どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
白い髪の妹キャラ視点です。
──信仰の都、エスト。
かつて住んでいたその故郷を旅立ち、長い旅路を経て、私たちが新しく見つけた故郷は、国名の通りの平和と、暖かな風と、日差し。そして、少しばかりの刺激的な日常と小鳥の囀りが聞こえる優しい国です。
その国の片隅に暮らす私とお姉ちゃんは、今日という日を迎えることができた何よりの理由である私達と、2人の恩人に感謝をしながら今日もワインやコーヒーを飲んだりしながらのびのびと暮らします。
かつて過ごすことの出来なかった時間の倍、それ以上の時間をお姉ちゃん達と暮らせるように、心の中で祈りながら。
……さて、前置きはそこそこに。
「ドレスです!!」
「和服だろ!!」
とある私たちの故郷の、とある喫茶店。
パン料理が美味しいとされるそのお店のテラス席で2人の魔法使いが『ドレスか着物か』で死ぬまで喧嘩しそうな勢いの言い合いをしていました。
ぎゃいぎゃいと擬音がつきそうな……いえ、実際に2人ともマシンガントークの中に「ぎゃいぎゃい!」と付け加えているのであながち間違ってないのですが、とにかくぎゃいぎゃいと言い合いをしていたのでした。
どうやらおふたりは1年前、とある魔女さんを以てして「魔法統括協会史上最も壮絶であほくさい冷戦」と称されるほどの大喧嘩を繰り広げ、そこから1年音信不通の状態が続いていたらしく。
今みたいにぎゃいぎゃいと喧嘩するようになったのも最近やっとと言った感じらしいのですが……
「何を言っているんですかオリバーさん!イレイナさんは洋で輝くんです!素人は黙っていてください!」
「な、何をぅ……!?
「和服のマリアージュは黒髪に限ります!逆に言わせてもらえばぼくの経験上、ドレスのマリアージュこそイレイナさんなんです!!少しはぼくを信じてください!!」
「ま、マリアージュ……ッ!!」
私、思うんです。
「あー、これしょうもない喧嘩ですね」と。
いえ、別に悪いことではないと思うのです。譲れないもののために自分の我を押し通すということは私自身やったことがありますし、何よりオリバーさんの
数年前の瓦の国で長々と話されたイレイナさんとの思い出話や、私とお姉ちゃんを助けてくれた時のことから見出した、オリバーさんの胸の中にある「イレイナさん」という譲れない一本線。
その一本線に私は見習うべきものを見出しました。どんな時でも大切な人のことを
「テメェふざっ……ざっけんな!いやまあ確かにイレイナのドレス姿は見たいけど!けど、ここはアクセントを考えるべきだ!!」
「あ、アクセント……ッ!」
「そもそも和服を知っているお前が何故イレイナにそれを着せようと思わない!?マリアージュなんて試してみて初めて分かるもんだ!!それを試さずに口だけで可能性を絶つなど……言語道断!!」
「言語……道断……ッ!?」
「
「ぐ……ぅ!」
でも、私思うんです。
「拘りがつよすぎるのも考えものですよね……」と。
オリバーさんの想いの強さに焦点を当てつつ、それでいて客観的に見れば分かると思うのですが、この人サヤさんと想いの強さ故に大喧嘩して、1年間音信不通になってるんですよね。
いくらお姉ちゃん大好きな私と言えども、こだわりのせいで友人と1年間音信不通になるのは普通に嫌です。
私は一本線や真心は見習いつつ、時には譲歩する──そう、モニカさんのような人になろうと思いました。
「……モニカ、お互い主張の強い年上を持つと大変ね。同情するわ」
