どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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「海の住む街」

 

 

 

常夏を少し過ぎ、過ごしやすさが勝ち始めた今日この頃。

例に漏れず休暇を取り、幼馴染との2人旅に興じていた俺は、単刀直入に言わせてもらうと興奮していた。

まあ、その理由の大半はこうして幼馴染と二人旅をできているからなのだが、今回はちょっぴり趣向が違う。

さあ、何故だろう。何故でしょうか。答えてみよ、そこの誰かさ──

 

「そういえば、シャロンさんと出逢ったみたいですね」

「……ん゛」

「服を見繕って貰ったとか。良かったですね、ハーレムさん」

「……ち、違うんだよレナさん。これは海よりも深く、山よりも高い……そんな理由があるんだ」

「へーそーですか。服を見繕う位、別の人でも出来そうですけどね」

 

内心で語る寸前で目の前の幼馴染に答えを言われる。

あ、あいや。それ自体は別に良いのだが、1つ教えて欲しい。俺とシャロン様が出会った事実をどうして目の前の幼馴染が知っているのだろうか。

というより、この前アヴィリアやアムネシアと再会したこともバレてたんだよな。

俺の最愛の幼馴染、ひょっとしてエスパー?

 

「じゃあ今度はレナさんに頼むよ。キミの趣味嗜好で、俺の外見をレナさん色に染めてくれ」

「言い回しに絶妙な気持ち悪さがありますね……」

「じゃあ、ダメか?」

「ダメなんて一言も言ってません。

──いいですよ、明日見繕ってあげます」

 

てく、てく、てく。

俺と幼馴染の二人旅での道程に擬音をつけるのであれば、正しくこの言葉が似合う旅路だと俺は思う。

何度目かも分からない、長期休暇を用いた二人旅。その全てが、俺にとっては真新しい発見の連続で。

繰り返す旅の先で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

まあ、纏まりなんて言っても大したことは無いんだけどな。

本当に大したことはない。ごくありふれた魔導士さんの、ごくごくありふれた心境の吐露だ。

 

「なあ、レナさん」

「なんです?」

「不意に思ったんだ、レナさんの服装の無限大の可能性について」

 

そんな俺は今。

幼馴染と共に海の見える街にて、その砂浜を歩いている。

辺りを見渡せば、青と白の空、真っ青な海。感じるのは心地よい風。聞こえるのは波の音。

時々飛んでくる波の飛沫が、夏の暑さを忘れさせてくれるような──そんな気がした。

 

「無限大の可能性ですか。……まあ、私の美しさはあなたのお墨付きを頂いてますから、当然と言えば当然ですが」

「と、当然なのか!?それは……喜んでいいのか」

「そうですね。逆立ちしながら小躍りしても良いくらいかと」

「なんか思ってた喜び方と違う!」

 

海の波は、押しては引き、また押して、引いての繰り返しだ。

その繰り返しを眺めていると、自然と心が落ち着いていく。その理由が波の音からなるものなのか、押しては引いての連動性に既視感と慣れ親しみを感じたからか。

それはちょっと今の俺には分からない。

もっと大人になったら、分かるのかな。

将来、俺が奇跡的に可愛い嫁さんと幸せな家庭を築くことができた時、産まれてきた子どもに教えることができるのかな。

 

「そういえば俺、レナさんのメイド服姿まだ見れてないんだけど」

「は?何をすっとぼけたことを。ずっと前に旅先で見せたじゃないですか、あなた発案の給仕服姿を」

「猫耳を付けてなかっただろ!言っておくが、あの時の給仕服姿は所謂遊びだ。本物は違う、本物はもっと猫っぽいんだよ!装飾品に猫耳と尻尾は当たり前の世界なんだよ!」

「そんな熱弁をされても嫌なものは嫌です。というか給仕に猫耳と尻尾が当たり前の世界とは一体……」

 

まあ、それはそれとして。

 

「というより、そんなに見たかったのであれば何故あの時に言わなかったんです?」

「当然、レナさんの猫耳メイド服姿は俺だけのものにしたいからさ。来るべき時に、来るべきタイミングで要求をしますのでそこんとこよろしくぅ!」

「うわぁ……流石にそれは……」

「ぐっ……!猫耳メイド服要求の代償がエグすぎる……ッ!!」

 

