どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
ここは平和な国の、とある一軒家。
二階建てのごくごくありふれているようで、実は他の家よりも大きかったりする、そんな家の中で1人のお姫様が
「ふふふ……!」
少女は笑っているが、内心ではものすごい怒っていた。
自らが慕う、大好きで大好きで、いつでもぎゅーってしていたいと思えるほどに大好きなパパ。
そんなパパに昨日、甘えようとした結果「イヴはもう寝る時間よ?」とこれまた自らが慕う大好きで大好きで、いつもそんけーしているママに止められた。んでもって、寝る寸前にこっそりリビングを覗いたらパパとママが肩をくっつけてイチャイチャしてた。
その結果といってはなんだが、灰髪の髪を自らの肩まで伸ばした脱幼女希望の『イヴ』は激怒した。
必ずや、かの邪智暴虐なママをぎゃふんと言わせてやるのだと決意したのだ。
「おやくそく?そんなのしらないもんねー!」
まあ、それはともかく。
そんな激おこでプンプン丸で、ついでに甘いものとパンに目がないイヴは、鍵のかかっていた部屋に足を踏み入れると満足気なドヤ顔で「ふーっふっふ……!」と呟く。
それもそのはず、ドアを開いたイヴが目にしたのは適切な温度で保管されたお菓子の山。
「ふーっふっふ……この貯蔵庫の中身は明日のお楽しみなのさ!」と意気揚々と語っていたパパの言葉から何かを察したイヴは、自らの慕うおばーちゃんに教えて貰った
その結果が視界に広がるお菓子の山だ。
「わらうしかないとはこのことを言うのね!」と頭の中に浮かんだ思考をそのまま口に出した脱幼女希望(2回目)の小さな魔法使いはお菓子の山の近くまで歩いていき。
「むしゃむしゃ!」
「……」
本来なら擬音であるはずの音を声に出し、灰髪の少女が好物のお菓子のひとつをつまみ食いした。
「あっ、きのこの形のおかし……ふふっ、こーゆーのはしゅーのーまほうでまっしょーよ!」
無論、自身の許容範囲をわきまえている灰髪の元気娘は必要以上にお菓子を食べたりはしない。
食べきれないお菓子は収納魔法でその場から消し、お菓子の貯蔵庫ならぬお菓子の部屋をただの部屋としたのである。
「むしゃむしゃ!むしゃむしゃ!……ふぅ!これでみっしょんこんぷりーとね!!」
大好きなお菓子は、ちゃっかり頬張りながら。
「……イヴ、なにしてるの?」
「むしゃ!?」
そして、もう1人の幼女──妹である山吹の髪の女の子にバレた。
当然だ。いたずらの魔法こそ静かに行っていたが本当に鎮めなければいけない声がやかましいことこの上ない。
なんなら彼女が作戦を立案する時から尾行することを決めていた山吹の髪の女の子は、いつものポーカーフェイスとはちょっと違った胡乱とした表情で姉を見やった。
「ここ、かぎかかってたでしょ。……もしかしておばーちゃんに教えてもらった、いたずらのまほう?」
「り、リア!今はおひるねの時間でしょ!なんでこんなとこにいるのかしら!」
「それはイヴにも言えることでしょ。それに、こんな時間におやつなんてだめ。ままもそう言ってた」
「ぎ、ぎっくぅ……!」
このままでは私のけいかくがおじゃんになる!