「同情なんて無駄なことしてないで喧嘩を止めて。あなた2人のブレーキ役でしょ」
「……じゃあモニカは自分の兄代わりの先輩を止めて。私は自分の姉を止めるから」
「姉妹揃って目と耳腐ってるの?」
現在ミナさんとお喋りしている魔法統括協会五指に入るエージェント。石蒜の魔女名を持つモニカさんは、オリバーさんやサヤさんと年がそう変わらないのに人生の倍生きてるんじゃないかって位大人の女性です。
常に人の心を慮り、時に厳しく、たまに優しく人を導いてくれます。何より魔法統括協会の中でも五指に入るくーるびゅーてぃー。
見習わないなんて選択肢は私にはありませんでした。私は出会った瞬間からモニカさんのような大人の女性になりたいと思ってしまったのです。
まあ、どうしてそんなに大人なのか聞いた時に目のハイライトが消えた状態で「せざるを得ない環境だったから*1」と言っていましたが。
こんなにもくーるでびゅーてぃーな魔女さんの目のハイライトを消し、
あれですか、怪物や悪魔が行き乱れる魔境なのですか。*2
「じゃ、邪道です!!」
「テメェ今なんつったゴラァ!!!」
「オリバーさんの存在が邪道だって言ったんですよっ!!」
「あー怒らせちゃったねぇ!!オリバーさんのこと本当に怒らせちゃったねぇ!!」
あ、ごめんなさい。
自己紹介が遅れてしまいました。いえ、最初からするつもりではあったのですが、突如起こった2人の喧嘩に気を取られてしまい、挨拶するタイミングを失ったため自己紹介が遅れてしまったわけなのです。
決して私がおっちょこちょいだとか、そんなことはありません。何せ私はお姉ちゃんの妹ですから!
そんなわけで改めまして、私はアヴィリアといいます。
白く長い髪と、可愛らしいお姉ちゃんそっくりの顔つきがきゅーとな女の子です。
得意なものは魔法、苦手なものはお部屋の片付け。
少し抜けたところがあると言われますが、そんなことは全くないぱーふぇくとな魔法使いなのです*3。
さて、そんな私がオリバーさんとサヤさんのお話もとい大喧嘩に巻き込まれているのには理由があります。
『な、アヴィたん!今度相談に乗ってくれよ』
『はぁ、なんの相談ですか?』
『ふふん……着物・オア・ドレスだ!!』
『?????*4』
数年前のとある事件から始まった私達とオリバーさんの関係は、俗に言う親友というものだったと断言できます。
今となっては懐かしい出来事ではありますが、『初対面』で私のことをアヴィたんと抜かしやがった山吹の髪の魔法使いさんは、そのくーるな見た目とは裏腹にイレイナさんと女の子同士の恋愛が好きなだけのくそやろうでした。
それでも先程回想したように、誰かを思いやる姿や大切に思う心を持つオリバーさんはイレイナさんと協力してお姉ちゃんを助け出し、お姉ちゃんを騙した魔女を文字通りつるし上げた後に高らかに宣言します。
『アムネシアが俺の事を想ってくれているように……俺もアムネシアのことを想っている……!』
『ふぇっ……!?』
『つまり俺達以心伝心……!!さあ、飛び込んでこいよ!!俺の胸に!!*5』
『え、ぅ、あ……そ、それはその……つまり、ノルくんのおめか──』
『?……あ、もしかして結婚したいのか?俺以外の奴と……*6』
『えええええ!?』
『アヴィリアさん、あの馬鹿野郎突き落としておいてください*7』
『わかったのです』
と、まあそんなこともあり。
なんだかんだ言ってもオリバーさんは私達姉妹の恩人であり、イレイナさんと同じくらい──いえ、私にとってはそれ以上に感謝したい相手なのです。
そんなオリバーさんが激務を乗り越え、お金を貯め、自分の想いにしっかりと向き合ったことでようやく掴んだ等身大の幸せ。