周囲を見渡せば、人がまばらに、それぞれ思い思いの行動を取っている。

人がいなければ、この光景はロマンティックにもなるだろうし、恐怖にもなり得る。

ふむふむ、風の強さと時間のタイミングがポイントだな──なんてどうしようも無いことを考えつつ、俺は目の前の少女を眺めていた。

 

「……綺麗ですね」

 

潮の香りを一瞬にして忘れてしまう花のような、親しみのある香り。

隣に、近くにいるだけで感じることの出来るその香りは、今の俺にとってはなくてはならないもので。

それを感じたら、彼女の元から離れたくなくなる。

ずっと隣にいたいと思ってしまう、大切で、大好きなあなたの香りだ。

 

「ああ、海もそうだし……そういうことを呟きながら歩く白ワンピ姿のレナさんはもっと綺麗だ」

「……それは当然だと、さっき言った気がするのですが」

「そういうのって何回でも言っていいものじゃないか?ましてや、今更躊躇う仲でもないだろ」

「まあ、それはそうですが」

「それに、女の子は可愛いと言われるほど可愛くなる。これは教科書にも書かれていることだ」

「どの教科書なのかと突っ込んでいい場面ですよね?」

「……俺の頭ン中で生成された、恋愛の教科書……的な?」

「成程、焚書確定ですね」

「脳みそこわれる」

 

とはいえ、このまま隣を歩いていたら頭の中身を焚書されそうなので1歩分の距離を空けた後に、再びレナさんの歩調に合わせて砂浜を歩き出す。

──はずだったのだが。

 

「おや、こうして2人きりで歩いている時は距離を離して歩いてはいけないという約束だったハズなのですが……」

「で、出やがった……旅の魔女さんの無限増殖ルール!!やべー約束からとんでもない約束までなんでもござれの十八番……!!」

「何逃げてんですか──えいっ」

「ちょ、待っ……なぁぁぁぁ!もう逃げられないぃ……焚書確定や……!!」

「あ、そのノリもういいんでちゃんと手を繋いで歩いてください」

「あ、うん」

 

なんと、今のレナさんは俺が1歩分の距離を開けることも許さない束縛強めガールを演じているらしく。

もう随分前に交わした約束を、彼女の記憶の書庫から引っ張り出して。

俺の左手を右の手で優しく包み込むのであった。

 

 

 

「ノル」

「?」

「あの場所、一緒に立ってみませんか?」

 

しばらく砂浜を歩くこと数秒。

レナさんが指差した先にあったのは、海岸に作られたコンクリート──沖堤防の先。

その場所を指さしたレナさんは、立ち止まった後に俺を上目遣いで見る。

どちゃクソ可愛い。

 

「おー……一度は憧れるアレかぁ」

「は?急に何言い出してんすか。私は沖堤防に憧れなんて微塵も抱いてませんが」

「急にスンッ……てなるやん。犬かよ、可愛いな」

「気まぐれなのは猫の方でしょう。テキトー抜かさないで、とっとと行きますよ」

 

はいはい、顔赤くして何言ってんだか。

なんて余裕を保てたら良かったのだが、正直なところ俺に余裕なんてものは微塵もない。

レナさんの右手の体温が俺の左手を包み込んでからというもの、俺の心臓はずきゅん、どきゅん、ばきゅん、ぶきゅん。

跳ね上がって、弾んで、撃ち抜かれての繰り返しに、俺の心臓は明日にでも死にそうだ。

 

「とはいえ、平静は保つんだけどな初見さん……!」

「誰に向けて話してんすか」

「ガフッ……!おい、キミという奴はいい加減にしておけよ!?サヤちゃんの時もアムたその時も、その可愛さでどれだけの人間を蹂躙してきたと思っているんだ!!自重しろよ自重!!」

「あ、無理です。これ、自然体ですから」

「自然体でそんなに可愛いのか!?くッ……やはりレナさんは最高なのか……!」

「はい。今も昔も、あなたにとっての最高は私です」

「……レナさん?」

「言ってみただけです」

 

そんなずきゅんどきゅんぶきゅんばきゅんな心臓を落ち着かせるのは、何よりレナさんとの会話と、この雰囲気だ。

青い空、白い雲、映えるド清楚白ワンピース。

それらのロマンティックな雰囲気だけならまだしも、隣にいるのは誰よりも大切で、心の底から安心できて、安らげる人。

勿論、会話の節々でドキッとすることはあるけれど、その緊張感も込みで彼女との時間を大変好ましく思ってしまっている。

全く、厄介なものだ。ロマンティックな雰囲気も、青と白の世界も、ド清楚白ワンピースも。

その全てが俺を彼女のことだけしか考えられない、そんな病に罹るように誘導させるのだ。

 

