれたように私も牽制という名の睨みを利かせているだけです。

 とはいえ、ここはオリバーも涙目になってきたことですし、ここは心を穏やかに。慈愛の気持ちを以て解放します。

 一流である灰の魔女は飴と鞭の匙加減も天才的なのです。

 

「……」

「え?なんか笑顔の種類おかしくない?なんでニッコリ笑ってんの?さっきからイレイナさんの気持ちが分からなくて怖い……興奮する……」

「無知も時として罪になります。さあ、オリバー。あなたの罪の数を数えてください」

「罪?罪……。

 !……ピロリロリーン!オリバーさんはぁ、イレイナたんのことが大好きなだけの魔導士だからぁ、罪とかそんなのいらないのー☆」

「ちっ」

ひぃ

 

 先程からふざけたことを抜かしやがるぶりっ子さんに無性に腹を立てた結果、汚い言葉が私の口から漏れます。

 とはいえ、そのような状況において思想と性癖をTPOで変えることの出来る山吹の魔道士さんは最強でした。

 情けない声を上げて怯えながらも『……一周まわってこういうのもアリだな』とか抜かしてやがる山吹の魔道士さんは何故か鼻息が荒く、興奮している模様。

 どーせ今度は『舌打ちをして、ほっぺたをつねった腹黒い私』に対しての可能性がうんたらかんたらというしょうもない理由で、心臓と顔面に血液を集めているのでしょう。

 メンタルぶっ壊れてるんですかね、この人。

 

「しゅ、シュトローム!?こんなところで何してるの!!」

「ゔぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙……゙!」

 

 ……。

 先程から右耳だけに音が響き、本来の喧騒とは違った種類のそれが聞こえてきていたことは理解していました。

 そして、私はあれこれと知恵を絞って喧騒の理由を受け流し、堪えきれないものには幼馴染を協力を仰ぎ、牽制し、興奮させ。そうして喧騒の理由をひとつひとつ納得し、何とかできるものに対しては何とかしてきました。

 それでも右耳からは声が響き、珈琲を啜る音すら聞こえず、あまつさえ心配するような泣き声まで聞こえてくる始末。

 こうなってしまったら、どうしようもありません。親友との優雅な昼食の時間は名残惜しいですが、ここは現実から目を背けずに──

 

「僕達の゙道場が潰れ゙ちゃう……!」

「つ、潰れるって……こちらのお客様はただの善良なお客様よ?」

「だって゛……!さっき、ししょーの道場の入口で……゛ジロジロお金について話してて……!このままじゃ、ししょーの道場、潰れ……うえ゛ぇぇぇぇ……!!」

「こ、こらっ!泣き虫はやめなさいって私と約束──ああもう!私が悪かったわ、心配かけてごめんね……」

 

 それはそうと、先程の騒がしさの原因はなんと予想とは違い男の子が私達に対して怒っているだけなのでした。

 さて、どうしましょうかねこの始末。

 

「おねショタ、だと……!?」

 

 ちょっと黙っててください。

 

 

 

 

 

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