そう思ったイヴは、苦虫を噛み潰したような表情で一瞬思考し、母譲りの悪知恵を働かせて天啓を得た。
依然として山吹の髪の女の子──リアの胡乱な眼差しはイヴに突き刺さる。
「そのしせんをやめなさいっ!」と言いたくなる気持ちをグッと抑え込み、イヴは余裕そうに笑みを浮かべた。
冷や汗がだらだらと流れていた。
「り、リア!これはさくせんよ!さくせん!」
「……」
「そ、そんな目で見ないで!それはうそじゃないの!ほら、みみかして!わたしのはなしを聞いて!」
できるだけ冷静に努めてリアの信用回復を図ろうとしたイヴだったが、いたずらの魔法、おやつどろぼう、おひるねエスケープという前科3犯の地雷を余裕で踏み抜いたイヴの信用がこの程度で回復するわけもない。
リアの視線は更に厳しいものとなり、内心でイヴは頭を抱えて絶望する。
とはいえ、胸に秘めた大きな野望を。じゃちぼーぎゃくなママをぎゃふんと言わせ、パパにごほーびのぎゅーをしてもらう大志を諦めきれなかったイヴは最後の最後でリアを手招きし、奥の手を使う。
さて、その策とはなんだろうか。
「ご、ごにょごにょごーにょ!ごにょごーにょ……!!」
「ふむふむ」
「ごにょ!ごにょごにょごにょ……!ごにょごにょごにょっ!」
「ふむふむ……。……!?」
「……リアもきょーりょくしてくれたら、ぱぱのぎゅーをはんぶんこするわ!……どう?」
そう、共犯である。
これは周知の事実というか血の定めというか、例に漏れずリアもパパのことが大好きで大好きで、可能ならばいつでもだっこしてほしいと思っている位にはファザコンをこじらせてしまっている。
そんな彼女にとって、パパとの時間の折半は魅力的で仕方なかった。
普段は無表情でぽけーっとしているリアの目が少しだけ見開かれる。
「おっけーだぜ……!」と内心でイヴは悪い笑みを浮かべた。
「……イヴはそれでいいの?」
「うん!むしろそれでいいの!」
「……あ、そう。じゃあそれでいいよ」
「りあぁ……!」
同盟は結成され、イヴとリアは協力してそこら中のお菓子を隠した。
途中でイヴが間違えてキノコの形のお菓子をつまみ食いしてギャン泣きしかけたが、それはまあ些細な問題である。
眠気を誘う昼下がり、パパはお仕事をしながら新たな百合の可能性に悶え、ママは家事をしながら晩御飯の献立を考えている今日のこの頃。
2人のお姫様達は、自分達の本分であるおひるねも忘れ、明日のパーティーに向けて暗躍を始めるのであった。
「さあ、はじめるわよリア!」
「うぃ。……ふぁぁ」
○
「と、いうわけで!」
「ぱぱ、まま」
「おかしを!」
「よこせ」
時は経って後日の夕方。
ちんまりとした2人の娘たちが、食い意地を張って2人の大人……もとい、両親にたかっていた。
晩御飯の準備を終わらせ、リビングに腰を下ろしたママ。そして、仕事から帰ってきて早々日課であるただいまのごにょごにょをやってのけたお風呂上がりのパパ。
その2人は、最愛の娘達の豹変ぶりに驚くのと同時に、顔を見合わせてくすりと笑みを零す。
なんともまあ可愛らしい反逆かと、微笑ましい気持ちになったのだ。
「もういちどせんげんするわ!おかしを!」
「よこせ」
「よこさないなら〜!?」
「やっちゃうぞ」
「私たちは〜!?」
「おかしはんたー」
とはいえ、本人たちは真面目も真面目。
それもそのはず、2人には共通認識のみっしょんがあり、そのみっしょんを攻略するまでは引き下がれないという確固たる決意を固めていたのだ。
先程から見ているこちらが思わず微笑んでしまいそうな笑顔で、「おっかし〜♪甘いもの〜♪ぱぱのぎゅ〜♪」と歌っているイヴと、「わくわく、おかしわくわく」と無表情の棒読みでおかしを期待しているリアは、1様に小躍りしながら2人の手札を期待していた。
大方、1年前のハロウィンパーティーに味を占めたのだろう。2人の食いしん坊お姫様達は、この日に甘いものを食べれるのみならず両親まで甘々になることを信じて止まなかったのだ。
「おかし、とな」
「お菓子ねぇ……」
さて、ならばこの状況をどうするかと2人は思案する。
一番の解決策は2人にお菓子の詰め合わせを送り、今日のこの記念日をめいっぱい楽しむことであるとパパは思った。
記念日やイベント事には目のないパパに「お菓子?虫歯になるからやめなさい!めっ!」なんて言う思考は持ち合わせていないし、言う資格もない。