その幸せがよりよくなるためのお手伝いをしないなんて選択肢はお姉ちゃんにも私にもありません。
だって、オリバーさんは
「……えへん」
なので今日は私の頼れる所をアピールし、オリバーさんに「ふぇー!もうアヴィたんなんて子供みたいな呼び方できないよ……ありがとな、アヴィリア*8」とか言われたり、お姉ちゃんに「流石アヴィリア!お姉ちゃん鼻が高いわ!*9」とか言われたりしてちやほやされる予定だったのですが……
「大体邪道とはなんだ!イレイナの可能性に対して邪道と言ってのけることはお前の理念に反するだろ──ぎゃいぎゃい!!」
「はぁー!?ぼくは和服が悪いと言ってるんじゃなくてウェディングで和服を着せるっていうオリバーさんのくそセンスに──ぎゃいぎゃい!!」
ご覧の通りの惨状で、入り込む隙が見当たりません。
どうやらオリバーさんは自分の知恵を振り絞っても最良の答えが見つからなかったらしく、今まで培った人脈をフル活用して悩みを解決しようとしていたらしく。
今この空間には遅れてやってくる予定のお姉ちゃん以外にも、ミナさんやモニカさん、サヤさん等の方々がいるのでした*10。
というか男の人いないんですよね。
なんですかオリバーさん、ハーレムですか。ハーレムなのですか。
「先輩、冷静になってください。ここでサヤと張り合ったところで彼女のウェディングにはなんの関係も──」
「大体お前はいつもそうだ!抜け駆けはする!プレゼントは贈る!うなじに触る!入れ替わる!ひよっこ時代に添い寝する!そこまではいいとして……あの子のウェディングを西洋式で完結させるに飽き足らず友人代表っ……!?なんか僕に恨みでもあるんですか!?」
「…………」
そんなオリバーさんの人脈によって駆り出されたモニカさんは、彼の暴走を止めようとして見事に撃沈した後に小さくため息を吐きました。
金髪の魔女さんを以てして苦労人と評される彼女の目のハイライトは、オリバーさんやサヤさんの頭のおかしな行動や言動を見聞きすることで消え失せ、無言で常備していた胃薬に手を出します。
最近はたまに使うと言っていた胃薬を錠剤から粉に変えたらしいです。世のため人のため、オリバーさんには依頼やウェディングよりモニカさんを労うことに心血を注いだ方がいいように思いました。
「姉さん、落ち着いて。ここで争っても無益極まりない。どうしても西洋式がいいのなら……私が」
「はーっ!?それを言うならぼくだって業腹ですよ!オリバーさんが東の国の何を知ってるってんですか!?東の国のイロハも分からないイレイナサンスキーは黙って西洋式で祝福してくださいボケー!!」
「幼稚にも程がある……」
そして、苦労人といえばこの人も忘れてはいけません。
先程から暴徒さんもびっくりな程に暴言を吐き、放送コードに引っかかっちゃいそうな言葉を惜しげも放つことでオリバーさんという変態さんに立ち向かうサヤさんの手網を引く『煤の魔女』ミナさん。
家族である姉のことが大好きなシスコンさんも、モニカさん同様に兄妹弟子であるオリバーさんとサヤさんの喧嘩に胃を痛めている1人でした。
「……けど、そんな姉さんも……好き……」
……い、痛めてますよね?
今なんか不穏な言葉が聞こえたのですが、こんなの見て「お姉ちゃん大好きなのですー!」みたいな感情にはならないですよね?
だ、だってそこまで言ったらシスコンさんじゃなくてただの姉びいきのやべーやつですよ!?
私、ミナさんをそんな目で見たくないのです!お姉ちゃん大好きという共通点を持った同志さんをそんな目で見るとか御免こうむりたいのです!
