どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話 作:送検
石蒜の魔女の『独言』
私は、とある人に人生の風向きを180度変えられた。
父の罪により発生する借金。奴隷という言葉すら生温い強制送還と労働。
そのような起こり得た未来を、とある人が変えた。
山吹の髪に、漆黒のローブ。
それらを意気揚々と靡かせ、まるで下手な御都合主義のヒーローのように、華麗に颯爽と、問題を解決してしまった。
『安心して!マトリシカちゃんは……
『うわぁ!マトリー!!死ぬな!死ぬなァァァっ!』
……颯爽とは解決してなかったかもしれない。
それでも、事実として私はその人に生命を救われた。
1人の人間を媒介とした特効薬による治療。
その発想により、故郷を長年悩ませた病気を根治させてしまうという暴挙。
そして──報酬として選んだのは、お金ではなく人材。
当時、魔法統括協会の試験に向けて勉強をしているだけ。そんな何者でもない私に、山吹の魔
『御託と金はいいからさ、俺に1人。人をスカウトさせる権利をくれよ』
『へ?』
『ここに1人、魔女としての勉強を提案してみたい子がいるんだ』
この発言がきっかけだ。
以降は、風雲急を告げるかの如く事態が目まぐるしく変わっていった。
今、言った本人が回想すれば赤面するであろうスカウトの言葉の数々。
実質の追放処分、お前の家系とは関わりたくないから即刻消え失せろとでも言わんばかりの出国許可。
山吹の魔導士による滞在先となる場所での衣食住のレクチャー、保証。
言葉や文字にすれば大したことないと思われるかもしれないけれど、そのどれもが私にとっては唐突で。
それと同時に、不安にも感じた。
『オリバーさん』
出国当日。
この国の『追放処分』とは違う。街の人間は誰も付き添わない、私と山吹の魔導士しか居ない一本道。
静寂が支配するその場所で、私は山吹の魔導士の名前を呼んだ。
【オリバーさん】。
山吹の髪と、黒衣を纏った不思議な魔導士。
そして、何より私にとっては彼の行為の全てが真新しく感じてしまう、そんな魔導士。
損得勘定もするし、狡猾なこともする。
それでも人情には重きを置く、笑顔と優しさに表裏を感じることのできない、そんな不思議な人間。
そんな彼の名前を呼ぶと、決まってオリバーさんは振り返ってくれる。
──そして、優しく微笑んでくれる。
「お?なんだい、
「失礼かもしれませんが、聞かせてください」
「いいよ、言ってみ」
「……何故、私の人生を変えたんですか」
私には、人の心が何となく読める。
それは例えば、他人が向ける悪感情だったり人の笑顔の裏だったり。
そして、父の隠された思いも。
そうした能力が何故私の下に生まれてきたのかは、分からない。
だけど実際、この能力は私の手を掴んで離さず。
私はその能力で父の想いを知り、魔法統括協会の試験を受けることを志した。
それらの過去が示すように、他人の気持ちは理解出来る。
向けてくる憎悪、嫉妬。かけられる罵声や、嘆き。
そうした想いに対して、人一倍敏感なのは、私の紛れもない特技と呼べるものなのかもしれない。
「何故?人の心を読めるモニカちゃんらしくないな」
「……それは」
「分かってる癖に。もしかして、口に出してもらいたい?」
「……」
「ふふっ。うん、けど……そうだよな。思いも、気持ちも、何もかも。
──先ずは伝えなきゃ始まらないもんな」
人が人に向ける優しさには、必ず何かしらの陰があるように思う。
何時、何処で、どの瞬間に『それ』を思ったかは定かではない。けれど、心の読める私にとっては、それは日常茶飯事に行われる『当たり前』だ。
人は笑顔の裏で、人を平気に蔑む。
『大丈夫だから』という言葉に、『執拗い』、『煩わしい』、『五月蝿い』という言葉のナイフを簡単に忍ばせる。
対面した人間が無能であれば、優しい言葉に様々な悪感情を乗せる。
それを、人はよく『表裏者』と呼ぶ。
誰もが持つ、人間の本性だと私は思っていた。
「……モニカちゃんは、可愛い!」
「……は」
「んでもって、百合営業の素質がある!そして俺は、モニカちゃんと見知らぬ誰かとのカップリングを見てみたいッ!!!