「おおー……これはまた」

「良い景色ですね」

 

さて、そんな俺の心情吐露もそこそこに。

2人で沖堤防の先まで行ってみると、そこには砂浜で見た景色とはまた違う、新鮮な世界が様々な感覚に訴えかけてきた。

聴覚に響く心地良い波の音と、皮膚を優しく包み込む風。嗅覚を刺激する磯の香り。

そして、360度に広がる青の世界。

それら全て心を奪われそうになって──俺は、不意に隣を見た。

 

「……」

 

レナさんは、海を眺めていた。

風により靡く髪を、片手で抑えて。ずっと、その先にある景色を覗き込むように。

その姿は、俺にとっては本当に麗しく見えて。

油断したら、思わず手を伸ばしてしまいそうで。

だけど、勢いで頭とか撫でたり肩を抱いて、引き寄せたりしたらぷくーって頬を膨らませて「遊びだったんですね」とか言われる未来は透けて見えて。

結局俺は何も──

 

「……今日は何もしてこないんですね」

「え゛」

「前、高地から景色を眺めた時は肩を抱き寄せてきた癖に」

「……」

「別れ際には頭も撫でてくれましたね。それなのに今更……もしかして、ビビってるんですか?」

 

……。

 

「だってレナさん、そういうことするとぷくーって頬膨らませるから……」

「当然です、許可も取らないでこそこそと。段階を踏まずに一足飛びの行為をされる私の身にもなってくれませんか」

「それに、怒ったらレナさんしばらく口聞いてくれなくなるし……そりゃあビビるさ、嫌われたくないもの」

「なら堂々と、ごにょごにょしてもいいか尋ねたらどうですか?甲斐性なしさん」

「ここぞとばかりに畳み込むじゃん」

 

甲斐性なしとか言うな。

ロベッタに帰るぞ俺。

 

「そもそもの話をしよう。そういうことは勢いでやるからこそドキドキするんじゃないのか?」

「都合の良いように捉えないでください。いつもさせる側の意地悪なあなたには『させられる』側の気持ちなんて分からないでしょう」

「素敵なことやないですか。所謂ドキドキさせちゃう行為を臆面もなく堂々とやらかす男、惚れちゃうだろ?」

「……………………。

 …………。……惚れません」

「おいなんだ今の間」

「知りません」

 

なんでやねん。

というか結局頬がぷくーって膨らんでるじゃん。こんなん肩抱き寄せた時と結果変わらんやん。だったら肩抱き寄せた方がよかったやん。頭なでなですりゃ良かったやん。

なんて思っている間にもいつの間にか攻守交代。

すっかりご機嫌ななめのお姫様は俺の手を引き離すべく、その弱っちい力で俺の手を振りほどく。

猫かな?

 

「拗ねました、離してください変態さん」

「理不尽すぎて草」

「あなたはいつもそうやって御託を並べては人の気持ちを受け流して、へっへっへって悪代官さんのように笑うんです」

 

へっへっへっ。

怒ったレナさんも俺は好きだぜ。

 

「俺が悪代官さんなら何か不都合でも?なんならこっちはレナさんに行ってきますのキスとただいまのハグの賄賂を提供して欲しいくらいなんだが」

「人の気持ちを弄ぶプレイボーイさんに送る賄賂なんてありません」

「ええやん、プレイボーイの悪代官。あなたのためなら悪代官にでも夫にでもなんでもなってやるさ!」

「ふざけるのも大概にしてください。これに懲りたら、もう少しあなたは──」

 

と、その時だ。

強烈な飛沫がレナさんの言葉を遮り。更に強烈な風が彼女のバランスを崩した。

やむを得ない、一時停戦だ。

手を伸ばし、彼女を抱き寄せ。それでいて優しく手を回して彼女の安全を確保する。

途端に感じるのは、彼女の花のような香りと体温。抱き締められた側は不本意そのものだろうが、まあなんだ。悪くは無いな。

ちょっとしたラッキーすけべぇだ。ごちそうさまである。

 

「あなたは?」

「もう少し、節度を持ってください。……なんて」

「お前じゃん」

「……むぐ」

 

まあ、それはそれとして。

 

「レナ」

「……はい」

「誕生日おめでとう」

 

瞬間、ビクッと身体を震わせたレナさんがそっぽを向いて激しく咳き込む。

もしかしたら俺は変なことを言ってしまったのだろうか。

ともあれ、この場合は時と場合と場所、それから言葉を選ばなかった俺が全面的に悪い。

彼女の背をとんとんと優しく叩いてあげると、ようやく咳が治まったレナさんがじとーっとした目付きで俺を見遣る。

ど、どどっ……どしたん?話聞こか?