「じゃあサヤちゃんはイレイナの着物姿見てみたくないのかよ!お前はあの子の新たな可能性について熱く語りたくはないのかよ!!」
「うぐっ……いや、それとこれとは話が別じゃないですかぁ!私だってイレイナさんの着物姿見たいですし……!!」
「イレイナのウェディングは人生1度きりだぞ!?もっと熱くなれよ!欲望解放!理性退散ッ!!」
「う……う、うぅ……!!」
そして、そうこうしている内にオリバーさんとサヤさんの大喧嘩はヒートアップしていきます。
遂に我慢しきれなくなったオリバーさんは席を立ち上がり、机をばちこーん!と叩いた後に和装での結婚式に対する愛を熱弁します。そして、その迫力に押されたサヤさんは「ぐぬぬぅ……!」と睨みを利かせて閉口──と思われたのですが。
「そ、そんなこと言ったらオリバーさんだってそうですよね!イレイナさんのドレス姿見たくないんですか!?」
「ばっ……!馬鹿野郎お前ウェディングだぞ見たいに決まってるだろこの野郎!!ドレス姿見てみたい!チャペルでイレイナさん祝福したいよォ!!!」
「ならやりましょうよ!!何を戸惑う必要があるんですか!?着物なんてぼくがいつでもおふたりの為に貸し出しますよこのやろう!!」
「あああああぁぁぁ!!!!!」
魔法統括協会のイレイナさん大好きクラブ会員2号さんは諦めずにドレス姿で行う結婚式の良さをオリバーさんに語ります。
良さと言ってもサヤさんから発せられたのは「ドレス姿のイレイナさんいずべりーきゅーとなんですー!」的なイレイナさんにまつわること中心のメリット。
それでも自他ともに認めるイレイナサンスキーであるオリバーさんにはこの言葉が大きな攻撃となり得ます。ぐうの音も出ないほどにドレス姿のイレイナさんの良さを力説されたオリバーさんは、やり場のない怒りや愛を発狂という手段で紛らわし、やがて落ち着いたのか黙って着席した後。
「……今日からサヤの渾名を『和服イレイナの良さが分かってない子ちゃん』にする」
「はー!?」
「俺が会員ナンバー2に!イレイナさん大好きクラブのNo.2に屈すると思ったんですかぁー!?残念でしたぁー!俺は和服イレイナを諦めませーん!!」
「は……はぁー!?もー怒りました!!いいですよ分かりました!表出てくださいこのやろう!!」
「上等だオラァ!!テメェを倒して文字通り正史ブレイクじゃい!!」
くそざこ煽り厨モードに身体を乗っ取られ、サヤさんを煽るのでした。
いやもう、こんなの不毛です。
犬か猫かで死ぬまで喧嘩するくらい不毛なのです。
そして、その思いを抱いたのは私だけではなかったのでしょう。先程から頬を赤らめていたミナさんが冷静さを取り戻すと、2人の間に割って入ります。
その積極性に驚いた2人が同時にミナさんを見ると、彼女はこれまた机をばちこーん!と叩いて場の空気を無言にします。
ばちこーん!と机を叩くのはオリバーさんに影響されてのことでしょうか。
流石兄妹弟子、やることがそっくりでちょっとうらやましいのです。
「どうして両方という選択肢に至らないの?」
「は?」
「ん?」
「和と洋をどちらも体験すれば良い話。最近は会場を移して式を挙げることも多いし、和洋折衷ということでイレイナさんに何方も着てもらえば、それで解決する」
それはそうと、ミナさんの言うことは尤もです。
和服イレイナさんもドレス姿のイレイナさんも、どっちも可愛くて綺麗なイレイナさんを見れることが容易に想像できます。
掛け値なしにどちらを着てもイレイナさんには似合うと思うし、和と洋のどちらが良いかなんて正直な所好みによって別れると思うのです。
故に
だからこの話は不毛なのです。
進展のない喧嘩をするくらいならどっちもやってしまえばいい、その考えこそがこの喧嘩を鎮める特効薬になったのでした。
「……つまり、1度で2度美味しいと……そういうことだな!ミナちゃんすげぇ……!サヤの妹ここにあり、だな!」
「ですよねですよね!いやー流石ミナ……!やっぱぼくとは頭の構造が……」
「……普通に思いつくことだから」
その特効薬に2人も気づいたのでしょう。
顔を見合わせた後に憑き物が取れたかのように晴れやかな笑顔を見せた2人は、揃ってミナさんを見ると称賛の嵐に彼女を巻き込みます。
そうすると、あら大変。先程見習いたくなるほどのポーカーフェイスで不毛な争いを鎮めたミナさんは頬を赤らめてそっぽを向いてしまうのでした。
1人だけに褒められるだけならまだしも2人揃ってだと表情を隠しきれないみたいです。
ミナさんの照れた表情を見て、2人が悪戯っぽく笑うのでした。
