どちゃクソラッキースケベなハーレム生活を望んだ結果、最終的に幼馴染を好きになった転生者の話   作:送検

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やればできる子


6話 「なんか違うと思う」

 

 

 

 

 

 

「オリバーが心配です」

 

平和国ロベッタのとある家族の団欒から、そんな少女の声が響き渡った。

この言葉に大好物であるケーキを今まさに食さんとしていた男は持っていたフォークから一欠片のケーキを落とし、その男の妻は「あらまぁ」と笑い、その様に灰髪の少女は、目を見開きその男を見遣った。

男は一欠片のケーキを落としたことにも気付かず、イレイナをただただ驚愕の目付きで見ていたことに、他ならぬ少女が気がついたからである。

 

「あの、お父さん。ケーキ──」

「イレイナが人の心配を‥‥‥しかもオリバー君とやらの心配をしたぁ!!」

 

男が驚いた原因は、愛娘の一言が原因であった。普段から目に入れても痛くないほどに溺愛しており、子離れができていない男であるが、その分娘の良い所も悪い所もしっかりと気付いている。

特に最近は、少女が夢を追い続けることで同年代の友達と呼べる存在が居ないことに対して勤勉さを認めつつも、内心で胸を痛めていたのだ。そんな状況下の中で娘が他人を心配する素振りを見せれば、それに感動しないわけがない。

男は涙を流しながら、隣に座る妻に縋ろうと両手を広げ──華麗に躱された。

 

「で、何が心配なのかしら?」と男の妻が少女に尋ねると、口に含んだケーキを咀嚼して飲み込んだ彼女が嘆息を漏らす。

 

「今日、幾つかの本をオリバーに貸したんですけど」

「ええ」

「その肝心のオリバーに読書するという気概がまったく見られないんです」

 

そもそも言わなければ読書するつもりもなかったんですよ、と娘は語り、男の妻は「うんうん」と頷き、ニコリと微笑んだ。

 

「それで、イレイナはオリバー君に本を読んで欲しいの?」

「それは、はい」

「ならあなたがしっかりと言ってあげて、分からないところがあったら教えてあげないとね。それが薦めた人のやるべき事じゃないかしら」

 

彼女はそう言うと、ケーキを口に含んで「あら、美味しい」と己の作ったケーキの味に賞賛の意を示した。鍛錬に鍛錬を積み重ねたことで構築されていた夫を骨抜きにするスイーツのレシピは、その夫の妻にしか知り得ない1代秘伝のレシピ。そのレシピに骨抜きにされた男は、今日も今日とて妻のスイーツを無我夢中で食すのであった。

そんな穏やかな雰囲気の中で発せられた一言は娘にとっては当たり前の事実だったのであろう。母の言葉に首を縦に振った少女は、その勢いのままに一言。

 

「勿論、そのつもりです」

「あら」

「分からないところがあるのならちゃんと教えますし、嫌だと言っても教えます。首に縄つけてでも、ちゃんと責任を持ちます」

「あらあら!」

 

その言葉に、今度は己の娘に賞賛の意を示した妻。その前に首に縄つけてとかどこで覚えたんだい‥‥‥?という男の声は無視され、妻──ヴィクトリカは少しだけ悪戯心を交えて、言葉を発する。

 

「イレイナったら、オリバー君のことが心配でたまらないのね」

 

そして、その言葉に少女──イレイナは彼女と似た、柔らかな笑みで返す。

そして、強く、きっぱりと、誤魔化したとは嘘でも言えない位の声で一言。

 

「友達ですから」

 

その言葉に若干過保護な男は「おおおおお」と涙を流し。

誰よりも娘を愛している彼女は、クスリと微笑んでみせた。

 

 

 

 

 

 

「そういや」

「?」

「あたしは名乗ってないのに、なんでシーラだって分かったんだ?」

「‥‥‥ああ、それはあれです。母さんが前から言ってたんすよ、シーラさんは何時でもハードボイルドだって。そこからです」

「マジか、照れるな」

 

場所が変わり、家を出てすぐの庭で2人の魔法使いが向かい合って話をしていた。

1人は、山吹色の髪をした遊びで魔法を撃っていた子ども。魔力の塊を空に穿つことと、作った氷をガスバーナー並の威力の炎魔法で溶かすことを快楽としている魔法使い。

もう1人は、山吹色の髪をした男の子からしたら()()()()()という印象を受ける子どもを慮った禁煙を敢行し、その少年を見据える金髪の女性。

一見、向かい合った2人は談笑をしているように見えるだろう。しかし、片方の子どもは内心で冷や汗をダラッダラ流しながら仮初の笑みを見せているのだ。

 