そんじゃまあ、この日のために用意したお菓子の貯蔵庫にでも案内しようかと思ったところで、パパは自身の最愛の人に声をかけた。
「さてさて、どうするママ。俺達の大切なお姫様達が揃ってお菓子をご所望だ。貯蔵庫まで案内して差し上げるか?」
「お菓子の貯蔵庫は昨日何者かの魔法によってすっからかんになったけど」
「え゙」
そして、断末魔にも近い声を上げた。
「あなたの1ヶ月の努力に水を差すようで悪いのだけど……貯蔵庫は何者かによって開城されてしまったの。ごめんなさい」
「なんだと!?おい、どういうことだママ。お菓子の貯蔵庫には厳重なロックがかかっていたはずだ!それをどうにかするなんて、ママ位の魔法の才能がなきゃ……」
「いるじゃない。その才能を引き継いだ私達のお姫様が」
「……まだ4歳ですよ?」
英才教育の「え」の字もしてないのだが?とパパは呟き、イヴとリアを見つめる。
自分の愛した人とそっくりの灰髪と、自身にそっくりな山吹の髪。その上で2人共自分の愛した人とそっくりの外見をしており、活発に、またはクールに振る舞う様を見てパパの顔は思わず綻んでしまう。
2人の天使の活発な小躍りに、パパのドキドキは止まらなかったのだ。
「ガフッ……将来が末恐ろしいよ」
「あら、あなたと私の子でしょうに。……え、今吐血した?」
「そりゃそうだけど。……ママ似の娘達とママに囲まれて、俺の心臓は爆発寸前って話だ」
「なんならもう爆発しているような……」
軽い会話を1つ2つ挟み、パパはママの隣で優しく微笑む。
そして、その表情を見たママは。数年前とはまた違うパパのパパらしい微笑みにちょっとだけ、本人曰く本当にちょっとだけ鼓動を早くして、表情を綻ばせた。
「これからもっと、2人の成長する姿を見たいな。2人で」
「勿論。というか、そうしてくれないと……」
「くれないと?」
「……」
なので、と言ったらそれはそれでおかしいような気もするが。
それでも、ママにとってはパパのその表情がトリガーとなったのだから仕方ない。
身長差故に、少しばかりの背伸びをしたママはパパの耳元に唇を近付け、耳打ちの体勢を取る。
あまりに急な出来事に、パパは抵抗すら叶わない。「うおっ、とっ、とっ」という言葉を残したパパの耳元で一言。
「──私、拗ねちゃいますよ?」
そう言って、彼の頬に口付けた。
容赦など微塵もない。今の彼女の精一杯の愛情を込めた行為に、パパは白目を剥き気絶しかける。
それでもなんとか踏みとどまったのは自身の目の前に娘がいることと、元凶である最愛の人ともっとごにょごにょなことを経験している故か。
なけなしのプライドと経験を引っさげ、パパはパパで在った。
ママはその光景に笑みを堪えきれなかった。
「……ん、んんっ。全く、ママは人をその気にさせるのが得意だなぁ」
「悲しいことに人は大切な人の弱点をとことん突きたがる生き物なの。そう、もしあなたが耳元で甘い言葉を囁かれることに至上の快楽を感じてしまうようなどうしようもない弱点を持っていたとしても……」
「そんな弱点持ってない!ママは俺の事なんだと思っているのかな!?」
「くすくす」
尚も笑いを堪えきれないママの気持ちを慮ることができないダメ亭主は「ママから見た俺は一体どんな奴なんでぃ……」と肩を落とし、それでも自分の奥さんの可愛さや愛しさで内心で悶え苦しむ。
その傍らで「そういうところが素敵な人って言おうとしたのだけれど……」なんて言いながら、肩をポンと叩いて慰めるママの表情に嘘の類はない。
最愛の夫を慮るように寄り添うその姿は正に──
「あーっ!ぱぱとままがイチャイチャしてるー!」
「なにゆえ。……イヴ、やっぱりこのさくせんはうらめに出たんじゃ」
「しーっ!しーっ!だめでしょ、ひみつりにやってるんだから言っちゃだめ!なんのためにしゅーのーまほうでおかしを隠したと思ってるの!」
「そうはいうけどイヴ、とちゅうまでおかしを「むしゃむしゃ!」って食べてたじゃない」
「ぎゃーっ!それは言っちゃいけないおやくそくでしょ!?」
イチャイチャ新婚夫婦のそれだと思ったからイヴが吠えた!
何を隠そう、イヴはきのこ料理と同じくらいママがパパを独占する光景を見ること、その瞬間がびっくりするくらい大嫌いなのである!
