ワートリ世界の英雄王   作:白黒たぁむぅ

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1話

後に第一次近界民侵攻と呼ばれる出来事の数年前、まだボーダーやネイバーの存在が公になっておらず、誰も認知していないような頃、一人の少年の前に大きな黒い穴が突如として現れ、その中からは白い化け物が現れた。

 

勿論、そんな白い化け物に対抗する術も力もあるはずがなく、思わず腰を抜かしてしまう。地面を揺らしながら、ゆっくりと近づいてくる化け物に対して明確な恐怖を抱く。

 

今いるこの場所は山の中。他に人の気配はなく、助けてくれる存在など存在していなかった。

 

何故こんな山の中にいるのか。それは、いつもは1人ではなく2人で帰っているのだが、今日はそのもう1人は体調不良でいなかった。そして、偶然にもこの山の近くを通った時に古い鳥居を見かけ、何時もなら入らないが1人だったこともあり、興味本位で鳥居を潜りそのまま登って来てしまった。結局、その頂上には古びた建築物しかなく、帰ろうとした折りだった。

 

不幸が降りかかったのは。

 

(逃げなきゃ……でも、どうやって……)

 

少年の頭の中には、逃げる、その言葉しか浮かんでいなかった。

 

いくら考えようとしても、恐怖のあまり頭が働かず案など一つも浮かばない。

 

(走る?)

 

たとえ走って逃げたとしても、きっと追いつかれてしまうだろう。

 

(距離をとって隠れる?)

 

隠れるという判断が一番適切だったのだろう。それが、ただの生き物であったならば。直感的に、隠れても意味がない。そう考えてしまった少年は俯いていた顔をあげた。

 

そして目にしたものは……

 

 

 

 

自分を喰らおうとする白い化け物の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んん……」

 

目を開けた少年は、先程の出来事が夢だったのではないか、そんな淡い希望を持ったが、一瞬にして砕け散る。辺りを見回しても、良くは見えないが、見覚えのないものしかなかったからだ。さらに言えば、ベッドの上であろうか。拘束されているのが視覚的にも、感覚的にも分かる。

 

(どうしてこんなことに……)

 

少年がそう思うのも仕方のないことだろう。いきなり化け物に襲われた挙句、目を開けると全く知らない場所で拘束されているのだから。

 

「硬……とれないなぁ……」

 

分かっていた事だが、拘束を解くことはかなわなかった。

 

 

そうこうしていると、足音と共に、会話をしている人物達が近づいてくる。

薄暗かった部屋のドアが開き、電気を付けると眩しい位の明かりを放つ。

 

あまりの眩しさに、先程までは薄暗い部屋にいたことも相まって、目を細めるが、直ぐに回復し、しっかりと見えるようになった。その頃には、会話をしていた者達が近くによってきていた。

 

「No.1341……あぁ、君のことだ。さて、君はここがどこで、何をする場所か分かるかい?」

 

「……分かりません」

 

「だろうね。ここはネイバーフッド最大級の先進国家、まぁ、簡単に言うと、技術が最先端の国ってことだね。で、ネイバーフッドって?なんでそんなところに~って顔してるね」

 

少年はその言葉に軽く頷くことで肯定を示す。

 

「まず、ネイバーフッドっていうのは君のいた星、玄界の周りに存在している国々のことだ。訳が分からない、そんな顔をしているけど、事実なんだよ。君も見ただろう?バムスターを……あ、バムスターっていうのは白い大きなやつのことだよ」

 

「……ボクはなんでここに連れてこられたんですか?」

 

「それは勿論、君のトリオン能力が素晴らしいものだったからさ!君は逸材だよ。玄界の他の子供や他国の子供、その他に、優れたトリオン能力を持っている精鋭達よりもトリオンの量が多い」

 

少年は小首を傾げる。トリオンなどという単語は聞いたことがなかったからだ。

 

「トリオンっていうのは、誰しもが持っているトリオン器官っていう見えない臓器のようなものから作られるもので、人それぞれ大きさが違うんだ」

 

あんまり分かっていない様子の少年だったが、男は続ける。

 

「で、本題だけど、実は今この国で新たな研究が始まってね。トリオン器官を移植、また、結合させるって研究なんだけど、そんなことを我が国の国民ですると問題になるだろう?だったら他国の国民ならどうだ?って上の人間が言い出してね、幸い、戦争に勝ったことで捕虜がいたんだけど、なんかぱっとしない子が多かったし、ちょうど玄界の近くを通りかかったし、まだ他の国も行っていない玄界への遠征も兼ねて、攫って来てみては?ってことで、君達玄界の子供が数名連れてこられて、その中でも特にトリオン能力に優れていた君が選ばれたってわけさ!」

 

一瞬、少年はこの男が何を言っているのか分からなかった。が、少年ながら、少しづつ理解し始める。

 

「何かを察したようだけど、もう用意は整っているんだよ。他の子や、使えなくなった精鋭達からトリオン器官の取り出しは終わっているし、機器も揃ってる。ということで、おやすみ?No.1341。次に目が覚めた時は……」

 

男の言っていることを最後まで聞き取ることが出来ずに、少年は意識を失ってしまった。

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