少年は転生者であり、向かい合ったその人を()()()()()()知っている。そんな事情を知っているであろう奴らが見れば失笑もののやらかしを()()()()()()()()()()クズボーイは誰だろうか。

そう、俺だ。

クズオタクであるところの、俺だ。

 

「それじゃ、ぼちぼち初めっか」

「はい」

 

箒の乗り方を教えてくれるという言葉に乗せられ、外に出た俺は箒を手元に召喚し、その箒を掴む。オーソドックスで何の変哲もない箒を見たシーラさんは何処か物足りなさそうに渋い顔をするものの、直ぐに気を取り直して、俺を見据える。

 

「練習はしてたんだろ?」

「まあ」

「なら、先ずお前なりのやり方で飛んでみてくれ」

 

腕を組んだシーラさんの注文に応え、先ずは自分がやっていた箒の乗り方の練習を試してみる。

かつて、母さんは魔法に関してのコツを『イメージと思い切り』だと宣った。当初の俺はそんな母さんの言葉を話半分に聴いていたのだが箒の乗り方に行き詰まった時、半ば衝動的にその言葉を思い出し、物は試しと『コツ』とやらを意識してみることとしたのだ。

まあ、結果上手くいってないのでお察しという奴なのだが。

 

「飛びたい!空を駆け回りたい!あの世まで行ってみたい!!」

「なんで詠唱してんの?」

「行っけぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「なんか違うと思う」

 

現にシーラさんすっげぇ変な奴見るような顔してるし。やっぱり飛ばし方間違えてるんすかね‥‥‥ってな具合に愕然としていると、「ダメだな、こりゃ」と続けたシーラさんが左手でフィンガースナップを行う。

 

「──うわ」

 

そして、出てきたのは幾つか改造された箒である。翼をモチーフにした背もたれや、エンジンの音が鳴るそれは箒というよりかはバイク。いやしかし、ダサいとは思わない、むしろイケてると思う。

 

「カッコイイっすね、そういうの」

「お、やっぱ男の子だな。こういう系のには憧れるか?」

「はい」

「なら、先ずはちゃんと箒を扱えるようにならねえとな」

 

シーラさんは、片手を箒の持ち手に添えると「こほん」と咳払いをして、会話の空気を改めた上で、続ける。

 

「いいか、オリバー。どんな魔法使いでも最初のうちって空を飛ぶ感覚が備わってないから闇雲に飛ぼうとしたところで上手くいくわけがねえんだよ」

「と、言いますと?」

「最初のうちは手順通りやれってことだ。箒を浮かせて、その後にその箒に座り込む。んで、姿勢が安定したら深呼吸して地を蹴り上げる──最初はこんなもんだよ、箒の乗り方なんてさ」

「お、おぅ‥‥‥本格的なんすね」

 

つーか、普通に考えて言霊如きでどうにかなる問題でもなかったよな。俺って本当に考えが甘いわ。

 

「お前な、魔法をなんだと思ってんだよ」

「母さんがイメージって言ってたんで丸っきり信じてました。ダメっすね、俺」

「言ってることは一理あるけど初心者に教えることじゃねえだろセンセ‥‥‥」

 

「とりあえず、やってみ」とシーラさんが最後に言ったので、1度深呼吸して心を落ち着かせた上で、言われたことを反芻させる。

 

先ずは箒を手に取り、浮かせる。この基礎自体は今まで箒を呼び寄せたりする過程で何度もやってきたので、簡単。

問題はその後だ。

 

「‥‥‥この浮いた箒に、座るのか」

 

浮いた箒に乗ることが純粋に怖い。

このまま乗って、腰を強打しないか。はたまた、乗った瞬間に暴れ回り、制御が利かずに振り落とされないか。そのようなシチュエーションを考えた時、俺の心は恐怖でいっぱいになってしまったのだ。

雑念が入れば、魔力の精度は鈍る。その証拠に先程までしっかりと浮いていた箒が震えてしまっている。

そんな、今にも落ちそうな箒を見たシーラさんは俺の考えを見透かすかのように忠告する。

 

「怖がんな。ビクビクしてると制御できなくて余計な怪我するぞ」

「‥‥‥はい」

「大丈夫、お前ならできる‥‥‥知らねえけど」

「ちょ、それ今1番言っちゃ行けない奴!!」

 

さっきまで良いこと言ってくれてたのに!