具体的に言うなら、その瞬間を見たイヴが「い゛〜!」って舌を出すくらいである。
故か、イヴは2人のイチャイチャ新婚夫婦ムーブに割り込み、涙目でパパにしがみつく。
このどうしようもなく甘い世界に、最愛の娘が一石を投じたのだ。
なんだこの状況。
「2人のせかいにはいっちゃ、やー!おかしくれなきゃ、ほんきでいたずらするわよ!?」
「とりっくおあ……えと、……おかしくれなきゃ、イヴにいたずらするぞー」
「なにゆえッ!?」
そして、この日の経験の浅いリアがトリックオア……の続きを忘れ、考えるのも面倒になった結果イヴを裏切る発言を始めた。
まさかまさかの背後からの刺客に、流石のチワワの4歳児も笑えない。
パパ大好き同盟の崩壊は、目前に迫っていた。
いやほんとなんなんだこの状況。
「あいやぁ……困ったな。ぱぱには手持ちのお菓子がないんだ。貯蔵庫もすっからかんだし、これ以上のお菓子となると作るか買うか……どちらにせよ時間がかかるんだよなぁ」
数分の時が過ぎ、パパが話の流れを本題に戻す。
あれからイチャイチャ新婚夫婦ムーブに一石を投じたイヴの涙腺がリアの裏切りにより決壊しかけたり、それをパパやママのあれこれだったり、お手伝い券の1部を無効化したりすることで事なきを得たりと色々なことがあったが、それは些細なことである。
困ったように頭をかくパパの姿を見たイヴに涙腺崩壊の兆候はない。
普段通りの快活なイヴが、パパの目の前で高らかに宣言する。
「ふふっ、ぜひもないわね。そういうことなら……リア!!」
「……うぃ。ぱぱ、おかしがないなら他の方法で私たちをまんぞくさせて」
その言葉と共に、2人が小躍りしながらパパににじり寄る。
「満足……だと……!?」
「じゃないといたずらするわよ!わたしのめいけんであり、白のおねーさまから授かった『なまくら』が火をふくわ!」
「とりっく、おあ……と、……とりみんぐ?」
「なまくらじゃいたずらにならない気が……後リア、トリミングじゃなくてトリートよ?」
「あげあしとるまま、やー!ちょっとしずかにしてて!」
「まま、さくしね……」
「……」
間違いを正しただけなのだが、それがどうやらお転婆お姫様にはちょっと気に食わなかったらしい。
正妻の余裕が気に入らなかったのか、果ては自らのみっしょんに横槍を入れられることを嫌ったのか。
イヴはママにそっぽを向いて、リアはママに感謝をしつつも今はパパにたかろうとそっぽを向いた。
ママはちょっぴり寂しくなった。
「……ちなみに希望とかあったりするのか?」
「!……ふーっふっふ、その言葉を待っていたわ!!」
「待ってたのかい」
「おかしがないなら別のやり方で私たちを甘い気持ちにさせてもらうわ!」
「ほう、具体的には?」
「!……それは、私をあまーいきもちにさせるもの!いつもままがどくせんして、かんじんなときにはやってくれないけど……たまにやってくれるとすごーいしあわせになる、いっしゅのおくすり!!」
「そのおくすり大丈夫か?オーバードーズになったりしないか?」
「ふっふっふ……あまいわね、ぱぱ。そんなのとっくになってるわ!」
「なってんのかい!……で、何して欲しいんだ?イヴ」
さっきからドヤ顔の上目遣いが目立つイヴの頭の中では既にみっしょんこんぷりーとの方程式が整っていた。
パパから「希望があるのか?」の言葉を引き出し、選択権を得ること。それは自らの慕うママのひとつの常套手段であり、それを間近で見ては「ぐぬぬぬ」してきたイヴにはそのやり方が染み付いていた。
故にパパを自分の土俵へ持ってこれた──この勝ち確必至のこの状況でドヤ顔灰髪美少女が発する言葉など、たったひとつ。
「わたしを!おもいっきり!あまやかせーっ!」
「おっしゃドンと来いッ!!!」
堂々と甘やかされ宣言をしてみせた脱幼女希望(3回目)のお姫様は、大好きなパパの懐に飛び込んだのであった。
そこから先の流れは言わずもがな。
ソファーに座っていたパパの膝元に元気よく飛び込んだイヴは、最愛のパパにぎゅーっとされた後に、頭を撫でられ、髪をやさしーくわしゃわしゃされた。
その一連の行為に、イヴは無抵抗であった。
というか、それを望んでいた。
何せ、お預けを食らった一昨日ぶりのパパである。
こーふんしないわけがないでしょう、とイヴは内心で思った。
「うりうりうり!イヴは可愛いなぁ〜!」
「にゃはは〜!くすぐったいよ、ぱぱぁ!」
なおもなでなでとわしゃわしゃがイヴを襲う中、リアはとことことパパの方ではなくママの方へと向かい、これまたソファーに座っていたママのロングスカートをひとつまみ。
そうしてママを見上げると、上目遣いでリアはママに言葉を紡ぐ。
「さて、イヴが念願のわしゃわしゃをしてもらったところで。わたしもおかーさんにたかろうと思う」