 

「……急すぎませんか」

「何を今更。前夜祭を派手にかました時点で察せよ」

「察せるわけないじゃないですか。あなたは一体私を何だと思ってるんですか」

 

誰よりも大切な人。

あいや、そんなことより。

 

「これ、誕生日プレゼント」

「……花、ですか?」

「形に残るものばっか送ってちょっぴり反省してる。使ってくれているのは有難いし、ありがとうの言葉も死ぬ程嬉しい」

「……なら、どうして」

「今後の事をふと考えた。そしたらさ、どうすればもっとあなたが喜んでくれるのかって──そんなことばかり考えるようになったんだ」

 

昨日も当然、前夜祭ってことで良いところのご飯を食べたり、2人だけの時間を過ごしたけど。

本祭は本祭でしっかりお祝いしたいと思った俺は、前々から用意していたプレゼントを杖で呼び出し、花を彼女に差し出した。

それが少し意外のようで、レナさんは花と俺を見ながら──特に花の方を見て驚いている。

ハッピーサプライズである。レナさんのその表情が見れただけでも、自分の気持ちと花言葉を重ね、勇気を出した甲斐があった。

 

「だから、花」

「……」

「花はいつか枯れて、朽ちていくものだけど。手渡した花の名前と言葉は伝わるから。

ずっと手元に残らなくても、伝えたい大切なことが伝わる花は良いって、そう思った」

「……そうですか」

「ああ、そういうことなんだ」

 

では、そんな自分の言葉を伝えられて「はい、終わりー!」かと言われれば、そんなことは無い。

なんてったって、誕生日に渡す花が些か情熱的が過ぎるものだからな。人によっては不快感を催すものかもしれないし、レナさんがこういった伝え方を嫌う場合だってある。

そもそも、この気持ちを花に込めたとして。それが彼女に伝わるか、そしてその気持ちを受け入れてくれるかというのは別問題なのだ。

俺が何とかできるのは、自分でできることの範囲内。気持ちを伝えた先に待つ運命まで何とかすることは、残念ながら不可能なのである。

 

「……」

 

なので、この先の俺がハッピーになれるかどうかはたった今、花束を受け取ってくれた数秒後のレナさんにかかっているわけなのだが。

 

「くすくす」

「ファッ!?」

 

なんか笑いを堪えきれないみたいで、花を見ながら「くすくす」と声を漏らしやがった!

い、いやいやいや。別にいいのよ?無反応よりかは笑っている方が渡してよかったって思うし、レナさんの笑顔は俺を幸せにするし。

けど、その「くすくす」って笑い方に関しては訴訟を起こしたい気分なんだが!?

なんだお前!マジでお前!抱き締めるぞオ──もう抱き締めてたわオラッ!!

 

「くす、くす……ノルのせい、で。また咳が……こほっ!こほっ!」

「そこ笑っちゃうのかいキミは!全く……人の情熱的な愛情表現をなんだと思っているんだ!」

「ほ、本当におかし……言葉も、顔も」

「顔ォ!?」

 

今とんでもない言葉が聞こえたぞゴラァ!!

というかいい加減笑うのやめろや!!さっきから俺の胸に頭くっつけて震えてるけど、言葉と声で笑ってんのバレバレなんだよ!

なんだお前!至近距離でプレゼントする()()()()()()()がそんなおかしいか!?

はーっ!こんなんなら1輪にしときゃ良かったわ!

マジで1輪にしときゃ良かったわ!!

 

「……その花と本数。それから色も。意味、ちゃんと分かってます?」

「めちゃくちゃ分かってるよ。なんならちゃんと考えてきたよ……」

「そうですか、ちゃんと考えてきたんですか。

……ごめんなさい」

「いや、いい。よく良く考えればこんな表現方法俺らしくなかった!