そんな思いからか、自然とシーラさんを睨みつけるような形になってしまった俺ではあったのだが、ここで今までの怖さというか、硬さが緩和したような気がした。

震えていた箒は、ふわりと浮くのみに留まり安定感が見受けられる。それこそ、座っても落ちたりしないとでも言いたげな安定感がその箒にはあるように思えた。

故に、俺はその安心感を求めるように自然と箒の持ち手に座る。

結果は、無傷。

俺は浮いた箒に座ることに成功したのだ。

 

「‥‥‥あ」

 

その後はもう、流れだった。

俺自身の行きたい所へ、箒が意思でも持ったかのように進んでいく。右へ、左へ、上へ、下へ。

とにかく自由自在に、箒は俺の思うがままに動いてくれた。

 

あ、やばい。

なんかちょっと感動してきた。

世界がクリアに見える。見たことの無い景色が、俺の視界いっぱいに広がっている。その光景に、俺は思わず見とれてしまう。見たことの無い情景や、そこに広がる自然に心を奪われてしまったのだ。

 

「──ほら、やっぱ出来んじゃん」

 

下の方から声が聞こえると、見上げた状態のシーラさんが『当然』とでも言いたげなドヤ顔で笑っており、その表情に、俺もドヤ顔で返して言葉を返す。

 

「自分でもビックリなんですけど、出来ました」

「魔法の素養ってのはほとんど遺伝によって決まる。つまり、ぼちぼち魔法を使える位の才能があるお前が箒に乗れない道理はねえってことだ」

 

「つまり」と、ここで言葉を切ったシーラさんは懐かしい何かを思い出すかのように、目を細めて俺に尋ねる。

 

「どういうことか分かるか?」

「‥‥‥ええ、あれっすよね」

 

シーラさんの言いたいことは痛いほど分かる。

つまり、箒を使えるくらいの力があり。それらは殆ど遺伝。つまり、これは俺が元から持っていた力。そして、それらを開花させたのは‥‥‥

 

「俺の努力と生まれ持つセンス!」

「うん、そう。そりゃそうなんだけどあたしが言いたいのは──」

「ひょおおおおお!!!!」

「話聞けよ」

 

どうやら神様は俺を完全には見捨てていなかったらしい。一時はどうなることかと思っていたが、このまま行けば旅をしながら可愛い女の子達と出会うことも可能になるだろう。

例えば、寝たら何もかもを忘れちゃう女の子と1日限りのアバンチュールを仕掛けてみたり。

ある時は、イレイナサンスキーな黒髪ボーイッシュな女の子と仲良くなる傍らでイレイナの可愛さについて語り合ったり。

後は‥‥‥シスコンの妹2人に姉に手を出したクソ野郎として蹴られたり、踏まれたり、とにかく色々できる!!

 

「ひょおおおおお!!!!」

「おい、降りてこーい。つか、現実に戻ってこい。箒から叩き落とすぞ」

「すいません」

 

思わず興奮してしまった。

今は魔法を使っているんだから集中しなきゃな。魔法だって一歩間違えたら事故を起こしかねない危険なものなのだから、遊びと言っても使う時くらいは真面目に使わなきゃならん。

心頭滅却を意識し、宙に浮いた状態から地に足をつけた状態へと戻すと顎に手を添えたシーラさんが何やら、また俺をまじまじと見つめる。

 

「‥‥‥お前、やっぱり」

「ど、どうしました?」

「‥‥‥いや、なんでもない。才能あるなって、そんだけだ」

 

さいですか。

いやしかし、シーラさんって本当に綺麗だなぁ。

もういっそのこと一生見つめてくれないか──んんんんん!ダメだ、1度心を落ち着かせたのにまた興奮しようとするなリトル俺!!

大体お前はいつもそうだ。妄言吐けばどうにでもなると安易な考えを持って、その言葉で他人がどう思うかなんてお構い無し!

衝動的に言葉を発する悪癖を少しは反省し──

 

「綺麗ですね!」

「あ?」

「カッコイイですね!!」

「お前何言って‥‥‥おい、その羨望の眼差しやめろ。お前1回落ち着け、な?」

 

と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛! 