「あなたもぱぱに甘えれば良いのに」
「やや、それはだめ。こーいう記念日はかぞくでたのしむってやくそくでしょ」
上目遣いでそう言って、たかろうとするリアにママは感動した。
内心では涙腺を崩壊させ、今にでも目の前の天使を抱き上げてぎゅーっとしたい気分であったが、良妻賢母でクールなママになると決めていたママは必死にその思いを覆い隠す。
「……リア」
「なに?」
「頭撫でてもいい?」
「もうなでてるよ?」
なお、既に右手でリアの頭をなでなでしている。愛と欲望が抑えきれなくなったママの限界は近く、このままの状態が続けばママがママとして生きた数年間の「らしさ」は容易く崩壊するであろう。
だって、反則だ。
普段は無表情で、ぼーっとしているような自分の娘がこういう時……甘えたい時に限って年相応の可愛らしい姿を見せてくれるなんて母親冥利にも程があるだろう。
故にママはその想いを必死に押し殺し、ご飯の支度をしようと立ち上がる。
「……もうだめ?」
「もうご飯の支度しないとだから。……ふふ、そんな顔しなくてもまたしてあげるから」
「!……それはぎょーこー。えんまんぐそく」
「その言葉誰に教えてもらったの?」
「おねーさま」
「どっちの?」
「……白の、リアおねーさま?」
「後で呼んできてもらえる?」
「うぃ」
まあ、それはそれとして娘に変な言葉を教えこんだ白のおねーさまは後でシメると決めたママは、今度こそキッチンの方へ向かうと既に出来上がった料理の方へ向かう。
「料理運ぶぞ?」という言葉を、「今日くらい娘たちを甘やかしなさいな」という言葉で制したママは、続けて一言。
「さあ、そろそろご飯にしましょう。……あ、それから」
「ん?」
「収納魔法で隠したお菓子は全部元に戻すこと。後、いっぱい食べた分、明日から3日間お菓子抜きよ。──イヴ、リア」
「ぎっくぅぅぅ……!!」
「ぎくぎく」
「隠したお菓子は貯蔵庫に返すこと。それから、ぱぱにごめんなさい。……できる?」
「……はぁい」
「ん、それはもちろん」
紡がれた言の葉は、おかしの貯蔵庫を漁ったおかしどろぼう共に対する「ごめんなさい」の要求と3日間おやつ抜きの宣告であった。
悪いことをしたらちゃんと謝る。そして、何かしらのやり方で自分を戒める。それは、どのような場面でも必要なことであり、悪いことを今後はしないようにするための儀式のようなものである。
娘達は何度も何度も失敗をし、いたずらをし、その度に儀式を行う悪ガキではあるものの、それと同じくらい失敗を糧にして成長をする。
それをわかっているからこそ、ママは失敗やいたずらを許し、その上でごめんなさいと罰の儀式は受けてもらう。
たくさん失敗して、やりたいことをやって。その上で悪いことをしたら謝って、同じことはしない。
それが娘達の1番の成長に繋がると、そう信じている。
「ぱぱ、ごめん。おかしのちょぞうこ、私たちがだいなしにしちゃった」
「……わたしも、ごめんなさい。ぱぱにおかしいがいのせんたくしで甘いきもちにさせてほしかったの。だから、こんなことしちゃって……」
「ほうほう」
「り、リアをまきこんだのはわたしなの!だからおこるならわたしをおこっ──」
「うりうりうり」
「にゃあああああ!?!?」
何より、そういう事態になっても最終的には良い意味でしっちゃかめっちゃかにして、家を明るくしてくれる人が私の夫だから。
だからこそ、安心して厳しくできるし、悪いことはごめんなさいと言えるように厳しく接することができる──なんてことを言ったりはしない、恥ずかしくて言えたものじゃない。
けど、内心ではそう思っているし信じている。
事実、「ごめんなさい」の一言でちょっとだけ暗くなったイヴの雰囲気が最愛の人の考え無しの優しさで一気に明るくなってしまったのだから。
「さあ、リアもこっち来なさい」
「え。……いいの?」
「良いも何も、お説教だ。こっち来なさい」
「あ……うん、わかっ──!?」
お説教という言葉にしゅんとしたリアの手を優しく引っ張り、片手で持ち上げた力持ちのパパは、笑顔で2人の姉妹を抱きかかえ、同じくらいの優しい力でぎゅーっとしたりなでなでしたり、わしゃわしゃしたり。
そんなパパの、ハロウィンのかぼちゃ料理やお菓子より甘い
「甘えたいんだったらそう言えー……!!素直に言って、いつでもぶつかってこーい!!」
「にゃあああ!あはは、ごめ、ぱぱやめ……ごめんってばぁ!!」
「ふふっ……ごめ、なさ……!かみやめ、むふふ……!」
「あらあら、ぱぱらしいお説教ね」
そんな3人のやり取りを見たママは料理を運びながら、その光景を「幸せの記憶」として、心のアルバムに保存する。
記念日と行事を大切にする一家の、大切な時間で行われるごくごくありふれたイベント。
この一家のハロウィンは、まだまだ始まったばかりである。