「因みに和の結婚式となるとサヤやミナの助言や知識が必要になりますが、先輩はサヤと仲直りしなくていいんですか」
「む……」
「サヤも、いつまでも意地張ってないで仲直りするべき。恩人と親友が冷戦状態なのは……正直見てて辛い」
そして、ここでモニカさんが長らく続いた2人の冷戦にトドメを指すべく、一石を投じます。
あまり詳しく聞いている訳では無いのですが、モニカさんにとってサヤさんは親友であり、オリバーさんにとっては先輩と、全く無関係な存在ではないということははっきりと分かります。
そんなモニカさんにも2人の喧嘩には思うところがあったのでしょう。折角ミナさんが作ってくれた仲直りのチャンスでもあります。逸するべきではないと考えたのかは分かりませんが、私にはそのように感じました。
「……モニカちゃん。そうだ、そうだよな。一時期の感情で起こした喧嘩による不仲を引き摺るのはクールじゃないよな」
「……ぼく、ばかですね。モニカさんの気持ちも知らないで、先輩と喧嘩ばかり。いい加減ぼくも大人にならなきゃ……そうですよね、オリバーさん」
「どうでもいいけどその不毛な争いに私を巻き込むのは金輪際やめて」
そして、恐らくなのですが。
おふたりもモニカさんの気持ちを私と同じように捉えたのでしょう。
ミナさんの言葉により落とし所を見出し、モニカさんによって冷静さを取り戻した2人に最早蟠りの類はありませんでした。
その証拠に、向かい合って握手してます。
魔法統括協会史上、最も壮絶であほくさい喧嘩が終わった瞬間がコレです。
やってられねぇですね。
「国交回復だ、サヤ!俺達はモニカちゃんの健全な成長と発展の為に国交を回復する!!いいなッ!!!」
「ですです!そしてイレイナさんの明るい未来の為に!乾杯しましょうオリバーさん、モニカさん!」
「喧嘩なんてなかった……!戦争なんてなかったのさ……!!」
いや戦争してたじゃないですか。
なんですか、オリバーさん頭ぱっぱらぱーなのですか。
「よーっし!じゃあ和の企画は俺がするからサヤは洋の企画な!うっひょー楽しくなってきたァ!!」
「わーい!ぼくビールとワイン持ってきまーす!!」
「サンキューサッヤ!!ぶどうふみふみ頼むぜ!!」
「あははー!既製品ですよ何言ってんですかぶっ〇しますよー!!」
まあ、なにはともあれ。
おふたりの関係が改善されたこと。そして何より、ウェディングが和洋折衷に決まったので良かったです。
しかし、ひとつだけ納得していないことがあります。
それは、私がオリバーさんに対して意見をひとつも言っていないということです。
さっきまで起こっていたオリバーさんとサヤさんの喧嘩のせいで忘れがちですが、今回私やモニカさんやミナさんが集まったのは着物かドレスかの意見を出し合うこと。
それにも関わらず何も意見を言わずにさようならするのは私的にNGです。何より、ここで何も言わなければ私の思い描いていた『お姉ちゃんとおに……オリバーさんにちやほやされよう作戦』が台無しになってしまう恐れがあります。
あちーぶめんと獲得のためには最早一刻の猶予もありません。
「ま、待ってくださいオリバーさん!」
「ん?どしたん、アヴィたん」
「私は洋が似合うと思います。ドレス姿のイレイナさんいずべりーきゅーとなのです」
私なりに考えた意見を口に出すと、オリバーさんは一瞬目を見開き──その後に「そっかぁ、アヴィたんもドレスかぁ!」と頭を撫でてくれます。
後々子ども扱いされたという事実にむかっとするのですが、された瞬間に嫌な思いをしないというのが、これまた厄介なのです。
優しく笑みを見せられ、暖かみのある手で撫でられる。
それは私にとってお姉ちゃんに撫でられるのと同等の破壊力のある攻撃となり得ます。反則技です、無理ゲーなんです。
イレイナさんがオリバーさんのスキンシップを嫌がらないのも理解できます。それくらいオリバーさんの『頭を撫でる』攻撃はやべーということが伝われば、本望です。
「意見言ってくれてありがとな、アヴィリア」
「は、はい!」
「ドレス、一緒に考えてくれるか?」
「任せてください!」
まあ何が言いたいのかというと、みっしょんがこんぷりーとされたっていうことですね。
オリバーさんに頼られ、かつ頭を撫でてもらうというあちーぶめんとを達成した私にもう思い残すことはありません。
さあ、ここからイレイナさんのドレス案を考え、綺麗なドレスを着てもらうという私の物語が始まるのです!気合いを入れて、イレイナさんにお似合いのドレスを考案しましょう!そして今度はお姉ちゃんに褒めてもらって、頭を撫でて貰うのです!