 

 

 

 

 

 

あの後、母さんが帰ってきたので家に戻った俺とシーラさんだったが、何やら世間話程度に留まっていたので、一言断りを入れて再度魔法の練習をすることになった。というか母さんシーラさんとも面識あるとかどんな人間なんすかとか色々思いながら、俺はひたすらほうきで空を飛び続けた。

 

「ふわぁぁぁ!!流石私の息子なのですー!!空を飛べるなんて天才なのですー!!」

「歳考えろよ」

「あ゛?」

 

なんか箒で空を飛んでた時、戯言が聴こえた気がしたのだが、取り敢えずそれは置いておく。

長くほうきを飛ばしている内に時刻はあっという間に過ぎ去り、話を終わらせたのかシーラさんが家から出てきたのだ。恐らく帰るのだろうと思った俺は、箒の乗り方を教えてもらった礼を言うために急いでシーラさんの元へと箒で向かう。

 

「シーラさーん!」

「オリバー‥‥‥って、お前もうそこまで箒ぶっ飛ばせるようになったのかよ」

「慣れました」

「普通怖くてそこまで飛ばせない筈なんだけどな」

 

ははっ、そりゃまあ最初は怖かったけど慣れちまえばこっちのもん。事故で死線見てるからスピード出すのはそんなに怖くないし。

──と、それよりもだ。

 

「シーラさん」

「ん?」

「今日はありがとうございました。お陰様で箒で空を飛べましたから」

「できるようになったのはお前だろ。礼なんて要らねえよ」

「けど、シーラさんが教えてくれなかったらもっと時間がかかってましたから」

 

そう言うと、目を見開き「あー」と間延びした声を上げたシーラさん。見開かれた目が元通りになった頃には表情が渋くなっており、恐らくシーラさんの中で想定外の出来事が起こったのだろうということが容易に想像できた。

 

「お前、独学で魔法勉強してんの?」

 

間を置かれて、尋ねられた一言に「です」と返して続ける。

 

「勿論、杖とか箒は母さんが買ってくれたんですけど、ちゃんとした指導は受けてないです」

「‥‥‥マジかよ。てっきりセンセか師匠に教えて貰ってんのかと思ったんだけどな」

「いやいや‥‥‥感覚派の母さんですよ?」

「あのな、お前の母さんは‥‥‥あー、いや。なんでもない。そうだな、あたしも苦労したよ」

 

途端、しゃがみこんで目線を俺に合わせたシーラさんは「お前も苦労してんなー」と言いながら俺の肩をポンポンと優しく叩いてきた。

くっ‥‥‥!優しさが目と鼻と五臓六腑に沁みるっ‥‥‥!!

 

「‥‥‥もし魔法で躓いたりしたら手紙でもなんでも送ってくれよ。忙しいし、面倒だが話くらいなら聞いてやるからさ」

「良いんですか?」

「良くなきゃこんなこと言わねえよ」

「‥‥‥じゃあ、それとなく送ってみます」

「おう」

「‥‥‥賄賂は、饅頭で良いですかね?」

「誰が賄賂送れって言ったよ。シバくぞ」

 

厳しい言葉とは真逆の優しい語調で一言、シーラさんはそう言うと俺の頭を支えにして立ち上がり、再びフィンガースナップ。エンジンの音が鳴り響く箒が登場すると、シーラさんはその箒にどかりと座り込む。

何から何までカッコイイ人だ。世のハードボイルド希望者はこの人を目標にすべきなのではないか──なんて思っていると、箒に座ったシーラさんがニヤリと笑みを見せて、俺を見遣る。

 

「また来る、じゃあなオリバー」

「その時は、もっと魔法上達してますね」

「言ってろ」

 

そして、その一言を残してシーラさんは空を飛んでロベッタの空を飛んでいく。それと同時に、エンジンの音が鳴り響き、あっという間に姿は消えていった。

そして、そんな姿を見た俺は、いつかあの人や未来のイレイナのように自由に空を飛び、目標を叶えられたら──なんてことを考えながら、自分の家のドアを開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥そういや、ハードボイルド繋がりでユーリィちゃんとか居たなぁ」

 

今頃アジトでゲロでも吐いてんのかな。

 

 

2章終了後の3章は……?

  • 魔法統括協会編!(全15話完結予定)
  • 2人旅編(全30~40話完結予定)
  • 両方同時並行(がんばる)
  • アムネシア編
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