──これで納得してくれるかな?」
「できません」
「マジかよ……」
「ちくせう」と、肩を落とすオリバーさん。
その肩からは『落胆』の感情が見て取れる。
それは紛れもない負の感情で、それ以上でもそれ以下でもなく。
「でも、まるっきり嘘でもないからなぁ。モニカちゃんのことは可愛いと思ってるし、綺麗だと思うし、……それから、真面目だ!」
「世辞と媚びが上手ですね。そんなどうしようもないあなたの性癖を聞かされる私の身にもなってくれませんか」
「世辞でもないし媚びでもないぞ?可愛くて、真面目で、綺麗で、百合営業の素質もあって。
そんなモニカちゃんの未来を見たいって言うのは、俺の紛れもない本音だ」
この人の優しい笑顔も、それ以上でもそれ以下でもなかった。
「それが俺の、モニカちゃんをスカウトした理由。ただただ、キミの未来を見ていたいっていう、俺の独善的で利己的で、どうしようもない理由だよ」
「……本当に独善的ですね。利己的で、どうしようもない」
「だろ?」
オリバーさんは、正直に言わせてもらうと馬鹿だ。
馬のように駆け回り、鹿のように餌に擦り寄る。本能に忠実で、真っ直ぐ。自分の欲望の為ならばどんな行為も惜しまない。独善も、外の街からのスカウトも、人助けも、何もかもをサラッと平気な顔して、こなしてしまう。
それを馬鹿と言わずなんというのだろうか。
彼の存在を形容する為に、馬鹿という言葉は必須項目ではないか。
「でも、そんな独善的で利己的なジコチューヤローの誘いにキミは乗った」
「……」
「全くもって予想外だ。けど、モニカちゃんがそう言ってくれたのならば、俺は俺の考えを貫き通すまでだとも思うよ」
それでも。
私にとっては、その『正直』さが本当に眩しくて。
心と言葉が驚くほどに同じ歩幅で歩み寄ってくるオリバーさんの背中が、本当に頼もしくて。
差し伸べられた手を、私は取ってしまったのだ。
第一印象から馬鹿な人だと、そう思った人の手を握ってしまったのだ。
彼の語る私の可能性を、私自身が信じてみたくなってしまったのだ。
「さーて!そんなわけで改めて、これからのモニカちゃんがやるべきことを説明しようかな!」
「……はい」
「先ず、モニカちゃんは魔法統括協会支部にて、いっぱい食べて、学んで、遊ぶこと!人並みの幸せを噛み締めた上で、先ずは長い期間をかけて『シーラ』さんの下で魔女になりなさい」
そのような経緯もあり、私はオリバーさんの後を付いている。
徒歩で会話をするくらいならば、箒に乗ってしまえばいいものをオリバーさんはその行為を嫌がる。
曰く、『ダメッ……!モニカちゃんのような美少女と喋るのに背を向けるのは……恥……!!』らしい。
私の運命を180度変えてしまった魔導士は、かなり捻じ曲がった性癖を持っているらしい。
思考がもう人間のそれではないと私は思う。
魔法統括協会は、オリバーさんのような捻じ曲がった性癖の人間が当たり前なのだろうか。だとしたら、頭が痛い。
「なるも何も、そのシーラという方が私を弟子にしてくれるのかということは不透明なのでは」
「え、だってモニカちゃんは魔法統括協会の人間になるって強い目標があるでしょ?」
「!……それは、はい」
「なら大丈夫。シーラさんは、1つの事象に強い想いや執念を持つ子に応えてくれる。シーラさんの下でなら、きっとキミは──立派な百合モンマスターになれる!」
「落ちてください、地獄に」
「だはははは!強い言葉を使ってくれるねぇ!」
けれど、これだけは心の中に留めておきたい。
私という人間が出会ってきた人。そうして作り上げた人間の本質、人間とはこういうものだという固定観念のようなもの。
それを、オリバーさんという魔導士は簡単に、いとも容易く打ち据えてしまったということ。
そして、オリバーさんという山吹の魔導士が、私にとっての恩人ということ。
「まあ、そうやって強くなってさ。いつか自分自身の答えを見つけた時、それでも俺の事を覚えててくれたら、そん時は──」
だからこそ、私は決めた。
何者でもなく、成したことも経験も浅い私を見出してくれた彼を。
この世界から、次の世界へと連れ出してくれた彼を。
私の心中に潜んでいた固定観念を覆してくれた馬鹿な彼を。
いつか、どこかで助けられる人間になると。
「俺のこと。手伝ってくれ、モニカ」
それでも、今の実力では助けるなんて夢のまた夢で。
1か月が過ぎ、1年が過ぎ、1年半が過ぎて。
あの時の、黒衣を纏い颯爽と現れたご都合主義の