というわけで今から抱きしめる力を倍に──」

「受け取った感想をまだ伝えてないのでちょっと静かにしてください」

「ぴえん……」

 

ニコリと笑みを浮かべたレナさんの圧に負け、閉口。

や、ちゃうんすよ。条件反射ほんとちゃうんすよ。そりゃあ既にお小遣いも何もかもを管理されていると言っても過言ではないんだけどさ、それでも条件反射とはほんと違うんすよ。信じて……俺を信じてっ!!

なんて言い訳を内心でしていると、隙を見て俺から抜け出して1歩後ろに下がった彼女が杖を持つ。

 

「なら、私の答えは……これです」

 

そして、レナさんは。

俺にとっては見慣れた奇跡を用いて、花を9()()()()()

手元で咲く綺麗な赤薔薇。その9つは、見分けなど到底つかない程に美しく咲き誇り。

彼女はその花束を俺の胸元に近付ける──のもつかの間。

手繰り寄せようとした俺の手を掻い潜り、レナさんは久方ぶりに()()()()()()()()()()

無論、長年の付き合いだ。

こういう時の彼女が何をしようとしているのか。その思考が分からない俺ではない。

ニヤケそうになる顔を手で隠し、平静を保とうと心頭滅却を意識した。

 

「……レナさん」

「3本の赤い薔薇。そんなキザったらしいやり方であなたの気持ちに言葉で応えるとでも?」

「そりゃあ思わねえけど……でも効いてるとは思う」

「……なにを根拠に」

「だってレナさん、花束で表情隠してんじゃん」

「……」

「もしかして、9本にしたのは表情を隠すため?」

「……意地の悪いノルは嫌いです。昔から、本当に。肝心なところで、……あなたはいじわるです」

「ご、ごめんて……」

 

だって、本当なのだから仕方ない。

本人はこれで完璧を演じているつもりなのだろうが、俺からしたらバレバレ。

花束でも隠しきれない頬や耳の赤みと、こっちを弱々しく睨みつける、そんな姿が堪らなく愛おしいのだ。

それこそ許されるのならば、またあなたを──なんて、本当は思ってはいけないことを思ってしまうくらい、俺は彼女のことを……ごにょごにょしているのであろう。

まあ、それはそれとして。

これまでのイチャイチャな雰囲気が彼女にとっては劣勢に思えたのか「こ、こほん!」とレナさんがわざとらしい咳払いをする。

全く、咳払いの多い幼馴染である。その咳払いすら俺を悶えさせることにどうして気付けないのか、それが分からない。

 

「と、いうわけですので。今度はお互い、それを言葉でしっかり伝えましょう」

「……それは、新たな確約ということでオーケー?」

「さあ。それはあなたの甲斐性次第だと思います」

 

言うが否や、レナさんは増やした花ではない、俺が手渡した3本を抜き取り、残りの6本を俺に手渡す。

「ちょ、待てよ!君の誕生日になんで俺が花を貰ってるんだ!訴訟するぞ!」だなんて野暮なことは言わないし、言えない。

そんなことを言う暇もないくらい嬉しいんだ。レナさんが魔法で、手渡した薔薇を9本にしてくれたことも、その内の6本を渡してくれたことも、3本の薔薇を受け取ってくれたことも。

 

「──ノル」

「?」

「……本当に嬉しいです。ありがとうございます」

 

そうやって、花と俺を見て本当に嬉しそうに微笑んでくれることもな。

 

「さあ、次は何処へ行きましょうか」

「雪山に行こう。今のレナさんのせいで俺の情緒は滅茶苦茶だ。雪山の凍える風で心頭滅却しないと危うく君を襲いかねない」

「言っておきますが、私は段階を踏まない人とそういうことをするほど軽々しい人間じゃないので取り敢えずあっち行ってください」

「ッ……!レナさんっていつもそうだよね!いつもそうやって思わせぶりな態度で翻弄して……俺の事をなんだと思っているのかしら!」

「誰がぬけぬけとその台詞を言ってやがるんですか、えぇ?」

「い、いひゃい……ほおをちねりゃないれ……」

 

砂浜を歩く。

想定とは違う、ジャリっとした音のしない。靴を包み込むような砂の感触。

その感触に身を任せ、足跡を残しながら。俺は海の住むこの街を歩いていく。

白と、青と、君が視界に広がる、この街の今を。

 

 

 

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