と、まあ。
そんな風に私のやる気が満ち溢れ始めた頃、事件は起こりました。
「何しているんですか?」
「おう、今イレイナの結婚式の企画を考えててな!」
「成程、それで仕事もせずに油を売っていた訳ですね」
「いや、そもそも今日は休みだ、し──」
オリバーさんの顔が、言葉を言い切る前に固まります。
そして、壊れたブリキ人形さんのようにぎこちない様子で後ろを振り向くと、そこにはなんと話題の中心にいたのにも関わらず、その場にいなかった例のあの人がニコリと笑みを見せて立っていたのでした。
勿論、今回イレイナさんが呼び出されていなかったのは意図的なアレです。
オリバーさんの表情がみるみる青ざめていく様子が傍目からも分かりました。
「い、イレイナ‥‥‥」
「誰と、誰が、結婚すると?」
「あ……アヴィたんとミナちゃんかな!?」
するわけないのです。
ほら見てください、ミナさんのあのゴミを見るような表情。
実の先輩の、しかも兄妹弟子さんに向けるような目じゃないですよね。まあ何が言いたいのかというと、私の兄代わりのような人は、それくらい有り得ない嘘をついたということです。
ごーとぅーへぶん、イレイナさんによって社会的に召されろなのです。
「100歩譲ってお仕事の話ならともかく結婚観についての話に、女性の方と食事をしながら談笑ですか」
「談笑っつーか喧嘩だよ!イレイナは俺のことなんだと思ってるの!?」
「そもそもそういうのは2人で資金面も含めて話し合うべきなのでは」
「あっ…………は、ははっ。俺はこういうことの経験ないんだ、長い目で見てくれよ、な?」
「それは貴方が言うことじゃないと思いますよプレイボーイさん」
「むしろ真反対に位置する人だと思うんですけど!?」とオリバーさんが反旗を翻そうとしますが時すでに遅し。
依然としてニコリとした笑みを崩さずに、オリバーさんだけを見ているイレイナさんはその表情に似合わず、淡々と言葉を発し──
「もう一度聴きますね。お仕事はどうしたんですか?」
「あ……安心しろ!俺はいつもイレイナのことばかり考えてる。頭ん中イレイナまみれだ!」
「それは分かっています」
「……ちなみにお仕事は臨時休業です、てへっ」
「次目が覚めた時はあなたのお小遣いの桁が1つ減っています」
「ははっ、ねえ冗談でしょ?俺の小遣い今月で2回減ってるんですよ?嘘だよね、ねえ嘘だと言ってくれ」
「おやすみなさい」
死なない程度の電気をオリバーさんに放ち、彼を気絶させるのでした。
「ぎゃああああ!」と悲鳴を上げ、気絶するオリバーさんを見て同情をする人は誰もいません。
モニカさんは今日何度目か分からないため息を吐きますし、ミナさんはワインを持ってきたサヤさんと一緒にワインを飲んでますし、ユーリィちゃんはゲロ吐いて気絶してますし、サヤさんは突如現れたイレイナさんに夢中。
ここでオリバーさんのことを健気に思えるのは私とお姉ちゃんくらいのものです。
少しは感謝してください、まじで。